魔眼持ちの俺は勇者パーティを追放されましたが、英雄パーティに誘われました。勇者パーティに帰ってこいと言われてももう遅い。

煙雨

勇者パーティ追放

「アレク、いやアレクサンダー。今日をもってパーティから抜けてもらう」


「は...?」


 その一言で勇者パーティを追放される。また幼馴染からも見放された俺---アレクサンダーが路頭に迷っていた、そんな時、1つのパーティが話しかけてきた。


「パーティを作ろうとしているのですがもしよろしければご一緒しませんか?」


 この誘いから主人公---アレクは今後なる英雄パーティの一員になった。


 勇者パーティではアレクが抜けたことにより、パーティの雰囲気が悪くなったり、今まで倒せる魔物は倒せなくなったりして散々な目にあい、崩壊の一途を辿っていた。


 主人公の実力発揮と勇者パーティの崩壊の短編小説の序章。

前書き編集

短編です。


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本文編集



「アレク、いやアレクサンダー。今日をもってこのパーティを抜けてもらう」




「は...」




 冒険者ギルドでパーティリーダーのダニエルに突然解雇を言い渡された。




「アレク、この1ヶ月間お前は何をしてきた?」




「みんなのサポートをしてきたけど...」




 するとダニエルは笑いながら言う。




「サポート? 俺には何もしていなかったようにしか見えなかったけど?」




「そんなはずない! 魔物が来る方向、魔法を撃ってくる方向などみんなに伝えていたじゃないか!」




 パーティメンバーにも言っているが、俺は魔眼持ちだ。だから魔眼を最大限生かせる後衛に配置してもらっている。後方なら敵が魔法を撃ってくる方向、敵が近寄ってくる方向などが一目見ればわかる。




「それは誰だってわかることだろ? このパーティにいる奴らはみんなSランク冒険者だ。敵の来る方向、魔法を撃ってくる方向なんて第六感でわかるに決まっている」




「は?」




 第六感で来る方向などがわかるというのには一理ある。実力が付けば危機察知能力が付くのは当たり前だ。でも危機察知にも限界はある。それを補うのが俺の役目であり、それに見合う仕事はしてきたはずだ。結果、俺が加入してから誰一人重傷はしていない。




「他に何かお前がこのパーティに役立つことを何かしたか?」




「敵の動きを止めていたじゃないか! 他にもいろいろやっていた!」




 俺は魔眼を複数所持している。だから敵の動きを止める、未来を見る、数キロ先見るなどいろいろなことができた。それを最大限活かしてきたつもりだ。




「敵を止めていたのはお前は無くてクーリアの魔法だろ?」




「間違ってはいない。でもクーリアにだって限界があって、ほとんどサポートは俺がしていた!」




 勇者パーティで俺と一緒に後衛で支援していた魔法使い---クーリアは援護できる魔法が少なく、攻撃魔法などで支援をしていた。そんなクーリアが敵をすべて止めていたなんてありえるはずがない。




「言いがかりはよせよ。クーリアもそう思うよな?」




「ええ。ダニエルの言う通りよ」




「クーリア。本当に言っているのか?」




「当然でしょ? 嘘なんて言っていないのだから」




 クーリアはダニエルに見えないように蔑むような眼で言ってきた。




「クーリアがいる時点でお前はいらない存在ってことだ。だからお前には今日をもってパーティを抜けてもらう」




「なあルイ。ルイならわかってくれるよな?」




 幼馴染であるルイならわかってくれるはず。そう思い助けを求めた。小さなころから一緒のパーティになって、世界を救おうと約束した。だからルイならわかってくれるはず。俺はそう思っていた。でも




「もう無理だよ。アレクには実力がないの。もうこのパーティにはいらない存在なの。わかって。お願い」




 そう言われて何も言い返せなかった。今まで信用してきたパーティ仲間。一番近くで俺を理解してくれていたと思っていた唯一の存在。そのルイやパーティ仲間に全員にいらない存在だと言われてしまった。




「お前にもう仲間じゃない。今後あっても仲間面するなよ。じゃあな」




 ダニエルの言葉と同時にクーリア、ルイは俺のもとから離れていった。




(なんでだよ! 俺はみんなのために尽くしてきたじゃないか! それなのに...。それなのにあんまりじゃないか!)




 その後のことはよく覚えていない。宿に戻り、みんなに言われたことを頭の中でずっと駆け巡る。そして寝ることもなく次の日になる。




(俺は何か間違いを犯したか? 戦い方を間違えたか? もっと積極的に戦闘へ参加すればよかったか?)




 そんなことをずっと考えていた。でももう遅い。もう俺はパーティを脱退させられたんだ。路頭に迷っている俺に3人組のパーティが話しかけてきた。




「アレクサンダー様ですよね?」




「え? あぁ。そうですけど...」




「私たちでパーティを作ろうとしているのですがもしよろしければご一緒しませんか?」




「そう言われましても...」




 信用していた存在にはいらない存在と言われ、仲間だと思っていた人には蔑むような眼で見られた。もう誰を信用していいかわからなかった。




「自己紹介がまだでした。私、ルビア・ファーリアと言います」




「ルビア・ファーリア...」




 この名前を俺は知っている。エルフ族の第二王女である人だ。そんな人がなんで俺を? それになんで俺を知っているんだ?




「知っているようですね。お父様にSランク冒険者を帯同することが冒険者になる条件でした。そして先日パーティから抜けたことを偶然聞いてしまいました」




 そう言うことか。この人は俺を利用したいということ。




「お断りします」




「なんでですか?」




「俺はもう誰も信用したくない」




「私はそのようには見えません。アレクサンダー様」




「お前に何が分かるんだよ!」




 怒鳴ってしまった。それもエルフの王女に対して。不敬罪になってもしょうがない。でも俺の事を知らないのにそんなことを言われたら怒鳴るのも当然だ。




「ごめんなさい。でもアレクサンダー様。僭越ながら勇者パーティを抜けた時どう思いましたか? 仲間に裏切られたと思いませんでしたか? 信用している存在からのけ者にされたと」




「...」




「アレクサンダー様の心情をわかったとは言いません。ですが私を含めた全員がアレクサンダー様のような経験をしています。なのでもし元いたパーティを見返したいと思いましたら一緒にパーティを組みませんか? 明日、パーティの登録をします。もし少しでも気がありましたら紙に書いてある場所に来てください」




 ルビア様はそう言ってこの場から去っていった。




(俺と似たような経験をしているね...)




 でもそんな人達がパーティ仲間なら裏切られる心配もないかもしれない。だったらもう一回だけパーティを組んでみてもいいかもな。




 次の日、紙に記された場所に向かう。




「信じていました」




「あぁ。よろしく頼む」




「はい! ではもう一度自己紹介しますね。私はルビア・ファーリア」




「ミシェル。ただのミシェル」




「ロイ・ジュー。よろしく」




「アレクサンダー・シリエル。よろしく」




 ここから俺たち---英雄パーティの物語が始まっていった。




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 2ヶ月後。勇者パーティでは




「クーリア! ちゃんと支援してくれ!」




「やっているわよ!」




「ルイ! 回復魔法!」




「わかってる!」




(Aランク相当の魔物なら今まで2,3分もしていれば倒せていた。なのになんでだ!)




 アレクが抜けたからか? そんなはずない。だってあいつが抜けてから数日間はそつなくこなせていた。なのにここ最近は倒すのでやっとだ。




「クーリアもルイもたるんでいるんじゃないか?」




「そんなはずない! 今まで通りちゃんとやっているわよ!」




「うん...」




 でもうすうすわかっていた。アレクが抜けてからダニエルは無茶をするようになったし、クーちゃんは支援ミスが増えた。




(もし本当にアレクが言っていたように支援していたなら)




 私はみんなに一つ提案した。




「アレクをもう一度連れ戻さない?」




 するとダニエルは怒りだす。




「あいつを戻す? バカを言うなよ。あいつがいなくても俺たちはやっていけるだろ? 今は調子が悪いだけだ」




「それでもう1ヶ月以上もたっているわよ?」




 私が言っていることにクーちゃんも無言で肯定していた。




「ルイ! これ以上言うならお前もこのパーティから脱退してもらうぞ」




「...。ごめんなさい」




 でも私はあきらめきれなかった。アレクがいた時のパーティが楽しかったし、戦闘も楽だった。なのに今は違う。アレクが抜けてからすべてが変わってしまった。




(なら...)




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 今まで仲間のサポートしかしてこなかった。でも今はそう言っていられない。仲間が前みたいに強くない。だから俺は魔眼の力を最大限に活かす戦いをした。魔物の動きを止めたり、数秒先の未来を見て危険エリアから人を誘導したり。そんな日々を2か月間続けた。




 するとロイにミシェルはCランクに。ルビアに関してはBランクになっていた。徐々にみんなの実力がついてきたとき、助けた村から何通も手紙が来た。




 英雄様。本当にありがとうございました。このご恩はいずれします。




 そんな時だった。俺の目の前に幼馴染のルイが現れた。




「アレク...」




「ルイ...」




 ルイの顔を見た途端気持ち悪くなった。それに加え思い出したくもない記憶が蘇る。




「アレク! もう一度私たちのパーティに戻ってこない?」




「ダメです! アレクは私のものです!」




 ルビアが突然大声を上げた。その言葉でやっと我に返った。俺はもうこのパーティの一員なんだ。必要とされているんだとわかった。




「お願い戻ってきて...」




「もう遅いよ。元のパーティに戻るつもりはない」




 ルイが泣きそうな顔を見ながら去って行った。するとミシェルが




「アレクはルビアのものなんだ~」




 するとルビアの顔が見る見る赤くなる。




「俺はルビアのものでもあり、みんなのものでもあるよ。このパーティを信用しているから」




 そう。俺はもう元のパーティと決別したのだから。でもなんでだ? ルイの泣きそうな顔を見た時、胸が痛くなった。

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魔眼持ちの俺は勇者パーティを追放されましたが、英雄パーティに誘われました。勇者パーティに帰ってこいと言われてももう遅い。 煙雨 @dai-612

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