えれくとりっく
霧色風楽
第1話
高校一年の春、初めての彼女ができた。横にいると不思議と心地よくなるどこか潮騒を思わせる人だった。初デート、場所はショッピングモールを選んだ。オシャレでもなんでもなかったけれど、彼女と巡る場所は何処も楽しくて、輝いて見えた。手を繋ごうとする度必ず音を立てて走る静電気がおかしくて、二人で笑いあった。
二年後の夏、別れを切り出されてしまった。自分勝手な僕についていけないと。数ヶ月前からよく見かけていた申し訳なさそうに俯くその表情を見て、ずっと我慢していたんだと知った。
「最後に一つだけお願いしてもいい?」
はいと答える代わりに何とか絞り出した言葉に泣きながら彼女は頷いた。精一杯の意地を張って、僕は微笑んでお礼を言った。
あの日と同じ時間に待ち合わせをして、カフェに行って、映画を見て、買い物をしてあの日と同じように笑いあった。ただ一つ、もう手に感じる事のない静電気は半袖のせいなんかじゃない事に、お互い気付かない振りで。
えれくとりっく 霧色風楽 @happyrain__
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます