第29話白銀狼
十五日目
トラウ「コウキ〜」
コウキ「なんだよ」
トラウ「そろそろテッペン目指そぜー」
コウキ「アホか、山頂なんてバケモンがウロウロしてんのに行けるか」
トラウ「なんとかなるだろ!」自信満々のトラウ
コウキ「無理無理、近くに治療するとこも無いのに行けるかよ」
トラウ「だとしてもこの辺りは、もぉいいだろー」
コウキ「うーん…そうだなー…じゃあ明後日からな」
トラウ「えー!明後日でいいなら今日か明日でもいいだろ!」
コウキ「準備してねえだろ」
トラウ「準備なんて要らねーだろ」
コウキ「もし飯の調達が出来なかった場合、トラウの飯の量、俺と同じでいいならいいぞ」
トラウ「うっ…!飯抜きかよ…」
コウキ「飯抜きじゃねえよ俺と同じ量つってんだろ」
トラウ「わかった…じゃあ準備してから行くか、飯抜きは流石にな…」
コウキ「人の話聞いてんのかよ」
十六、十七日目
二人で山中腹付近の森や林、岩石地帯を駆け回り食料の肉や果実、主に肉を集めて回る
コウキ「ふーこんなもんか…」
コウキ(今まで狩ったのも合わせて、街に戻った時に素材売れば、いくらくらいになるだろうな…)オショウヘビ一匹、ムナホシワシ一匹、トビウサギ二匹、シカ二匹、トゲクロトカゲ一匹、分担して解体や燻製、塩漬けにする
コウキ「おーいトラウーそろそろいいだろー」離れた所で肉を燻しているトラウに叫ぶ
トラウ「おー…ん?」コウキに返事をして、コウキの声がした方向とは逆方向に気配を感じて、気配を感じた方を向く
トラウ「…?こんな花あったか?」トラウから二m程離れた場所に横幅三十cmくらいの大きな花を咲かせた植物が、すぐそこに静かに居る
コウキ「おーい…できたかー?」トラウの様子を見に来たコウキ
トラウ「おー!こんなもんでいいかー?」トラウの声に花がピクッと反応し茎が膨らむ
コウキ「そんな感じで…ヤバいトラウ離れろ!」
トラウの向こう側にある花に気づいて声を荒げる
トラウ「うおっ?!」トラウが咄嗟に飛び退く、トラウが居た場所に花が毒液を吐きかける
コウキ(危ねえ…!)
ハシリドクカケ…強位21全長四十cm高濃度の魔力を浴び急激に進化し根が発達した植物の魔物、三〜四本伸びている根を水で繰り返し膨張伸縮させ移動することが出来る。上部の花から即効性のある強力な毒液を放ち、音に反応して近づき毒を浴びせ殺す、殺した獲物に根の先端を刺して養分を吸い取る。上部の花は食べる事ができないが茎や葉は甘く栄養豊富。花や花弁は薬に浸けた後に装飾等に使われる
トラウの足音に反応して花が方向を変える
トラウ「お!なんだやるか!」
コウキ「フンッ…!」コウキが上部の花を斬る
コウキ「これでとりあえず大丈夫だな」
トラウ「いやー助かったぜ」
コウキ「危なかったな…ん?なんか焦げ臭いな…あ!」燻していた肉が火で包まれている
コウキ「おー!?早く消せー!」
トラウ「肉がー!」亜空間から水を取り出し二人で急いで消す
コウキ「ちょっと焦げたけど黒いとこ落とせば大丈夫だろ」
トラウ「こいつどおすんだ?」ハシリドクカケを指差すトラウ
コウキ「そいつは食う」
トラウ「あんま旨そうじゃねえな」
コウキ「カマドウマが美味そうに見えてなんでこいつはダメなんだよ…」
十八日目
コウキ「じゃあそろそろ、もおちょい上を目指しますか…」
トラウ「来たー!ついにこの日か!」
コウキ「山頂までは行かねえぞ」
トラウ「へいへい」荷物を片付け山頂へ続く道を行く
コウキ「この辺りだな」平地を見つける
辺りは雪で真っ白に覆われている、白い息は出るが無風な為かそこまで寒くなく、木々の間隔も空いており雪も舞っておらず見通しが良い
トラウ「飯だな!」
コウキ「天幕、張んのが先だろ」拠点を決め設営し食事を終え、周囲の地形を把握するため、辺りを散策する
ベイトベック「クエェエ!」二人より大きな鳥が木の陰から飛び出し二人に大きな嘴で噛みつこうとするが、避けられる
ベイトベック…強位31全長2m凶暴で大きくギザギザの嘴と長い首と脚、短い翼が特徴的な飛べない鳥、筋肉が引き締まった脚で獲物を追いかけ硬い嘴で攻撃し捕食する。知能が低い為、罠に嵌めやすいが真正面から無策で挑むと強力。肉は鳥より赤身よりで脂が少なく旨味が強いが時間が経つにつれ、血の匂いがキツくなってくる、脚はぶつ切りにして煮込んだり汁物の出汁として使う事が多い。羽は衣類などに利用される
コウキ「こいつの嘴と脚に気をつけろ!」
ベイトベック「クエェーー!」耳をツンザク様な声で鳴き叫ぶ
トラウ「うるせえ!」
ベイトベック「クェッ!」トラウが頭を蹴りベイトベックが転倒する
少し間を空け離れた所からクエェという鳴き声が響く
コウキ「マジかよん…」五匹のベイトベックがザブザブザフと雪を巻き上げながら走ってくる
トラウ「うおー?!やっぱ上の方はサイコーだな!」気分が高揚するトラウ、ベイトベックの怒涛の攻撃と気温が下がった事により動きが固くなり苦戦しつつも五匹のベイトベックを倒し、拠点へ持ち帰り食事にして、魔力鍛錬をし早めに休む
十九日目
天幕から出てくる二人
トラウ「うーん…さみー!」
コウキ「あ…おい、これ渡しとく」厚手の上着を一枚渡す
トラウ「おお!さっすが!」
トラウ「…」上着を見つめるトラウ
トラウ「…なんで昨日じゃねーんだ?」
コウキ「忘れてたんだよ」
トラウ「おじいちゃんかよ」
コウキ「うるせえ!」拠点から少し歩く二人
トラウ「おい、おじいちゃんあそこ光ってんだけど、あれなんだ?」
コウキ「お前覚えてろよ…」トラウを睨むコウキ
コウキ「あれはヤギだな…」
ホヅノヤギ…強位12全長一m薄緑に光る大きな角を持つヤギ、群れで生活するがお互いの間隔を空けて群れる、光る角で互いに合図を送り連携を取り、群れが外敵に襲われた際は合図を送り群れで逃げるが逃げられなさそうな場合は年長者や既に子孫を残した者が囮になり群れを逃がす。肉は旨味があるが若干臭みが有り筋があるので食用としては好みが分かれる
トラウ「マジか!捕まえようぜ!」
コウキ「食料あるから捕まえねえよ」
トラウ「あの光る角だけほしい!かっちょいい!」
コウキ「要らねーよ、何すんだよ」
トラウ「頭に付けんだろ」
コウキ「マジでやめてくれ」やりとりをしていると、突如二人方へホヅノヤギの群れが地面を揺らし二人へ向かって走って来る
コウキ「な、なんだ?!」
トラウ「うおー!光ってるー!」その群れの後ろを大きな雪の塊の様な物が走って来る
トラウ「でけー犬だな」
コウキ「…オオカミか!トラウ気をつけろ!」
ハクギンオオカミ…強位43全長六m 細かい霜が着いた毛を震わせ冷気を発し、霧を発生させ獲物を翻弄し、刃物様な鋭い切れ味の歯で獲物を狩る真っ白い狼の魔物。肉は柔らかく非常に旨いが血生臭い為、香草等を使い調理される
オオカミが二人の目の前でホヅノヤギを一匹仕留め、ホヅノヤギが通り過ぎ後ろへ走っていく。二人と目が合ったオオカミが二人を見据えて遠吠えをあげる
オオカミ「アオォォー…!」
コウキ「来るぞ!」
トラウ「ここに来て二日目でこいつかよ!」興奮する
オオカミが体を震わせ周囲に霜を飛ばすと、辺りが少しずつ白いくなってゆく
トラウ「おお!やるじゃねーか!」
コウキ「霧を発生させてんのか…!」
コウキ(しかもこの霧、魔力で作り出してるせいか、こいつの魔力と霧の魔力が被って、こいつの感知が上手く出来ねえ…)気難しい顔のコウキ
コウキ「おい!トラウ俺は上手く感知出来ない上に見えねえから、お前の手助け程度しか動けねえ!」
トラウ「任せろ!」
コウキ(トラウの耳と鼻が頼りだな…)
コウキ「うおっ?!!」オオカミが霧の中から牙を剥き出しにし、噛み付いて来るが間一髪避ける
トラウ「おら捕まえた!イデェ!逃さねえ…!おい、いいぞコウキ!ぶった斬れ!」
コウキ「?」
トラウ「は、早く!」
コウキ「何してんだオメェ!」霧で見えない中コウキが、トラウに近づくとオオカミに噛まれたまま抑えている
コウキ「クッソ!馬鹿やろう!」オオカミの首を落とす、鮮血が雪に飛び散る
トラウ「一件落着!」
コウキ「馬鹿やろぉ!」コウキがチョップする
トラウ「イデッ!なんだよ〜…」
コウキ「そういう事をするんじゃない!」傷を指差して怒るコウキ
トラウ「じいちゃんみたいな事言うなよー」
コウキ「言うわ!戻って消毒だ消毒!」怒りながら亜空間にオオカミを入れ込むコウキ
トラウ「まだ昼だぞ?!もっと色々見ようぜー!」
コウキ「早く来い!」ズカズカとした足取りで拠点へ戻るコウキと渋々ついて行くトラウ
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