戦えない私の前向きレシピの頃「見えた」もの
戦えない私の前向きレシピ
https://kakuyomu.jp/works/16816700426113190048
第四回こむら川小説大賞 大賞はラーさんの『赤眼のセンリ 零』に決定|こむらさき
https://note.com/violetsnake206_/n/n54c31725fef5
大賞候補に名前が上がっていてうおおおおとなったりしました。ポジティブなので銅賞と同格ぐらいに考えてます。やったー
振り返りというか、変遷というかのメモを。
<お題の調理>
お題は異能。……バトルしようとするとなんか直近のファントム・ルージュがよぎるので、とにかく「異能バトル」から避けようという方向性になった。なので、「バトルができなさそうな異能」を考えるところから始まった。
何作か書いて言われることに蒼天は「ビジュアルが強い」があげられる。想像すると強い絵面となると、「耳が見えるよ」とか「偏愛メズマライズ」とか。「証明の匙」も6本脚に9本指がポロリと出ているのでそうか。あえて最初から絵面が強そうなものをモチーフにするのもいいかもな、というお題そのものではなく自分の引き出しをもろに使う方向性になった。
で、ビジュアルなので絵で想像したときに、そういえばらしいものが一つあったな、と思い出す。
よくツイッターで流れてくる絵に、「存在しない綺麗な料理」ってあるじゃないですか。星を閉じ込めたドリンク、月を映した湖の氷を削ったかき氷、深海を切り取ったアイスキャンディー……架空の料理の中でも絵としても美しいタイプの奴。
あれ、絵としてのネタの消化なので、作り方とかの想像とか少ない事が多い。まあ綺麗だから描きたくなるもんな。気持ちはとてもよくわかる。見る限り「そんな材料がありふれた世界=特に苦労しなくても手に入れられる」事が前提になっている事が多いなあと。
つまり、「そんな材料がない世界だが自分だけは材料を取ってこられる」のは特殊能力として成立する。材料を取ってくるだけの能力なので、そこから調理は必要になるが。絵のネタなので味の言及も同様にないが、物体そのものではなく、何を感じるかが増幅された「謎の物体」……それで作られた料理は、取り出し元が何かを「感じる」事が出来る料理と独自性を持たせることにした。
料理がそのままポンと出ないのも合わさってなかなか無害そうな能力になった。いい感じなので、これを基軸に置く。「そう」と付くのは後述。
<話を「見よう」とする>
例のごとく、
・舞台
・人物
・人物の行動
・雰囲気
を広げた情報を眺めて、見えるまで待つ。なにぶん能力自体が平和なので、「事件」というのが起こしにくい。もしくは起きたところで主人公にどうこうできない可能性が高い。料理だし。
日常に近づけるか、主人公が何とかできる規模の、本人たちにとっては重要な何かに落とし込むか。
・もともとの話の構成
能力としてわかりづらいので最初の方で出していいのでは?という指摘を講評で貰っているのだが、多分原因というか、最初に説明をした方がいいようになっているのは当初考えた話の構成も影響している。
最初、この話は1つのエピソードではなく、いろいろな人にそれぞれに合った料理を出すオムニバス形式のようなプロットだった。最初は血縁はなくて単にチャラいお兄さんがやってきて、その後構成やり直したタイミングでいなくなったクールなスーツお姉さん、謎の怪獣(に変身してしまっている少女)で悩みの規模が変わっていくイメージだった。その合間にシーンをいろいろ挟んだりはするけれど、基本は料理をその人のために出し、イメージカクテルの如く出した理由や材料の由来を語るのがよさそうだと。
ただ、おそらくこの構成で書いたら20000字近くになってしまい、かつ削ってどうこうできなさそうな気配がしていた。なので何とか1本の話にまとめる話に書き直した経緯がある。その過程で説明が伏せられたチャラいお兄さんもとい兄、主人公とも対応する悩みを持つ少女だけが残る形に。実際、完成した話で12500字弱あるのでこの勘は大体当たっていたらしい。
その結果、作るシーンがあるので最初の方で説明できていた能力の話が後半までなくなるあたり、講評の説明タイミングに関する件は確かにと思ったのだった。
・完璧ではないが能力を能力たらしめる主人公
主人公の動き方を決めるにあたり、「じゃあこの能力は凄いものなのか」がかなり効いてくるだろうなとは思っていた。例えば能力者というものはそもそもこの世に一人しかいない、まごうことなきオンリーワンならとにかく強い。同じ能力者が複数いたら?と思うとそもそも料理なので個人スキルで案外差別化が図れる。中華とフレンチと和食でも行けてしまう。
比較として強い能力を考えた時に一つ、「能力自体は非常にわかりやすい」のは強いだろうなと考えた。レーダー能力、ステルス能力、変身能力……大体の人が同じようなものを想像するタイプは、伝えやすいため規模や先鋭化している所に目を向けやすいものと考えている。
一方件の能力だが、まあ分かりづらい。文章で能力そのものを説明しようとすると手品のようなことになり、メインはどちらかというと「その後=調理光景」になってしまう。ぶっちゃけ作者視点で真面目に説明しようとするとそれだけで1000文字ぐらい書くタイプの能力な気がする。取り出すものにも名称がないのでどうしたものかという感じだった。
そうなると、いろいろな能力を持つ能力者の中に放り込んだ時、確実に主人公の能力強度というのは下から数えた方が早くなる。そしてその事実にかなりダメージを受けてコンプレックスに思うようなキャラクターなら何か起こるのではないかという想定をした。
考えた要素は、
・「自分の能力は弱い」と言われたことをすごく気にする
・他の人の能力は「弱い」と断定されたりしないからうらやましがる
・だけど自分の能力は嫌いじゃないので向上心はある
ここまで書いて、オムニバスの「悩みを聞いてあげ、誰に対してもしっかり向き合うメンタル的には非常に成熟した人間」から「愚痴も言うしうらやましがるしその感想が真っ先に来るタイプでカウンセラーとしてはだいぶ駄目だが、向上心はあるしへこたれないので個人としてのメンタル強度が強い」性格になった。うかつなのは本篇の3話目失言の通り。その性格ならと、本人の悩みとその対処法がだいぶ簡潔に。
……ここ書いてて思ったが、メンタル強いキャラの方が描きやすい傾向にある。へこたれないというか、塞いで弱る方向に行かないというか。偏愛メズマライズですらああなっても主人公開き直ったもんな。これが手癖か。
・一人(称)視点
ところで、オムニバスでもその書き直しでも、1人称視点というのは能力から決めていた。この能力、主人公が取り出すものを決めているので「ここにはこういうものがあるに違いない」と主人公がわかっていないものは取り出せない。何故なら五「感」なので、感じないものは取り出せない。つまり主人公、最低でも「綺麗と感じることができる」感性を持っているから取り出せる。
この影響で、どちらかというと4章に向けた助走の意味が強かったが、3章の冒頭の天気の表現がやたら丁寧だったりする。章タイトルも「この話の時の天気を主人公が料理にしたら」がテーマなので、外が土砂降りでも窓にあたる音を拾ってアラザンと表現できていた。何をどう感じているかが重要になるので、本人に語ってもらうのが自然との判断だった。
感想でもちらりともらったので、少し前の「無害そうな能力」という話について。結論から言うと、「主人公が使う分にはおそらく無害である」という言い方になる。
例えばもしもの話として他の能力者の能力をコピーできる「悪意を持った」能力者がいたとする。主人公の能力をコピーしたとしたら、相手を傷つけようとするのだから感性も残虐であったり刺激的であったりするはずだ。なので相手が取り込むと傷つくもの……罵倒やグロテスク、陰湿さなどを取り出して何かしらの方法(薬品化とか武器に仕込むとか)するとあっという間に攻撃性の高い能力に早変わりする可能性がある。これは能力との性質としての話。
実際の所この主人公、よっぽどでかい闇堕ちでもして今の感性がぶち壊されでもしない限り攻撃性のある物にはそこまで感性が働かない。そしてぶち壊すにしたって本人がメンタル強者なので「壊すため」の話を考えでもしないとだいぶ厳しい。よってそもそも物が取り出せないのでその方面に限っては何も起きないと思われる。
一方弊害として、主人公は自分以外は関係している「実際の能力者たちに関する騒動」からは蚊帳の外。なので知らないことだらけで説明できず、説明のためだけに他の視点からの章を挟むとただでさえ何が起きているかわかりづらい話になる。作者視点で言えることもしかり。今回は雰囲気重視で空気感を保たないと話ごとぶった切られそうだったので、主人公視点のみとなった。
・少女とタイトル
今回、能力を決めた後にタイトルができている。なので「戦えない私」は最初は主人公の事だった。少女=斎藤詩音が能力を一時的に無くした描写になった時にオーバ-ラップしたのは偶然。流れや趣旨がそもそも変わっているから結果オーライか。……タイトル、あえて言えば「振ってきた」って感じだったな…………
・そういえば
ここまで、一度も明確に「見えた」感覚がなかった気がする。同じように「見えた」という言葉を使わなかったのにファントム・ルージュがあるが、あれは見えるものを自分で描いた。要するに「ネタ元が視覚的な場合は話を考えるのに注力するため、状況の想像をすっ飛ばす」という傾向がどうも自分にはあるらしい。それはそれで不思議な話だが、この辺のコントロールが効けば中編を「見える」ようになるきっかけみたいなものができるんだろうか。
そうでなくても、長くなるからと今回はやめたオムニバス形式、確かに何かネタはたくさん出せそうだな……。書き手の感性磨きにもちょうどいいのかもしれない。
・没ネタ
オムニバス版の最後、エピローグの代わりに少女の能力がコントロール可能なものに戻った後の出撃の様子が入っていた時期があった。その際のメモがやけに残っていたので、最後にそれに言葉を足したものを載せて振り返りを終わりにする。
……ここだけ空気が別なので作品としては切って正解だとは思うが、さてはお前話関係なく書きたかったのか?
・服は変身についてこない
→変身の際は裸になるしかない(初めて変身してしまった時はありとあらゆる服が全部自分の体ではちきれて破いたと思われる)。直前まで毛布をかぶっているが、変身が始まったら多分すぐ落ちる
・邪魔、どんくさい、説明してもうまくできない=話通じないからの「怪獣」という罵倒が姿を形作った原因
→変身する怪獣はずんぐりとしたシルエット。手足が太くて2足歩行の、キャラクターとしての恐竜をリアルにしたようなシンプルな姿。あれだ、一番近いのはレッ〇〇ング……。ギリ人間でも理解できる範囲として4足歩行は体を動かす事ができると考えていた時期もあったが、変身方法の都合上メンタルが大丈夫にならなさそうなので流石にそれはやめた
・少女が「怪獣ってこういうものだろう」と思っている事に基づいた能力
→少女の認識次第なので、炎が口から出たり岩や鉄骨を食べてしまえたりはするが怪獣自体のスペックはふんわりしている。昨今のツのロゴの所の怪獣のような特殊能力とかはなさそう。少女が怪獣マニアとかにならない限り……
・変身した姿は見られないように閉鎖空間
→トラックで移動、中で変身してもらって目的地で降りる。変身しきると恐らく高さが足りないので、相当前屈みになる
・痛みはないが感覚はあるし別人格にもならない
→筋肉が脈打ちながら異常に膨らんでいくのも分かるし、それを正気のまま知覚してしまう。異物だと痛みを引き起こしそうなので、能力由来の骨と肉が自分の素の骨と肉からさらに生えてくるような
・変身の仕方は、シルエットが大体変わってからそれなりの体長(身長)にスケーリング
→細い少女の体からシルエットが変わりきるまでだいぶかかる。シルエットが変わってから表面が固定されるので、質感が最初は人肌。
・変身の様子のメモ(ここに載せるにあたり文章化)(長いよ)
→
一番シルエットが離れている股周りが横と前後に骨盤ごと広がっていき、それに伴って筋肉も膨らんでいく。普通力を込めない場所のため筋肉自体は柔らかく、重力に沿って股関節に重石のようにずっしり溜まっていく。熱を持った肉が広がって開いた股にへばりつくような感覚。股関節の稼働部分は表面が伸びるため脂肪も多い。細いままの足を閉めるのには邪魔になり、膝が外に開かされる格好になり始める。
伝搬して腹部、太もも、膝下も膨らむが、こちらはかなり張りがあり硬い。この間重心が前寄りになるので、立ち気味だったら前屈みに丸まっていくし、座っていたら自分の下半身に押さえつけられて仰向けかもしれない。違和感に耐える為に抑えたくなると思うと頑張って立って前屈みか。腰のくびれが筋肉で埋まってなくなり、歪な円錐のようなシルエットになる。
骨盤ごと大きくなった尾骶骨が伸び、筋肉も一緒に引き連れる。尾骶骨、筋肉で包まれているだけなので、こちらも最初はぼってりとした質感。ブニブニとした肉に引っ張られた間を尻から筋肉が埋めていき、股の広さと同じぐらいの尾に発達していく。
腹部、腰に合わせて胸も膨らむ。頭を支える準備で肋骨も増強され、上半身が全体的に縦に伸びる。この際脂肪が内部で緩やかに引き伸ばされて、乳房がほとんど目立たなくなっている。骨盤ほどではないが肩も外側に引き伸ばされ、腕の肥大も始まる。広がった肩に合わせて、首が顎下を埋めながら筋肉で太くなる。横から見た時も円錐になるように、頭がやや前にひっぱられ、最終的に顎がなくなる形に。
鼻から下が前方向に伸び、歯の根本が太くなり高さが増して唇が閉まらなくなる。眼孔周りが外側を向くように発達し、目が少し外側を向きつつ肥大化。耳は顎の筋肉や首の後ろの筋肉にどんどん埋もれて見えなくなる。髪も発毛部分が肥大した筋肉が頭頂部に巻き込んでいき、頭に謎の線を残して髪が見えなくなる。
口が閉まらなくなったあたりで形を保ったまま全体的に体長が伸び、皮膚細胞が硬質化し黒ずんでいく。手首・足首の境目がわからなくなるほど膨らんでいる先、指がそれぞれ太くなり、常に指先が広がるような骨格になる。爪はつき方は人間と同じだが、幅や厚みが指の太さに合わせて増している。
変身が終われば、尾でバランスを取って直立歩行を行う事が可能。変身者に痛みや性的な快楽はないとの事が、自分の姿が変わっているのを基本的には視認する、皮膚が本来ありえないような接触の仕方をしている等変身が終わるまで刺激が続くため、一種の興奮状態ではあるかもしれない。咆哮しか上げられないため声帯、滑舌に大幅に支障が出ていることは判明しているが、体内器官の変化はまだ詳しくわかっていない。
・以上を一人称でねっとりじっくり、皮膚の下の水っぽさや皮膚のつっぱりを足して質感を読み手が触覚を想像できるぐらいの解像度で書く気でいた
→総評:謎の機械さんの所案件では?
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