日本語教室

弱腰ペンギン

日本語教室

「ソレデハ、キョウモ、ニホンゴヲ、ハナシマショウ」

 俺は今、ニホンゴ教室に来ている。えぇ、しゃべれるんですけどね。ほら、外国に来ると入れられるやつです。

 まぁぶっちゃけハーフなだけですけどね。日本人顔してないですからね。そう思われても仕方がナッシン。

「コチラノ、パンハ、タベホウダイデスカ」

「「コチラノ、パンハ、タベホウダイデスカ」」

 どこで使うんだその日本語。

 食べ放題に来てるんだったらパンも食べ放題だろ。あれか。サラダバーって書いてあるのにサラダは一皿しか取れませんとかそういうのか。

 それは食べ放題とは言わない!

「スミマセン。ノモノ、フォークヲクダサイ」

「「スミマセン。ノモノ、フォークヲクダサイ」」

 フォーク違いなんだよ。野茂って。野球なんだわ。確かに日本の有名な人とか名前だと野茂かもしれないけど。古いんだわ。

「チガイマス。ワタシハ、シリマセン」

「「チガイマス。ワタシハ、シリマセン」」

 おい、何かやらかしてるな。

「コレハ、トモダチニ、ハコベト、イワレマシタ」

「「コレハ、トモダチニ、ハコベト、イワレマシタ」」

 何を運ばされたんだ。絶対やばい奴じゃねえか。日本そういうの厳しいんだぞ。賄賂とか効かねえからな。

「コレハ、コムギコデス」

「「コレハ、コムギコデス」」

 やばい奴じゃねえか! ここ日本語教室だよね!?

 あ、ニホンゴ教室だった。って、関係あるか!

「イーストキンヲイレテ、パンニシマス」

「「イーストキンヲイレテ、パンニシマス」」

 ……え?

「ヨクコネテ、ネカセテ、ヤキマス」

「「ホカホカノオイシイパンデス」」

 おい、繰り返して言う奴じゃねえのかよ。

「コチラノ、パンハ、タベホウダイデス」

「「ゴチソウサマデス」」

 つながった!

「OK、アヘェアヘ、ガオ、イイネク、レコメ、ントシロヨ」

「「ハッハッハ!」」

 ……? この国の言葉ですか?

「ネクスト。ガールズ、ドア」

「「ビーユアウィングス」」

「ドリームズ」

「「カムトゥルー」」

「デイアフタートゥモロー」

「「チョクチョクシンサクデル、ハリウッドエイガ」」

「ハッハッハ! セイカイハ、泣ケル歌手」

「「泣ケル歌手」」

 最後だけなんか違くないか。個人的な感想じゃないか?

「ファンハ、イツデモ、カノジョヲオウエンシマス」

 涙ぐんでんじゃねえよ。

「ネクスト」

「「ガールズトア」」

「ノノノ。ニコラスケイジ」

「「アー!」」

 やべぇ、本格的についていけねぇ。いや、だいぶ前から置いてきぼりだったけど。

「ツギハ、ジャパンノ、アイサツデス」

「「イエー!」」

 今のどこにテンション上げるポイントがあった。

「2ジカンコースデ、オネガイシマス」

「「オプションハイリマセン」」

 挨拶じゃねえだろ。なんのオプションだよ。

「ネバダカラキマシタ」

「「サムライヲミニキマシタ」」

 ガッツリ嘘じゃねえか。侍はいねぇよ。

「オハヨウ、オハイオシュウ」

「「ハッハッハ!」」

「コンバンワ、カワバンガ!」

「「オー、タートルズ!」」

 く、くだらねぇ。

「コチラノ、トランクニ、ツメテクダサーイ。ノー。ダイジョーブ。バレナケレバ、ハンザイジャナーイ」

 おい。

「コレハ、コムギコデス」

「「オイシイ、パンニナリマス」」

 話が戻ってるんよ。最初に戻ってるんよ。挨拶じゃないんよ。

「ヒトクチタベレバ、ゴートゥヘブン」

「「フタクチタベレバ、ゴートゥーヘル」」

「「「ハッハッハ!」」」

 楽しくねえよ。もういいや、帰ろう。母さんにはやばいところだから行かないって言おう。

「ストップ!」

 ん? 俺か?

「マッテクダサーイ。ワリカンデース」

 何のことだ?

「イチジカン、イチマンエン、ポッキリデース」

 なんだ、会費か?

 今回は体験入学みたいな話だったはずだけど。

「イチマンエン、ポッキリデース」

「いや、高いわ」

 ニホンゴは要らんのですよ。

 ……ん。なんだ、周りのやつらの目が。

「「「ニホンジン、ツカマエロ!」」」

 こうして俺は奴らにつかまった。そして。


「はい、それでは今日も楽しい日本語を始めていきます」

 塾長にさせられた。

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日本語教室 弱腰ペンギン @kuwentorow

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