フローライト(あるいはフォスフォフィライト)のピアス
桐谷はる
フローライト(あるいはフォスフォフィライト)のピアス
淡い浅黄色の石がきらきら揺れる、とびきりきれいなピアスがほしい。
石はフローライトがいいと思う。メロンソーダをうんと薄めたような、少し人工的で透き通った緑色。本当はフォスフォフィライトという石がいい(とある漫画で存在を知った、ごく珍しい石。もろくてアクセサリーにはほぼならないらしい)のだけど、予算の面で現実的ではない。吹けば飛ぶような粒でさえ数十万という値段が付くのだ。その点フローライトなら、宝石よりも天然石という扱いだからずっと手ごろに手に入る。
土台はシルバーがいい。
ゴールドもきれいだろうけど、私がつけると、暑苦しく見える気がする。私は色白で、目は細く、平坦な顔立ちをしている。頬は丸い。我ながらあか抜けない。さんさんと輝くゴールドよりも、控えめに光るシルバーのほうが、雰囲気に合って落ち着いて見えると思う。
華奢な銀の糸がきらきらして、先端にしずくがたれるようにフローライトが光る、そんなようなのがいい。私の丸くて子供っぽい顔も、涼しげなピアスを耳元でゆらせばきっと大人びて見えるだろう。量が多い髪は結ってまとめる。普段はせっせとコテでまいて、周囲の女の子と同じようにふんわりさせていた髪にうもれて気付かなかったけど、私の首筋は白くてきれいだ。細くて、すんなりと伸びていて、しみひとつない。
とびきりきれいなピアスをつけて、私は同窓会へ行く。何をどのように身に着けていようが、私は決して美人ではない。ただ妥協せず選び抜いたお気に入りの装身具がずっと寄り添っていてくれれば、堂々とふるまえるんじゃないかと思う。堂々とふるまいたい、と思う。
「あれがほしい、とても」
私は、知っている中でいちばんすてきなアクセサリーショップに向かった。
フローライト(あるいはフォスフォフィライト)のピアス 桐谷はる @kiriyaharu
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