第4話 バレンタイン企画
「ばかたれかー!」
耳がキーンと痛い。
何だよ、夏目。
巨人、駄目じゃん。
あゆたんを見ると、完全に頭にきているのか頬が蒸気している。
(可愛い)
多分、俺は病気なんだと思う。
完全に怒られているのに、愛おしさが止まらない。
「和樹、あんたはこの後に及んで、バレンタイデーをしたいんか!そんなに余裕があったとは知らんじゃった。そんなに、モテたいんか。」
目が据わっている。
確かに、モテたい。
しかし今言うと、怒りがマックスになりそうな気がする。
「違うよ、これは受験前の気晴らしというか、俺だって今は、ピリピリして自分が自分じゃないみたいなんだ。だから、もしそういうイベントがあると、力が抜けていいかなと思って。だいたい、俺がギリなのしってるだろ。俺は、あゆたんと一緒の高校に行きたい。それには、もうひと頑張りの気合いがほしいわけ。でもそれって、俺だけじゃないと思うんだ。他の奴だってそう思ってる人がいると思う。女子だって、最後の思い出に好きな男子にはあげられないかもしれないけど、一致団結するというか、少し緊張が緩むといいますか。」
ぐだぐだになりそうな言いわけも、目の前のあゆたんは、真剣に聞いてくれる。
「そんなお気楽な奴が、本当にいるとは思えん。だいたい、受験前に気持ちが緩んでどうすんじゃ。」
腕組みし、俺に胸を付き出す。
「そりゃ、全員参加してほしいけど、有志だけでもいいんだ。余裕があるとか無いとかじゃないんだよ。何か、燃えたぎるものというか、後一押しというか、最後の発散というか、だいたい、そのゲーム期間に勉強をしないわけじゃないだろ。もしかしたら、もっと団結するかもしれない。そうなったら、全員合格も夢じゃないだろ。」
「言いたい事は分かった。じゃけど、どうやって先生達に承諾を得る。許すわけないじゃろ。」
「それは、取り敢えず策を練ってある。もし、その策が上手くいったら、女子も参加するようあゆたんが言ってくれる?」
「うーん、出来るとは思えんが、和樹がそこまで言うじゃったら、言わない事もない。幼馴染の縁じゃ、今回だけじゃからな。学校内で出来るなら、応援しちゃる。」
ほっと息をつくと、
「ただし、くだらん理由で始めたんやとしたら容赦せん。和樹との縁もこれまでじゃ。それにかこつけて、成績が落ちて受からんかってもそれまでじゃ。よう覚えとけ。」
最後通告のように、言い放たれた言葉は胸に刺さった。
あゆたんと最後など、考えるだけで恐ろしい。
勉強はしゃかりきする。だけど、ゲームも諦められない。
巨人と夏目の口車に乗った俺がアホなのか。取り敢えず、あいつ等の成果を聞かなければ策も何もない。
「あゆたん、期待してて。」
「アホか。」
返ってきた言葉は辛辣だが、口元が少し笑っていた気がした。
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