第30話二十日目
二十日目
二人が寝ているとズン…ズシン…ズシン…!鈍く重い音が近づいて来る
コウキ「なんだよ…トラウ…」音に気付きコウキが起き上がると、天幕がフッ…と暗くなる
コウキ(なんだ…?)フスフスッと鼻息の音がする
コウキ(マジかよ…)
コウキ「おい…トラウ起きろ…」静かにヒソヒソとトラウを揺さぶる
トラウ「…んー…飯抜きはやめてくれー!」トラウが寝言で叫ぶ
コウキ「いっ?!」声を聞いた大きな何が天幕に噛み付く、天幕を噛んだまま離さずブンブンと振り回し、雪の上に叩きつけ天幕を引きちぎる。二足歩行の巨大なトカゲが天幕の中を探すが何もいない
コウキ「あっぶねー…この馬鹿ホントやってくれるぜ」トラウを見ながら顔が引き攣るコウキ
トラウ「ガビテ優勝とか…へへへ…」
コウキ「寝言で殺されそうになるとはな…」コウキが即座に二m程の出入口を作り亜空間に避難していた
コウキ「俺いたら出入口閉じられねえし…どうしようか…」考えてながら寝間着を着替えて装備を整えていると天幕があった場所に穴が空いてる事に気がついたトカゲが穴を覗く
トカゲ「グォォォ!」咆哮が亜空間の部屋に響くが、それでも起きないトラウ
コウキ「お前の仕業か…」トカゲを見据えるコウキ
バサドサウルス…強位46全長八m体高三m二足歩行の大きな顎のトカゲの魔物、大食漢で自身の体温を常に高く保っており、体温と外気の低い気温とで体内発電することが可能。サウルスは一部で使われている英語という言葉で「トカゲ」という意味、直訳するとバサドのトカゲである、バサドの固有種。肉は旨味を蓄え脂が細かく入っており焼くととても柔らかく肉の香りも良い。
覗いていたトカゲが電気を帯びた唾液を吐きかけるがコウキがバッとかわす
トラウ「イッ…!ビビビッ!」コウキがかわした唾液がトラウに当たる
コウキ「あ…」自分の足元にトラウがいた事を、忘れていたコウキ
トラウ「いてーだろー!」トラウが怒り飛び起きる
コウキ「あいつだぞ」穴を覗くトカゲを指差し、共犯の罪をなすりつける
トラウ「てんめー!」怒ったトラウが寝間着で裸足のまま、出入口から飛び出してトカゲを殴り飛ばす
トカゲ「ギャオッ…!」勢いよく後ろへ転倒するトカゲ
トラウ「どーだ!このやろー!」トカゲが起き上がりトラウを睨む
コウキ「ふぅ…やっと起きたか…」コウキも亜空間から出てくる
トラウ「こいつは旨い!俺にはわかる!」
コウキ「よくご存知で」
トラウ「しゃあー!」トラウが走り出しトカゲの右側へ回る、トカゲが大きな口を開けトラウに噛みつこうとするが避けて後ろへ回り
トラウ「肉をよこせー!」右脚の膝裏を強く蹴る。トカゲの右脚がガクンと下がる、下がった瞬間にトカゲから見て左へ回り込み
コウキ「ふんっ!」胴体を重くズガンと斬る
トカゲ「グガァ…!」トカゲが右へゴロンと一回転する。トカゲが立ち上がろうとするが尻尾が引っ張られる
トカゲ「ギャァー!」
トラウ「へへっ」トラウが尻尾を引っ張る
トラウ「イッテ!」トカゲが体にバチッと電気を流す
トラウ「離すか…!」それでも離さないトラウ
トカゲ「グォォォ!」トカゲが更に電気を流す
コウキ「大丈夫かよ!」
トラウ「こんのー!」それでも離さず、電気の力を運動の力へ変え引っ張り、トカゲが向いている方向とは逆へ叩きつける
トカゲ「ゴァ…!」コウキ「切り刻んでやる!」ズバババッと尻尾から頭にかけて乱舞する
トカゲ「グォォォ…!」コウキを嫌がり放電する
コウキ「ぐぁっ!」コウキが吹き飛ぶ
トラウ「最後の一発…!」放電を浴びていたトラウが右手に力を留めて
トラウ「食らえー!」トカゲの腹部を渾身の右手で放つ
トカゲ「ガァー…!」二〜三m飛んだトカゲが横たわる
コウキ「こんなのが毎日だと流石にしんどいな…」座って休むコウキ
トラウ「いい修行なるだろ?ガビテまでもうちょっとだしな」
コウキ「元気な奴だ…てかお前、寒くないのか?」
トラウ「え?…はっ!ヤベ…ェ!タ…タツケテクリェ…」歯をカチカチ鳴らしながら
コウキ「さっきまで普通だったろ…」呆れるコウキ
トラウ「ハ…ハヤク…」体を震わし催促する
コウキ「はいはい、てか自分の能力で温めりゃいいだろ」トラウの前に亜空間への出入口をつくる
トラウ「お…オリがソンら器用な事をデキリュカ…」そう言いながら亜空間へ入るトラウ
コウキ「わかったわかった…電気の力変えて、右手に留められるクセになんで、そこは出来なんだよ…」
コウキが一人トカゲの解体を始める。置く場所がないので出てきたトラウと二人でかまくらを作りそこに他の生肉と貯蔵する
二十一日目
朝食をとり、雪山のゴツゴツした場所を散策する
コウキ「なんか…めちゃくちゃさみいな…」両手で上腕を擦る
トラウ「そうか?」
コウキ「おまえの鈍さが時々羨ましいよ…」
コウキ(なんでこんなに…)二人で歩いていると青黒く冷気を放つ大きな石と青く輝く石が転がっている
コウキ「おお…こいつは冷光石…どおりで寒いわけだ…」
冷光石…半年程周囲の熱を奪い、次は半年程集めた熱で淡く発光する鉱石、主に氷庫などに使われる。
コウキ「あ、そおだ、トラウこの光ってない石と光ってる石を半々で一緒に集めてくれ」
トラウ「何すんだ」
コウキ「いいからいいから」二人で冷光石を拾い集めて拠点へ戻る
トラウ「あー!あいつら!」四匹のベイトベックがかまくらから肉を引きずり出している
トラウが走ってかまくらへ駆け寄ると、ベイトベックが肉を咥えて走って逃げて行く
トラウ「は…半分も…」落ち込むトラウ
トラウ「このやろー!」怒って追いかけてようとする
コウキ「おい待て待て」羽交い締めにして止める
トラウ「許さねえ!俺もまだ食ってねえのに!」
コウキ「あいつらも腹減ってんだろ、ちょっとくらい、いいじゃねえか」
トラウ「半分だぞ!」コウキ「腹一杯食った上で持ってったのかもな…強かな奴らだ」
トラウ「ん?…おい」トラウが指差した方に二mに満たないハクギンオオカミがこちらを狙っている
コウキ(ベイトベックには敵わないと思って様子を窺ってのか…)
トラウ「やらねーぞ!グルルル!」威嚇するトラウ
コウキ「ほれ!」コウキがハクギンオオカミに向かって大きな肉塊を投げる
トラウ「はー?!」ハクギンオオカミがじーっとこちらを見つめた後、咥えて走り去っていく
トラウ「コウキー!」コウキに掴みかかるトラウ
コウキ「俺らも山に食わしてもらってんだろ!ケチケチすんな!」
トラウ「お…おま…おま、俺がどんだけあの肉を楽しみにしてたと思ってんだ…」コウキを掴みながら泣き出すトラウ
コウキ「わ、わかった、わかった」宥めてなんとか治り、亜空間の庭にかまくらを作り肉を入れ、その中に冷光石と一緒に入れていく
コウキ「そのうち肉入れらる倉庫でも作りてえな」
トラウ「まったくだ!」肉を食われて怒るトラウ
かまくら作り日が暮れてきた為、食事にする
コウキ「ここ来る前より魔力量増えたな…」トラウを見て言うコウキ
トラウ「ホントか?!強くなってるー!」
コウキ「ほんのちょっとだけどな」食事を終え、いつもより一層、魔力鍛錬に打ち込み就寝する
二十二日目
拠点で魔力鍛錬と筋力鍛錬に勤しむ
コウキ「お、ヤリポルカ」拠点の横を通り過ぎる鹿にコウキが気付く
トラウ「旨いのか?」
コウキ「…」しばし考えるコウキ
コウキ「…いや、超まずいぞ!」
トラウ「なーんだ」
ヤリポルカ…強位21全長百七十cm前方へ向かって角が生えている鹿、角は外敵への攻撃や雄同士で角を交差させ力を競い合う、雌への求愛は走って逃げた雌に追いついく事で雌に認められる、こうして強く速い者だけが子孫を残すとこができる。肉は脂が少なく臭みが無く無難に美味しいため、幅広い人気を誇る。肝は調味料に漬け込んだ物が珍味。毛皮は防寒具、角は武器や部屋の装飾に使われる
コウキ「心配すんな、まだ肉はあるから大丈夫だ」
トラウ「…」鹿がビクッとした後何処かへ走り去って行く
コウキ「な、なんだ…?」
トラウ「俺がオナラしたのがバレたか…?」
コウキ「…おい」
地球と異惑星が混ざった星で竜がビルに巣を作る物語 @you_Hey
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます