◼︎◼︎◼︎◼︎ Ⅰ
これは、夢だ。
そこは、夜の世界だった。
目の前に広がるのは、所謂西洋の古城だった。
厳か。
うん、この景色を一言で表すならこれだろう。
灰色の壁には、蔦が飲み込むように這っていて、どうも、手入れをされていない。
ここは、日本ではない。記憶が確かならば、俺は教室で昼寝をしていたはずだ。
故に夢だ。
『何をしているの◼︎◼︎◼︎?』
突然、ノイズがひどい音声。聞き取れない箇所もあるが、完全に聞こえないところもあった。
声につられて、視界が強制的に動いき、目の前に現れたのは…誰かの影だった。いや、何と表現すべきか…影絵にでるキャラクター?それは、長い髪を靡かせて、ドレスに身を纏った少女に見える。
ノイズだらけの声色は嬉々としていた。何となくであるが。
変な夢だ。まるで、誰かの体に精神体だけ入ったような感じだ。
そして、目の前の影は俺が入っている誰かのことが大好きなのだろう。走り出して、抱きついてきた。何この、パフェにアイスクリームをぶち込んでシロップをぶっかけた上に、砂糖をマシマシに振りかけたような甘ったるい現場は…。
夢とやら、自分に都合の良いものを見せてくれるのではないのか、これでは地獄だ。
ただでさえ、毎朝隣の席のハーレム野郎のおかげでお腹いっぱいだってのに…。今日は、おとなしかったけど!!
『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎』
『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎』
誰かと影は、ノイズの会話しながら、古城の広大な敷地を散歩する事にしたそうだ。
向かう先は…門だ。
幻想的だが、過度な装飾が控えめだ。うん、趣味がいい。
門が数は手前になると勝手に開く。
なんとも、見た目にそぐわないが自動ドアだ。いや、魔術で開けたのか?
ふと、見上げると分厚く暗い空を割くように黄金の満月が覗いていた。随分と大きい、スーパームーン……いや、それでも大きすぎる気もしなくはないが…。
視界の中に拗ねたように影が現れた。
両手で誰かの頬を掴んで自分を見るように強制させる。
まるで、月なんかより私をみてと言いたげだった。
あざとい。
この可愛さが自分ではなくこの誰かに向けられていると知ると湊に向ける気持ちと同じような妬みと自己嫌悪を覚える。
『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎』
『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎』
そして、何か殺し文句でも言ったのか勝手に顎が動く感覚。影は俯きぼそっと何かを言うと抱きついてきた。無論、視覚情報しかないので感触は全くない。
この地獄を見せられているのだから、少しくらいは良い思いをしても良いのではないかと思うのだが…。
だが、ここで初めてノイズが少ない言葉が混じって聞こえた。
「……いつ……、…な………見つけるわ。」
そこで、意識がなくなった。
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