33話 ドギマギお料理教室開幕 その1

来る土曜日!

しっかりと起きた時間は六時。

母は仕事場に篭りっぱなしで恐らく月曜までは買って来れそうにない。本来ならば、1人デイズに浸る予定であったが10時くらいに団体客がお越しなので、それからお昼までは料理教室。

終わって、夜からは西園寺と共にシャドウの討伐となかなかハードスケジュールであるが請け負った以上やり切ろう。

うん、こんなん社畜よりもえげつない気がするぞ?

「あ……そういえば。」

「何?いきなり。」

ふと、とある事を思い出すと部屋着姿で棒アイスを口に咥えて本読むレヴィの姿が…。随分と優雅に過ごしている。

てか、それ俺の棒アイス。

とある事というのは彼女のことだ。

これから来る人たちに彼女と合わせたら面倒ごとになる。恐らく、いや、銀髪で即バレる。

…それよりも俺がコイツに下僕扱いされているところを目撃されると社会的に死ぬ。

まだ、八時前であるが先に彼女の行動について決めたほうがいいだろう。

「これから、光の御子の連中が俺の家に料理を教わりにくるが……。どうするの?」

「どうするって?」

「いや、流石にまずいだろ?」

なんか、光の御子陣営は貴方のことあまりよろしく思ってないみたいだったし…。

「まぁ、確かに会ったら面倒ね……。」

うーんと顔を顰めて思考に浸ってしまった。いや、ただ単に隠れるのがめんどくさいのだろう。

「しょうがないわね。今日はペンダントの中で生活しましょうか…。」

「そうしてくれると非常に助かる。」

ピンポーン

「あ…?」

「へ?」

……家に鳴り響くインターフォン。

俺たちは、動きが凍結しように固まった。

え、ちょい待て……もう来たの?

早すぎるぞ。指定した時間の一時間も前だぞ!?





いつもは、起きない時間に体に鞭を打って起きたはいいが頭がぼんやりする。まさか、生活習慣が一番の敵だったとは…。でも、頑張って睡魔に勝たないと二人に一歩…いや、数歩は先に進まれてしまう。特に、つぼみんとかはおとなしいふりをして刃を確実に研いでいて恐ろしい。

「今日は、随分と早いんだね?一体どうしたの?」

スポーツウェアを着たウミが私にあったかいコーヒーを差し出してくれた。恐らくこれから自主練にでも行くのだろう。彼は光の御子という仕事を請け負いながら野球もしっかりと成績が残るように努力している。中途半端が嫌いな性分を持つと大変だなって彼を見るといつも思う。

「あ。」

渡されたコーヒーを飲むとミルクや砂糖が私の好みの量に調整されていた。もしかして、一回これが好きって言ったのを覚えていたのだろうか…。

流石、ウミ。……大好き。

「ま、まぁね〜。と、ところでウミは今日のお昼って時間空いてるの?」

正直にウミのために料理を作りにいくのっとは言わない。なぜなら、カムロンから承諾がもらって直ぐに私たちは約束したのだから。

ウミに私たちの料理をドッキリで振る舞おうって…。

「ん?あぁ、今日は何故か部活が休みになったからお昼までは自主練でもしようかなって。お昼は……うん、大丈夫だけど。そんなそわそわしてどうしたの?」

「いや、今日は寂しく一人でご飯かなって思ってさ〜。」

「そっか。うん、わかった。じゃあ、自主練が終わったら連絡するよ。」

「ありがとう。その時に、どこで食べるか決めておかないとね?」

「うん。じゃあ、行ってきます。」

「ええ、いってらっしゃい!」

スマホをポケットに入れるとウミは家を後にした。向かう先はいつもの公園だ。

さて、彼が完全にいなくなったのを足跡で確認するとスマホを取り出してグループを開く。


【ウミ、家から出発】

【もう、自主練にいったの?早いわね。】

【じゃあ、私たちも神室さんの家に行きますか。】

【うん!私、先に行ってるから。二人は今どこ?】

【ウミの自主練の公園から遠回りしてるわ。後、数分で着きそう。】


直ぐに二人の既読がつき、返信がくる。二人はもう、近くに来ているらしい。カムロンから指定された時間からしたらまだ早いが別に構わないだろう。

道具は彼の家にあるのでしょうし、持っていくものは何もない。

たったたっと玄関へ向かい鍵をとる。

うん、流石に日本といえど鍵の閉め忘れは良くない。

「よし、行ってきます!」

誰もいない住宅に一言いうとそのまま左隣のカムロンの家へと突撃する。

「おーい!リーファー。」

思ったよりも、早かった。振り向くと大きく手を振る佐倉とつぼみん。

さて、楽しい料理教室でウミの胃を鷲掴み!!



無言の空間に放たれたインターフォンは嫌らしく響いた。

「ちょっと、早く来るならもっと早めに言いなさいよ!ペンダントは?」

「いや、こっちも想定外だ。えぇっとペンダントはここ!」

ポケットから取り出してレヴィに早く中に入るよう促すが彼女は突然動きを止めた。

「待ちなさい。ペンダントに入るときは魔力を使うの…これはもしかしたら光の御子にバレるかもしれないわ。」

玄関の方から、あれ?もしかして、神室くんいないの?いや、でも声はしてたからいると思うわよという声がした。

不味い、変に待たせると怪しまれる。焦って、衝動的に強い口調の言葉が出てくる。

「は?どういうことだ。今までそんな気にしたこと無かったろ?」

「それは、貴方の能力の隠密性とスーツによって魔力の流れが隠されていたからよ。スーツなしの状態だと少しの魔力が漏れ出して反応する可能性があるわ。彼らが探知の類を持っていたら……」

「どうすんだ!?」

「……隠れるしかないわ。どこか、安全に隠れれる場所あるかしら?」

隠れるところ!?そんなもんこの家にあるはずがない。

「…だったら、俺の部屋で隠れてくれ。」

「そうね。そこが無難だわ。」

目を合わせて頷くとお互い反対方向へと進んでいく。彼女が俺の部屋に行く以上…絶対に俺の部屋に行かさないように三人……いや、五人を監視しなくてはいけない。

「待ってくれ、すぐ開ける。」

玄関の反対側にいる彼女達に告げ、レヴィが俺の部屋に入ったのを確認するとドアノブに手をつけて押し開けると…。

「おはよう、カムロン〜!」

「おはようございます、神室さん。今日はよろしくお願いします。」

「よろしく頼むわね!」

眩しく楽しそうな笑顔が待っていた。

「おはよう。すまんな、色々片付けたたから遅くなった。てか、くるのが早すぎる。」

「す、すいません。楽しみにしすぎまして…。」

「いや、別にいいが……でも、この後追加で人が来るんだ。そいつらが、来てから作り始めるからそれまで待ってくれるか?」

「へ?私たち以外に誰か来るの?」

「椎名と……西園寺の妹だ。」

「え?」

佐倉が思いっきり、嫌な顔をコンマ数秒顔に出した。恐ろしく早い切り替え…。

怖い、怖すぎる。てか、佐倉さんと椎名って仲悪かったんだ。

「西園寺さんの妹さんですか?」

深田さんが首を傾げる。まあ、言ったなかったしな。仕方がない。

「あぁ、ちょっと縁があってな。あいつらにも九時からって行ってるからその時間にく……。」

「あら、早く来たつもりだったけど…。」

「あ、あの、はじめ…まして……。」

三人組の後ろの方から椎名と西園寺妹がいつの間中にいた。

なんで、コイツら指定した時間よりもものすごく早い時間に来るんだ…。コイツらあれか、学校の五分前行動に対して早くくれば先生から良い評価をもらえると勘違いして十分前、十五分前行動と何故か早く準備することに対してハキハキする変な方向にだけ真面目になるタイプか?

「……全員来たなら、始めるか…。まぁ、上がってくれや。」

五人に上がるよう促すと顎でリビングを指しそこへ呼び込んだ。リビングへと向かう途中、服が色々と荒れた洗濯物が見えた。不味い、汚いやつと思われたら嫌だな。……後でトイレに行くついでに適当に洗濯機の中にぶち込むか…。






「まぁ、予定時間から相当早いけど……予定から大幅に変更して、これより料理教室を始めたいと思う。」

神室さんの声がリビングに広がる。

「うぇーいどんどんぱぷぱふ!」

リーファさんが何やら楽しそうに音の出るパーティグッツでお出迎え。料理作りに来たんだよな?何持ってきてるの?

「今日作るのは、リーファさんらの依頼でウミの好物である魚ハンバーグだ。」

彼がから言われたウミくんの好物は意外な物だった。てっきり、前に大好きって言ったたカレーなのかなって考察していたが…。

「おぉ!って、魚ハンバーグ?」

私と同じく驚いたのかリーファさんが目を点にする。

「あぁ、意外だと思うがアイツは魚ハンバーグが大好きなんだ。これから、簡単に説明する。」

神室さんはどこから持ってきたのかホワイトボードを出すと丁寧に解説された料理の過程を見せてくれた。

凄い…。

一つ一つ、料理をしていない人でもわかりやすい。彼の意外なところに感嘆しつつ。

私は、リビングへ来る前に見たとあるものが頭の中に残っていた。

見た瞬間、これは見てはいけないものだ。

だから、すぐに記憶を消そうとしていたが記憶というのは…特に印象に残ったものはなかなか消去に手間が掛かるらしい。

(どうして……)

どうして、神室さんの脱ぎ捨てられた男性の服の中に

この家にはもちろん…彼の母親がいるだろうが彼の歳を踏まえて四十過ぎているだろうがそんな年齢の人が履くようなものではないモノだった。




はっ、……ふと、リーファさんの言葉を思い出した。

『私が見るからにウミは恐らくどっちもいける口よ。』

…もしかして……彼も…また……。

そうすると……女装用なのでしょうか!?

私はそんな議論が頭の中で行われて神室さんのお料理の勉強についての話がまるで入ってこなかった。


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