それは

 黒田三郎さんの詩をご紹介します。



***



それは


 それは

 信仰深いあなたのお父様を

 絶望の谷につき落とした

 それは

 あなたを自慢の種にしていた友達を

 滑稽こっけいな怒りの虫にしてしまった


 それは

 あなたの隣人達の退屈なおしゃべりに

 新しいわらいの渦をまきおこした

 それは善行と無智をつんだひとびとに

 しかめっ面の競演をさせた


 何というざわめきが

 あなたをつつんでしまったろう

 とある夕

 木立をぬける風のように

 何があなたを

 僕の腕のなかにつれてきたのか



***



 男性は、自分に自信がない。彼女を連れだす勇気がない。

 彼女のほうが、勇気も決断力もある。


 家から出て自分の元にやってきた彼女を、男性は腕の中に感じ、抱きしめた。

 きっとここで、男性は彼女と生きていく決意をしたのではないかと推測します。


 言葉を尽くさないからこそ、想像の世界が広がり、物語が生まれる。

 何を書いて、何を書かないかの勉強になりますね。


 黒田三郎さんの詩のご紹介は今回で終わります。

 お読みいただき、ありがとうございました。




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