人虫境界曼荼羅の頃「見えた」もの
人虫境界曼荼羅
https://kakuyomu.jp/works/16817139556832449131
第五回こむら川朗読小説大賞結果発表 大賞は ぷにばらさんの『BREMEN』に決定 2|こむらさき https://note.com/violetsnake206_/n/nb16239d8284c
直接の関係はないが、期間中別件でボロボロになってたなあ……。それはそれとして真面目に考えていたら、なんかとんでもないものが錬成されたので自分でびっくりしている。
<お題の調理>
今回のお題は「男性の一人称小説」。小説としてはレギュレーションハックめちゃくちゃしやすそうだが、読みやすさと天秤にかける要素なので難しい。まあ「朗読」小説大賞なので、内容と方向性勝負になりやすい。ので真面目に考えることにする。
・「一人称」である事を考える
見返すと、蒼天は一人称小説の方が多い。というかファントム・ルージュ以外全部か。一人称と言われたからには、三人称で置き換えられる書き方はなんか微妙になるのか?と、とりあえず自分の過去作の分析を開始。
・かくしもの……視野が狭い故の思い切りが作中にある
・証明の匙……自分の意識の変質と認識で語られる不可逆を自らに語ってもらう
・耳が見えるよ……手持ちカメラ的な視界の切り取り方
・偏愛メズマライズ……薬による狂気と依存、まともなつもりが穴に落ちてしかいない
・戦えない私の前向きレシピ……主人公が感じた事が話とお題回収のキーになる
過去作も、それなりに一人称である理由付けはしていた。まとめると、感じた事の中でも感覚によるものと考えた事が重要になると一人称で描きやすいらしい。言われてみれば確かに三人称でそれらを描くなら目線や仕草に現れないとつつけない。そこを話の中心、基描きたいものに絞るのが良さそうだ。
・レギュレーションの都合で落ちたボツネタ
朗読なので、最初地の文だけで全て進行するタイプの話の方がいいと考えていた。ノリとしては証明の匙のような自分の意識と向き合う話になる。ただし、証明の匙ですら会話文があったので、会話文がない理由がしっかりしていないと「これって何言われたんだ?」「どこで何を喋ったんだ?」になりそうな気がした。
そこで、狂った力技を思いついてしまった。主人公が喋れなければその悩みは解消される、と。
喋るタイプの生命体から外すと「男性の」一人称小説から外れていくので、そこはかとなく思考は人間ベースからは変えないとする。変化を与えるなら後天的だ。喋れないとなると耳が聞こえないか喉に支障がある場合になる。地獄度合いを考えると多分自分だけが喋れないと知覚出来る後者の方がキツい。
……そうだ。声帯だけピンポイントで壊れるのもなんだから、手は形状を変えて力の加減が全く効かなくして手話と筆談を封じ、表情も皮膚の硬化で潰せば、自分からは出せない一方的なコミュニケーションになる。主人公は物を考えることでしか自我を保てない状態に追い込めば、地の文=考え事が長くなる理由になるのでは??
そんな経緯で一つめを書き始める。設定条件が最悪だよ!!多分こちらの方が圧倒的に手癖だったんだろうなあ。
だが、速攻白紙に戻しているためほとんど文を書いていない。この話、ざっとシーンを考えた時に6000字の壁がどうにもならなかった。
ファントム・ルージュでなんとなくわかったこととして、蒼天は1つのまとまった出来事(シーン)を大体1500字前後で書く。起承転結で4シーン、何も考えないとここだけで6000文字想定。そこで収まるか?とシーン数を指定して考えた結果、この力技を成立させるコンボを入れ込むにはあまりに無理があると判断。
さっきからなんとなく話の中身がないのは、ちょっと書くかとやる気になっているからです。セリフなし一人称独白、鉄は熱いうちに…………
・突然の事故
先のネタが考えることに焦点を当てた物なので、感覚を元にするとどうなるかを考える。そして真っ先に偏愛メズマライズの禁断症状パートが過ぎる。いや流石にもうちょっとマイルドなお題で……。
考えるにあたり、どこに労力を割くかで悩む。起承転結、全部の粒を揃えると短いので平坦になる偏見があったのだ(なお短めの他作品でこの後無事ぶん殴られました)。なので一つのイベントでぶっちぎるような、そこを焦点にしてそこで感覚描写に極振りするような物を考えた。
時間限定で自分の視点でしか分からないもの、で夢が1番共有されそうとして。それで事件って?となると大体悪い方向に転がるのがスピードが出る。救いだと回数を重ねるイメージがあって、毎日見る夢で物語が展開する夢占い的なものになるがジワジワは変われどパンチが出るかは難しいだろうなあと。そんな理由で悪夢になった。
この頃に朗読を担当する鹿さんの動画拝見、参考動画のノリもあって朗読なら定番は怪談か?となり珍しくホラーの方向に舵を切ることを考え始めた。男性視点だから、男性が気分悪くなるような内容……うーん…………
ここでいきなりだが、小説とは全然関係ないダイマをする。cockroachというバンドがある。訳さない。虫じゃない。バンドの方です。
GW頃ライブあったよなーあれからなんかあるかなーとか思っていたら、見逃していたのかPVがフル公開されていた曲があった。その名も新進化論エレクトロニカルパレーダー。
https://youtube.com/watch?v=cKOlWLswxuM&feature=share
twitter でもつぶやいているが、見ていただけるとわかる通り曲もそうだがPVもぶっ飛んでいる。一回見たら離れないんだこいつら……
その中でも、0:45近くのアレを見てcyriakだーと思ってそちらもなんか見直していた。こちらは虫じゃなくて哺乳類とか人間のパーツとかさらにどストレートにドカドカコラージュしていてサイケデリック。蒼天のサイケデリックは主にこの辺でできています。
さて、悪夢にしたいと思うと虫がぐるぐる回っているのは中々嫌な感じにできるのではないか。あと案外不快感、パーツが人でも虫でもヤバいのは変わらないな。つまり人から虫になっても同じなのでは?それを押し付けて相手が「そうかも?」って思えばそれは怪異になるのではないか?
回転……転生……そういや曼荼羅ってあるな。回るし上位感が出て一方的な被害者になれるのでは?幽霊とか霊障とかではないが、これはホラー名乗って良さそうな?人……人虫……人虫境界曼荼羅、これだ!!
かくして、真面目に言ったら関係者に怒られるような単語が爆誕し、それがそのままタイトルとしてしっくりきてしまったのでそれで話を固めたのだった……。なんか必殺技っぽいよね、じんちゅうきょうかいまんだら。長ったらしい呪文唱えた後に大声で宣言したい。蟲使いが相手を強制的に自分の支配下に置くための奥の手(代償あり)だろこれ。
<話を「見よう」とする>
・舞台
・人物
・人物の行動
・雰囲気
これらが固まると映像が見えるので「見える」と呼んでいるのだが、まあ何度も書いていてもわからんものはわからなかったりする。あとまだホラーの作法がふんわりしている。
話の規模的に、まず被害者しか出せなさそうだ。そう思うと、怪異を解説してくれる人はいないので投げっぱなしの方向になる。耳が見えるよも語り部がそう思っているだけで実際どうしてこんなことが起こったのかは不明にしている。解決編、どちらかというと異能バトルとか別のエンタメになるよね。多分その辺が好みの話になるんだろう。
でも悪夢を見ました、だけだと物語が進行しないので、単なる夢ではなく怪異に触れた事を予期するようなきっかけがほしい。
そこから何やら怪しい事を言う謎の人物が生えた。曼荼羅、宗教用語であるのでタイトルの補強のためにお坊さんに。ここで出てくるのが真っ当な僧侶だと色々問題が生じそうなので、本当に僧侶なのか、僧侶に見えた何かを疑う余地を残したい。なので側から見て「いやこれから酷い目に遭うわこいつ」とわかる要素で周りを固めるために、虫塚、そして蚊が出てくる事に。
・種明かしのタイミング
種明かしに関係する要素は以下の2種類。
・なんでこんな目に遭う事になったのか
・あの夢はなんだったのか
で、結局酷い目に遭う事になる以上、主人公は前者は脅威と思っていない方が望ましい。「そういえばそんな事したわ」ぐらいの。その辺で主人公はそこそこクズだと確定。
前者は、推定やけに力を持っていると思われる虫塚の前で虫を殺したで確定でいいと思っているが、ここで最初からフラグを書くべきかふと思い出した程度にするかで悩む事に。1番近いイメージは映像作品だと急にグレースケールになって以前どんな事をしたか挟まるアレのイメージ……なのだが、場面切り替えともちょっと違うので表現に悩んだ。
結局、少し前の話に出てこなかった要素(不法侵入)を割り込ませて、ここで空気が変わるタイミングという事で点を打つ。ここは表現の正解がわからなかったし今も怪しい。審査員の反応も人それぞれだったので、書き方もそうだが相性もありそうな……
後者は夢に力を入れるとして、最終的にどんな夢を見ているかをある程度理解して初めて怖いと思うのではないかと思い至る。なかったら目が覚めた瞬間吐いていたかもしれない。この頃まだ「……まれるなあ」が無かった。
一人称という事で、ひたすら説明せずに体感した物を書いていく。主人公にわからなかったら見えないし、主人公が理解できないものはわからない。偏愛メズマライズは病的執着の原因が主人公にはわからずヒロインの渇望にすり替わったが、今回はどうか。自分がだんだん虫になっていく際に、頭が無事な保証はあるか?そこからひらがな連打が来ている。
その為あえて発声するなら、「そういう口の形をしているから音は文字通りになるが、単語としての意味にはなっていない喉が鳴っているだけの音」とかそんなイメージだった。単語がないんだから相当読みづらいという視覚的な意味も兼ねたが、まあ見事に文としては読みづらいと自分でも思う。虫になんかするから……。あっなんか「そこまで決まってるなら言い出しっぺが」的な視線が
そんなところまで落ちた状態でリアルタイムでわかるはずもないと、想定より朝のターンが長くなった。
で、あの夢は何か。想定していたのは乱交パーティーと蚊柱……性交を接点とする似た集まりのオーバーラップだった。主人公が一回でも男なのか女なのか、オスだったのかメスだったのか、そもそも人だったのか蚊だったのかはっきり答えられない=境界に線が引けないと自覚してようやく恐怖が発動する。性に開放的でどんちゃん騒ぎしてる人間と、確率を上げる為に集まってメスを呼ぶオスの集まり。どちらもダメな人はダメなので忌まれるが、子孫には直結するよねというそこはかとなく否定もしづらい嫌な話題。この辺から「忌まれるなあ、産まれるなあ」がなんとなく意味ありげに書かれることになった。
極度の脱水状態からくる幻覚で思いすぎなだけかもしれないし、そうでないかもしれない。あの僧侶はただの蜃気楼かもしれないし、実際にそこにいたかもしれない。既に顔も語り部のそれだったかもしれない。だが主人公は知る術がないので、真相はあの日の夢の闇の中……。
だいぶ癖はありますが、まあ夏っぽい怪異と思っていただければ幸い。
余談ですが、汗で顔に張り付いた結果、狙ってはいなかったものの髪がそこそこの長さ以上が確定に。大体こんな奴がこんな目にあいました。
https://twitter.com/S_Slfgvm/status/1564655873619664896?s=20&t=kwtvl2rgB6zZSbOjUugXTg
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