トゥルーエンディング

崎本奏

トゥルーエンディング


トゥルーエンディング


フレイムアイスシリーズ第1作目


あらすじ

この作品は『もしもの世界』にやってきた主人公とその世界に住む8人の仲間がそれそれ待ち受けている試練を乗り越え成長し友情を築きあげていく物語である。


登場人物

泉蓮 

この作品の主人公。クールで真面目だが無欲な性格。イメージカラーは黄緑。人間関係では何も求めない青年だったが天使に与えられた高校生活の中で8人の仲間と出会い成長していく。天才的な心を読み取る能力を持っている。

純崎剛

明るくて優しい好青年。イメージカラーは白。無邪気で人懐っこい性格だがその性格は時に人に影響を与えたりもする。蓮が最初に出会う青年で蓮を成長させるきっかけでもある。

海野奈美

この作品のヒロイン。暗く常に上目遣いのロングヘアの少女。イメージカラーは赤。強力な美貌の持ち主で男を虜にする力を持っている。蓮と剛と出会い彼女もまだ変わっていく。

谷月千

クールだが仲間思いの青年。イメージカラーは青。外部情報に優れていて様々な人の情報を持っている。その反面、人を信じやすい性格でそれが後にある問題を引き起こす。

川上美羽

リーダー的存在のショートヘアの少女。イメージカラーはピンク。明るくて気が強いが仲間思いの性格である。美意識が高く、下品な言葉使いや手を叩いて笑うなどをしないよう気を付けているため奈美とは違う美しさを持つ。

霧島修

威圧的な性格で問題の多い青年。イメージカラーは緑。人を挑発し敵を作るなど問題行動が多いがしかしある事がきっかけで彼は変わっていく。

雪中月美

美人だが暗くて男嫌いなポニーテールの少女。イメージカラーは黄色。頭の回転が速く疑問を持ちやすい性格。彼女は高校生活を通してあるトラウマを乗り越えていく

湖田鎧

無邪気な性格の青年。イメージカラーは紫。自分を強く見せようとする性格で臆病だが親しみやすい青年でもある。


氷崎大我

………


プロローグ

「今から10年前、当時、25歳の男性会社員が行方不明となる事件が起こりました。警察の懸命な捜査も虚しく、今も行方不明のままとなっています。男性の周りでは特に金銭などのトラブルはなく同じ会社で働く従業員の話でも男性は真面目な性格だったと話しています。しかし気になる点がありそれは何故か男性の戸籍情報などが存在せず、残された情報も今から6年前の情報しか残されていませんでした。この奇妙な事件。当時のニュース映像でその男性の知り合いである女の子のインタビューが残っていました」

「お兄さんは私の目の前で光の砂になって消えました」少女は暗い表情で答えた。

そのドキュメンタリー番組を奈美は家で見ていた。

「不思議なこともあるものね」

母の言葉に奈美は「そうだね」と返すだけだった。

奈美は不安だった、高校生活は楽しいものになるかどうかが。

番組はスタジオの映像に戻っていた。

「この事件どのように考えていますか?」アナウンサーがゲストの刑事に聞く。

「不思議ですね。今のこのご時世に25歳の男性の個人情報が6年分しか残っていないなんで考えられないはずですが…女の子もショックのあまり幻覚症状が出てしまい非常に犯人に憤りを感じます」


『冒険の始まり』

桜が舞う季節、ある会社で1人の青年に喜びの話が飛び込んだ。

「泉君、君の出世が決まったよ」

「ありがとうございます」

部長の報告に蓮は喜んだ。

「泉くんお祝いに今日の夜飲みに行かない?」

「もちろんです」蓮は快く行くことにした。

喜びながら蓮は廊下に出た。

「泉、おめでとう」振り返ると同僚や先輩達がいて蓮を褒めた。

蓮は中学を卒業後、就職をして素質やずば抜けた相手の心を読み取る能力もあったため蓮が取引すると高い確率で契約が取れるなど仕事上ではとても優秀で中卒にも関わらず異例の早さでの出世となった。

「恋人はいないのか」

「友達はいないのか」

同僚や先輩達は聞いた。

「いないですし別に必要ないと思いますよ」

「いないのか、残念だな。恋人や友達がいれば祝ってもらえるのに」

褒めてもらえるというのは人間にとってうれしい事だが蓮はそれが分からなかった。

夜、蓮は部長と飲む。

「そういえば泉君は彼女いないのか?」

それはさっきも同僚に聞かれた事であった。

「彼女はいません」

昼間と同じように返答するとやはり部長は勿体ないなという顔をした。

しかし蓮は思っていた。

なぜ友達や恋人がいたほうが良いのか。

友達や恋人がいる人は本当にそれで満足しているのか。

むしろ周りに合わせているのではないのだろうか。

蓮は聞かれるたびにそう思っていた。

そう、蓮の人生は空き部屋のように空っぽな人生だった。

そしてその空き部屋には鍵がかかっていて誰も入る事が出来ない部屋だった。

周りはそんな蓮を社会人としては尊敬していたが人間としてはつまらない人と否定していた。

蓮は、なぜそう思われているのか理解できなかったがしかし別にどう思われようが気にしていなかった。

「そういえば昔、私の同僚にとても暗くて友達も恋人もいない人がいたんだよ。それで私も友達の1人ぐらい作れよと話したんだがその人は無駄な付き合いはしたくないものでと言われたんだ。でもな、気味悪い事にある日、会社に行ったら突然、その同僚は人が変わったようになっていたんだ。驚いたよ。つい昨日まであんなに暗かったのに」

「それって小説で読んだことがあります、大ベストセラーですよね? 確か内容はある日1人の青年のところに天使がやってきてあのときあぁすればよかったという世界に連れて行かれてそこで友情や愛を知るという話ですよね?」

「実はその作者、私の知り合いだ」

「そうですか。すごいですね」蓮は驚いた。

「でもその人が言うにはこれは実話だと言うだよね」

「知っています。それで世間では不思議ちゃんに見られているそうですね」

「でもその人は本当の話だと言うだよ。面白いよな。そんな空想言う人。でもな、よく性格悪かった人が突然、人が変わったように優しくなるとかそういうほんとがどうか分からない話あるよな」

「偶然ですよ」

「後、その人天使とも会ったことがあるらしい」

「天使なんていませんよ、いたら会ってみたいです」

2人はその話で盛り上がる。

しかし蓮は知らなかった。

まさかこの後、それが現実になるとは。

部長と別れ蓮はマンションに帰っていたときだった。

「お仕事、お疲れ様です」振り返るとそこには紳士的な男がいた。

「あのう、どちら様ですか?」

すると男は話した。

「あなたはなぜそんな人生を送っているのですか。私には理解できないし、ある意味こんな人生で満足していて羨ましい」

何を言いたいが分からないが馬鹿にされているのは確かであると蓮は腹が立った。

「一体何なんですか?」

「私は天使です。でも魔法使いのような存在でもあります。人の人生には常にいくつもの道が立ち塞がります。その道は選んだものによって幸福もあれば不幸もあります。人間はそれを繰り返していき、1つの人生が作られていくのです。しかしその人生の完成と同時に死を迎えます。私は自分が選んだ人間にもう1つの選択の人生を体験させることが出来ます。つまり多世界解釈の世界に連れて行くことが出来ます」

蓮は何を言っているが分からなかった。

夜中の11時なのに男の話は続く。

「あなたは非常につまらない人生を送っている人間だと天使の間では一時期話題になって人気がありました。有名人でした。しかし時間と共に皆、あなたに飽きてしまい今では忘れ去られています。まぁあなた達の世界で言うならあなたは一発屋という所でしょう」

「あんた失礼だな」蓮は思わず怒る。

蓮は非常に腹が立った。

褒められているように感じるが実際は馬鹿にされているのだから。

しかも知らない間に未知の存在の間で有名になって知らない間に一発屋になっているのだから。

「あなたは高校に行きたかったですか?」

蓮は考えた。

正直な所、高校よりも会社に入りたいと思っていたし社会人として良い生活を送れていたから興味もなかった。

「このチャンスを逃したら今後、後悔するかもしれません」

――天使とかって痛いな、いい大人のくせに。

「分かりました。高校に戻りたいです」蓮は適当に返答した。

すると天使は手から七色の光線を放った。

気が付くと天使は消えていた。

「何だったんだ」

蓮は何が起きたが分からなかった。

「まぁいいか」

蓮はそう思いながらマンションに入る。

部屋の前に行き鍵を開けようと鍵を探すがなかった。

「落としたのかな」

鍵がなかったため大家の所に行く。

しかし大家が若く見え蓮は疑問を抱いた。

「俺、随分疲れているようだな」蓮はそう思った。

「その部屋には別の人が住んでいます」大家は答えた。

「そんなはずないですよ。鍵をくださいよ。もう眠いし早く」

大家は怪しげな目で睨み付ける。

「どちら様が知りませんがその部屋の人は独身ですよ。もしこれ以上言うなら警察呼びますよ」

――この人なら本当に呼びかねない。

蓮はそう思い引き下がった。

どういうことだと考えながらマンションを出ようとした時、鏡を見たらそこには若返った自分の姿があった。

蓮は戦慄した。

「これは夢なのか?」

そこに光のドアから再び天使がやってきた。

蓮は目を疑った。

「あんたの話本当だったのか?」

「そうです。あなたが望んだことではないじゃないですか」

「天使ってほんとにいたんだな」

蓮はさっきの会話もあり部長にも見せたくなった。

そんな蓮をよそに天使は話を始めた。

「この世界は延長世界です」

延長世界とは、選択されずに機能を停止した世界の事を天使の間では、延長世界と呼んでいる。その由来は、選択されなかったため死んだような世界、つまりまるで幽霊みたいになった=透明みたいだから透明世界と呼んでいる。その透明世界は機能を停止しているがそこにパラレルトラベラーがやってくるとその世界は再び機能する。それを延長世界という。1つの延長世界に入れるのは1人だけであり、それ以上、入ることは出来ない。ただし、ただし元々、延長世界に存在していない人間なら先にパラレルトラベラーが来ていても入ることができる。

日付を調べると8年前に戻っていた。

なぜこの時間にしたんだと天使に聞こうとしたがもういなかった。

代わりに光の紙が落ちていた。

それは家の地図だった。

地図を見ながら行くとそこには今にも壊れそうなおんぼろのアパートがあった。

「俺、ここに住むのか」

蓮は考えたがもし高校生だったらここに住んでいたと納得した。

とりあえず部屋に入って見回りは明日にするとして蓮は寝ることにした。



翌日、朝、起きて洗面所に行き鏡を見てみるとそこにはやっぱり15歳の時の自分がいて蓮は再び驚いた。

驚く蓮の所に光のドアから天使が現れた。

蓮は昨日の事を思い出して理解した。

「時間が戻ったのではなくここはもう1つの選択の世界です。つまりここはあなたが高校の入学を選択していたらの世界です」

「この世界で手に入れたものは記憶以外持ち込むことは出来ません。つまりどんなに友情を持ったとしても現実世界に帰ればなかったことになります」

「そうなのか……」

その時とてつもない恐ろしい事が頭をよぎった。

もしここがもう1つの世界なら蓮のいた世界には蓮はいない。

つまりその期間、無断欠勤をする事になってしまう。

「天使、すぐに元の世界に返してくれ、出世が決まっているんだ。早く帰って会社に行かないと」蓮はすぐに帰りたいと頼む。

「ここは私と出会ってから次の日の朝の時間の間となっています。つまりあなたのいた世界の時はあなたが帰ってくるまで止まっています」

「そうか」蓮は安心する。

「でも出世は頑張ればこれから先もチャンスはありますが、過去の世界に戻るなんてお金がいくらあってもできませんよ。それに過去をやり直したいと思う人もたくさんいると考えればそんな貴重な体験ができるあなたは幸運ですよ。出世や会社の事は忘れて思いっきり遊ぶなり勉強するなり自由に過ごすといいですよ」

「まぁそうだな。3年間はゆっくり休めるし。でも家賃とかはどうなる? お金元の世界の銀行にあるけど」

「心配しなくてもいいですよ。私が毎日、ご飯を置いていきますし、家賃もこっちで払います」

「いいじゃないかそれ」蓮は喜ぶ。

天使はさらにこう付け足す。

「今のあなたはパラレルトラベラーという存在ということになります」

すると蓮は思い出したように聞く。

「そういえば俺の世界ではこの体験に似ている事が小説になっているんだが」

「知っています。その人もこの経験を得た1人ですから」

蓮は驚いた。あの小説家の言っていた事は本当だったのかと。

「それでは心いくまでお楽しみください」天使は光のドアから帰って行った。

安心した蓮は制服に着替えようとしたとき、それは中学校のものだった。

「どういうことだ」

そう思ってカレンダーを見るとそこには3月15日と書いてあった。

蓮は気付いた。

今日は、中学校の卒業式の日だった

「何でこの日に連れて行った?」蓮は疑問に思うがとりあえず着替えて中学校に行く。

桜が舞うこの季節、そこには懐かしい同級生がたくさんいた。

しかも卒業以来会っていないとはいえ皆、時が止まったように若かった。

まるで同窓会のようだった。

蓮は体育館の中に入る。

するとそこには懐かしの先生がたくさんいた。

しかし先生たちは蓮を見ても何も反応はなかった。

当たり前だ。この世界から見たらそれが普通なのだから。

そして卒業式が始まった。

先生たちの話を聞いて蓮は中学の頃を振り返るが何も思いだせない。

特に友達もいなければこれといった思い出もなかった。

それほど何もなかったのだ。

蓮は悲しくなってきた。

今まで自分は何をしてきたんだと。

そして卒業式が終わりみんな家族や友人と記念写真を撮っていたが蓮は友達もいないし、両親も亡くなっているため誰も写真を撮ってくれないし祝ってもくれない。

蓮は誰とも関わらずすぐに帰っていった。

夜、蓮は、ベッドで横になり中学の事を振り返るがやはり楽しかった思い出は何もなかった。

蓮は考えない事にした。

褒められるうれしさが分からない蓮でもさすがに心が痛んだ。

そして蓮はそのまま眠ってしまう。

翌日、起きると蓮は慌てる。

しかしすぐに会社はない、というより社会人でもないと思い出した。

蓮は感じた。

ほんとだったら会社に行って仕事をしているけれど今は会社もないししかもしばらくは長期休み(春休みのため)ゴロゴロして1人で自由に過ごしても問題ない。

最初は戻る事に対して快く思えなかったがしかし学生に戻れば仕事もしなくてもいいし長期休みが定期的にある。

しかも1人暮らしなのにバイトをしなくても食事も家賃も天使が負担してくれるため蓮にとっては非常に喜ばしかった。

しかし蓮が戻ったのはこのためではない。

あくまでこれは序章でありおまけみたいなものであるため本来の目的はここからである。

しばらくの間、蓮は1人で趣味に没頭したり今はない懐かしの場所に行ったり当時やっていたことをまだやったりするなど充実していた。

もはら本来の目的を忘れていた。

しかしそんな春休みももうすぐ終わろうとしていた。

そして高校の入学式前日。

「いよいよ明日からあなたは高校生ですよ」天使はそう言うが蓮は悲しかった。

せっかくの春休みがもうすぐ終わることに。

「嫌だな。高校、勉強もしなくちゃいけないし、色々面倒だな」

ガッカリする蓮に対し、天使は励ましの言葉を言う。

「確かにあなたは中学校生活、楽しい思い出が1つもなくそのまま中学校を卒業してしまいました。しかしそれなら高校生活を楽しくするために頑張れば良いじゃないですか。それにあなたはあんな大企業でスピート出世をするぐらいなんですから高校で楽しい思い出を作ることもきっと出来ますよ。それでは私はここで失礼します」

天使は帰っていった。

そして蓮は嫌な感じはあるもののそのままベッドで眠りについた。

翌日、蓮は目を覚まし制服に着替える。

そして天使が置いていった光の地図を見ながら高校に行く。

登校するとそこには今まで見たことのないような建物をした高校があった。

そして知らない10代の若者がたくさんいた。

「嘘だろ。ものすごい気まずいだろう」

社会人がここにいると考えるともはら違和感しかない。

「ところで今日は何日だろう」

カレンダーをみたら4月21日火曜日だった。

さらに予定表をみると昨日入学式だったらしい。

「どういうことだなぜ天使は今日が卒業式だと嘘をついたのか」蓮は疑問に思う。

そして蓮の入る学校は優ヶ崎高等学校というチャレンジスクールだった。

その学校は記念すべきチャレンジスクールの第1号であり中学校で不登校や勉強についてこれなかった人を救済する学校であった。

そのため中学校の時、不登校などの理由で学校に行けなかった生徒がたくさん入学している。

さらに普通は3年制度だがこの学校は4年制度というのも特徴の1つであった。

そしてこの高校の制服は黒と好きな色を混ぜた制服がいくつもあってその中から好きなのを選ぶことができた。

蓮が教室で待っているとそこに先生がやってきた。

蓮は驚いた。

その先生は部長だった。

蓮は混乱する。

――これはどういう事だ、要するに部長はこの世界では先生になっているということか。

蓮は色々な可能性を考えていた。

まるで会社の気分だった。

昼休み、蓮は混乱して疲れていた。

スマホを取り出そうとしたら出てきたのはガラゲーだった。

なぜと思ったがスマホにしたのは20歳のときだからガラゲーなのは当たり前であると納得した。

携帯で現在を調べてみると自分のいた時間帯にあった出来事はなかった

その時に声をかけてきた青年がいた。

それは純崎剛だった。

とても明るく無邪気な青年だった。

「ねぇ君、どこに住んでいるの? なんの部活に入るの?」

めんどくさい蓮は適当に返事をする。

そして教室に戻ると「あの子可愛いよね」と剛が言う。

見るとそこには周りの女とは明らかに違うオーラを持った女がいた。

彼女は海野奈美であった。

周りの女よりも美しい彼女だがとても暗かった。

蓮は美貌の割に勿体ないと感じた。



奈美の事を初めて見て以来、ずっと奈美の事が気になっていた。

「なんで俺はあの子の事ばかり考えているんだ」蓮は奈美が気になっていた。

そんなある日、蓮は奈美の前を通ったと同時に奈美が筆記用具を落とした。

蓮は女性が苦手だったため拾ってあげずに背中を向けて無視してしまった。

「何してる、俺」蓮は後悔した。

せっかく関わるチャンスを無駄にしてしまった。

下校の時間、蓮が自転車置き場に行くとそこに鯨のキーホルダーが落ちていた。

「誰のだ」蓮が届けようとしたときそこに奈美がやってきた。

「それ私の落としたものです」奈美は上目使いをして蓮を見つめる。

「はい」

蓮は返そうと手を伸ばす。

「ありがとう」奈美は去っていった。

それは蓮と奈美の最初のやり取りだった。

可愛い割に本当に内気のようだ。

「あの子、可愛いよね」

振り返るとそこに鎧がいた。

「あんたは?」蓮は少し警戒する。

「俺は彼女の恋人だよ」鎧は笑顔で言うが蓮は嘘だとすぐに分かった。

「君は凄いね、すぐに嘘を見破るなんて」

「生まれつきその才能があるからな」

「まぁいいか、いずれ彼女は俺のものになるから」

鎧は去っていった。

蓮は鎧を敵視する。

それは何が危険なものを感じたからだった。

蓮は家に帰るとずっと奈美の事を考えていた。

「一体、この気持ちは何なんだ」蓮はそれが分からないでいた。

その頃、奈美は海神公園のベンチに座っていた。

「君、可愛いね」そう話しかけてきたのは剛だった。

奈美が去ろうとした。

「良かったら明日から俺と一緒に行動しない」剛は誘った。

「それは告白ですか?」

「君は可愛いけど別に恋人としてじゃないよ。友達として」

奈美は驚いた。

大抵、話しかける人は告白やナンパだったため。

2人きりの公園に1人の男子がやってきた。

「あのう、すいません」

何か察した剛はトイレに行くと言いその場を離れた。

「あのう、もしよかったら僕と付き合ってくれませんか?」

「ごめんなさい」

奈美は断った。いつもの事だった。

「そう…」

男子はショックを受けて去っていった。

そこに剛が帰ってきた。

「何だったんだ」

「何でもないよ」

そして奈美は帰っていった。

しかし奈美に少し変化があった。

夜、蓮はお風呂に入っていた。

蓮はずっと奈美の事を考えていた。

早くもこの世界で何か見つけ出そうとしていた。

翌日の昼休み

「高校慣れたか?」剛が聞いてきた。

「まぁ慣れた」

「蓮、何をずっと考えているんだ?」剛は何かを感じた。

「別に何でもない」

蓮が立ち去ろうとした。

「慣れていなくて困っているならいつでも相談にのるぜ」剛の言葉に蓮は不快に感じた。

「なんでそこまでする?」

「そりゃ友達だからだ」と

蓮は知らなかった。

友情があるからこそ友達を助けたいという気持ちを、そして今それを少し知った気がした。

放課後、奈美は外で立っていた。

周りには男たちが奈美を見ていた。

「あの子、可愛いよな」

もう学校の噂になっていた。

そんな会話の中、奈美の所に剛がやってきた。

「何してる?」剛が話しかけた。

「特に何もしてないよ」

「じゃ一緒に帰ろう」

「…いいよ」

剛の誘いに奈美が返事すると周りの男たちは妬みや嫉妬の表情をする。

そこに蓮がやってきた。

蓮は驚いた。

もう奈美と深く関わっていると。

そこで蓮は思いついた。

剛とは関わりが深いからそれ繋がりで奈美に関われるんじゃないかと。

そして蓮は剛と奈美の所に行く。

「剛!」

「蓮、どうしたんだそんな顔して」剛は少し驚いていた

「お前、何で…下校と一緒に逃げるんだ」

本当はお前何で勝手に帰ろうとしているんだと言いたかった。

しかし緊張していたため言い間違えた。

そして2人がやり取りをしていると奈美が笑った。

2人が仲良しで何か面白かったようだ。

蓮は勇気を出して話しかけた

「そういえば同じクラスだよね?」

「うん」奈美は答えた。

お互い緊張していた。

「それじゃ3人で帰ろうぜ」

剛は笑顔で言う。

「そうだな」

そして3人は一緒に帰っていく。

そして蓮は2人と別れて帰っているとある公園を見つける。

それは海神公園だった。

海上公園は自然あふれる公園で中心に噴水があるのが特徴だった。

蓮はその公園を気に入った。

夜、蓮はとてもうれしい感情で夕食を食べていた。

一方、奈美も夕食を食べていた。

最近食欲がなかったが今日の出来事で希望を抱けるようになったようだ。

翌日、蓮が登校しているとそこに奈美を見つけた。

お互い気付いたようだった。

「……おはよう」

「……おはよう」

「この公園、空気が気持ちいいな。きれいだし」

「うん、私も同じ事を感じていた」

お互い不器用に話した。

「……剛君って凄いよね」

「何て」

「だって誰にでも気さくに話しかけられるし、真っすぐで純粋な人だから」

「確かにな。俺はずっと自分は強いと思っていた。中卒であるにも関わらず会社でスピート出世をしたから自分は天才だとか強いだとか自分に酔っていた。でもあいつは俺にないものを持っていた。俺はあいつを見下していたが本当はあいつの方がずっと強くたくましいと思った」

「……そうなんだ」

蓮は気付いていないが前の会社の話をした。

しかし蓮がパラレルトラベラーである事を知らない奈美は混乱した。しかし敢えて聞かなかった。

やはりまだまだ距離はあるが昨日よりも縮まったようだ。

それからというものの少しずつであるが奈美とは落ち解けていき消しゴムを貸してほしいと声をかけてもらえるまでになった。

そんなある日、蓮と剛は屋上にいた。

「剛、俺は友達というものが分からないんだが」

「今は分からなくてもいいじゃん、いつか分かる日がくるかもしれないし」

剛の回答に蓮は半信半疑だったがしかし蓮は少し友達というものを知りたくなった。

最初は邪魔くさかった剛だったが今は、その考えも消えむしろ剛がこの冒険の切り札的存在だと考えられるようになった。


入学してから3週間が経った。

明日は入学旅行であった。

この旅行でこれからの高校生活も決まっていくのである。

「明日は入学旅行だな」剛が楽しそうに蓮と奈美に話しかけながら帰っていた。

「ちょっと休もうぜ」3人は海神公園のベンチに座って休む。

蓮は奈美の隣だったためドキドキしていた。

そこに女が3人やってきた。

「海野さん、まだ男から告白されたらしいね」

3人は怖そうに尋ねる。

奈美は思った。

きっと告白された男の事が好きだったからそれで怒りに来たと。

それは奈美にとってはよくある事だった。

「ちょっとあなたたち何よ」

そこに上川美羽がやってきた。

美羽は奈美を庇う。

そしてお互い言い争う内に3人は帰っていった。

「ありがとう」

「いいのよ」美羽は笑顔で返す。

蓮も安心した。

もし美羽がいなければ奈美を庇う事が出来ずもしかしたら自分が嫌われたかもしくは剛が助けて奈美が剛の事を好きになっていたかもしれないと。

まさに危機一髪だった。

夜、蓮は入学旅行の準備をする。

蓮は少し楽しみだった。

何故なら久しぶりの旅行だったから。

その頃、奈美も旅行の準備をしていた。

「あなた一緒に行動する人いるの?」母が心配する。

「いるよ」奈美は返す。

当日、生徒たちは高校に集まりバスで出発した。

行き先は愛知県であった。

愛知に到着した後、各自自由行動だったため蓮はさっそく奈美と剛と共に行動することにした。

その時1人でいる生徒を見つけた。

それは谷月千だった。

千はいつも1人で行動していた。

周りが誘ってもそれを拒否して1人でいた。

しかし何故1人でいるのか分からなかった。

奈美は可哀想だと感じて千を仲間に入れようと誘った。

蓮は思った。

最初の頃と比べると奈美も成長したように感じた。

「よかったら私たちと一緒に周らない?」

「俺は1人で行動するのが好きなものでね。お前たちと行動したくはない」

さらに千は言った。

「俺は完璧な友達を求めている。決して自分の事を裏切らないで一生仲良くできる友達を」。

「そんなこと言うなって」

剛は無理やり手を取る。

「おい、やめろよ」

千は嫌がるがほぼ無理やり一緒に行動させる。

奈美と一緒に行動したかった男達から見たら蓮と剛、千は羨ましかったし憧れだった。

しかし男たちの思いとは裏腹に蓮たちは気まずい感じであった。

4人は色んな所を歩くが千はあまり楽しそうじゃないようだった。

でも今さら、別行動しようとも言えなかった。

こんな奴を誘った剛を蓮は心の中で恨んだ。

でも奈美は千に対して何が悲しそうに見えた。

剛と奈美は千に話かけたりするが千は必要なことだけ返答するだけであった。

剛は心の中で驚いていた。

奈美に話しかけられていたら普通嬉しいのに彼は特にそういう反応がなかったからだ。

そんな事を思いながら歩いているとそこで射的屋を見つけた。

「俺、やってみる」剛はやることにした。

「なら俺も」千もやることにした。

そしてお互い一等を狙っていた。

その一等をどちらが早く狙うかで競争する。

千は楽しそうだった。

「お前今笑ったな」

千はすぐ無表情になった。

「隠す必要ないのに」

「別にいいだよ」

千は強がる。

無理していたようだった。

彼と分かり合うのは難しく感じた。

夕方、全員元の部屋に戻る。蓮は剛と千と同じ部屋だった。

蓮は剛と会話するが千はやはり何もしゃべらないため気まずかった。

蓮はフロンドに行きそこで休んでいた。

「どうしたの?」美羽が話してきた。

「君、昨日の」

「何が悩んでいるの?」

蓮は美羽に今の気持ちを話そうとしたがやめた。

蓮は何が恥ずかしさを感じた。

「もしかして奈美って人のこと好きなの?」

「そんなわけないだろ」蓮は慌てて否定する。

「まぁ私も恋っていうものが分からないんだけどね」美羽は笑顔で返す。

しかし彼女は知らなかった。

後に自分が恋というものを知ることになるとは。

「そういえば君、名前は?」

「上川美羽よ」

「そうか。ありがとう」

蓮は美羽の名前を知りたかったようだ。

それは美羽にも興味があったようだった。

しかしそれは奈美とは違う感情だった。

そして蓮は部屋に戻った。

翌日、3人で行動する予定だったがそこに美羽が来た。

「蓮、私も入れてくれない?」と頼んだ。

「いいけどでも君、昨日一緒に行動していた友達と行動しなくていいの?」

「他の人とも関わりたいからいいの」

「分かった」

その時、橋の上で眠そうだった千を見つけた。

剛はいつもの調子で千に一緒に行動しようと誘う。

「お前たちとは行動したくないから」

千は立ち去ろうとする。

しかし剛は千を掴み仲間に入れようとする。

いつもは軽い剛だがこのときばかりは真剣だった。

「なぜ人を嫌がるはてな」

「俺は完璧な友を持ちたいからだ、だから間違った友を持ちたくない」

剛は千に背を向けた。

「最初から完璧な友情なんて最初からないし当たりとかはずれなんてないよ」

千は今までの事を振り返った。

尊敬していた人へ裏切りにあい人付き合いをする時は人を選ぶようにする事を決めた日の事を。

千が変わってしまったあの日の出来事を。

そしてそれによって失った友達の事を。

気付けば自分は1人になっていた。

そして今自分に失うものが何もない。

そんな千に剛はさらに続けた。

「友情なんて最初から良いものなんてそんなない。お互いが一緒に過ごしていくうちに友達になっていくんじゃないのか」

それを見た美羽も話した。

「完璧じゃなくていいじゃん。楽しければ。」

2人の説得に千はさらに気付いた。

今まで完璧な友達を作りたい故に該当する人がいなかったからずっと1人でいる事に我慢していた。

しかしそんな事する必要ないんじゃないかと。

「……どうせ失うものはないんだ。仲間になってやるよ」

剛と美羽は喜ぶ。

そして奈美にとっては今日から美羽と千も新しい友達になった。

しかし蓮はまだ友情が分からなかった。

バスでの帰り道、バスの中で千は蓮に口を開いた

「昨日はすまなかった」

「何の事だ」

蓮は何となくそう返した。

2人の間にも何か友情が芽生えようとしていた。

数日後、4人は屋上にいた。

「しかしこれ以上、まだ友達は増えるのだろうか」蓮の何気なくつぶやいた。

「減るよりはいいじゃないか」剛は返答する。

そして蓮の予測はこれから現実になっていく。



入学してから2か月が経過した。

さすかに多くの生徒たちも打ち解けていた。

5人は屋上にいた。

「そういえば今、体験入部やっているね」

美羽は部活動の体験入部について話した。

蓮は部活動に入った事がなかった。

「蓮、放課後、サッカー部に行ってみようぜ」剛はサッカー部に行ってみようと誘う。

「サッカーは中学3年生以来だな」蓮の何気ない他人事だったがみんな「え?」となった。

蓮は思い出した。

自分は本当は23歳であり実際は8年でもこの世界ではついこの前の話なのだから。

蓮は冗談と言って誤魔化した。

「ところで3人はどうする?」

「私は入らない」美羽は断る。

「俺もいいかな」千も拒否した。

「奈美はどうする」

「私もいいや」

剛は残念に感じる。

部活動で汗を流すのもいいのに

放課後蓮と剛はサッカー部を見て見学する。

そこで周りとは桁違いなぐらいにサッカーが上手い青年を見つける。

彼は霧島修、蓮と同じ年だが凄腕のサッカー選手であった。

そのため周りの先輩に対しても上から目線などの失礼な態度をとっていた。

サッカーの試合、修は次久と点を入れていく。

練習が終わった後、修が2人の所に来た。

「お前らサッカー経験あるか?」そ

「いや、ないけど」

「悪いが入らないでくれ。俺たちのチームは全国宇優勝を狙っている。お前たちのような素人が来るとあしでまといになる」

それに対して2人は怒りがこみ上げた。

「それば無いじゃないか」剛の言葉に修は反論する。

「俺たちはサッカーで全国大会に行って優勝しなければいけない。そんなサッカーをほどんとやっていないやつが軽い気持ちでサッカー部に入ってくるのはこっちとしてお荷物なんだよ」修は全国大会優勝に燃えていた。

「分かったなら帰れ」

修は足を引きずりながら立ち去った。

翌日、屋上で2人はその事を奈美たちに話した。

「そりゃ大変だったね」美羽が話している途中、千は修について話した。

「修は3歳の時にサッカーを始め徐々に才能を開花、小学生になると彼の活躍で多くの大会で優勝していった。しかし修は高い実力が故、人を下に見ぐだす性格でもあったらしい」

「実力あるのに勿体ないね」美羽はそう言い4人も実力があるのに勿体ないなと感じた。

「お前よくそんな事知っているな」蓮は千に感心した。

「人の事を知っておく事も大事なことだ」千は誇らしげに言う。

放課後、修は病院に行くため部活を休んで帰ろうとしていた。

そこで蓮たちとバッタリ会う。

「部活やらないのか」

「別にいいだろう」

修はそう言って立ち去った。

しかし修は知らなかった。

この後、悲しい思いをすることを。

修は病院に行って診断してもらうと医師は重い口調で話した。

「これ以上サッカーをやるとあなたの体は悪化します。今後は激しい運動は控えてください」修はショックを受ける。

その日修は人生最大の挫折を味わった。

夜、修はベランダにいた。

そして絶望していた。

翌日、修は監督に退部届を出しに行った。

しかし監督はいままで上から目線の態度をとっていた修に警告した。

「言っちゃ悪いがお前を嫌っているやつはたくさんいる。病気だと分かれば仕返しをするやつもいるからなるべく病気である事は隠して生活をしろ。言い訳として新しい趣味に打ち込みたいからやめたと言え。こっちからも聞かれたらそう言っておいてやるから」

内容は悪いがこれも修を思っての事だった。

しかし修はそんな甘い男じゃなかった。

「余計なお世話だ。俺の心配をしている暇があるならチームの心配をしろ。あんな実力じゃ全国大会どころか東京予選も1次敗退だろ」

「修、今はそんなこと言っている余裕ないだろ。お前は、チームの事よりも自分の心配を」

「そいつらが何がやってくるなら返り討ちにすればいいだけだろう。それにサッカーは出来なくても俺の実力と並ぶ奴はいない。そんな奴に馬鹿にされても大したことない」

「もういい、だが1つだけ言う。お前のサッカーの実力もいつかなくなるかもしれない。だから無駄に敵を作るな」監督は最後まで修の事を思っていた。

夜、蓮が家でテレビを見ているとそこにメールが来た。

剛からだった。

内容は明日も体験入部をやろうというものだった。

蓮もやると約束をする。

翌日、蓮と剛は卓球部を見学するために放課後残った。

そして奈美、千、美羽が一緒に帰っていると海神公園に修が椅子に座っていた。

「あいつ蓮たちが言っていた奴だ」

「あの人が」

すると美羽が話しかけた。

「どうしたの?」美羽の言葉に修は無視して立ち去ろうとする。

しかしそこにサッカー部の先輩がやってきた。

「修、聞いたぞ。今までよくも好き放題やってくれたな」先輩たちは今までの仕返しをしようとしていた。

「あなたたちなによ」美羽は修をかばうがそこで先輩たちは言ってしまう。

「俺たちはこいつに今まで見下されてきたんだよ。それで病気だと知ってやり返してやろうと思っているんだよ、だからどけ」

しかし美羽は強かった。

「どかない。誰であろうとも困っている人を見捨てることなんで出来ないわ」

それを見た修は怒る。

「何やってんだよ。女に守ってもらうなんでかっこ悪いだろ」

「やぁ何しているのかな」

そこに鎧がやってきた。

「こいつはあの厄介な……行くぞ」

先輩は立ち去ってしまった。

「なんなんだお前」千は聞く。

「きっと俺が強すぎるから逃げていったんだ」

鎧は去っていった。

これも嘘だった。

実際は鎧は運動神経は悪かった。

「あなた病気なの?」美羽が聞く。

「関係ないだろ」

修は立ち去ろうとした。

「待って」美羽は修の手首を握る

「これからどうするつもり? 今日は良くても明日からどうするの?」

「俺は周りの人間たちにいじめられて生きていかなくてはいけない、それに実際に今まで自分を慕っていた人たちも病気だと知ると離れてしまった」

修は美羽の手をほどき行ってしまった。

その頃、蓮と剛はテニス部の見学をしていたが剛はセンスがなかった。

結局ここも入らなかった。

「他に良いところないかな」剛が悩んでいると蓮の所に電話が掛かってきた。

それは奈美からだった。

翌日の屋上

「聞いたぞ。いろいろ大変なようだな」修と千、美羽のところに奈美から話を聞いた蓮と剛がやってきた。

「余計なお世話だ」

修は行こうとする。

「無理するなよ。悲しいなら悲しめばいいじゃん。それに助けてほしいなら素直に助けてほしいと言えばいいじゃん」蓮は修の心を見抜く。

「ふさげるな」修が蓮に反論する。

「今の状況に負けちゃだめだよ」美羽は修に説得する

「何でそこまで俺に構うんだ」

「分からないけどでも放っておけないの」修の問いに美羽が答える。

「ふさげるな。女なんかに」

すると奈美は修にビンタした。

「奈美…」

蓮は思わず小さな声で名前を呼ぶ。

「昨日、美羽は体を張ってあなたを守ってくれたじゃないの。それもきっかけは、ほぼあなたにあるのにそれでも守ってくれたのよ。あなたなんかよりも美羽の方が強いんだから」

奈美の怒る姿を初めて見た蓮と剛は驚いてしまう。

「お前は、サッカー部で全国大会優勝を狙っていたんだよ。だからお荷物になる俺たちを差別して入るなと言ったんだよ。でもそれは自分も例外ではない。だから自分が病気であることを知った時、周りに迷惑をかけないように退部したんじゃないのか」

「そうだ」

一見、嫌な奴だがしかしサッカーを誰よりも愛しそして誰かの夢を邪魔したくなかった修の優しさだった。

落ち着いた奈美は蓮と剛に提案の話をする。

それはサッカー部に変わるものを探すという事だった。

「それいい」美羽は賛成するのに対し修は嫌がりながらも乗った。

それは奈美の言葉を信じてみたいと思ったため。

最初に体に負担がない将棋部を体験する。

しかし修は将棋が弱かった。

なので蓮たち5人と戦っても1人にも勝てなかった。

次に書道部を体験するが字が下手だった。

その後も毎日放課後にいろいろ見学してみたが修はやりたいものがなかった。

修は所属をあきらめようかと考えたときある部活動を見学する。

それは美術部であった。

美術室に入る。

「やぁ君たち体験入部の人達かい?」そこに先輩が3人笑顔で迎えてくれた。

しかし他に人はいなかった。

先輩によると所属している人はたくさんいるけれど元々緩いため毎回全員は集まっていなかった。

逆に美術部でもない人が来ていたりもしていたためほぼ開放的だった。

しかしそこがこの部活動の魅力であった

「とりあえず何か書いてていいから」

さっそく6人は絵を描いてみることにした。

みんないろいろ書いて見せ合いっこしていた。

「それジャット機?」美羽が聞く。

「鳥だよ」剛が返答した。

「いやジェット機でしょ」

「どこかだ美羽センスないんじゃないのか」

「なんですって」剛と美羽がそんなやり取りをしている中、修が書いた花の絵はうまかった。それに蓮たちも驚いた。

「修、美術向いているんじゃないの?」

奈美の言葉に修はもしかしたらこれは運命かもしれないと感じとりあえず入部してみることにした。

夕方、修は先に帰っていたため蓮達5人は一緒に帰っていた。

「修よかったね」奈美が言う。

「そうだな」剛は笑顔になる。

「俺たちも入ってみようぜ?」剛は蓮達を誘う。

「まぁいいかもね」美羽は入部する事に決めた

「入ってもいっか」千はそう答えた。

「奈美はどうする?」

「私も入ってみる」

「なら俺も入る」蓮も入部することにした。

それは奈美が入るからという単純なものだった。

そして蓮と剛そして当初入部する予定はなかった奈美たちも入ることにした。

修にとって生きる目的が見つかった。

それだけではない。

当初、嫌がっていた蓮たちと友達になるのも悪くないと考えていた。



7月の放課後、部活動はなかったが修が美術室に行くとそこには知らない生徒がいた。

それは雪中月美だった。

彼女は奈美以上に暗かった。

修は特に気をかけず作業をする。

休み時間6人で屋上に行くとそこに月美が座っていた。

「ちょっと話しかけてみる」剛が言い月美に声をかける。

「やめて」

月美はそう言い帰ってしまう。

剛はショックのあまり氷のように固まってしまう。

「お前、軽すぎるんだよ」修に言われる。

奈美はある推測をした。

もしかしたら月美は女には友好的だが男に対しては敵視しているという二面性を持つ人じゃないかと。

放課後、蓮達が美術室に行くとそこには月美が座っていた。

月美はさっきの人だと気付いたが気にせず作業を始めた。

しばらくするとまだ剛が興味本位で話しかけようとした。

「やめとけ、さっきも拒否されただろ」

「今度はちゃんとするよ」

蓮の忠告も剛は聞かなかった。

「ねぇ君」

しかし月美はまだ驚く。

「……何で話しかけるの……嫌なんだけど、そういうの」

月美は怒って帰ってしまった

さっきと全く同じことをした剛に対して5人はバカだと思ってしまった。

奈美は自分の推測を5人に話す。

「だから剛をあんなに拒否したのか」蓮が言う。

「ようするに俺たち男は誰でもダメということか。聞いていたとはいえ、驚きだな」千は知っていたようだった。

月美が怒りながら家に帰っているとそこに不良たちがたむよしていた

「君、かわいいね。今から俺たちと遊ばない?」

月美は逃げようとしたが逃げられない状況だった。

その時、黒ずくめの男がやってきた。

そして月美の手を掴み走っていく。

月美も訳分からず一緒に走る。

不良たちは追いかけていくが逃がしてしまう。

ある程度逃げると不良達はいなかった。

「ありがとう」

月美はお礼を言うが黒ずくめの男は何も言わずそのまま去っていった。

まるでヒーローのようだった。

夜、月美は家に帰宅した。

そして自分の部屋に入る。

月美が1番落ち着く場所はこの部屋だけだった。

翌日、月美が登校するとそこに奈美がやってきた。

「雪中月美さんかな。ちょっといいかな」

「何ですか」月美は警戒する。

2人は屋上で行く。

奈美は昨日の剛について代わりに謝った。

それと同時になぜ男が嫌いが聞く。

「話したくない」

奈美は何が深いものを持っていると感じたが敢えて触れなかった。

「剛は無邪気だし、千は完璧主義者だし、修は人を見下ろすけれどでもみんな悪い人ではないよ」奈美は話す。

しかし月美も反論した

「でもチャラいのは女癖が悪いし、完璧主義者は裏を返せば自分の意見を押し付けるし、人を見下ろすのは問題外だと思う」

「そうだね…」

案外間違っていないため奈美は返り討ちにされた気分だった。

放課後、月美が家に帰ろうとした時家のカギを失くしたことに気付いた。

そこに剛がやってきた。

「どうしたの?」

「………鍵を失くした」

――早く行ってほしい

「一緒に探すよ」剛はそう言い探し始めた。

剛は一生懸命探す。

「1人で探すから大丈夫」

「でも見つけたほうがいいだろ」剛は探すのをやめない。

その姿を見た月美は気付いた。

自分は弱さに向き合わないでずっと逃げてきた。

だから男の良さを知ることが出来なかった。

ふと見ると他の自転車の下に踏まれていた。

剛はそれを拾い月美に渡した。

「ありがとう」月美はお礼を言った。

月美は帰るか剛も同じ方向に帰っていく。

月美の後ろを剛が歩いていく形となっているがそこに昨日の不良たちがやってきた。

「昨日は逃しちゃったけど今日は逃がさないぜ」月美は恐怖を感じた。

それに気付いた剛は月美の前に立つ。

「あんたたち何だ」

「お前は引っ込んでよ」

剛1人では勝てないのにそれでも月美を庇う。

するとそこに黒ずくめの男がやってきた。

そして男は言った。

「こいつらは俺に任せて早く逃げろ」

月美は昨日のと思うが剛は月美の手を繋いで逃げていく。

「なんだてめぇ」

不良たちは襲い掛かるが黒ずくめの男は手に電気を帯びたバリカンを持っていた。

「これに触るとお前たちの体はただじゃ済まないぞ」

男の言葉に不良は恐怖を感じて一目散に逃げていった。さっきまで粋がっていたのが嘘のようだった。

剛と月美は不良たちが近寄れない警察署の前で休む。

「ありがとう」月美がお礼を言う。

今日2回目だった。

「別に大したことしてないよ。それにあの黒いやつがいなかったら今頃、ボコボコにされてたと思うし」

「対策考えていなかったの」

「そうだ。でも見過ごすわけにはいかないだろ」

2人の絆は縮まったようたっだ。

翌日、月美は蓮達と一緒にいる剛に勇気を出していった。

「ありがとう…あのう。よかったら友達になってもらえませんか」

それは月美の挑戦だった。

弱さと向き合う事を。

「勿論だ」剛は笑顔だった。

放課後、蓮たちは6人で帰っていた。

「あいついきなりどうした?」

蓮達はそんな会話をしながら帰っていた。

しかし奈美は月美が何か変わろうとしていると感じうれしかった。



授業が終わり、明日から夏休みだった。

入学式の頃と比べるとさらに関わる相手も2人増えた。

しかし月美はまだ男慣れしていないため6人とは別行動となっていることが多かった。

高校が終わり6人で帰っているとそこに鎧が現れた。

前に嘘をついて男だった。

「奈美。こんな奴らといるよりこの俺と付き合わない。俺はジャネラルコーポーレーションの御曹司だから」鎧は話しかけた。

蓮は驚く。何故ならジャネラルコーポーレーションは自分がこの世界に来る前に働いていた会社だったため。

「どうせそれも嘘だろ」

「どうかな」

蓮の言葉に鎧は馬鹿にしたような態度をとる。

数日後、美術部で美羽たち5人が集まっているとそこにまだ鎧がやってきた。

まだ奈美に迫ってきた。

そこに丁度、蓮と剛がやってきた。

まだ重い空気になった。

「まだ来たのか」

「そりゃ奈美のためならどこにでも行くよ」

「お前、本当は好きじゃないんだろ。ただ自分を強く見せたいだけだろう」蓮は言った。

「そんなことないよ」鎧は動揺しながら返答した。

しかし修は口を開いた。

「前にお前に助けてもらった礼はある。でも俺も蓮と同じくそう見えるし俺には何となく分かる。好きなものに対する愛というものがあるからな」

修の言葉に対しみんな修の言う通りだと感じた。そして鎧の考えは修の言う通りだった。奈美が好きなのではなく奈美を自分のそばに置くことで自分を強く見せようとしていた。

千は思い出していた。

それは中学生の時自分が憧れ尊敬していた先輩の事だった。

千が思い出している中無邪気だった鎧は真面目な態度で言った。

「強く見せて何が悪い。みんな嘘をついて強く見せるような生き物だろ」

鎧の言葉に6人は悪人っぽさを感じた。

「お前の言う通りだな」千はそう言う。

「お前、何言っている」修は反論するが千は続ける。

「人は嘘をついて自分を強く見せる、お前の言う事は間違っていない」千は鎧の意見に賛同する。

鎧も戸惑う。

まさか賛同するものがいると思わなかったため。

鎧は出て行った。

「お前、どういうつもりだ」修は納得がいかなかった。

千は思い出していた。

千が中学生の時、テニス部に所属していてそこで憧れていた先輩がいた。

その先輩は優しくて頼りになる人だった。そしてその先輩は、自分は喧嘩が強い、家は裕福だ、別学校の番長も自分には頭が上がらないなどとにかくいろんな面で強かった。

千はそれもあってその先輩に憧れていた。

千はその先輩と深く関わっていき休みの日は一緒に遊ぶ関係になっていたがある日事件が起きた。

その日先輩がボロボロで登校してきた。

そして千は友人から詳しい話を聞く。

それは昨日一緒に遊んでいたらそこにその番長がやってきて先輩をボコボコにした。

先輩はとても弱かったそうだ。

さらに番長は言った。

「お前ザコのくせに後輩たちに自分を強く見せているようだな」

それを聞いた千は先輩と関わるのをやめた。

なぜなら自分がずっと尊敬していた先輩は、自分を嘘で固めた人だったから。

そしてそうだと気付かずずっと仲良くしていたことに

そして千は考えた。

次、作る友達はこんな嘘だらけの人ではなく自分が認めた人と関わりを持つということを。

千にとって鎧はその先輩と重なって見えた。

翌日千はテニスコートに鎧を呼ぶ。

「何の用だ?」

「テニスで勝負しないか」千の申し出に鎧は不信に思う。

「なら受けて立とう」鎧は挑む。

そして千と鎧はテニスで勝負する。

しかし千は経験が深かったため鎧を圧倒する。

そこに2人がテニスをしていると聞いて蓮たち5人もやってきた。

「あいつら何でテニスをやってんだ?」蓮たちは疑問に思った。

そして圧倒的な実力で千は鎧に勝利した。

蓮たちに気付いた鎧は怒り出す。

「これは俺に恥をかかせるためのみせじめか」

「笑われていると感じているのはお前ぐらいだ」

鎧は動揺する。

「みんな弱いところはたくさんある。でも強いどころもたくさんある。」

「だから弱いところがあったっていいじゃないか。もしお前の近くに完璧なやつがいたらそれはお前の勘違いだ。でも1つだけ褒められるところがある。お前は強く見せようとはしたがそれを実現しようとした勇気は褒めても良い」

それを聞いた鎧は目が覚めた感じだった。

「そうだな」鎧は笑顔で答えた。

「鎧にとっては大きなものを得た日となった。

それからというもの気が付くと鎧と深く関わっていた。

そしてみんなも鎧を仲間だと認識すると同時に鎧は嘘をつかなくなった。

数日後、美術室に行くとそこには鎧がいた。

美術部に入部したようだ。

そして友情が分からなかった蓮も受け入れる心が出来たようだった。



9月下旬、先輩たちが来てある事を話す。

それは文化祭の事だった。

美術部からも展示がありそれは個人でも集団でも自由であった。

そこで剛が提案した。

それは8人で作るというものだった。

それに美羽も賛成した。

「なんで俺も?」鎧は反論するがみんな無視して会話をする。

夜、月美は自分の部屋で本を読んでいた。

その本のタイトルは男を好きになる本だった。

月美は勉強をして男嫌いをなくそうとしていた。

その時メールが来た。

それは美羽からだった。

「一緒に文化祭の作品を作ろう」というメールだった。

月美は男に慣れるために一緒に作ると返信する。

翌日

「まずはどんな絵にする」

剛が提案すると美羽は花と提案する。

千は空と提案する。

そこに月美が口を出した

「星座はどう」

「いいね」美羽は反応し全員が納得した。

次に何を書くかだった。

みんな考えているとまだ月美が思いついた。

それは幾何学模様だった。

「それならみんなで書けるからいいじゃん」剛は賛成する。

書くものも決まり8人は帰る準備をする。

玄関に出るとそこに1人の生徒がやってきた。

「久しぶりだな修。まさかサッカー部を退部した後、こんなぐだらない部活でくだらないをしていたとはな」その生徒は侮辱する。

「あなた一体何は?」美羽は聞く。

「まだ気が向いたら戻って来いよ」

先輩は馬鹿にした態度で去っていった。

それは絶対に戻れない修に対する侮辱だった。

その後、8人で帰る途中剛がさっきの奴について聞いた。

「お前たちに関係ないだろ」

剛は反論しようとしたが奈美が止める。

そこには修にも言いたくない事もあるという事を考えての事だった。

しかし修はやっぱり話すことにした

「あの人はサッカー部の時、自分が下に見下ろしていた先輩だ。だから自分が侮辱されても仕方ない」

「でもだからってこのまま侮辱され続ける高校生活を送ってもいいの」美羽は聞く。

「別にいい。事実だし」修の発言に美羽は呆れた。

そして修は1人で帰って行った。

そして夜、修は部屋でサッカーのボールを眺めていた。

修は悲しかった。

今まで積み上げてきた努力は全て意味のないものになってしまったのだから。

翌日、蓮、剛、美羽が校庭を歩いているとそこに先輩に絡まれている修がいた。

「おい修、聞いたぜ。まさか病気だとはな」

「だったらどうした」

「お前には今までの恨みがあるんだ」

「俺が活躍していた時は、ぺこぺこしていたのに病気だと分かれば手のひらを返して仕返しをするとはな。さすがザコがすることだけあるな」

修は喧嘩を売るような発言をする。

「なんだとお前!」

美羽が助けに行こうとした。

「何やっているのかな」

そこに鎧がやってきた。

先輩たちは鎧を見ると逃げていった。

意外な形で修は助けられた。

そこに蓮達も近づいた。

「しばらく鎧に修の近くにいてあげて」美羽は鎧に頼む。

「断る」修は強く否定する。

鎧は行ってしまった。

「余計なお世話だ」

「そんな事言ったって見捨てる事なんて出来ないのよ」

「別に助けてくれなくてよい。そういう訳分からない正義感が迷惑なんだよ」

その発言の瞬間、美羽は修にビンタしてしまう。

「自分が招いた種でも見捨てる事が出来ないのよ。あなたにとっては、迷惑な正義感かもしれない。でもそれでも…」

美羽は涙を流しながらはその場を去っていった。

修は無言であった。

蓮と剛は気まずくなった。

そして思った。

「俺たち嫌な空気の中に取り残された」

美羽が玄関近くで休んでいた。

「どうした美羽」

そこに千と奈美、月美がやってきた。

「何でもないよ」

そこに鎧がやってきた。

「体重が増えたんだろ」

美羽は鎧にビンタしてその場を去った。

鎧は痛がる。

「お前にはデリカシーがないのか」千は鎧に注意する。

放課後、蓮達は美術室で奈美たちに昼休みの出来事を話した。

「だから泣いていたんだ」奈美と月美は理解する。

「なんだが分からないが文化祭まで時間あまりないしやろう」

とりあえず6人は製作を始める。

しかし今日は全体的に調子が悪くあまり進まなかった。

夕方6人は一緒に帰る。

「しかし美羽がいないと寂しいな」鎧は言う

「でも美羽と修、大丈夫かな?」

「ちゃんと仲直りするかな」

「心配いらないさ。そんなことで絆が切れる2人じゃあるまいし」

奈美の心配を鎧が和らげる。

夜、蓮はお風呂に入っていた。

蓮も美羽と修が心配だった。

何故ならそのせいで6人でいる時も空気が重くなっているから。

翌日の朝、美羽が美術室に入るとそこでは修が1人で作品作りをしていた。

昨日行かなかったため今日朝、早くやりにきたのだ。

そして修も美羽に気付いた。

お互い存在に気付いて気まずかった。

「……昨日はごめん」美羽は謝った。

「俺もすまなかった」修も謝る。

「修、あなたは自分が傷ついてもいいかもしれないけど私たちは嫌なの、友達が傷ついているのを見るの」

同時に美羽は何か変な感情が沸いた。

そこに6人もやってきた。

時間がなかったため来たようだ。

蓮は思った。

1人だけ来ないという状況にならなくて。

そして6人は感じた。

2人は仲直りしたと。

「それじゃ早速、始めようぜ」

剛はその場を切り替えた。

そしてみんなで頑張った結果、文化祭前日に完成させた。

さっそくその絵を展示場所に飾る。

やっと完成したと思っていた時、月美は何か嫌な予感を感じていた。

夕方、あの時の先輩が蓮達の絵の所にいた。

手にバットを持って絵を破壊しようとした時そこに蓮達が駆け付けた。

先輩も驚いた。

「何て分かった」

あの時、月美はもしかするとこの前の先輩が嫌がらせをしてくるのではないかと考えたようだ。

だから蓮達はそれを信じて隠れて待ち受けていた。

月美は頭の回転が速かった。

「あんた最低だな人間として」剛は怒る。

「それがどうした」先輩は反省の態度がなかった。

しかし修は先輩を責めなかった。

何故なら自分に原因があったのだから。

「先輩、今まであなたに対し失礼な態度、心よりお詫び申し上げます」修は先輩に敬語で謝罪した。

先輩は動揺する。

「何だよ。お前が謝るなんて…」

「仲間たちが変えてくれた。俺の未来を。そして楽しい学校生活を終わらせたくないと」それは自分の楽しい学校生活を台無しにしていくのか嫌だったからこその修の発言だった。「すまなかった……頑張れ」先輩はそう言って去っていった。

蓮は思った。

あの先輩は本当は悪い人ではないのかもしれないと。

文化祭当日、たくさんの来客が来てにぎわっていた。

蓮達もそれぞれ楽しく過ごしていた。

そして修と美羽は屋上にいた。

「ありがとう」修は照れながらも美羽にお礼を言った。

「別にいいよ」と答えた。

「もし今度なにかあったら俺が守るから」修はなぜがそんなことを言った。

それを聞いた美羽もなんかうれしかった。



12月、街はクリスマスムードになっていた。

授業が終わり皆で帰る中、美羽がこの後カラオケに行こうと誘った。

しかし剛だけは断り帰っていった。

そこで蓮がある事に気付いた。

「前は剛から誘っていたが最近は剛は誘っても断っている」

みんなもそれを感じていた。

「でも蓮、誘っても来ないじゃん」修が言う

「そうだけどでも気になってな」

千は何かあるのではないかと考えた。

その頃横断歩道付近で剛は別の学校の友人3人と合流していた。

そこを反対方向からたまたま蓮達が目撃する。

何しているのかと考えた時、鎧は言った。

「きっとあいつら危ない奴らだ。もしかしたら剛は…」

それを聞いて美羽が剛を助けに行った。

「ちょっとあんたたち、剛をどうするつもり」

「美羽!何て」

「剛逃げよう」

「いや、なんて」

「いいから」

「美羽、何か勘違いしていない」

その姿を見た6人もなぜ鎧を信じてしまったんだと後悔する。

そして後で大変な事になると薄々感じる。

その後、広場に行き、誤解が解かれた。

3人によると病院でボランティアをしていてそこで病気で入院している子供のためにイルミネーションをやって喜ばせてあげたいと思い剛と一緒に製作していたのだった。

「私たちも一緒にやりたい」美羽は3人に協力を提案した。

7人増えれば早く終わると考えたようだ。

「何で俺まで」そんな鎧を美羽は睨み付けた。

それは怖かった。

「元々はあなたがきっかけを作ったのよ」

「……やろうじゃないか」鎧はやる事に決めた。

そして蓮達も同意した。

「いいですよ。人数多ければいいですし」3人も了承した。

早速作業を始めるが早くも問題が起きた。

まず飾り方で千と美羽が言い争いになった。

修は不器用なため木を折ってしまう。

奈美と月美はツリーの飾りつけをするが隅ばかりに飾るため見かけが暗くなってしまった。

剛は3人に謝罪する。

「いや…全然大丈夫だよ…」3人は無理をする。

一方、蓮は唯一まともに出来ていた。

その時蓮は思い出した。

そういえば今までクリスマスは家族以外誰とも過ごしたことがないという事を。

そして奈美に対して何かよく分からない感情に悩んでいた。

『奈美と一緒にクリスマスを過ごしたい』

そう考えている内に夕方になった。

「皆さんのおかけで完成しました。ありがとうございます。よかったら当日、見にきてください」

「あれは子供たちへのプレセントだから俺たちはどっかで過ごしている」

俺たちは蓮たちは拒否した。

「なんでだよ。せっかく手伝ったのに」剛は驚きながら誘う。

「いいんだよ。これで」千はそう返す。

そして作業を終え帰ることにした。

夜、剛は病院の子どもと面会した。

剛は笑顔でその子供と遊んでいた。

しばらくすると知り合いの医者がやってきた。

「よぉ剛」

「先生」

2人は休憩室に行って楽しく会話をする。

すると剛は兄の力の話をする。

剛には8つ年上の兄、純崎力がいた。

力は優しくて頼もしかったがしかし力は白血病でこの病院に入院していた。

「兄貴、大丈夫」

「心配するな剛」「剛もし俺が死んだらちゃんとお母さんの言う事を聞けよ」「そして困っている人がいたら助けてあげられ人間になるんだぞ」

力のこの言葉は剛の心に染みていて高校生になった今でも心に残っている

その時の力はまだ話せるほど元気だったが日がたつことにつれ話す回数も減りついには動かなくなってしまうほど悪化してしまう。

剛は動かない兄をずっと見ていた。

何を話しても力は何の反応もしなかった。

剛は悲しかった。

でも信じていた。

いつか病気が治ってまだ一緒に話せる日が来ると。

しかしクリスマス直前に兄は亡くなった。

外がイルミネーションで輝いていてみんな歓声を上げる中の悲劇だった。

剛は泣いてしまった。

しかし同時に力の言う通りの人間になると誓った。

その後、剛はいつまでも泣いていたら兄が悲しいだけだと思いすぐに立ち直り元気に外で遊んだりしていた。

今の剛が明るく無邪気ながらも優しい性格なのはこの経験があったからこそだった。

そして剛の手には兄から貰ったお守りがあった。

剛がこのボランティアに参加したのは兄は病気がゆえに楽しみがなかった。

だから今の子ども達にせめて何かやって笑顔にさせたかったから。

玄関に行くと医師は最後に言った。

「剛、いい仲間たちを持ったな。お前のやっていることに兄も喜んでいるよ」

医師はさっきの作業を見ていたようだ。

「ありがとうございます」と

クリスマス当日、子供たちが待っているとライトが点灯した。子供たちは喜んだ。

剛は思い出していた。

力と病室で過ごした最後のクリスマス。

楽しいながらも悲しさがあったクリスマスだったが今年は悲しさがない楽しいクリスマスとなった。



下校中、蓮は7人と一緒に帰っていた。

「千」

8人が振り返るとそこにいたのは矢内安だった。

「知り合い」美羽が千に聞く。

「行こう」

千は言って先に行ってしまう。

「あいつなんだよ」鎧が反応する。

「仕方ないよ、千に嘘をついたんだから」安は言う。

「どういう事」美羽が聞く。

「君たちに言っても分からないよ」安は返答する。

「あのうよかったら聞かせてください」修の言葉に安は迷うが少し考えて話す事にした。

翌日

昼休み千が屋上にいた。

「聞いたよ。先輩から」美羽と奈美が千の所にやってきた。

「あの人喋ったのか」千は不快に思う。

そして千は2人が聞いている事は分かっていたが先輩の事を話した。

「あの人は自分は喧嘩に強い、裕福だ、別の学校の番長も自分には頭が上がらないと自慢していて俺もそんな先輩に尊敬していた。でも蓋を開けてみたらただのザコだった。そんな奴に俺は時間を使った。奴の事をもっと早く知っていれば本当に良い奴と関われたのに」

千は感情的になる。

「でもあなたは気付いたんじゃないの? 修学旅行の時に」

「それとこれとは別だ。あの先輩への恨みは消えていない」

「でもそれでもあなたの事を思っていたよ?」奈美は説得する。

「お前に何がわかる」千は怒りながら返す。

そして千は教室に戻る。

放課後、蓮と月美、鎧が海神公園に入るとそこに安がいた。

実は昨日、別れる直前に安は月美に連絡先の書いた紙を渡していた。

それはまだ千に合うきっかけを作るためたっだ。

「千はどうだった?」先輩は緊張しながら聞く。

「機嫌が悪かった。やはり根に持っているようだ」蓮は正直に伝える。

「でも何でそんな嘘をついたの?」

鎧の言葉に蓮と月美は思った。

『お前が言うな』『あなたが言わないで』

すると安は正直に話す。

「みんなから尊敬されたかったんだ。だからつい嘘をついてあんな事言っちゃったんだ。でもまさかバレるとは思わなかったから」

嘘で固めた人間の末路らしいと蓮は思った。

そして安は千に対する思いを伝えた

「俺は千の事を騙した。そして裏切った。とても後悔している。休みの日はよく遊んでいて楽しかった。俺にとって千は大事な後輩だったから。でも1つだけ言いたい。俺はあれから変わった。ちゃんと努力して今はとても強くなったしあの時の番長とも仲良くなった」

3人とも安を疑わなかった。

「分かった。あなたの気持ちを千に伝えてやるよ」鎧は約束した。

翌日、鎧は千を屋上に呼ぶ。

そこに6人もいた。

「千、先輩が言っていた。千の事を後悔している…よく遊んで…でも1つ言いたい…俺は変わった、番長になったと」

鎧は思いっきり間違った事を伝えた。

「あいつがそんな事を」

千は余計に怒った。

逆効果だった。

「違う。鎧が省略しすぎただけだよ」月美は訂正する。

そして何で自分が言わなかったのかと後悔する。

しかし千は戻ろうとすると

「待って。確かに千に嘘はついたけどでも今まで一緒にいて楽しかったんじゃないの?」月美は必死に訴える。

「そんなこと」

「ここで縁を切ると後悔するかもしれないよ」月美の問いかけに千は葛藤する。

「お願い」月美は千の手を握り見つめる。千は考える。

「嘘なんで誰にでもあるよ。それは嘘をつく方が悪いがでもそれを許す心も必要だと思う。それに先輩、嘘を実現させたし」

鎧のあまり説得力のない説得に千は考えた。

「もし嘘だったらただじゃおかないぞ」千は言った。

それは許すという証だった。

「そうこないとな」剛は喜ぶ。

みんな笑顔になる。

「鎧、お前のせいで危うく悪化させるところだったな」

剛は笑顔で言うが蓮は何か不信感を感じていた。

「お前、本当はまだその先輩の事を思っているだろ。それは強いとか弱いとか関係なく」

蓮はそう言いたかったが言えなかった。それはその不信感もあって。

そしてその考えは当たる事になる。

翌日、千は先輩に会いに行く。嫌がっていたものの本当は心からずっと仲直りしたいと思っていたからこそだった。

しかし約束の時間になっても来ない。

いつまで待っても来ない。

結局来なかった。

千は呆れてしまった。



2月になり、卒業式が近くなっていた。

しかし蓮達にとっては別にそれほどのイベントではなかった。

何故なら4年生とは関わりがなかったからである。

ある日、蓮と剛、奈美は校庭でキャッチボールをしていた。

「こうやって振り返ると1年近く前は俺たちは3人だったんだな」剛は振り返る。

「そうね。そこから5人加わったんだよね」奈美はそう返す。

蓮が奈美にボールを投げたが取り損ね遠くまで転がっていった。

「ごめん」蓮は謝り、茂みの奥に拾いに行った奈美だったがそこに3年生の先輩が話しかけた。

その人は奈美に突然、告白した。奈美も困惑して言葉が出なかった。

その頃、美羽が屋上に行くとそこに修がいた。

「そういえばもうすぐ2年生か」修が何となく話しかける。

「あれ」美羽が指さす。

そこで2人は奈美と男の姿を目撃する。

「何しているのかな、というよりあの人誰?」美羽は思った。

一方、奈美は言葉が出ないでいた。

「いきなりこんなこと言ってごめん。考えといて」

先輩は去っていった。

奈美は頭が真っ白になった。

丁度その姿を千も見ていた。

翌日、奈美はその事を7人に話した。

美羽と修は昨日見たのはそれだったのかと理解した。

「良いじゃん」美羽は喜ぶが「良くないな」と千は否定した。

そして意外なことを話した。

「あの3年生は女癖が悪くて付き合ってもすぐ別れるか浮気するという噂だ」

千は外部情報に優れていたがしかし奈美は千の言う事を信じられなかった。

「甘いんだよお前は」千は強気で主張する。

「やれやれ噂を簡単に鵜呑みにするお前の方が甘いんじゃないのか」

「なんだと」

修の言葉に千は反論する。

「世の中、全てが正しい情報ばかりじゃない。嘘もたくさんある。いや、もしかすると嘘の方が事実よりも大半だったりしてな」

「お前!」

千と修の対立を美羽が止める。

「お前の言う事を否定するわけじゃない。ただ噂に惑わされるな」

修はその場を去っていった。

「あいつ」千は怒りを覚える

「あいつもお前の事を思って言っているんだよ」

剛は修を庇いながらも千を落ち着かせる。

しかし蓮は千の言う事を信じたかった。

夜、奈美は部屋でテレビを見ながら悩んでいた。

恋愛ドラマを見ていてそのシーンはまさしく今日、自分に重なる出来事だった。

そのドラマのヒロインは主人公の男性の告白に「いいよ」と返事した。

蓮は不吉な予感を感じてしまう。

奈美は返事に迷っていた。

彼女の心にある思いがあった。

一方、蓮も奈美がその先輩と付き合うかもしれないことに対して快く思っていなかった。しかしその先輩とは会ったこともないしなぜ嫌なのか分からなかった。

翌日の授業中奈美は先輩について考えていた。

その姿を千も後ろから見ていた。

休み時間、千は奈美に先輩について考えていたのか聞いた。

奈美は何も答えなかった。

「どうせまだあの男の事を考えていたんだよ」

奈美は反論した

「何て千はそんなにあの人を拒否するの?よく知らないくせに」

「俺はお前のこと心配して」

「余計なお世話だよ」

「なんだよ。それ」

2人の言い争う。

「千、修の次は奈美と喧嘩か」

「どうするの?」

「ほっとけば良いよ。その内、仲直りするだろうし」

遠くから2人を見ていた月美は心配するが鎧はそれほど重く見ていなかった。

一方、蓮、剛、美羽、修は屋上にいた。

蓮はなぜか分からなかったが焦っていた。

そして同時にあの時、自分が誤って茂みの奥にボールを投げなければよかったと後悔した。

放課後、奈美はその先輩の所に行った。

そして返答した。

「ごめんなさい」

それは昨日見たドラマとは真逆の結末となった。

「分かった。考えさせてごめんね」先輩は笑顔だった。

「ずっと君の事は好きだったけど話しかけられなかった。でもよかったよ。ちゃんと告白することが出来て」

そして先輩は立ち去って行った。

翌日、奈美は断った事をみんなに話した。

「まぁいいんじゃない」美羽はそう返す。

そして蓮は安心する。

先輩は良い感じの人だった。

とてもじゃないか噂通りだとは思えなかった

「じゃあ、あの噂は何だったんだ」

千が疑問に思う。

「他の奴から聞いたがその先輩は成績が優秀だったらしい。だからそれに嫉妬した奴が悪い噂を流したんじゃないか」修は推測した。

それは修がサッカーをやっていたころからの経験からだった。

「だからお前は甘いんだよ。お前はもっと人を疑う事を学べ」

修の言葉に悔しいが千は何も言えず去っていった。

奈美とは喧嘩したままだった。

どちらも謝る気がなかった。

そして下校の時、蓮はみんなが来る前に帰ることにした。

奈美に対するもやもやがあったからである。

そして奈美について考えていたらある事が頭をよぎった。

「これは恋なのか?」

「俺は恋しているのか?」蓮は気付いた。

奈美の事が好きだという事を

「もうすぐ奈美に会える。そして蓮。これ以上お前には…」

そう言いながら1人の男が動き出す。



入学式から1年だった。

蓮たちは2年生になった。

しかし奈美と千は喧嘩中だった。

2年生最初の登校日、蓮が歩いているとある話が聞こえてきた。

それは転校生が来るという事だった。

そして教室でホームルームが始まるとそこに転校生が入ってきた。

名前は氷崎大我だった。

彼はクールで無表情な性格だった。

そして数日間は何も起こらず過ごしていた。

しかしこの日、事件が起きた。

千が美術室に入るとそこには血を流していた真木準がいた。

「大丈夫か」

そこにあった布などで応急処置をする。

そして千は何かあったが聞き出す。

「蓮…」準はつぶやく。

千は耳を疑った。

「蓮は最低な奴だった。あいつとは関わらない方がいい」

それを聞いた千は怒りが沸いた。

これが悪夢の始まりだった。

翌日、蓮達7人は屋上にいた。

「そういえば今日は千、来ないのね」美羽が疑問に思うと

「奈美と喧嘩しているんだよ。だから気まずくて来れないんだよ」と月美が小さな声で説明する。

蓮たちはそれを知らなかった。

そこに千がやってきた。

「よぉ千」剛が声をかけるが千はそれを無視して蓮を殴った。

みんな驚いた。

蓮も突然の事で何か起きたか理解できなかった。

「お前がやろうとしたことを見抜けなかったことに後悔している。お前など友なんかじゃない」千は怒りに燃えていた。

そして立ち去ろうとした。

「千、見損なったぞ」修は呆れてしまった。

しかし千は無言で去っていった。

みんな千が何を言っているかよく分からなかった。

「先生に言おうぜ」鎧は言った。

速攻で美羽が鎧を殴り飛ばした。

「そんなことしたら千が退学になるじゃないの」美羽は千を庇う。

そして一度美術室に集まった。

蓮は痛がっていた。

鎧は蓮以上に痛がっていた。

「何があったんだろう」

「分からないわ」

「あいつさっき見抜けなかったと言っているがなんのことだ」修は疑問を言った。

その時、剛は思い出して話した。

「前に蓮と千と美術室で絵を書いていた時、千がトイレに行っている間、剛は水を取り替えようと絵具用のバケツを持って歩いたらつまずいて千のバックを濡らしてしまった。その時に蓮と協力をして蓮が千を別の場所に連れて行っている間に剛が必死にドライヤーなどを使って乾かした。その時は『今日は寒いからバックも冷たく感じる』などど言って誤魔化したもしかしてその件じゃないのか」

皆、困惑した。

まさか3ヵ月前の事を根に持っていたのかと。

「仕方ないね、剛、お菓子を買って謝るしかないね」

「何でこうなるんだよ。というよりあいつどんだけ恨み深いんだよ」

剛はショックを受ける。

放課後、千が屋上にいると奈美がやってきた。

2人はまだ喧嘩中だった。

「千、何で蓮を殴ったの」

奈美はバックの件と勘違いしていたが勇気を出して聞いた。

「蓮が準を殴ったんだよ。あいつは最低な奴だと言っていた」

「千はそんなに蓮の事を信用できないの」

「準がそう言ったんだ」

「私は蓮はやっていないと信じてる」奈美は千の言う事を否定した。

「何?」

「だって私は蓮とずっと一緒にいた。だからこそ誰が何を言っても私は蓮を信じたい」

「お前」

「蓮とは入学してすぐ出会ったの。そして剛と共に私の心に希望の火をともしてくれたの」

「もういい」千は去っていった。

翌日、千は準の所に行った。

そして昨日の事を話した。

しかし準はあまり表情を変えなかった。

しかし千はこれかきっかけで準と友達になれるんじゃないかと思い始めた。

「準を殴った?俺が」蓮は驚く。

蓮は覚えがなかった。

しかし5人は蓮を信じていた。

そして6人が廊下を歩いているとそこに準と一緒に歩いている千を見つけた

「蓮、準に謝る気はないか」千が言う

「何のことだ」蓮は態度を変えなかった。

「とぼけるな、昨日、準を傷つけたじゃないか」千は怒っていた。

「まさかこの学校に泉蓮がいるとはな」そこに大我がやってきた。

準は怯える。

「あいつだ、あいつが殴ったんだ」

千は混乱する。

「あいつは氷崎大我だよ」

「こいつは俺の名前を蓮と勘違いしたようだな」

実は準は大我の名前を蓮と勘違いしていた。

それを真に受けた千も勘違いして蓮を殴ってしまったのだ。

さらに大我は言った。

「こいつは俺から恐喝をしようと美術室に呼び寄せた。でもただの雑魚だったから簡単に返り討ちに出来たけどな。弱い者ほど強い者を避け勝てそうな弱い者を傷つけようとする。まさに雑魚のすることだ」

大我の言葉に千は怒りに震える。

「お前、よくもこんな事を」千は怒りに震える。

「お前が勘違いしただけじゃないか。」大我はそう返した。

「俺、お前に何かしたか」蓮は戸惑いながら聞く。

「まぁお前は分からないだろうけど」

「なんだよ、それ」蓮はさらに混乱する。

「蓮、復讐の心というものは非常に恐ろしいものだ」大我は去っていった。

「すまなかった、蓮」屋上で千は蓮に謝罪する。

「言ったはずだ、人の言う事を鵜呑みにするな」修はそう言う。

「お前の言うとおりだ。修、奈美ごめん」千は謝罪し反省する。

「私も悪かった」

千と奈美は仲直りする。

そこに剛がやって来た。

「千、すまなかった」剛は謝りお菓子を渡す。

「…ありがとう」千は困惑する。

6人は黙っておくことにする事にした。



蓮はこの日、体調不良で休みだった。

7人は校庭で話をしているとそこに先生がやってきた。

「谷月、泉を殴ったという話があるんだがそれは本当か」

7人は黙り込む。

「確かに殴りました」千は正直に話す。

「ちょっと」美羽は慌てる。

そして千は先生に連れていかれて教室で話を聞かれる。

「なんで泉を殴った?」

「それは…」千は何も言えなかった。

何故なら準の勘違いとはいえ、自分の勘違いで殴ったのだから。

その頃、蓮は家でテレビを見ながら寝ていた。そこに美羽から電話が掛かってきた。

「もしもし」

「蓮、大変よ、千が」

翌日、蓮は美術室に入ると6人がいた。

「話は聞いた。まさかそんな事があったとは」

「私たちも先生に説得したんだけど先生は信じてくれないの」美羽は落ち込みながら話す。

「しつこく説得しないといけないようだな」

それは会社に就職して取引で相手にしつこく説得してそして契約してもらえた蓮の経験からだった。

「俺に任せろ」蓮は先生の所に行く。

そして先生に話しかける。

「すいません。谷月千の事ですが彼を何とか多めに見てもらえませんでしょうか」

「殴られた君が言っているとはいえ、やはり人を殴るのは良くないし、それなりの罰は必要だと考えている。それが例えどんな理由があるとしても」

「しかし勘違いしたとはいえ、彼は自分の友達を思ってやった事だし許してもらえませんか」蓮は必死に説得する。

「昨日も川上に言われた。だが駄目だ。月谷には厳しく罰する必要がある」

「そんなに千が嫌いなのですか」

「どういう意味だ」

「彼は確かに人を殴りました。しかし人は誰だって間違った行いをしてしまう事もあります。でもあなた先生なら少しは生徒を大目に見てやる事は出来ないのですか。もし千が退学になればまだ新しい学校に入りなおさなければならないですし。先生は生徒が退学にするのは平気なのですか」

「君は誰に向かってそんな事言っているんだ」

「分かっています。しかしそんな生徒を強く育てるのも先生の役目じゃないのですか」

蓮は出て行った。

蓮は思った。

千は仲間のためとはいえ悪い事をしているのに都合良く物事を言っているがでも美羽の千を思う姿を見て蓮も助けてあげたいと思った。

その頃千は屋上で落ち込んでいた。

これからどんな処分が来るか待っていた。

ふと横を見ると大我がいた。

「お前」千は怒り出す。

「お前のせいで俺これから退学になるかもしれないんだぞ」

それに対し大我は言う。

「殴ったお前に問題があるんだろ。第一勝手に助けて勝手に怒ったのもお前、そして殴る必要もないのに無駄に殴ってそして今この状況だ。そもそも殴る必要が果たしてどこにあった。言葉で解決する手もあったていうのによ」

「お前ふさげるな。仲間を守りたいと思って何が悪い、殴られたお前を見てこれから俺の仲間も同じ目にあうかもしれない、なら守りたいと思うのが普通だろ」千は感情的になる。

「笑わせるな。第一仲間を守りたいと思っているくせにその仲間を信用しないでそのまま一方的に殴ったのはお前の心の弱さだろ」

「何?」

「お前はあいつの事を信用しなかった。あいつが俺を殴ったと聞いてお前はすぐに怒りにかられた。だが少しは殴られた奴を疑おうと思わなかったか、そして少しは泉蓮を信用しようと思わなかったか、あいつかそんなことをするやつじゃないと」「お前の仲間を守りたいと言っているくせにその仲間を信用しなかった、そこに矛盾がある」

千は何も言えなかった。

そして実感した。

自分は今、考えは変わったとはいえ少し前は人の言う事を疑わず簡単に真に受けてしまうそんな少し前の自分を情けなく思ってしまった。

しかしそれとこれとは別だった。

千は大我の胸倉を掴む。

「やめて」

そこには蓮と奈美、美羽がいた。

「駄目だよ。千、そんな姿まだ誰かに見られたら本当に退学になるわよ」奈美は説得する。

すると千は手を離す。

大我は行こうとする。

「待て。お前はどこで俺の名前を知った?」蓮は聞いた。

「お前にはわざわざ話す必要なんてないだろ」大我は答えた。

「俺が何をしたんだ」蓮は余計困惑する。

すると大我は意外な事を話した

「俺の目的は奈美、お前を手に入れる事だ」大我の言葉に奈美は驚く。

「どういう事だ」蓮が聞く。

「お前が知る必要はない」大我は去っていった。

「千、胸倉掴むとか暴力みたいな行動はするな」蓮は注意した。

「そうよ、せっかく私たちが説得しているんだから」美羽も注意する。

「お前たち」千は驚く。

「剛たちもあなたの事を思っているわ、大我は今は放っておいてあなたの処分を消す事が大事だよ」

それを聞いた千は落ち着く。

放課後、千が帰ろうとした時、そこに先生がやってきた。

「谷月、お前の処分の事だが…今回は大目に見てやる事に決定した」

千は驚く。

「お前の仲間たちが説得してくれた。お前がやった事は悪いがそれは悪意からではなく、仲間を思う気持ちというのを考慮し、今回だけ多めに見てあげる事にした」

「ありがとうございます」

「もう2度とこんなことはするな。次はないからな」先生はそう言い去っていった。

翌日、「ありがとう蓮、美羽」千はお礼を言う。

「いいのよ、別に」美羽は笑顔だった。

「しかし気になるのがなぜ大我は美羽を狙うんだ」修の疑問にみんな考える。

「分からないが今は悪人扱いするのはまだ早いかもしれない」蓮はそう言う。

しかし蓮は気になっていた。なぜ大我は奈美を狙っているのかそれが疑問だった



夏休み、美術部が終わり、みんな玄関に行くとそこには大我がいた。

千はこの間の件もあって大我に怒りを持っていた。

「大我、お前は何が目的なんだ」蓮は大我に問う。

「前にも言ったはずだ、お前に関係ないとな」大我の返答は同じだった。

剛は話が見えなかった。何故なら唯一大我の本性を知らなかったからだ。

「もしお前が奈美と付き合っているのだとしたら俺は許さない」大我はそう言い残し帰っていた。

「あいつ…」蓮は混乱する。

帰り道、重い空気の中歩いているとそこに不良気質の男が歩いてきた。

「よぉ月美」月美は驚いた。

「あなたは?」奈美が聞くと月美は答えた。

「私の兄」

「月美、お金くれないか?」男は月美に要求する。

月美は驚いて逃げていく。

「まぁいいか」男は立ち去ろうとした。

「待て、久しぶりに妹と再会していきなりお金を要求するとは随分変わっているな」

修の言葉に男は胸倉を掴む。

「ガキが何、喧嘩腰にいきがっているんだよ」

6人はまずいと感じるが男は手を放し去っていった。

6人は安心した。

郷は月美を追いかけようとした。

「そっとしてやれ」蓮は止める。

翌日、授業が終わって月美が帰ろうと窓を見たらそこに兄が立っていた。

月美は怖くなる。

「どうした?」奈美と修がくる。

そして男に気付いた。

「いくぞ、鎧」

修は鎧を連れてその男の所に行った。

鎧はビビっていた

「あんた、お金のことか」修は聞く。

「ガキには関係ねぇ」

「言っとくけど俺は権力者の息子だぞ」

「だからどうした?」男は鎧を睨み付ける。

「ごめんなさい」鎧は修の後ろに隠れる。

男も去っていった。

その後、8人は海神公園に集まる。

「月美、あの男どういう奴が教えてほしい」修は頼む。

しかし月美は黙るだけだった。

「もしかしたら私たちなら何とか出来るかもしれないよ」奈美の説得に月美は話した。

「兄は不良気質な人で両親のお金を取ったり家で暴れたり、学校でトラブルを起こしたりと問題ばかり起こしていたの、でもそれでも兄は変わると信じていたの、でも中々変わらずそして自分が中学生の頃に兄は出ていったの、しばらくして兄から電話があったの、その内容が『母のダイヤの指輪を持ってきて』だったの。その時にもしダイヤを持って来れば家に戻ると言ってきたの。それを信じて兄に渡した。でも戻ってくるかと思ったけど結局、戻らなかったし、その後両親には怒られ、母の宝だったダイヤの指輪を失った」

それを聞いた蓮はそれが月美が男嫌いになった原因だと感じた。

剛は自分の兄と重ねていた。し

かし同じ兄でもなぜここまで違うんだと。

「あいつはお金だけが目的だと思う、電話が来ても無視しろ」修は警告する。

「でもそれは…」

「俺も修と同じだ。あの男からは妹を利用してお金を手に入れようという気しか感じな蓮も言う。

「月美は何も言えなかった」

夜、さっそく月美の家に電話が来た。

兄だった

「月美、お金が必要なんだ。持ってきてくれ、場所は昔遊んだ公園だ」

「うん」

そして公園に行くと男がいた。

「ありがとう月美」男は笑顔で受け取ろうとした。

「……兄の事を何回も信用したけど今まで何回も裏切られてきた、だから持ってこなかった」月美の言葉に男は豹変する。

「ふさげんじゃねぇてめぇ」

そこには妹よりお金にしか興味のない兄がいた。

月美はショックを受ける。

兄は月美を襲おうとしたがそこに剛と鎧がやってきた。

実は月美が電話を受けたときそばに奈美と美羽がいた。

万が一兄が襲ってきたとき女2人では助けられないと感じたから蓮達に連絡したのである。

そのため蓮、千、修は万が一に備えて後ろでスタンバイしていた。

そして奈美と美羽も側で待機していた。

「大丈夫かな」

奈美は不安だった。

「大丈夫だ。切り札があるんだから」修は奈美を励ます。

興奮する男に対して剛は言った。

「俺の兄貴は優しくて頼りになるいい兄貴だった。今は病気で死んでしまったがでも最後まで治ると信じて諦めず戦っていた。それに比べてお金のために妹をも利用する、あんたは幼稚だ」

蓮たちは剛の兄の事を初めて知って動揺する。

「なんだと、てめぇ」男はさらに興奮するがそれもここまでだった。

「これを見ろ」鎧はあるものを見せる。

それは今のジャネラルコーポレーションの御曹司の証拠となる現役の社長、そして1つ前の社長だった祖父の保険証だった。

そしてその社長と一緒に撮った写真だった。

男はビビった。

何故ならジャネラルコーポーレーションは世界的大企業で政府との関係も深い企業だった。そんな企業の御曹司といったらとてつもない権力者ということだ。

さらに鎧は続けた

「その気になればあんたの今までやってきた事に対してこの事を大問題にする事も出来るんだぜ」

男は本当だったのかという顔をしてビビって逃げていった。

「俺たちの出番はなかったか」蓮たちが出てきて安心する。

それと同時に6人は驚く。

まさかあの大企業の息子だったことに。

しかし月美は驚かなかった。

何故なら薄々それを勘付いていたから。

そして奈美はある違和感を感じ話した

「なんて家を追い出されていた兄が月美の通っている高校を知っていたの?」

修はある予測をしていた。

そしてそれは的中する。

その時雨が降ってきた。

みんな帰るが蓮だけ傘を持っていなかった。

「入れてあげる」奈美は言う。

蓮は断ろうとしたがしかし雨だったため入ることにした。

蓮はドキドキしていた。

心はとても熱くなっていた。

そして蓮は奈美と別れた。

蓮は何か寂しかった。

一方、剛と月美は一緒に帰っていた。

「お兄さんいたんだ」

「まぁな。もう死んでいるけど」

「剛のお兄さんが羨ましい」

「俺が言うのも変だが俺も兄貴の事は憧れていたからな」

そんな会話をしながら剛と月美は帰っていった。



朝、蓮が高校に登校するとそこに羽野洋二が椅子に座っていた。

蓮はあまりの出来事に混乱した。

「これはどういう事だ。いや、時間軸を考えたら辻褄は合う。でもこんな事が」

「どうした蓮」そこに剛と奈美がやってきた。

「なんでもない」蓮は行ってしまう。

しかしかなり動揺していた。

そして授業中もずっとそれを考えていた。

「まさかそんなことが」

昼休み、7人は屋上で喋るが蓮はずっと考えていた。

「どうした蓮?」

「何でもない」

蓮はそう言うがしかし実際は大丈夫じゃなかった。

何故なら洋二は蓮が勤めていた会社の先輩だった。

蓮が先に就職していたため歳のほうは洋二が上でも立場は蓮の方が上だった。

しかし洋二は後から入社したとはいえ誰にでも優しくて困った時は助けてくれる頼もしい人だった。

そして人を毛嫌いしていた蓮もその先輩の事を心から尊敬していた。

しかしある日、会社で横領が発覚した。

その時、洋二は驚くべき事を話した。

「泉が犯人ですよ、俺見ていました。泉が3000万円横領しているところを」洋二はみんなの前でそう言った。

蓮は戸惑う。

そして警察が来て蓮は事情聴取される。

「私はやっていません」蓮は必死に訴える。

しかし警察はあまり信用していなかった。

その時、蓮はあることに気付いた。

なぜ洋二はその事を知っていたのにすぐに部長に報告しなかったのか、早く報告しないとそのお金が使われて最悪の場合、全額使われてしまわれるかもしれないはずだがなぜ3000万と詳しい額を知っていたのか、普通盗んだことは分かっていても詳しい額までは分からないだろう。もし分かるとしたら俺のすぐ後ろから見ていた事になる、そしてなぜすぐに蓮がやったことを断言できたのか、まるで前から準備しているようだった。

蓮は信じたくなかった。

しかしおかしな所が多かった。

蓮は迷いながらもその事を警察に教えると警察はそれに興味を持ちすぐに洋二を調べその結果、パソコンについた指紋などが証拠で洋二は逮捕された。

蓮は尊敬していた先輩に危うく濡れ衣ぬを着せられかけたことがきっかけで人を心から信用できなくなり元々とはいえさらに人付き合いに対し疑問を感じ始めた。

それとは裏腹に会社は蓮を称賛した。

もし蓮がそこに気付かなければ3000万円はそのまま使われていたかもしれなかったから。

実は蓮は知らないが蓮が出世できたのはその件もあっての事だった。

しかしその結果が無駄な人付き合いはしないというものだった。

蓮はそんな事を思い出しながらジュースを買いに自販機に行くとそこに洋二がいて財布を出した。

それは明らかに剛の財布だった。

「これはどうしたらいいんだ」蓮は迷う。

ただでさえ心を傷めていたのにさらに追加攻撃をされた感じだった。

蓮は迷いながらも先生に報告し洋二は先生に呼ばれた。

そして財布を盗んだ罪を認めた。

「ありがとう蓮」剛は喜んでお礼を言う。

しかし蓮は嫌な気持ちだった。

「やっぱり言わない方がよかったかも」

それは説得して取り戻せばよかったという事だった。

「甘いんだよ。そんな事したらそいつは反省しないでまだ同じ事をするんだよ」

修はそう言う。

それは間違っていなかった。

「どうなるんだろうね」美羽は呟いた

「でも犯人もこれで反省して変わってくれるよ」蓮が返答した。

「人は簡単に変わらない。気をつけたほうがいいな、ああいうのは、仕返しに来るかもしれないからな」

そう言いながら大我がやってきた。

「いや、人は変われる。お前に奴の何か分かる?」蓮は強く主張する。

それは尊敬する先輩だったから信用したかった。

そして何よりこの世界だけでも洋二が救われてほしいという願いでもあったからだ。

「じゃお前はあいつの何を分かっている」

大我の質問に蓮は何も言い返せなかった。

大我は去っていった。

夜、蓮は嫌な気持ちから抜け出せないでいた。

――いったいどうすればいいんだ

蓮は心の中でそう考えながら外食をしていたが全然味がしなかった。

その時、遠くを見るとそこには中学の同級生が友達と楽しく食事をしていたのを目撃する。その同級生はこの世界の人間だから詳しく言えば相手から見たら蓮とは面識がない。

しかしその同級生は勉強についてこれなかった事や周りとうまく打ち解けられなかった事が原因で不登校のままほとんど学校に来ていなかった生徒だった。

だから別世界とはいえ、その同級生が笑顔で食事をしているのを見て救われていて蓮はうれしく思った。

「きっと先輩も変われるはずだ」蓮は元気を取り戻し食事を終え家に帰った。

翌日、8人が屋上にいるとそこに洋二がやってきた。

洋二は反省していることもあって今回は処分なしだった。

とはいえみんな警戒する。

「遊ぶ金が欲しかったんだ。だからついやってしまった。ほんとにごめんなさい」洋二と謝る。

蓮は思った。

大我の言う事は間違っている。

人は変われると。

そして蓮は洋二に話した。

「あなたもほんとは盗みをやってて辛かったんでしょう。そういうことをして。だからもうこんなことはしないでください。あなたが頑張ればきっと変われます。だからこんなことがあっても諦めないでください」蓮は心を込めて話す。

きっと変われると。

「人の物を盗んでいるときに俺はすごい罪悪感にかられていた。だからもうこんなことはしない」

そして先輩は教室に戻った。

しかしその期待は裏切られる。

数日後、洋二はまだ盗みを働いた。

蓮はショックを受けていた。

美羽は声をかけようとしたが修は止める。

「一体何でだよ」蓮は叫んでしまう。

「言っただろ。人は簡単に変わらないと、いや、変えることは出来ない」大我のそう言われているようで蓮は悔しく感じる。

しかし今回ばかりは彼の言う通りになってしまった。

別世界とはいえせめてこの世界だけでも洋二を救いたいと蓮の思いは届かなかった。

そして気付いた。

例え自分が違う道を歩んでも変わらないものもあると



12月になりクリスマス時期になった。

鎧が蓮達と別れてしばらく歩いているとそこに一台の車がやってきた。

窓が開くと乗っていたのは鎧の父親だった。

「久しぶりだな。鎧」

そういうと鎧も返事した。

父親は鎧にある提案をした。

「鎧、3年生の4月から新しい高校に入学しなさい」

「嫌だよ、何で転校しないといけないの」鎧は拒否した。

「本当はもっと良い高校に行かせたかったがお前の意見を尊重して今の高校に行かせてあげたんだ」

「もし高校に転校すれば今よりも良い高校生活を送れるかもしれないぞ」

それを聞いた鎧はある事を考えた。

この学校にも飽きていたし転校すればまだ良い高校生活を送ることが出来ることに気付いた。鎧は転校することに決めた。

「勝手な事を言うがもしそうなると友達ともお別れだな。ちゃんと別れの挨拶をするんだぞ」父親はそう言う。

「別にそんな悲しくもないけど」

鎧はこんなにも蓮達と一緒にいながらも平気で仲間を捨てる事に躊躇がなかった。

翌日、蓮たちは美術室にいた。

そこに鎧がやってきた。

鎧は笑顔で転校することを蓮達に話した。蓮達は驚いた。

「家の都合なの?」美羽は聞く。

「この高校にも飽きていたんだよ、だから転校する事に決めたんだ」鎧は笑顔で言うがみんな呆れていた。

「別にお前の勝手だが何も言う気にもならないな」

修は教室に出る間際にそう返した。

しかし鎧は修の言いたい事に気付いていなかった。

「そうか。それは悲しいものだな」

千は棒読みでそう言い修に続いて教室を出た。

教室は6人になった。

「残念だよ。鎧、家の事情とかならまだ仕方ないけど飽きたという理由だけで転校しようとするなんて」奈美は怒っていた。

そして奈美も出ていった。

「奈美待ってよ」剛が追いかける。

それに続いて蓮も外を出る。

気付けばこの部屋には鎧と美羽、月美だけになってしまった。

「今のあなたじゃきっと別の高校に行っても良い高校生活は送れないと思う」

美羽も教室を出ていった。

月美は目を合わせようとしなかった。

教室には静寂しかなかった。

夜、鎧の所に父親がやってきた。

鎧は希望の高校を言うが父親が伝えたのは予想外のことだった。

「転校先は男子校だ」

「男子校、いやだ、なんで男子校なんだ」鎧は反論する。

「高校は勉強するところだ、ただ周りが男だけで対して変わらないだよ」父親は鎧の意見を聞かなかった。

夜、鎧はがっかりしながらベランダでスマホのアルバムを見る。

そこには1年生の文化祭で書いた絵があった。

特に何も感じなかった。

翌日、美術室に行くとそこには月美以外誰もいなかった。

「みんなは?」

「みんな体調不良やオープンキャンパスなどで休んでいるよ」

すると月美は聞いた。

「みんな鎧に対して呆れていたよ。特に美羽は」それを聞いた鎧は無反応だった。

「みんなそんな理由で友情を切ろうとすることに呆れていた。というより金持ちでチラホラされることがそんなにいいの」

「別にいいだろ」

「………私は男が嫌いだったけどでも今は鎧の事を友達だと思っていた。だから悲しい」月美は道具を片付け教室を出ていった。

鎧は1人になった。

「だからなんだよ」鎧も美術室から出て行った。

鎧は屋上に行った。

そしてスマホのアルバムを見るとそこには8人で撮った記念写真が目に入った。

鎧は7人との思い出を振り返る。

出会った事、一緒にお祭りに言った事、文化祭の事、時にシリアスになった事もあったがしかしそれでも一緒にやってきた仲間。

「転校するようだな」そこに大我がやってきた。

「そうだ。でも望んだ高校に行けないかもしれないから」鎧が落ち込みながら話す。

「愚かだな。せっかく手に入れた友を簡単に手放すなんで。友なんて簡単そうに見えて実は作るのは難しいというのに」大我は去っていった

鎧は気付いた。

飽きたという理由だけで友情を捨てようとした愚かさを。

鎧も最初の頃の蓮と同じように友情を分かっていなかった。

蓮達のことをただの引き立て役としか見ていなかったことを。

でもそんな蓮たちと別れるのが嫌なことに気付いた。

それはすでに引きたて役以上の関係を手に入れたから。

翌日、12月25日のクリスマス、蓮達が屋上にいるとそこに鎧がやってきた。

「転校はやめた」鎧が話すとみんなに謝った。

「俺は愚かだった。ただ飽きたという理由だけで高校を転校しようとして。でも気付いた。俺はただ今の現状から逃げようとしていただけだと。そんな俺が転校したってまだ同じことを繰り返すだけだ。だから俺は誓う。今、俺は大我を乗り越えて再びモテてやる。そしてお前たちのことを引き立て役だと思っていたがでももうそんな感情はなくなっていた。ごめん。本当にすまなかった」

みんな何か違うなと思いながらも鎧を許した。

「あなた私たちのことを引き立て役だと思っていたの」そこには怖い美羽がいた。

鎧は思った。

余計なことを言ってしまったと。

「まぁいいじゃないか。今は違うんだし」千が美羽をなだめる。

そして蓮たちは下校する。

蓮達が町を歩いていると雪が降ってきた。

クリスマス当日の出来事だった

大我は屋上で数年前に見たあるクリスマスツリーの事を思い出していた。

鎧は皆にどっか食べに行こうと提案した。

鎧の奢りとして。

そしてみんな鎧と一緒に歩いていく。

その後、鎧が家に帰るとそこに父がいた。

「転校をやめたい」

「驚いたよ。さっき家の前にいたらサンタクロースがやってきてな。それで説得されたんだ。鎧の転校の件はなかった事にしてほしいと」

「何言ってんだよ、父さん」鎧は冗談にしか聞こえなかった。

「いや、ほんとに見たんだよ」父は本気っぽく見えた。

何だが分からないが父親は鎧の転校をやめる事を了承してくれた。



美羽は考えていた。それは男友達の事だが蓮、剛、千、鎧は友達という感じだったが修にだけ何か違う感情を持っていた。

分からなかった美羽がクラスの女の友人に話す。

「それは恋だよ」

「まさか」

するとその友人は占いを始める。

すると次のような結果が出た。

「苦しみの果てに好きな人と結ばれる。そしてその切り札は意外な人物である。いいじゃん。美羽」

「でも意外な切り札っで誰?」

「鎧くんとか剛君とかじゃない」

「でもあの2人が」美羽は疑った。

でも美羽は疑う反面、うれしかった

昼休み、屋上に行くとそこに修だけがいた。

美羽はやはりときめく。

「みんなは?」

「まだ来ていない」

「そう」

美羽が教室に戻ろうとした時、突然修は美羽の腕をつかむ。

美羽は一瞬頭の中が真っ白になった。

修は強く言った

「ずっと美羽の事が好きだった」

美羽は予想外の出来事に言葉が出なかった。

そこに蓮達が来る

「何やってんの」

「何でもない」

修は帰っていく。

夜、美羽はベッド寝ながら考えていた。

昼の出来事を考えていた。

修にいきなり手を握られて告白された事がうれしかった。

でもなぜか迷っていた。

本当に修の事が好きなのか。

翌日、「美羽、これ修君に渡してほしいんだけど」

間島朝美という友人が美羽に頼み事をしてきた。

それは修へのラブレターだった。

美羽は一瞬迷うも受け取る。

しかし美羽はフラれるような気がした。

何故なら朝美は顔こそ普通より少し上だが下品で言葉遣いが汚くそして大口で笑いながら手を叩く等美羽とは真逆の下品な女だった。

そのため男子からはあまり良く思われていなかった。

昼休み、美羽は屋上にいた。

元気がなかった。

奈美が美羽に話しかけてきた。

「美羽、元気ないけどどうしたの?」

「何でもない」

「奈美、人を好きになるってどういう事?」

「え? それは…私も分からない。でも人を好きになることはいいことだと思うし正直に生きれた方が良いと思う。でも私も人の事言えないけど」

「奈美は好きな人いるの?」

「いる」

「いるの。誰?」

「言えないよ」

「そうだよね」

「でもお互い頑張ろう」

「うん」美羽と奈美はそんなやり取りをした。

美羽は元気にはなれなかったがしかし奈美に励まされた気分だった。

「何やってんだ」

そこに千がやってきた。

「別になんでもないよ」美羽と奈美はそう言う。

「ねぇ、修って彼女とかいるの?」美羽が千に聞く。

「彼女はいないらしいけど好きな人はいるらしい」

「それ誰?」

「怖いぞ。美羽」

美羽の迫力に千は驚く。

「ごめん」

どうやら千は切り札ではないと感じた。

美羽は部屋に戻ろうとすると廊下で大我に遭遇する。

「随分、元気ないようだな」

「関係ないでしょ」

「正直に生きたほうが後々、後悔しないで済むぞ」

大我の言葉に美羽は戸惑う。

それはさっき奈美に言われた事でもあった。

「あなた奈美と付き合っていたの? 随分奈美に執着するけど」

「俺は奈美のことが好きだし愛していた。でも奈美はそのことを知らない」

美羽は怖くなった。

まるで狂気に満ちたストーカーみたいで

「そういえばさっき修が階段から落ちて保健室に行った」

美羽はすぐに保健室に行った。

そこには修だけがいた。

「修、大丈夫?」

「大袈裟だろ」

美羽は安心した。

「何だその紙は?俺宛だが」

美羽は迷いながらも朝美からと手紙を渡した。

修はそれを読む。

修は理解した。

「朝美は修の事が好きなの。だから私は…」

「美羽、昨日の話の件は?」

美羽が黙っていると修は美羽の腕をつかみベットに仰向けに倒しこむ。

そして修は美羽の上に乗っかり手を握りしめる。

美羽は心臓が止まりそうなぐらいに胸が鼓動した。

「俺は美羽の事が誰よりも好きだ。1年の時、俺を先輩から助けてくれた時から美羽のことが好きだった」

それを聞いた美羽は我慢していた気持ちをほどき涙を流す

「私も修の事が好きだった。でもずっと言えなかったの」

修は美羽にキスをする。

その日のうちに美羽は修と付き合う事になった。

しかしそれはあえて蓮達には言わなかった。

翌日、修は朝美に付き合えないと返答した。

「どうして!正直に言って」

「言いたくないんだがお前、手を叩いて笑ったりするだよ、後、デカいとかなんとかかよ、

なんとかじゃねぇ~よとか言うだよ。俺はそういう下品な女が苦手なんだ」

「そんな」

朝美は泣いて去っていった。美羽は陰から見ていた。

心が苦しかった。

「俺もそういうことは言いたくなかった。でもあいつの下品さは凄いからそこを直さないと別の男を好きになってもその男に好きになってもらえないと思って」

言った内容は悪いが修は忠告のつもりで朝美に言ったつもりだった。



美羽が修と付き合い始めて1ヶ月たっだがお互いまだ素直に向き合えていなかった。

放課後、剛と鎧が外で待っていると蓮と奈美、千、月美がやってきた。

「一緒に帰ろうぜ」剛が誘う。

「そういえば最近、放課後、美羽と会わないな」鎧が疑問を口にした

「そういえば最近、修も放課後、合わないな。どうしたんだ」千も疑問を口にした。

「修は絵を描いているんじゃないの」

「そうかもしれないな」奈美の言葉に千は納得した。

その頃、修は美術室で絵を描いていた。奈美の予想は的中していた。

そこに美羽がやってきた。

「今日、美術部じゃないのにやるなんで真面目だね」

「書きたい絵があるからな。だが今日は調子が悪い」

「じゃ今日はもう帰らない」

「そうだな」

2人は玄関に行く。

2人きりで帰りたいため敢えて蓮たちと時間を被らないように時間をずらしていた。

美羽が修と帰っていると修はいきなり美羽の手を繋ぐ。

美羽は修の一言一言に緊張していた。

それは友達の時にはなかった感覚だった。

次の日、8人は屋上にいた。

千は鎧とキャッチボールをして美羽は奈美と月美と話していた。

その時そこに朝美がやってきた。

「どうしたの?」美羽が聞くと突然ビンタされる。

みんな驚く。

「もしかしてお金かな」そう言う鎧を美羽はビンタした。

「私が修の事が好きなの知っていたのに修と付き合うなんて」それを聞いて蓮達は驚く。どうやら誰かに見られてしまったようだった。

「そうなの? 知らなかった」のんきに話す鎧をまだ美羽は突き飛ばす。

修は黙ったままだった。

「お前、黙ってないで何が言って助けろよ」

千は小さな声で修に促すが修は黙ったままだった。

「お前の勇気と運がなかっただけだろ。もっと早く行動してればよかったんだよ。それと手を叩きながら笑うなどの下品な行為も自分の姿を醜くするだけだ」

声を方向を見ると屋上のタンク部分に大我がいた。

そして飛び降りてきた。

朝美は泣いて出ていった。

「お前」

「彼女が困っているのに助けないお前よりましだろ」

修は何も言えなかった。

大我は去っていった。

8人を重い空気が包んだ。

それから数日間、美羽は冷たい目線を浴びて落ち込んでいた。

そして美羽は孤立していきストレスが溜まっていた。

その間、敢えて修との接触を敢えて避けていた。

それが1週間続いた。

帰り道の事、「困ったもんだな、いったいどうすればいいんだが」剛は心配だった。

「どうすればいいんだよ」奈美は落ち込んでいた。

「大丈夫だよ、そのうちなんとかなるさ」鎧は奈美を励ます。

その頃、校庭では美羽が落ち込んでいた。

修は美羽の所に来て声をかけた。

「やめてよ」

それは周りに見られたらまだなんか言われるからであった。

美羽が嫌がると修は反論する。

「何でだろ。」

「修には分からないのよ」美羽は涙を流す。

「……もう駄目だよ。私達付き合わないほうがよかったのよ。別れよう」

「そうだな」

こうして美羽と修は別れる事を決意した。

美羽は泣きながらそう言い去っていった。

本当は修の事が好きだった。

修も悲しかった。

悲しすぎて壁にもたれつく。

翌日、美羽が屋上に1人で美術室にいるとそこに奈美と月美がやってきた。

「大丈夫、美羽」月美はとても心配する。

「大丈夫よ」美羽は笑顔で返す。

無理していたようだった。

「でも意外だった。美羽の好きな人が修だと」奈美はそう言う。

「修の事はずっと好きだった。だからいつか結ばれたいと思っていたの、でもまさかこんな辛い思いをするなんて」

「でも負けちゃだめだよ。美羽、両想いなんて滅多にないことなんだから」

美羽は言えなかった。

昨日修と別れた事を。

「でも安心して。私たちはどんなにみんなが美羽を批判しようが私たちは美羽から離れない」

美羽は感動した。

その頃、修は屋上で落ち込んでいた。

美羽とは距離が出来てしまい参っていた。

そこに大我が来た。

「何の用だ」

「別にただ随分、落ち込んでいるなぁと思って」

「本当に好きなら守ってみろ。まだ守ることができるんだから」

――何言ってんだ……

修はそう感じたが考えてみると美羽はいつも自分を助けてくれた。

先輩たちからも怖かったはずなのにそれでも助けてくれた。

それに比べて自分は美羽が朝美に責められても黙っていた。

そして美羽と別れてしまった。

自分が情けないと感じ始めた。

修は決めた。

そして修は走っていく。

サッカーは出来なくても美羽は失いたくない。

その頃、美羽が校庭の真ん中を歩いていると修がやってきた。

クラスの女子たちはソワソワしていた。

美羽は戸惑った

「ちょっとみんな見てるし、やめてよ」

「そんな訳にはいかないんだよ」

「どういうこと」

美羽がそう言った瞬間、修は美羽を強く抱きしめる。

美羽は頭が真っ白になった。

皆、歓声をあげる。

「ちょっと修…やめてよ」

「やめない」

そこに蓮達6人も来た。

「あいつら何してんだ」

驚きながらも遠くから見ていた。

大我は、屋上から見ていた。

「俺はもう逃げないし、隠さない、美羽の事を守ってみせる」

「例え学校中の奴が美羽を批判しようとも俺が美羽を守る。

だから俺とまだ付き合ってくれ」

そういうと美羽は感情が高ぶり涙を流し修の背中に手を回す。

「私もごめんね。怒ったりしばらく避けていて」

「いいんだ。美羽、俺と付き合ってくれるか」

「うん」

2回目の告白だった。

修は、顔をあげ美羽の目を見ると修は美羽にキスをする。

それを見ていた生徒たちはとてつもない歓声をあげる。

「感動的だな」剛は感動していた。

「美羽もずっと苦しかったのよ。でもよかった美羽、報われて」奈美は知っていたようだった。

そこに雪が降ってきた。

「雪だ」

「何かいいね。この雪」そんな会話をしている内にみんな飽きて帰っていた。

気付けば校庭にはほとんど人がいなかった。

「ドラマを見ているような感じだな。いやドラマ以上だ」

2人が振り返ると蓮たちが歩いてきた。

「早く帰ろうぜ」

蓮達は敢えて触れなかった。

しかし美羽と修は嬉しかった。

そして8人は帰っていく。

その姿を大我は屋上から見ていた。

翌日、「今回ばかりはお前に感謝する。だがお前にも大切な人はいるのか」

修は何となく大我にお礼を言いながらも聞く。

「さぁな」大我はいつも通りだった。

そして蓮達は3年生になった。



鎧の家にマイケルがやってきた。

「久しぶりだね、マイケル」

「久しぶり鎧」

2人は幼い頃からの友達で仲良しだった

2人は椅子に座り色々な話をして盛り上がる。

その時マイケルは聞いてきた。

「鎧、高校は楽しい」

「楽しいよ。でも結構いろいろあるけどね」

「この間は大変だったよ」

それは昼休み蓮と剛とキャッチボールをしていると鎧は奈美の話をした。

「そういえばこの間、奈美が楽しそうに男と歩いていた」

「何!」蓮は思わず強めに投げたボールが鎧に当たった。

「ごめん」蓮が謝る

そのボールは川に落ちた。

鎧が拾おうとする。

「何やってんの鎧?」月美は鎧の肩を触るが力が強くて川に落としてしまう

「ごめん鎧」月美は謝る。

「大丈夫か?鎧」剛が走ってくるがタックルされて鎧を突き飛ばす

鎧はボロボロだった。

「そんなことがあったんだ」マイケルは笑う。

「大変だったな、あの後」

するとマイケルは聞いた。

「可愛い子っていないの?」

鎧は答えた。

「いるよ。でも怖いけどね」

ある日の放課後、鎧が屋上に行くとそこに修がいた。

何か呟いていた感じだった。

「どうしたんだ、修」声をかけると

「別に何でもない」

そこに奈美と千、美羽がやってきた。

修と美羽はお互い顔を合わせられなかった。

「あれもしかして修、美羽の事好きなの?」鎧は冗談のつもりで言った。

すると修は恥ずかしくなって逃げた。

「バカ!」美羽は鎧をビンタする。美羽も出て行った。

「しまった。修に家の鍵、預けっぱなしだった」

鎧は実家暮らしだったがしかし両親は外国に行っているため家に鎧1人だけだった。

鎧は電話をするが修は出なかった。

「千、今日、家に泊めて」しかし千はいなかった

「あいつ何でこんな時にいないんだ」

そして鎧は奈美に今日家に泊めてと頼む

「内に番犬いるけど良い」明らかに奈美は警戒していた。

鎧は他の同級生の家に泊まり次の日修に返してもらった。

「大変だったね」

「ほんと大変だったんだ。

でも後から知ったことだけどその日、修が美羽に告白して返事を貰うまでの間だったらしいんだ」

「でも鎧が羨ましい。そんな友達に囲まれていて」

「まぁね。でも今、問題なのは俺たちを敵視している奴がいるんだ」

大我の事だった。

「彼、寂しいんじゃないの」マイケルは答えた。

「俺もそう思う。だからいつか仲間になれたらいいなと思うんだ」

それが鎧の願いだった。



朝、蓮は遊園地の前で待っていた。

2週間前、美羽の提案で8人で休みの日、遊園地に行こうと約束をした。

そして当日、蓮は1番に待っていた。

「遅いな、何やっているんだ」

そこに美羽から電話が掛かってきた。

「ごめん、風邪引いちゃって今日は行けない」

「分かった。お大事に」

しばらく待っていると今度はメールが来た。

千と修からだった。

千と修もインフルエンザで休むというメールだった。

そこに奈美がやってきた。

奈美の所にも電話があり剛と月美が急用、鎧は親戚の関係で休むと連絡があったようだ。

つまり蓮と奈美だけでありようするにデートみたいになる。

蓮は思った。

――もしかして俺の思いに気付いて敢えて2人きりにしたのだろうか。

「2人だけど行こうか」

「うん」

とりあえず、2人は遊園地に入る。

蓮はドキドキしていた。

「何乗る?」蓮が聞く。

「じゃ観覧車に乗りたい」

そして2人は観覧車に乗るが奈美は怖がっていた。

どうやら観覧車には乗りたかったが高所は苦手なようだった。

奈美は無意識に蓮の手を握った。

蓮は一気に鼓動が激しくなった。

あまりに緊張して今にも逃げたかった。

そんな蓮に奈美は言った。

「降りるまで離さないで」

「いや、俺を掴んでも意味ないだろ」蓮は思わず突っ込んだ。

その後も色々乗っていくが蓮は緊張していてあまり楽しめていなかった。

観覧車から降りた後、歩いているとお化け屋敷を見つけた。

「入ってみるか?」

「うん」

2人はお化け屋敷に入ってみた。

中は暗くて視界がほとんどなかった。

その時、幽霊が出てきた。

奈美はビビってしまうが蓮は全く平気だった。

お化けも引いてしまうほどだった。

2人が歩いていると奈美が蓮の手を繋いできた。

蓮はもう慣れていて平気だった。

2人が歩いていくと出口が見えてきた。

そして2人はお化け屋敷から抜け出した。

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

その後も2人は色々乗って楽しむ。

そして奈美が飲み物を買いに行っている間、蓮は考えていた。

それは奈美の事が好きであり付き合いたいというものだった。

そして戻ってきた奈美は剛たちにお土産を買ってあげようと言い2人はお土産店に寄る。

蓮が選んでいるとそこには恋愛成就のキーホルダーを見つけた。

蓮は奈美に内緒でキーホルダーを購入した。

そして遊園地から出て奈美と別れようとした時、蓮は奈美を呼び止めた。

「どうしたの?」

「やっぱり何でもない」

そして奈美は帰ろうとしたその時、蓮は聞いた。

「奈美、好きな人いるか?」

「……うん」

蓮は今まで味わったことがなかったほどのショックを受けた。

「じゃあね」奈美は笑顔で帰っていった。

奈美の笑顔と裏腹に蓮は悲しんだ。

きっとその好きな人は自分じゃないのだから。

蓮は考えた。

そして思いついた。

剛だと。

蓮の心は空気が抜けたような感覚であった。



放課後、大我は屋上で何となく歌を歌っていた。

その歌声はとてもきれいで上手かった。

するとそこに蓮と月美がやってきた。

大我はそれに気づいて歌うのをやめた。

「今の歌って何?」2人は興味を持つ

「別に大したものじゃない」大我は去っていった。

「今の歌声、とてもよかった」

「意外だったな、まさかあいつ、あんな歌声で歌うとはな」

2人が感心しているその頃、大我が花壇に行くとそこには青井亜美がいた。

彼女はいつも1人でいた。

彼女は人とどう関わったら良いか分からなく誰とも関われないつまらない毎日を送っていた。

「あなたこの間の?」亜美は大我に気付いた。

数日前、亜美が屋上に行くとそこで歌声が聞こえてきた。

それは大我だった。

気配に気付いた大我は去ろうとしたが。

「もしよかったら歌を聞かせてくれない?」

「何で歌わなきゃいけない」

「とても綺麗だったから」

大我が行こうとした時、亜美は言った

「あなたもずっと1人だよね」

すると大我は振り返る。

「そうだ。だが俺は1人でいい。無意味な友をたくさん持つよりもただ1の人が俺を愛してくれれば」

「そうなんだ」

彼女は不思議に思った。

自分は友達が欲しいのに対し大我は友達を求めないという同じ境遇でも考えは逆であった。

しばらくすると大我は聞いた。

「なんでそんなに聞きたい」

「歌を聴くと寂しさが紛れるっていうかなんていうか…」

それを聞いた大我は自分と重ねる。

大我も同じだった。

夜、亜美が歩いていると路上ライブをしている人たちがいた。

しかしその歌は最悪だった。

うるさい、歌下手、歌詞はありったけというものだった。

亜美は大我が歌手に感じてしまうほどだった。

翌日、蓮たちは屋上にいた

「今日、カラオケ行かない?」美羽の誘いに蓮は断る。

「付き合い悪いな。というより今まで一緒にカラオケ行ったことないな」

「俺はうるさい音が嫌いなんだ」

「そうなんだ」

その後、8人が廊下を歩いていると歌声が聞こえてきた。

その歌はきれいなものだった。

音楽室に入ってみるとそこには歌っている亜美がいた。

その時、亜美は気付いてやめた。

「いいね、今の歌」剛が褒める。

亜美は無視して去ろうとした。

「今の歌、誰に教えてもらったの」月美は思わず聞いた。

「大我君に人に教えてもらった」

「大我が」蓮たちは驚く。

「私、ずっと1人でもう高校やめたいと思っていたんだけど大我君のその歌を聞いたら元気が出てきたの。それでもう1度聞きたいと思ったんだけど駄目だった」

亜美は悲しそうだった。

「そういえばあいつ、ずっと1人ぼっちだよな」蓮はそれに気付いた。

そして自分も同じだった事に気付いた。

もしこの世界に来る事がなかったら俺はずっと1人だったかもしれない。

そういう意味では大我はもし自分がこの世界に来なかった場合の自分を具現化したもののように感じてしまった。

放課後、大我が帰ろうとするとそこに蓮たちがやってきた。

屋上に場所を移す。

「大我、亜美さんに歌、聞かせてあげてくれない」

「断る。俺は歌手じゃないんだ」

「俺も聞いてみたいな、その歌」鎧が発言した。

「だから俺にも聞かせてくれないか?」鎧は頼む。

大我は迷う。

しかし去っていった。

「あいつ、なんてこんなにも冷たいんだ」千は腹を立てる。

奈美は走り出す。

探しながらしばらく走っていると歩いている大我を見つけた。

「何の用だ」

「それならせめて歌詞を教えてくれない」

大我は考える。

しばらくすると蓮たちの所に奈美が戻ってきた。

手には紙を持っていた。

「それ何?」美羽が聞くと

「大我が歌っていた歌の歌詞だよ」

「あいつ教えてくれたのか」

しかし大我はこの後、後悔することになる。

夜、蓮が家に帰るとそこに天使が待っていた。

「高校生活も後半を過ぎましたね」

「そうだけど何で今なの?」

「もっと早く来てもよかったんじゃないのか」

その時、天使は手から赤い光線を放つ。

蓮が目を覚ますとそこは知らない高校の前にいた。

その高校は岸牧高校だった。

岸牧高校は優ヶ丘高校と同じチャレンジスクールであり校則は厳しいため不良がほとんどいない高校でもあった。

「ここは」蓮が聞く。

「ここは氷崎大我が通っていた高校です。私は相手の記憶を見せる事が出来るのです。ただしプライパシーに関係するものは見せられませんので」

するとそこに好青年が歩いてきた。

蓮は目を疑った。

それは大我だった。

「みんな早く来いよ」

「おい待てよ。大我」

大我はとても笑顔だった。

それは今とはまるで別人のようだった。

「なぁ、大我、ちょっと文化祭のバントの練習をしようぜ。」

「そうだな、少しやっておかないとな」

そして大我と仲間たちは楽器を出して準備を始めた。

そしてボーカルの大我は歌い始めた。

「大我はバスケット部ですが音楽も出来るため文化祭で彼は一日限りのバントを結成しました。勿論タク部との両立で」天使は説明した。

その時、蓮は現実の家に帰ってきた。

「おい、続きは?」

「今日は疲れたのでここまでです」

天使は光のドアを開けて帰って行った。

しかし蓮は不思議に思っていた。

なぜ大我はあんなに変わってしまったのか。

翌日、授業前に先生が話した。

「1年生の青井亜美さんが交通事故に遭いました」

蓮たちは驚く。

さらに先生は話した。

「命に別状はありませんでしたが後遺症で耳が聞こえなくなる可能性があります」

昼休み、8人は集まる。

「何でこんな事になっちゃたの」奈美はショックを受ける。

みんな何も言えなかった。

数日後の夕方、8人が花壇に行くとそこに亜美がいた。

剛は声をかけるが亜美は聞こえていなかった。

奈美が触ると亜美は驚く。

みんな分かっていたとはいえショックだった。

亜美は泣きそうだった。

そこに大我がやってきた。

「……今更歌っても意味はない……だがせめて歌詞だけは教えておく」

大我は手書きで書かれた歌詞の紙を亜美に渡した。

「……あの歌は俺が作ったものだ…正直、つまらない歌だが」

「……嬉しすぎるよ…ありがとう」

亜美には何も聞こえなかったがしかし笑顔になった。

蓮達も感動した。

千も少し大我を認めて良いのではないかと思った。

翌日から亜美は変わった。

耳は奇跡的に回復し笑顔も増え、友達も出来た。

「ありがとう大我」

奈美は大我にお礼を言う。

「別に」

大我はいつもの調子だった。

「お前も無理して1人でいなくてもいいんじゃないか」鎧は言う

「お前らには関係ない。俺の勝手だ」

大我は去っていく。

しかし蓮たちは感じた。

大我はほんとは心優しい人だと



蓮が家に帰るとそこに天使が待っていた。

「お帰りなさいませ」

同時に天使は蓮にある事を聞いた。

「どうですか?この世界は」

「思っていたよりも良かった」

「よかったですね。」

「ところで今日は何の用?」

「今日は特別に何か見たいものを見せてあげようと思って」

「それならこないだも見たじゃないか」

「いいえ、こないだとは違いますよ。今日は行きたいところに連れて行ってあげますよ。外国でも過去の世界でも、未来は無理ですけど」

「それなら宇宙に行きたいな、今日は気分が乗らないから明日でいいけど」

「分かりましたそれでは」

その時、蓮は天使を呼び止める。

そして聞いた。

「ここでやってきたことは全部なかったことになるのか」

「最初に言ったはずですよ。しかしあなたはこの世界が気に入ったようですね」。

蓮は知っていたとはいえ、虚しさを感じた。

その頃、美羽は修と帰っていった。

その時、美羽はある公園を見た。

「どうした?」

「何でもない」

しかし美羽にはその公園にある思い出があった。

翌日、8人で屋上にいた。

剛は来年は受験大変だなと話す。

「会社に入社するとき以来だな」蓮はうっかり言ってしまう。

奈美たちはいつもの天然発言かと思った。

「蓮って未来からやってきたの」美羽は聞く。

蓮は適当に話したが美羽はやけに深く聞いてくる。

千が美羽を止める。

鐘がなってみんな戻るが蓮はなぜ美羽があんなにしつこく聞いてきたが疑問に感じた。

放課後、蓮が帰ろうとしたらそこに美羽がやってきて。

「蓮、ちょっと2人で話したい」

――まさか修と付き合っているのに告白か?

誰もいないところで美羽は蓮に聞いた。

「蓮、何か隠しているよね」

蓮は何がととぼけて立ち去ろうとした。

「パラレルトラベラーでしょ」

蓮はドキッとした。

なぜその事を美羽が知っているのか。

もしかしてついうっかり喋っちゃたのか、蓮は混乱する。

すると美羽は予想外の事を話した。

「私にはかつて蓮と同じように別の時間軸からきたお兄さんがいたの。お兄さんと言ってもほんとのお兄さんじゃないんだけど。それでそのお兄さんとは5年間、一緒に遊び、絆が深くなったけど期限が過ぎ、お兄さんは元の世界に帰っていった。だから1年生の頃から蓮が別世界から来た人ではないかと疑っていたの」

蓮は少し迷うが正直に話した。

再来年の4月にはいなくなる、そう話すと美羽は寂しさを覚えた。

その時、蓮は思い出した。

「もしかしてお兄さんって伊田正樹の事?」

「知っているの?」美羽は驚く。

「知っているよ。俺のいた世界で小説を出してそれが大ヒットして人気作家になったんだよ。それでその内容がもしもの世界に行った青年がその世界で友情や愛を知るという話だよ。俺、この世界に来る直前に部長と居酒屋でその小説の話をしていたんだ。もしかして・・・その話に少女が深く関わってくるけどそれって美羽がモデルだったの」蓮は自分で気付いた事なのに思わず驚く。

「お兄さん元気?」

蓮はしばらく考えて話した

「伊田正樹は、その後も大ヒット作品を出していったんだけどその後、病気で亡くなった」

「そうなんだ」美羽は悲しそうだった。しかし蓮は話を続けた。

「でも伊田正樹の小説は多くの人に愛されているし、俺も伊田正樹の小説を読んで元気をもらったこともあった。それに伊田正樹は生前ある女の子と出会って自分の人生が良い方向に進んだと言っていた。伊田正樹は死んだけどでも国民に愛された小説家になっている」

美羽は悲しそうの表情から笑顔になった。

「うれしい。よかった」

「でも驚いたよ。まさか美羽がパラレルトラベラーと関わりがあったなんて」

「私も同じよ。そんな気がしていたとはいえ、またパラレルトラベラーに会えたんだから」

2人は運命的な出会いに笑顔になる。

「美羽、この事は」

「分かってる。誰にも言わないよ」

美羽は蓮が喋ってる途中で返答した。

夜、天使は驚いた。

「懐かいな。あんな小さかった美羽も高校生か」蓮は聞いた。

「子どもの頃の美羽が別れるときどんな感じだったの」天使は答えた。

「美羽は、伊田正樹と別れるときとにかく泣いて大変だった。まるで悪いことしたみたいで」

蓮は少しずつ悲しくなってくる。

パラレルトラベラーの定めを知って。

翌日、蓮が看板を見てみるとそこには蓮と美羽の熱愛の記事があった。

それで噂になっていた。

蓮も美羽も驚いていた。

ふと奈美を見ると悲しそうであった。

美羽も修がいながら蓮と浮気をしていると誤解されていた。

しかし修は美羽が浮気をする人じゃないと信じていた。

昼休み、蓮と美羽は6人に誤解だと言った。

「分かってるって」

剛はそう言うが千はもしかして大我の仕業ではないかと考えた。

しかし修と鎧はあまり疑いたくなかった。

それは以前助けてくれたこともあって

やっぱり大我だった。

蓮は呆れた。

なぜここまでするのかと。

「美羽、お前が言ってほしいと言ったから手伝ってあげたんだ」大我は本心でもないように話した。

「お前は何か目的なんだ」

「蓮、お前によって引き起こされた悲しみを2度と繰り返させたくなかったからだ」

大我の言葉に蓮は今まで抑えていた感情を解放した。

「大我……お前の事を少しは良い奴だと思っていた。でも俺は馬鹿だった。人の心を見抜く事が得意なのにお前の心を見抜くことが出来ずに良い奴だと思い込んでしまった俺を恨む」

「別にお前にどう思われようがどうでもいい、俺は失ったものを取り戻せるならそれでいい」

蓮は1つ気付いた。

――大我は奈美にしか興味がない。そのためなら仲間を捨てる事もいとわない。

大我は立ち去ろうとした時、奈美は「待って」と声をかけようとしたが蓮は止めた。

「もうこれ以上話しても分かり合えない」

大我は本当は優しい青年だと思っていたため蓮たちはショックだった。

大我も焦っていた。

早く奈美を手に入れたいと。

しかし同時に苦しんでもいた。

それから数日後の放課後、蓮は屋上にいた。

そこに美羽がやってきた。

「熱愛の記事は何とか収まったけどでも大我はどうするの」美羽が聞く。

「俺はもうあいつに何の感情も抱かない。今まで我慢していたがもう限界だ」

「でも…」

「あいつにどんな問題があろうか俺はあいつに同情もしないし助けもしない」

蓮は友情や恋を学んだがしかしそれゆえの人に対する憎しみや怒りも学んだ気がした。



蓮はずっと落ち込んでいた。

大我の事、奈美に好きな人がいることを。

そしてそれが自分ではないと感じていた。

その時、剛がやってきた。

蓮は今、剛と話すのは嫌だった。

何故なら奈美の好きな人が剛かもしれないと思って。

「ジュース買いに行こうぜ」剛が誘う。

「いいけど…」蓮は行く事にした。

そして一緒に自販機でジュースを買いに行くとそこで蓮は悲しい光景を見てしまう。

それは奈美が同級生の舞木黒斗と笑顔で歩いているところだった。

「美羽と修に続いて奈美もか」

剛も驚くが蓮とは違って喜ぶ。

剛に悪気はないが蓮は怒りを覚える。

そして奈美の好きな人が剛ではないと思った。

昼休み、奈美がいなかった。

恐らく黒斗と一緒にいると思われた。

「黒斗は、モテるからな」千は言う。

「奈美やるね」美羽は褒めた。

「まぁいいんじゃないか」鎧は言った。

「良くない」蓮は怒鳴るように言った。

「何だよ…突然大声出して」鎧はちょっと驚く。

「誰だが知らないがそんな奴に奈美は渡せないな」

声の方向を見るとそこに大我がいた。

「またなんかやる気か」千が嫌気な感じで聞く。

「別にただ気に食わないだけだ」大我はそういって去っていった。

大我が歩いていると奈美を目撃する。

奈美は笑顔で黒斗と話をしていた。

大我は憎しみが蘇った。

それは誰も知らない憎しみだった。

放課後、蓮はまだ奈美が黒斗と帰っている姿を見てしまう。

蓮はとても落ち込む。

「どうしたんだよ」鎧が笑顔で声をかける。

鎧は何も察していないようだった。

「そういえば修学旅行からもうすぐ2年か」鎧が振り返る。

「まさか剛や奈美の他に千、美羽、修、月美、そしてお前と関わることになるとはな」蓮は何となくつぶやく。

「そういえば黒斗、前に他の女と仲良く歩いていたんだが」鎧は思い出したように言った。

「友達だろう」蓮はそう言う。

「でも友達にしては何か仲が良すぎる気がする」鎧は疑問を言う。

それを聞いた蓮は何が黒斗に不信感を覚えた

その頃、屋上に大我がいるとそこに千がやってきた。

「お前、なんて奈美を狙う。もしかして奈美の事が好きなのか」千は聞く。

「そうだ。だから奈美は守らなきゃいけないし、絶対に俺と付き合わなきゃいけない。この二度とないチャンスを逃さないために」千は何か怖いものを感じた。

その頃、修は美羽と一緒に帰っていた。

「そういえばさっき黒斗の話があったが1週間前に黒斗を見た時、他の女と歩いていたんだが」

「そうなの、私も黒斗が他の女性と一緒に歩いている姿を見たよ。その女性、外人だったけど」

「外人、あれは日本人だろ」

「いや外人でしょう」

2人は何か違和感を感じた。

その頃月美が帰っているとそこに黒斗がやってきた。

「ねぇ君?僕と付き合わない」黒斗の言葉に月美は戸惑う。

何故なら奈美が黒斗と付き合っていると知っているから。

月美は断って逃げていく。

夜、蓮はとても落ち込んでいた。

するとテレビで恋愛ドラマが始まった。

しかしその内容は浮気ものの内容だった。

「浮気か、嫌なもんだな」

蓮はチャンネルを変えた。

恋愛バラエティーがやっていた。

蓮はまだチャンネルを変えて本来見ない野球を見る。

今は恋愛や恋、愛という言葉を聞きたくなかったからであった。

夜、黒斗は他の女と遊んでいた。

しかも未成年であるにも関わらず酒を飲んで煙草を吸ってはしゃぎながら女とじゃれていた。

翌日、蓮が落ち込みながら剛と鎧と一緒に登校するとそこに人だがりが出来ていた。

見てみるとそこには学校新聞が張ってあった。

そこには黒斗の浮気写真が貼ってあった。蓮は驚く。

「どういうこと」

「私と付き合ってるんじゃないの」

黒斗は女たちから責められる。

「これは捏造だ、俺がそんな事するわけないだろう」黒斗は否定した。

奈美は黙ったままだった。

しかし悲しさは伝わってきた。

そして蓮や美羽、修の違和感は当たっていた。

放課後、美羽は7人のいる屋上に黒斗を連れてきた。

「これはどういうこと?」

「これは付き合いで」

奈美は落ち込んでいた。

「大丈夫か?」剛は声をかける。

「好きだったのに」7人はかける言葉がなかった。

「でもよくあんなところ撮れたな」修が疑問を言った。

「お前から奈美を外して正解だった」大我が来た。

「まさか」驚く黒斗に大我はとんでもないことを話した。

「あれは俺が学校新聞を作っているやつにネタを提供して作られたものなんだよ」

蓮達は驚く。

「でもまさかあんなに浮気をしていたのは予想外だったがな」

黒斗は怒りのあまり大我に殴りかかるが黒斗のパンチを手で握って止まる。

勝てないと感じた黒斗は勝手に帰ってしまう。

「こんな形で奈美を救おうとしたのか?」千は怒る。

「でも悪い奴から助けたんだ。それにお前だったらどうする」大我が聞く。

「それは分からない。だがお前と同じ事はしない」千はそう返す。

「そうか、ただ浮気をしたやつにはこれぐらいの仕打ちは当然の事だし結局いずれバレるんだから教えておいた方がいいだろ」大我はそう付け足す。

しかし蓮は怒りに震えていた。

「お前がやった事は褒める事も否定することも出来ない。でも俺は怒りに震えている」それはこんな形で奈美を救った事に対し奈美を傷つけたから。

「別にお前らかどうかはどうでも良い」大我は去ろうとした時、

「今のお前に奈美は振り向かないな、絶対に」蓮の言葉に大我は怒りを感じた。

「お前だけには言われたくないな」大我は去っていった。

そこで蓮は何がよく分からないものを感じた。

夕方、奈美は屋上で泣いていた。初めて好きになった人に裏切られたのだから。それを蓮は見ている事しか出来なかった。

「先に帰って」

「でも」

「いいから」

蓮は帰ってしまう。



10月、放課後、蓮達7人は海神公園にいた。

修と千がキャッチボールをしている横で蓮達は座っていた。

そこに剛がやってきた。

その横には滝沙紀という女がいた。

――何なんだこの人は?

「紹介する、彼女は俺の彼女だ」剛は説明する。

みんな驚いでしまう。

「はじめまして沙紀です」沙紀は挨拶する。

その子は可愛かった。

鎧もデレデレしながら笑顔で挨拶をする。

そして奈美と美羽、月美は沙紀と楽しくお話をしていく内にお互い意気投合していく。

千はキャッチボールをしながら剛にどこで出会ったか聞く。

剛は答えた。

「夜、帰っているとそこに沙紀がいた。落ち込んでいて話しかけたら意気投合して付き合う事になったんだ」

「いいね。そういうの」鎧はテンションが上がる。

それを聞いた蓮も奈美と付き合いたいと考えだした。

その時、月美が話しかけてきた。

「この前、自分は黒ずくめの男だと言っていた人いたよね。あれ、ほんとかな」

「お前もそう思うか。俺も嘘っぽく感じる。でも剛と鎧は信じているようだが」

夕方になり、蓮達は別れた。

剛は沙紀と笑顔で帰っている途中、そこに健という沙紀の元彼である不良の男がやってきた。

沙紀は顔がこおばる。

健はこんな奴と付き合っているのかと聞いてきた。

沙紀は怯えながら答えた。

剛は恐怖のあまり言葉が出なかった。

「お前、こいつと付き合っているようだな。こいつと別れろ。さもないと痛い目に合わせるぞ」健は怒鳴る。

そういって健は去っていった。

「ごめんね。大丈夫?」

「大丈夫だよ」

剛は無理して言う。

とてもビビっていた。

それをたまたま見た大我が警戒した。

「あいつは…」

次の日8人は屋上にいた。

美羽たちは笑顔で彼女について話しかけてくる。剛は心配かけ無いよう普通に話す。

「彼女、どこの高校なの?」

「岸牧高校だよ」

それを聞いた蓮はピンときた。

それは大我のいた高校でもあったため。

そこに大我がやってきた。

大我は剛に予想外の事を話した。

「沙紀と別れろ」

そう言うと美羽は怒り出す。

「痛い目にあいたくなければ別れろ」大我は焦っていた。

「何か知っているの?」月美が聞く。

「お前には関係ないだろ」

大我は立ち去った。

「あいつ何なんだ」千は疑問に思った。

「なんかいつもと違う」月美は何が感じる。

放課後、皆でいつもの公園にいるとそこに沙紀がやってきた。

7人は知らないが剛と沙紀は気まずそうだった。

美羽が笑顔で話しかけようとした時、そこに健がやってきた。

剛は怖くなる。

「沙紀、俺の所に戻ってくる気になったが」

健がそう聞くと沙紀は怖がりながら縦に頷いた。

「おい昨日のガキ、こいつと別れる気になったか」

そう聞かれた剛は怖がりながら「はい」と答えてしまった。

「あなた何言っているの?」

「沙紀さんはお前の彼女だろ」美羽と千は剛に反論する。

沙紀を無理やり連れ去ろうとした時、「おい、待てよ」千が引き留めようとしたが健は千を床に倒し顔面キックをした。

千は血を流し倒れこむ。

「千‼」蓮たちは千の側に行った。

健は沙紀の手を掴む。

剛は沙紀の手を掴もうとしたがためらい掴めなかった。

健は沙紀を連れて行ってしまった。

剛は今までにないぐらい恐怖を感じてしまった。

そしてこれが更なる悲劇を生むことになるとはまだ誰も気付かなかった



夕方、千は美羽に手当を受けていた。

けがはそこまで大きくなくみんな安心した。

しかし空気は重かった。

「剛、大丈夫かな」奈美はつぶやいた。

月美は屋上に行くと剛が座っていた。

剛は落ち込んでいた。

「大丈夫、剛」月美は剛に声をかけた。

剛は自分を恨んでいた

――自分が恐怖したために沙紀は、健に連れて行かれ、千は怪我を負った。あの時、俺が沙紀の手を掴む事が出来たらもしかしたら沙紀は連れていかれなかったかもしれない。それなのに俺は……」剛は悔しかった。

こんな剛を初めて見た月美はそれ以上何も言わなかった。

その数日間、剛は蓮達との接触を避けていた。

剛はずっと落ち込んでいた。

そして沙紀を守れなかった事を恥ずかしく感じていた。

昼休み、剛以外の7人が集まっていた。

「剛のことだけどどうしたらいいと思う?」美羽はみんなに聞く。

「どうすると言っても俺たちに何が出来るんだ」

蓮はどうしたら良いか分からないでいた。

放課後、剛が帰ろうとするとそこに月美がやってきた。

「最近、私たちの事避けているよね」

剛は無視しようとしたがそこに千がやってきた。

「沙紀の事か」千は言った。

剛は口を開いた。

「俺は沙紀を守れなった。それがとても情けなくて恥ずかしくてここ数日、どうしたら沙紀を助けられるのか考えていたんだ」

それを聞いた千は言った。

「誰だって怖くて逃げてしまう事もある、恥ずかしがることはない」

「でも俺は……」しかしそれ以上何も言えなかった。

「剛、今の私があるのはあなたのおかけだよ、あなたが1年生の時、声をかけてくれなかったら私はずっと男から逃げてばかりいたと思う。だから剛、私達も沙紀さんを助けたい」月美の言葉に剛の心は動き揺ぐ。

そこに蓮達5人がやってきた。

何が起きていたのが分からなかった。

その後、4人にも事情を説明した。

それを聞いた四人も剛を励ます。

「情けない、恥ずかしいと思うなら沙紀さんを取り戻さないとな。それに1人で戦おうとするな、戦うならみんなで戦おう」修が言った。

「一人一人が弱くてもみんなで力をあわせれば助けられるさ」鎧は笑顔で言う。

「そうだよ。私たちは8人いるんだから」奈美も剛を励ました。

蓮は何も言わなかった。

しかし剛を助けたいと思っていた。

何故なら剛のおかけで楽しい高校生活を送れているのだから。

「みんな……」剛は感動する。



土曜日、蓮が美術室に入るとそこに鎧がいた。

「みんなは?」

「みんなオープンキャンパスとかAO入試の準備をしている」鎧は答えた。

蓮は感じた。

まだ早いかと思っていたがもうみんな受験を考えているんだと。

蓮は気付いた。

今まで生きてきて受験をした事がないと。

そして受験はどのぐらい大変なのだろうかと考える。

鎧は聞いた。

「蓮は志望する大学とか決めた?」

「決めていない」

そもそも受験をする頃には元の世界に帰らなければいけないのだから受験をする必要もない。

そこに奈美がやってきた。

そして屋上に呼ばれる。

しばらくすると奈美が話した。

「蓮、大我の事なんだけれど」

ドキッとした蓮の感情は一気に冷めた。

奈美は続けた。

「大我を助けてあげる事できないかな」蓮は迷った。

「私は大我を助けてあげたい。だって苦しそうだから」奈美は悲しそうに訴える。

蓮も感じていた。大我に何かある事を。

しかし蓮は言った。

「この前の美羽との熱愛記事、あれあの後、後始末大変だったんだぞ。あれには怒りを持っている」

「それは分かるよ。でも……」しかしそれ以上何も言わなかった。

蓮は思った。

きっとその後、大我を助けたいと言うのだろうと



下校時、蓮が椅子に座っているとある事を思い出した。

それは前に奈美が言っていた大我の事だった。

そこに奈美たちがやってきて一緒に帰ろうとした時、そこに大我がやってきた。

「大我……」蓮は思わずつぶやく。

「まさかお前もパラレルトラベラーだったとはな」蓮と美羽は一瞬、動揺した。

なぜ二人しか知らない事実を大我が知っているのか。

「どういうことだ」千が聞く。

「こいつは別世界から来た人間、つまりパラレルトラベラーだ」大我は話した。

「馬鹿か」修はそう言うが大我が名前を呼ぶとそこに天使がやってきた。

突然現れた天使に蓮と美羽、大我以外は驚く。

同時に大我の話は本当だと感じた。

大我は去っていった。

公園で蓮は天使に聞いた。

「あんた喋ったな」

「いいえ話していませんよ」天使はとぼける。

剛たちは非常に驚いていた。

こんな非現実的な事が起きるのかと

そして蓮はみんなに正直に話した。

「しかし驚いたな。美羽はそれを知っていたとはな」千が言う。

「ごめん。今まで黙ってて」蓮は謝る。

すると奈美がある事に気付いた。

「中学生の時に謎の失踪事件のドキュメント番組を見たんだけどその失踪した人は何も問題なかったのに突然いなくなったっていうまるでミステリーのような事件があったんだけど」

「それは、私とよく遊んでくれたお兄さんの事だよ」美羽はそう答えた。

「じゃあの時インタビューされてた女の子って」

「私よ」

奈美の中でこの失踪事件は解決した。

そして同時にとても驚く。

「天使さん、何で大我は蓮が別世界から来ていたのを知っていたの」月美は聞いた。

天使は説明した。

実は大我は蓮よりも先に別世界から来た人間、つまりパラレルトラベラーであった。

さらに言えば大我は選択された世界から来た蓮と違い悪魔によって完全なパラレルワールドから来た人間であった。そして元々いた世界ではタグ部に所属していてその実力はかなり高かった。さらに穏やかで優しい好青年だった。そんな大我には彼女がいた。そして彼女はその世界の奈美だった。しかし奈美は重い病気だったため大我は部活をやりながら毎日、奈美に会っていた。

そしてある日、大我は誓った。今度の全国大会に行って優勝をして奈美を喜ばせる。

そして高校を卒業してプロのタク選手になったら結婚する事を。

大我は毎日、必死に練習した。

そして東京予選で勝利して全国行きの切符を手に入れた。

しかしそこで問題が起きた。

それは同じタク部の部員が未成年者飲酒や未成年者喫煙、さらには迷惑行為をツイッターに挙げたりするなどをした。

それによりマスコミからその高校は批判を浴びて大我の高校は辞退となった。

その問題を起こしたのが別世界の蓮だった。

大我は奈美に謝り来年こそ優勝すると約束した。

そして引き続き大我は毎日練習するがその9カ月後に奈美は亡くなった。

約束を果たせず毎日泣いていた。

天使は大我をパラレルトラベラーとして別世界に連れていってあげようと考えた。

そうすれば大我が立ち直ると思ったからだった。

しかし何故が大我はパラレルトラベラーのこの世界に来ていたそして大我は自分の愛する人が憎んでいる相手と一緒にいることに腹が立った。

今までの嫌がらせは全て蓮と奈美を引き離して奈美と付き合うためだった。

あまりに悲しい出来事にみんな言葉を失う。

同時に蓮が抱いていた謎も全て解けた。

なぜ自分の事を知っているのか、なぜ自分を恨むのか、なぜ奈美と付き合いたいのか、それは全て自分の世界で起きた出来事がきっかけだった。

蓮は自分が嫌になった。

自分ではないとはいえ大我を傷付けたのは別世界の自分なのだから。

さらに体育祭の時、なぜ反則をしたのかも蓮の中で分かった気がした。

きっとその悲しい出来事を思い出しそれで混乱してしまったと考えた。

そしてみんな触れないが蓮は話の中に出てきた悪魔の事が気になった。

夜、奈美はスマホで蓮に電話をした。蓮が出ると奈美はある話をした。

「大我は彼女を失っているなら自分が大我と付き合えば良いんじゃない」

蓮はそれに反対する。

「確かに大我は可哀想な思いをした。でもだからと言って奈美が付き合ってあげるのは甘やかしているだけだと思う。いつまでも過去を引きずってはいけないし、大我は死んだ彼女の事を乗り越えて行かないといけない」それを聞いた奈美は正論だと分かっていたが反論したかった。

翌日、蓮は大我に会う。

「天使から全て話を聞いたぞ」

「あの天使、勝手に話したか」大我は怒り気味だった。

蓮は大我にある提案をする。

「大我、これ以上争っても無駄だ。だから俺たちと友達になろう」

「ふさげるな、第一俺の話を聞いたなら別世界のお前の事も聞いているはずだ」大我は拒否する。

「あぁ聞いたぜ。別世界の俺がとんでもない事をしてしまったようだな。そりゃお前が俺を恨む気持ちも分からなくない」

「分かっているくせによく友達になろうと言えるな」大我は感情的になる。

そして雨が降る。

「だが俺は未来に歩んでいるがお前は過去に戻ろうとしているだけじゃないか。それに過去に歩んだってもう彼女は戻ってこない」

大我は認めたくなかった。

「苦しいなら友達になればいいんじゃない。同じパラレルトラベラーなんだから」蓮は説得する。そこで大我は条件を出した。

「なら友達になる代わりに奈美を渡すことが条件だ」大我の要求に蓮は迷いながらも「それは無理だ」と拒否する。

「やっぱりお前も奈美の事好きなのか」大我が聞く。

「俺は……奈美のことが好きだ」蓮は答えた。

「なら無理だな」大我は去っていった。蓮は悲しかった。

翌日の下校時間、蓮達が帰ろうとするとそこにボロボロの沙紀がやってきた。

もはら別人のような感じだった。

「どうしたんだ」剛は焦る。

「もう耐えられない助けて」沙紀は助けを求めて来た。

沙紀によるとあの後、健の家に閉じ込められて他の男と関わらないように見張られていた。しかし今日は健が用事があって外出している隙に逃げてきた。

今まで健が外出していても沙紀は逃げようと思わなかった。

何故なら見つかったら何されるか分からなかったからである。

美羽は思った。

これは束縛であると。

「しばらく自分の家にかくまってあげる」美羽が提案する。

「それは迷惑だから」

剛は沙紀に謝る。

「仕方ないよ。健は怖いし」沙紀は無理しながらも言う。

郷に怒りが湧いてきた。

そして急にどっかに行ってしまう。

「剛!」蓮達が呼びかけるか剛は無視をする。

「なんだあいつ」

修がそう言うとそこに大我が来た。

「大我、この前の話、教えて」

月美が頼むが大我はこの前と同じ返答をする。

「私からもお願い」奈美も教えてほしいと頼む。

大我は迷いながらも教える事にした。

「自分のいた世界にもあの男がいたがとても危険な人間だ。不良グループとつながっていて、日々、恐喝や暴行などをしている。かなりの危険人物だ。しかしまさか別世界でも同じように危険な奴とはな」

「何であなたがそんなことを知っているの」沙紀は言う。

「ある所で繋がりがあるんだよ」大我は適当に返答する。

すると蓮は気付いた。

「もしかして君があの男と別れたのは、その男が危険な繋がりがあると知ったからじゃないの?」

「そうよ。最初は優しくて明るい人だったけど実は裏では危ない人たちと関わりがある事や前科などが何回もあると知って怖くて別れたの」沙紀は暗い表情で言った。

「でもその男は君に未練があるから別れた後もしつこく復縁を迫ってきたとか」

「あなた何てそんなに私の心が分かるの?」

「今まで色んな人を見てきたからな」

それは社会人として働いていてそこで色んな人と関わってきて身についたものだった。

「まずい、もしかしたら剛はその男の所に……」月美は慌てた。

「でも場所分からないと思う」蓮は否定するが「いや、もしかしたら」と修が言う。

8人と沙紀は急いて向かう。

大我は立ち止まったままだった。

走っている途中で鎧が別の道を走る

「鎧どこ行く?」蓮が聞く。

「切り札を使うチャンスじゃん」鎧は高校に戻る。

その頃、剛は8人が初めて沙紀と出会った海神公園にいた。

待っているとそこに健がやってきた。

健はあの時のという顔をする。

剛は怒りに燃えながら健に言う。

「よくも沙紀を傷付けてくれたな、お前は絶対に許さない」

「おもしれぇ殴ってみろよ」健は挑発する。

雨が降ってきた。

今日は嵐のような天気という予報だった。

蓮達7人と沙紀は雨に濡れながらも向かうとボロボロになった剛がいた。

健に挑んだものの圧倒的な強さにやられていた。

7人と沙紀は剛の所に行く。

「剛!大丈夫か」蓮が呼びかける。

「みんな」

すると健は恐らく子供が忘れていった金属バットを手に持つ。

「いいものあるじゃないか」健は笑顔だった。

全員がこれはかなり危険だと感じる。

そしてなぜ危険人物だと言われるのか分かった気がした。

「これ以上殴られたくなければ沙紀を置いて去れ」

7人は迷う。

戦っても勝てないだろうし逃げたら沙紀はまだ傷つけられる。

自分たちが死ぬか沙紀が死ぬかまさに究極の選択だった。

「渡さないよ、絶対に」剛はボロボロになった状態でもそのまま立ち向かっていく。

「お前だけは絶対に許さない」剛は健に掴みかかるが建は蹴り飛ばす。

「お前じゃ俺に勝てねぇよ」

「剛」千が剛の側に行く。

そして健が剛と千に振り下ろした。

その時、予想外の事が起きた。

それは大我だった。

大我は剛と千を庇いバットで殴られる。

大我は体から血を流し倒れこむ。

さらに健は何回もバットで殴り続けた。

八人に衝撃が走る。

「大我!」蓮達はすぐに処置を始める。

修はすぐに応急処置をして奈美は救急車を呼んだ。

「俺は……まだ死ぬわけにはいかない」大我は苦しみながら言う。

そして大我は意識をなくす。

「大我!」「大我!」奈美は泣きながら必死に名前を呼びかける。



夜、大我は病院に運ばれる。

殴られ所が悪かったため危険な状況だった。

みんな心配する。

奈美は剛を見る。

剛は下を向いていた。

「お前のせいじゃないよ」鎧は励ますが剛はショックを受けていた。

「あいつ」修は怒りを覚える。

重い空気が流れた。

蓮が病院の屋上に行く。

そこに千と月美がいた。

「どうしたらいいの」

蓮は何も言えなかった。

「剛はきっと大丈夫だ」

千は大我について触れなかった。

そこに美羽がやってきて剛がいなくなったと話す。

その頃、嵐の中で剛は海神公園で待っていた。

そこに蓮と千、美羽、月美がやってきた。

「まだあいつを待っているのか」蓮がそう聞く。

「あいつだけは絶対に許さない。だからあいつを潰す」もう剛は自暴自棄になっていた。

「あんなボコボコにされてそれでも勝てると思っているのか」蓮は剛を説得する。

「今のお前は健と同じになっている。例え暴力で勝てても沙紀は喜ばない」千は言う。

「それでも俺は」

「なら別れてよ、沙紀と」

月美の一言に3人は思わず顔を見る。

「沙紀の望まない事をするのならそこに喜びはない、痛みと悲しみしかないじゃないの」

「今のあなたは健に近くなってしまっているよ」

剛は動揺する。

「お兄さんだってこんな事したって喜ばないはずよ」

剛はふとポケットから兄のお守りを取り出した。

剛は兄の言葉を思い出した。

怒りや悲しみで誰かを傷付けるな、それをやったらお前もそいつと同じだから。

すると剛は落ち着きを取り戻した。

お守りに救われたようだ。

「俺のせいで千は傷ついだ。まだこんなことが起きないでほしいと思っていた。でも大我が重傷を負うという最悪な事が起きてしまった。もうこれ以上誰かを傷つけたくない。だからあいつを潰してこれ以上仲間を傷つけさせないようにと思って」剛は悲しみながら話す。

その時、修から電話が来た。

「大我の手術が成功した」

みんな部屋に行くと大我は眠っていた。

後は目を覚ませばよいだけであった。

そこに奈美は剛にあるものを渡した。

それは健が沙紀を監禁している場所の地図だった。

沙紀は連れ去られる直前、奈美に渡していた。

蓮は言う「前も言ったはずだ。1人で戦う必要はない。みんなで戦おう」

剛は思い出した。

そして剛は決めた。

暴力を使わないで沙紀を助けることを。



翌日、蓮達は病室にいた。

そこに天使がやってきた。

そして衝撃的な事を話した。

「大我があの男の家を観察していたんだがあの男、毎日決まった時間に外出しています。その隙に助けることができるかもしれないです」

蓮は何となく聞いた。

「1つ聞くが前に悪魔の話をしたけど悪魔ってどのぐらい残酷なんだ」

「説明するとそもそもパラレルトラベラーになるには条件があります。それは、この世界で悪事を働かないことです。例えば強盗や殺人などです。あなたはそういう危険性がないのでこの世界に送ったのですがしかし悪魔は、そんな危険人物たちをこの世界に送っているのです」

「悪魔の目的はなんだ。」

蓮が聞くと天使は答えた。

「悪魔の目的は、闇を持った人に悪魔の囁きをしてそしてそれを聞いた人たちが別世界に旅立つ前に鬱憤晴らしでこの世界で暴れさせる事が目的です。大我はそんな人間たちを止めるために黒ずくめの男として活動していたのです」

「まさか…」

「蓮さんと千さんの先輩の洋二さんと安さん。あの2人もその囁きを聞いた者です。しかし安さんは暴れるのではなく、最後に謝罪をして別世界に旅立ちました」

「そうだったのか」

千は複雑だった。

無事だった事に安心したがその反面別世界に行ってしまったのだから。

そう言って天使は去っていった。

「悲しんでいる余裕なんでない、今は沙紀を助けないと」

「そうだな」

蓮と千は立ち上がる

「これが最後のチャンスかもしれない」

蓮たちは行くことに決めた。

「剛、お前は休んでろ」

「みんなは?」

「俺たちはやるべき事をやるだけだ」

「それってもしかして」

「安心しろ。それにお前は怪我しているし、疲れているだろ、そんなお前が行ってもお荷物になるからな」

「みんな」

剛はうれしかった。

「頼んだよ」

「奈美、お前も大我の側にいてくれ」

「分かったわ」

そして剛と奈美は病院に残り蓮達は出て行った。

そして蓮たちはそのアパートの前に来た。

そこはボロボロだった

「大丈夫かな」鎧は怖がる

「安心して、みんないるんだから」美羽は安心させる

千、修、鎧は外を見張る。

そして蓮、美羽、月美は部屋の前に行く。

ノックするとドアが開く。

そこからとてつもない異臭が3人を襲った。

その中から沙紀が出てきた。

「大丈夫?」美羽は声をかける。

沙紀はボロボロだったものの無事だった。

その頃、下ではたちが見張っているとそこに健が帰ってきた。

「まずい」

すると修は健の前に出る。

「あんたこの間、よくも剛をボコボコにしたな」

「お前も殴られたいか?」

「裏で戦おう」

そして2人は裏に行く

「あいつ何考えているんだ」

千は加わようとしたがふと気付いた。

――きっと修に考えがあるんだ

その時、外の状況を知った蓮たちは健が裏に回ったのを見てその隙に階段を下りる。

そしてタクシーを見つけて蓮以外はタクシーに乗って非難する。

その頃、修は無抵抗にただ殴られるだけだった

その時、健は金属バットを見つけた。

「いいものがあるじゃないか」

健はそれを手に取り修に向かってきた。

「俺たちをガキと見下す割には単純だな」

はぁ?」

するとそこにカメラを持った鎧がやってきた。

実は修は鎧に頼んである作戦を立てていた。

それは健が修に暴行する映像を鎧に撮影してもらう。

鎧は総理の息子だからもしこの映像を持っていけば健の人生は最悪な方向に持っていくことになる。

剛は気付いた。

金属バットは元から用意されていたもので健がそれを手に持ち大我に近付こうとする場面を撮影すればさらに武器にできる。

「この映像をネットなどで拡散すればマスコミは騒ぎ出し警察は動きだす。そうすればお前は今までの罪とは桁が違う重さを味わう事になる」

それは殺人未遂と監禁の罪としてである

それを聞いた健は恐れ出す。

「この映像の消去と引き換えに2度と沙紀に近づかないことを要求する」

健は恐れた。

そして鎧もそのデーターを健に渡す。

「言っとくがこの映像はすでにパソコンにも送っているからな」

健は悔しがりながらその場を去っていった。

そして見事問題は解決した。

その頃、大我は目を覚ました。

そこは光溢れる世界で花畑の所にいた。

「俺、死んだのか」

大我は歩いているとそこにあるものを目撃する。

それは三途の川だった。

その奥には人々が手招きしている。

大我は歩いていこうとした時ある歌声が聞こえる。

それは自分が奈美に教えた歌だった。

現実世界では奈美が何回も大我に歌を歌ってあげていた。

その時、大我の手を握る手を見つけた。

振り返るとそこには亡くなった別世界の奈美がいた。

「行っちゃダメ」

大我は驚く。

しかしあまりに衝撃的で何も言えなかった。

奈美は大我の手を掴み走り出した。

どんどん三途の川から遠さがっていく。

大我も一緒に走っていく。

その時、目の前に光の道が現れた。

奈美は大我の手を離す。

大我は離したくないという思いだった。

だからまだ奈美の手を握ろうとした。

「大我、あなたは生きて」

それを聞いた大我は気付いた。

自分はまだ生きている。

奈美は自分を助けようとしている。

大我は決めた。

現実に帰る事を。

現実世界で奈美が歌っていると大我が目を覚ました。

奈美が気付くと喜ぶ。

「よかった、大我」奈美は大我の手を握る。

しばらくして奈美から話を聞いた蓮たちが帰ってきた。

「お前たち」

大我は言葉を発した。

「よかった。生きてて」

みんな喜ぶ。

「大我すまなかった俺のせいで」剛は謝る。

「気にするな。どうぜ心配する奴はいないんだ」大我は孤独だった。

この世界に来た大我は誰とも友情を築かないでいた。

そして元の世界でも奈美の死をきっかけに友人全てを失ったからこそ言えた言葉だった

奈美は天使にもらった手紙を渡した。

それは別世界の奈美から大我にだった。

奈美はその手紙を読む。

「大我へ私は子供の頃から重い病気で毎日、抗がん剤治療や注射があり学校にも思う通りに行けず遊ぶことも出来ず何のために生きているのか分からなかった。でも大我と出会ったことで毎日が楽しくなった。大我が毎日、雨の中でも来てくれるからいつもベットの上にいても楽しかった。大我は私に光を与えてくれた。もし私が死んだとしてもずっと悲しまないで。大我が幸せになってくれることが自分の願いだから」 

「これは彼女さんが大我に渡そうと思っていたけど渡すことが出来なかった手紙よ」奈美が言う。

「俺はずっと奈美を取り戻したい思っていた。普通ならそんな事は不可能なはずなのに。でもパラレルトラベラーとしてこの世界に来た時、もしかしたら奈美を取り戻せるんじゃないかと。でも違っていた。もう俺の知っている奈美はいないんだ、死者の事をいつまでも追っていてももう戻ってこないんだから」

それを聞いた大我は自分のやってきたことを悔やんだ。

蓮たちの心にも痛いほど染みついた。大切な人を失う悲しさや切ない願いというものを。

「大我、今日で死んだ彼女の思いは完結したんだ。もう憎んだり、悲しんだり、怒りに満ちたりする必要はないんだ、だから俺たちと友達になろう」

「今までやってきた悪事があるから拒否する」

「それならなおさらなってくれ。それが罪滅ぼしみたいなものだから。それに孤独なら誰かと一緒にいればいいじゃん」

大我は迷う

「天使から聞いたぞ。お前は黒ずくめの男として行動し、本当は、やらなくてもいいのに困っている人々を助けていたんだよ」

「私も何回も救われた。それなのに何もしてあげれなかった。あなたの奈美を思う気持ちは素晴らしいと思う。ただやり方を間違えただけよ」月美は言う。

「分かった。なってやる」

それを聞いた大我は友達になる事に決めた。

「お前、随分あっさりだな。もっとセリフあってもいいじゃん」

鎧は笑顔で言うとみんなも笑顔になる。

夕方、剛は沙紀と会う。

「ありがとね、剛」沙紀は笑顔だった。

「俺は何もしていない。沙紀を助けたのは蓮たちだし」

「いや、最後まで諦めないでいてくれた事が嬉しいの」

沙紀の言葉に剛は感動した。

沙紀は自分の事を悪く思っていなかったため。

「剛、良い友達がたくさんいるね」

沙紀の言葉に剛は笑顔になった。

数日後の夕方、蓮たち8人が下校する。

「今日、クリスマスだしこれからみんなで巨大クリスマスツリー見に行こう」剛は提案した。

「いいね」鎧が喜ぶ。

そしてみんなで行こうとした。

「ごめん。ちょっと待って」奈美は走っていく。

そして高校に戻る。

大我は屋上にいた。

「良かった。まだいて」

大我が振り返るとそこに奈美がいた。

「大我。今からみんなで巨大クリスマスツリー見に行くんだけど一緒に行こう」

大我は断ろうとしたが奈美は大我の手を握り走り出す。

走っている途中で大我は止まる。

そして同時に奈美も止まる。

「どうしたの?」

「奈美、俺はもう過去を引きずらない。未来を生きる。だけど一つお願いがある。奈美…キスしてもいいか」

「うん」

大我は奈美の手を握りしめキスをする。

お互い初めてのキスだった。

そして唇を離すと2人は再び走り出した。

大我は思い出した。

生前、彼女と過ごそうと約束したクリスマスを、そしてそれが今、形は違うが大我はうれしく感じた。

そしてもう1つ生死を彷徨っていた時に見た奈美のことを。

あの時、もし奈美が手を掴んでくれなかったら自分は死んでいた。

そう考えると大我は感動してしまった。

そして2人が走っている道のイルミネーションが光り始めた。

「綺麗」

奈美は思わず笑顔になる。

大我も感動する。

2人は手を繋ぎながら蓮達のもとに向かっていく。

そして蓮たちは4年生になった。



2年前のタグ取り競争で大我の勝手な行動により蓮たちのチームは最悪な負け方をしてしまった。

そしてその次の年の体育祭は天気が長期間雨で悪かったため体育祭自体がなくなった。

つまり今年は2年ぶりに開催される予定だった。

大我とも和解をした蓮達だったが唯一解決していない問題があった。

それは千と大我の関係だった。

7人が大我を仲間だと認めていたが千だけは大我を受け入れていなかった。

これはそんな時にあったエピソードである。

「今年の体育祭のメイン競技はドッチボールらしい」

屋上で剛は7人に説明する。

「ドッチボールか、ルールってどんな感じなんだ」蓮は聞く。

「話によるとまず1つのチームに10人いる事が条件らしい。それで各チームそれぞれ10人の中から2人が出てきて相手チームと戦う。普通のドッチボールはぶつけられたらアウトだが今回は制限時間以内に何発当てるかが勝負なため何発当てられても続けられるルールでそしてそれを5試合やって当てた合計得点が多かったチームの勝利だそうだ。その競技はタグ取り同様、トーナメント戦だそうだ。そして優勝したチームには賞品があるそうだ」

その競技は強制ではなかったが美羽はやりたくなった。

「ならやろうか」鎧も賛成した。

「そうだね、10人いなくても9人いれば出来るし」奈美の言葉に千が口を挟む。

「もしかして大我も誘うのか」

「そうだけど」

「それは拒否する」

千は大我を快く思っていなかった。

「もういいだろ。いい加減、仲直りしろよ」剛は説得する。

「あいつのせいで俺は蓮を殴ったし、その後もあいつ色々最低な事しただろ」千は頑固に拒否する。

「でも8人だと勝てないと思うよ」月美はそう説得する。

「なら勝手にしろ、俺は抜けるけど」

千は去っていった。

「あいつなんでこんなに頑固なんだ」修は呆れる。

その頃、大我は校庭にいた。

そこに奈美がやってきた。

そして大我を誘う。

「また一緒にやってもいいのか」大我は驚く。

「うん、でももうあんな反則はしないでね」

「分かってる」

「でも今、千が抜けているの」

「それは俺のせいだな」大我は自覚していた。

2人に気まずい空気が流れる。

そして放課後、早速練習を始める。

まず剛が投げたボールを7人はかわす練習をする。

意外とみんな出来ていた。

そしてボールを取る練習をする。

しかしそこでは半分の人は出来ていて半分の人は出来ていなかった。

さらに投げるのも半分の人は出来ていて半分の人は出来ていなかった。

一旦話し合いをする。

「どうする。なるべく避けて当てられないようにする」剛はそう提案する。

「でもそのためにはなるべく先に得点を稼いでから後半、ずっとよける方がいいね」

美羽はそう返す。

「だが例え、それで一回戦突破してもその後もそれで通せるか。それに結局当てないといけないんだから避けるだけじゃ駄目だよ」

修の意見にみんな苦悶の表情を浮かべた。

「それなら取るのがうまい人がとって投げるのがうまい人に渡して投げてもらうのはどうだ」

大我の提案に7人は表情を変えた。

「それだ、さすがだ大我」剛は大我を褒める。

早速それで練習を始める。

すると良い感じに出来た。

「いいな、この作戦」蓮は喜ぶ。

「これなら結構良い所まで行けるんじゃないのか」鎧は自信を持つ。

そして8人は毎日ドッヂボールの練習をしていく。

そしてやっていくうちにどんどん上達していく。

奈美は思い出した。

2年前も大我が中心に動いていた事を。

そしてその姿を遠くから千も見ていた。

ある日の夜、蓮は奈美と夜の海神公園のベンチに座っていた。

「もうすぐ体育祭だね」

「そうだな」

夜の公園に好きな人と2人きり蓮は緊張していた。

そして考えた。

今、奈美を抱きしめようかと。

奈美は笑顔で別の方向を見ていた。

蓮が抱きしめようとした時

「千がいないのが寂しいね」

蓮は慌てる。

「千も一緒に参加すればいいのに」奈美は寂しそうだった。

そしてしばらく会話をして奈美は帰っていった。

蓮は残念に感じた。

そして家に帰り電気をつけテレビをつける。

ふと蓮は思った。

いつ奈美を家に誘うか分からないからちゃんと掃除をしないと。

蓮は最近、掃除を疎かにしていたため掃除をする。

翌日、千は屋上のベンチに座っているとそこに奈美がやってきた。

「疲れているの?」奈美は心配する。

「別になんでもない」千は寂しそうだった。

「千、体育祭のドッヂボール一緒にやろうよ。意地張ってないで」

「意地なんか張っていないし前にも言ったはずだ。やらないと」

「何でそこまで大我を拒否するの? 去年のクリスマスツリーは一緒に見に行ったのに」

「あれはその場の空気ってものがあったから我慢したんだ」

千はほんとに頑固だった。

「ほっとけ、やりたくないと言っているんだから」

そこに修がやってきた。

「何言ってんの」奈美は修に怒る。

「大我は確かにお前を傷つけた。だがあいつは変わったじゃないか。いつまであいつを憎んでいるんだ」

さらに修は千に言う。

「お前も変われ、そうしないとお前は1人になるぞ」

千は考える。

「……うるさい」

千は去っていった。

「千、大丈夫かな」

「あいつならきっと大丈夫だ」

修は奈美を励ます。

夕方、千はまだ屋上にいた。

「お前も変われ、そうしないとお前は1人になるぞ」

修の言葉を思い出した。

そこにある者がやってきた。

それは大我だった。

「何の用だ」千は警戒した。

「お前も参加しようぜ」大我は誘う。

「ふさげるな」千は怒る。

「健からお前を守ったのはお前や蓮たちにした事への罪滅ぼしのつもりだった」

千は驚く。

単純に良い所を見せたいと思っていたから。

「俺は今まで蓮たちに悪い事をした。

憎しみと悲しみにかられ傷つけた。

お前に謝っていなかった、千、あの時はすまなかった。だがお前は1人になるな、せっかく手に入れた仲間なんだから」

千は戸惑う。

「お前も変われ、俺だって変わることができたんだから。それに憎しみや悲しみ、怒りに飲み込まれているとお前も俺のようになるぞ」

千は気付いた。

このままいけば自分も大我のように1人になってしまうんじゃないかと。

体育祭当日、早速ドッヂボールが始まった。

1回戦目 蓮はボールをノーミスで取り剛もノーミスで当てて圧倒的な差で勝利する

2回戦目 修はサッカー経験もあったためうまくボールを取り、美羽はボールを投げていく。さっきよりは厳しかったが何とか勝つ事は出来た。

3回戦目 奈美はボールを取り、月美が投げる。そして後半は作戦とは違ったがうまくよけて3回戦目突破した。

4回戦目 大我はボールを取り鎧は投げるがしかしきちんと当てられないため中々得点が入らない。しかし何とかギリギリで勝利する事ができた。

そして決勝戦となった。

「いよいよ決勝戦だな」剛は興奮していた。

「絶対に勝たないとね」美羽もテンションが上がっていた。

しかしここで誰を投入するが8人は考える。

相手はとても強豪だったため強い人2人を出す必要があった。

「せっかく来たんだし俺にもやらせよ」

見るとそこには千がいた。みんな喜ぶ。

「来てくれたか」蓮は言う。

「千、頼んだよ」奈美は笑顔になる。

「でも相手強豪で」

美羽は鎧にボールを当てて黙らせる。

「でももう1人誰が出るんだ」

「大我、お前を認めてやってもいい、だから悪いと思うなら一緒にやれ」

千は大我を誘う。

「おう」大我も一緒にやる事に決めた

「燃え尽きるぐらい行こうぜ」

「おう」

千と大我は並び立つ。

そして決勝戦が始まった。

相手チームはボールを投げてくるが大我は受けとり千が投げ返す。

それは見事にうまい具合に当たる。

その後も大我はボールを取り千はうまく当てていき得点をどんどん稼いでいき今日の大会で最高得点となった。

しかし途中からミスも目立ち始める。

「ちょっと大変だな」大我は呟いた。

「ここまで来たんだ、きっと勝てる」千は励ます。

「そうだな、お前取るのも出来るか?」

「出来ると思う」

そして後半、千がボールを取り大我が投げ返す。

見事な連携が出来ていた。

「あいつら良いコンビだな」蓮はつぶやく。

「よかった、心が1つになって」奈美はうれしかった。

昨日まで壁があった千と大我が今、一緒に戦っていて。

そしてプレイ中、大我が転んでしまう。

その時、ボールが大我の顔に当たりそうになる。

しかし千は大我を庇ってボールに当たる。

「何で庇った?」

「偶然だ」

本当に偶然だった。

しかしそれでも今はそう見えるのだった。

そして試合が終わり結果が発表された。

10対55で千と大我の勝利、そして蓮たちのチームが優勝となった。

「やった!」剛たちは喜びハイタッチする。

千と大我は無表情だった。

「お前のおかけで勝てたな」

「別に、ただやりたかっただけだ」

2人は顔は合わせないが確かにそこには友情があった。

そして夕方、観客は帰り校庭には蓮たちが9人がいた。

2年前とは真逆でそこには笑顔があった。

そして今回の景品が北海道旅行だったためみんな喜ぶ。

「いつ行く」

「そうね~受験前には行きたいね」

「でも冬に行くのもありかもな」

7人は盛り上がっていた。

その7人を千と大我が見ていた。

「亡くなった奈美も喜んでいると思う。今のお前が心から笑顔になって」千は言った。

「こんなに楽しくなるとも思わなかったがな」大我はそう返した。

9人にとって今日は2つのとても喜ばしい日となった。



夕方、大我は、花壇にいた。

大我は花壇に花束を置く。

今日は死んだ奈美の命日だった。

本当は奈美の母校に花束を置きたかったがしかしここは別世界のため置けない。

大我は悪いと思うがせめて花壇の所に花束を置いて手を合わせる。

そこに青井亜美がやってきた。

「まだいたの大我君」亜美が話しかける。

「この花束は何?」亜美が聞く。

「別に何でもない」大我は言う。

「あぁきれいだなと思って」大我は花を見ていた。

大我は思い出していた。

死んだ彼女は花が好きでよく校庭の花壇に来ていた。

最初は花に興味がなかった大我も彼女の影響で大我も花に興味を持ちそしていつしか花が好きになっていた。

大我にとっては花は死んだ彼女との思い出のものだった。

「私もここの花壇好きでよく見に来ているの。

でも前と比べると花も昔より美しく見えるの」

亜美は誰とも関われないで1人でいたが大我のおかけで友達が出来、明るくなれた。

そして大我も今は1人じゃなくなった。

「今思うとお前と俺は似ていたな」大我は振り返る。

「そうだね。そして今の状況も同じだね」亜美は笑顔で言う。

それを遠くから蓮と奈美が見ていた。

「大我楽しそうだね」

「そうだな」

蓮と奈美も嬉しく感じる。

ずっと死んだ彼女をひぎずっていた大我が今では前を向いて生きていると思って。

そして亜美は大我に歌を歌ってとリクエストする。

「いや、今は喉が痛いから歌えない」大我は断った。

「でももし歌ってもいい場面があったらその時に歌ってやる」

「なにそれ」亜美は笑顔で返す。

この時期、大我の心境にある変化があった。

翌日、大我が花壇に行くとそこに蓮たち8人がいた。

「なんでお前たちまでいる」大我は思わず言う。

「昨日、お前が花を見ているのを見て俺たちも見たくなったんだ」蓮は花に興味を持ちだした。

そこに亜美がやってきた。

「みんなもいたの」

「ちょっとな」蓮はそう返す。

「でもここもいいものだな」鎧は気持ちよく感じていた。

「ほんとね、こうやって見ると花っていいものだね」美羽はそう呟く。

「亜美、学校は楽しいか?」大我は何となく聞く。

「楽しいよ」亜美は笑顔で返す。

蓮たちも嬉しく感じた。

一時期は交通事故で耳が聞こえなくなるかもという事態もあったが今は元気に生きていたため。

「元気のない花があるから水でもあげるか」大我は水道場に行く。

亜美もついていく。

そして2人きりになる。

「ねぇ何で花好きなの?」亜美は笑顔で聞く。

「好きになった人が花が好きだったんだ。それで話を合わせるために毎日花の勉強してそれで好きな人と花の話をしていたんだ。そしてその後、付き合う事が出来たんだ」

「そうなんだ」亜美は良い話を聞けてうれしく感じた。

「その彼女、大我と付き合えて幸せだね」亜美は笑顔だった。

「その彼女さんって優ヶ丘の人?」亜美が聞く。

「いや…違う。別の学校の人だ」大我は亜美の質問に動揺しながら話した。

そして大我は数年前の出来事を思い出した。

別世界の奈美と初めて出会ったのは入学式だった。

別世界の奈美は明るくて笑顔が似合う少女だった。

大我はそんな奈美に惹かれた。

そして振り向いてもらうために努力してそして奈美と付き合う事が出来た。奈美と花壇で話をするのが大我は好きだった。

そしてこんな時間がずっと続くと思っていた。

しかし奈美は病気になり学校に来なくなった。

大我は奈美の病気は治ると信じていた。

どんなに病状が悪化しても大我は奈美が死ぬ事を信じたくなかった。

だからずっと治ると信じることを諦めなった。

しかし結局奈美は死んでしまった。

奈美の死後、当たり前だが花壇には奈美が来ることはなかった。

大我はそれがとても悲しかった。

そして今でもそれを考えると泣きたくなるぐらい悲しかった。

しかし今の大我は同時にはある感情があった。

それは気付けば亜美の事を好きになっていた。

奈美の死以来、それを乗り越える事が出来ていなかった大我にとっては亜美は久しぶりに好きになった相手だった。

翌日、大我が屋上にいるとそこに亜美がやってきた。

「どうしたの、屋上に呼んで」

大我は緊張しながら告白した。

「亜美、俺は亜美の事を好きになった。俺と付き合ってくれないか」

「ごめんなさい」

すると雨が降ってきた。

「私も付き合っていた人がいたの。幼馴染なんだけど。でもその人は今、酒や煙草、女遊びに溺れているの。彼は私はもう不要だと言っているけれどでもそれでも私はまだ彼がまだ私のところに戻ってきてくれると信じているの」

だが大我はそう思えなかった。

「駄目だ。彼は亜美の事を捨てたんだ。だから」

「そんな事ない、彼はきっと戻ってきてくれると信じているよ」

「それは亜美がそう思いたくないだけだ。本当に好きならばそんな事言わない」

「…うるさい」

亜美は帰ろうとしたが大我は亜美の手を掴む。

亜美は振り返る。

「俺も形が違くでも大切な人が戻ってくるとずっと信じていた。でも俺は知った。過去を受け入れて未来に歩んでいかないといけない時もあると」

雨の中、2人はずぶ濡れになってしまう。

「あなたに何が分かるの」亜美は行ってしまった。

大我はショックだった。

そして何より彼は戻ってくるという希望の薄い事を信じているのだから。

同時に前の自分を見ているように感じた。

翌日、蓮たちが屋上にいるとそこに亜美がやってきた。

「どうしたの?」奈美が聞くと亜美は質問をする。

「大我君の事だけど…大我君ってどんな人なの?」亜美が聞く。

「大我は無表情で最初は威圧的だったけどでも優しい性格で俺たちはあいつに何度も救われた」

すると亜美は昨日の事を話した。

そして自分を捨てた彼の事も話した。

8人は苦悶の表情を浮かべる。

「私はまだ彼が戻ってきてくれると信じているのに大我はそれを拒否するの」

亜美はみんな自分の考えに納得してくれると思ったが8人ともその考えに賛同できなかった。

千が正直に意見を言った。

「悪いが俺も大我と同じ意見だ」

みんなもそうだった。

「そう…1つ聞きたいんだけど大我は何で私の好きな人を拒否するの?」

蓮たちは言葉を詰まらせる。

「それは君の事を思って」鎧が話している途中で「俺が話す」と蓮が割り込む。そして話す。

「大我の彼女は病気で亡くなっているんだ」蓮は重い口調で話す。

「え?」亜美は予想だにしない返答に驚く。

「大我はその彼女がとても好きで彼女の事をとても思っていたそうだ。だから彼女を失った大我は過去に執着していたんだ。大我の好きな人はある人とそっくりだったんだ。だから本人ではなくとも似ているからその彼女と付き合いたいと考えていた。大我も君と同じように過去を乗り越えられないでいた。でも大我は過去を受け入れて未来に進む事にしたんだ。もしかしたら大我は君が自分と重ねって見えたんだ」

亜美は大我の過去を知り悲しむ。

しかし簡単に彼を切り捨てる事が出来なかった。

「亜美も変わらないと。残酷だけどいつまでも待っていても戻ると思えないしそれに・・・戻ってきても君はまだ傷付くだけだと思う」蓮は説得する。

「でもそれでもわずかな可能性があるなら…」

「過去に縛られても何も手に入らない。俺も過去に縛られたことはあったが結局何も手に入らなかった。だから未来に進む事にしたんだ」

夜、亜美は部屋でうつ伏せになって考えていた。

大我を選ぶか幼馴染を捨てるか。

彼女の中には大我が気になっていた気持ちがあった。

何故なら大我のおかけで自分は変わる事が出来たのだから。

しかしずっと信じて待っている幼馴染を諦めることも出来ない。

亜美は迷っていた。

しかし亜美は思った。

大我は彼女の死を乗り越えて前に進んでいる。

それなのに自分はいつまでも彼が帰ってくるのを待っている。

このままじゃ自分は幸せになれない。

そして亜美は決意する。

翌日、まだ雨だった。

大我が屋上にいるとそこに亜美がやってきた。

「亜美」大我は驚く。

「私、あなたがこんな辛い思いをしていたなんて知らなかった。私も乗り越えたいと思った。こんな嫌な過去を」

大我も話した。

「俺も彼女の死を乗り越えたと思っていた。でも今もどこかで彼女の事を引きずっている。だが一つだけ決めている事がある。もう過去には戻らない、未来だけを見ると決めている」

それを聞いた亜美は大我を見習いたいと思った。

「亜美、もう一度言う。俺は亜美の事が好きだ。俺と付き合ってくれないか?」

「…はい。お願いします」

それを聞いた大我は表情は変えないが嬉しかった。

「ありがとう亜美」2人は笑顔になる。

そして雨がさっきよりも弱くなった。

空を見るとそこには虹が架かっていた。

「綺麗だね」亜美は笑顔になった。

「初めて見たな。でもこんなに綺麗だったとは」大我は虹を見て感動した。

「何それ」亜美は笑う。大我も笑顔でなる。

そして2人が花壇の所に行くとそこには枯れていた花が元気を取り戻していた。

「見て、元気になったよ」亜美は喜ぶ。

亜美が元気を取り戻したように花も元気を取り戻した。

大我は奈美の言葉を思い出した。

――大我、もし私が死んでも私ばかり考えないで。他の人を好きになっても私はあなたを恨んだりしないから。

大我は思わず涙がこぼれる。

――何でこんな事を忘れてしまったんだ。

大我は思った。

――奈美、俺は前に進む。これからまた大事なものを失うかもしれない。でも俺はもう立ち止まらない。俺には仲間がいる。俺を支えてくれる仲間がいる

大我は心の中で奈美に誓う。

こうして大我と亜美は付き合う事になった。

それを知った蓮たちは喜ぶ。

「そうか、大我が」蓮はうれしかった。

「死んだ彼女も喜んでいるよね。きっと」剛が言った。

大我に再び友達とは別の大切な人が出来た。

彼女の死を乗り越えた先にあったのは幸福だった。



クリスマスイブ、鎧の家にマイケルという外国人の友達がやってきた。

「久しぶり、マイケル」鎧は喜ぶ。

マイケルは鎧の外国の友達で2年ぶりだった。

鎧とマイケルは家に入るとそこに沙紀もいた。

「初めまして沙紀です」沙紀は挨拶する。

「初めましてマイケルです。沙紀さん美人ですね」

「ありがとうございます」

マイケルは椅子に座って楽しく会話をする。

「鎧、高校の友達の話を聞かせて」マイケルは言う。

それは以前、遊びに来た時にマイケルは鎧から7人の話を聞いて楽しんでいた。

マイケルが頼む。

「…分かった。実はこの間ね」

それは蓮のサプライズ誕生会の時、蓮が教室を開けると剛たちは「誕生日おめでとう」と叫んだ。

蓮は喜ぶ。

「これみんなからのプレ…」見るとプレゼントの上にゴキブリがいた。

「うわぁ」剛がプレゼントを美羽に投げつけたが美羽が避けて鎧の顔面に強く当たる。

鎧は痛かった。

「そんなことがあったんだ」

マイケルは面白がる。

「あれ結構、痛がったけど。というより美羽、反射神経良すぎるでしょう」

「ごめんなさい、剛が」沙紀は謝る。

「いいんだよ、別に…後さこんなこともあった」

それは昼休み、鎧が廊下を歩いていると前から月美が歩いてきた。

「そうだ驚かそう」鎧は隠れて驚かそうと考えた。

月美が通ろうとした時、「うわぁ」と出てきたら驚いた月美に思いっきりパンチされた。

「それは災難だね」マイケルはまだ笑う。

「月美の奴、もしかしたら9人の中で1番強いと思う。その後ね」

鎧は奈美にも同じ事をした。

すると奈美は驚いてバケツに水をぶっかけられた。

鎧は誓った。

2度と同じことをしないと

「鎧も大変だね」

「まぁな。他にもこういう事があった」

 それは月美の兄が去ったあとだった。

「お前なんで後ろに隠れているんだよ」修が聞くと

「あれは怖いだろう」鎧は返した。

「お前、美羽のこと好きなのか?」鎧は何となく聞いた

「なぜ、そんなこと聞く」修は動揺し赤くなる。

「前からそんな気がしていた。美羽の事が好きなら早く告白しろよ。ぐずぐずしていると誰かにとられるぜ。お前ならきっと良いよと言ってもらえるぜ」鎧はカッコつけて背を向けた。

「酷い。告白して振られたのにそんなこと言うなんて」

「お前、急に声変わったな」振り返ると知らない人がいた

「その後、どうなったの?」マイケルが聞く。

「必死に謝ったよ。まさかうまくシンクロするとは思わなかったけど」

「他は?」

「千は1年生の頃、何でも信じていたんだよ」

ある日、鎧が帰ろうとすると千がやってきた。

するとある本を渡す

「神になれる本、なんだこれ」鎧が聞く。

「お前、神になるのが夢だろ」千が返答する

「誰から聞いた」

「剛から」

鎧はやっぱりと思った。

――剛は冗談で言ったつもりなのに。

「どうしたのその本は?」マイケルが笑顔で聞く。

「とりあえず読んだけどつまらなかった。というより千は人の言う事簡単に信じるし剛はもっといい冗談を言ってほしいものだよ」

「ごめんなさい剛が」沙紀はまだ謝る。

「いいんだよ、別に」

「そう他には?」

「蓮は別世界から来た人らしいんだよ。でも特に言う事ないな」

蓮が聞いたら怒りそうだった。

「あとその後大我が仲間になった。敵のような存在だった大我が仲間になったし大我が悲しみを乗り越えて未来に進むことが出来て良かった」鎧はそう振り返る。

「良かったね。でも鎧、そんな面白い人たちに囲まれて楽しそうだね」

「でも色々大変だよ」そう言う鎧だがしかし今の仲間たちの事は好きであった。

そして夕方

「じゃあなマイケル」

「じゃあね鎧、友達と仲良くね。メリークリスマス」

そしてマイケルは帰って行った。



これは鎧がマイケルと別れた直後の話である。

そしてこれはクリスマスイブの夜に起きた小さな奇跡の物語である。

鎧はあるサプライズを考えていた。

それは蓮たち8人にクリスマスプレゼントをあげることだった。

そのために10月から2ヶ月間短期のバイトで朝の仕分けのバイトで働きながらお金を貯めていった。

そして貯めたお金を持ってお店に行く。

しかしグラス専門店に行く途中ある光景を目撃する。

それは青いビニールシートがかけられていて中から人が出てきた。

ここはホームレスの無法地帯だった。

彼らは職を失い家もなく空腹の中、外で過ごしていた。

クリスマス当日は寒いと予報ではあった。

鎧は心が痛かった。

―自分に何ができないか。

そしてある事を考えた。

そしてスマホで沙紀に電話する。

「いいね、それ、私もやりたい」

そしてクリスマス当日、鎧はマイケルと別れたあと、沙紀と色々なお店に行って商品を購入する。それはホームセンターやスーパーマーケットなど様々だった。

「お金大丈夫?」沙紀は心配する。

「大丈夫だよ」鎧は笑顔で返す。

そして夜、人々は家族や恋人などと笑顔で歩いている中ホームレスのいる場所は光もない無音だった。

とても同じ日だとは思えなかった。

ホームレスたちは外から出るとそこには色々な製品が置いてあった。

「誰だよ、ゴミを置いて行った奴は」

ホームレスは怒っていた。しかし中を見ると

「これはどういうことだ」

「分からない。でもきっとサンタが来てくれたんだ」

それは今よりも良い生活ができるほどの製品がたくさんあった。

ホームレスたちは大喜びであった。

それを影から2人が見ていた。

「鎧君、優しいのね」

「そんなことないさ」

「でもよくあんなに買えたね」

「俺の父さん。大手企業の社長だからお小遣いもたくさんもらっているんだ。だから足りない分はそこで補ったんだ」

鎧は笑顔で言うがほんとは蓮たちに自分で稼いだお金でプレゼントを買いたかったしお小遣いはなるべく使いたくなかった。

かなり無理した。

鎧と沙紀が帰ろうとした時、おじさんの笑い声がした。

振り返るとそこには目を疑うものがあった。

サンタクロースだった。

「信じられない。これって」

「メリークリスマス」

サンタは鎧と沙紀にプレゼントを渡した。

「ありがとう」

2人はお礼を言う。

鎧は思い出した。

2年前、父親の話を

。嘘だと思っていたら本当だったと驚く。

そしてサンタクロースはトナカイに乗って空に帰って行った。

その通った道は赤鼻のトナカイが流れていた。

「何て赤鼻のトナカイなの?トナカイすぐ側にいるのに」

「さぁ」

鎧がプレゼントを開けると蓮たちに買う予定だったグラスが8個入っていた。

鎧は感動した。

沙紀もプレゼントを開けると中には七色の花が入っていた。

その花はサンタの世界でしか咲かない貴重な花で寿命は10年だった。

さらに手紙があった。

見てみるとこんなことが書いてあった。

「この花に願いことをすると1つだけ叶うよ。それではまだ来年。メリークリスマス」

その時、雪が降ってきた。

「雪だ」

2人は喜ぶ。

「そういえば明日は剛と一緒に過ごす予定だったけど風邪引いちゃたんだ」沙紀は悲しそうだった。

「そうか、それは残念だな」

「でもいいよ、サンタも見れたしプレゼントも貰えたし」沙紀は笑顔で言う。

翌日、大我以外の8人は公園に集まる。

「あれ、剛、風邪は?」鎧が聞く。

「なんか分かんないけど急に治ったんだ」剛は不思議そうだった。

鎧は気付いた。

これもサンタじゃないかと

「そういえば昨日、サンタクロースが現れて、これくれたんだが」

蓮が出したのは昨日、沙紀がもらった花だった。

「それなら私ももらった」

「俺もだ。何かメモに願ったことが叶うと」

みんな貰っていた。

「そういえば昨日、サンタっぽいの見たんだが」修が言う。

「俺も見たけどでも気のせいか」千は返答した。

みんな笑うが鎧は感動した。

「みんな俺からもプレゼントがある」

鎧はみんなにグラスを渡す。

「鎧、ありがとう」みんな喜ぶ。

その頃、大我は屋上にいた。

「天使、ありがとう」大我の手には別世界の故人の奈美の形見のキーホルダーがあった。それはなくしたものであった。

「なんのことでしょう?」

天使はとぼける。

「きっとサンタさんは、あなたたちの友情や優しさに感銘を受けてプレゼントを渡したんでしょう」天使は笑顔で言う。

10人にとって忘れられないクリスマスとなった。



卒業式の2日前、修と美羽は美術室にいた。

修は今まで書いた作品を片付けながら話をしていた。

美羽は修に言った。

「修、高校を卒業しても会ってくれる」

「もうお前以上に好きになる女はいない」

それを聞いた美羽はうれしかった。

その頃、屋上に鎧がいた。

鎧は感じていた。

あの時、別の学校に行かなくて。

そこに剛と千、月美がやってきた。

剛は蓮と大我がもうすぐいなくなる事を寂しく思っていたが敢えて触れなかった。

一方、蓮と大我は屋上にいた。

「俺は後悔している。憎しみや悲しみを乗り越えやっと分かりあえたのにもうすぐ消えてしまう事を」

「別世界とはいえ、まだ奈美に会えたし、それに実奈ともまだ会えたじゃないか。それに憎しみが消えたのだからいいんじゃないか。こんな贅沢、めったにないんだからな」

「そうだな」

「お前たちはどのように出会ったんだ」大我は話を変えた。

蓮は話した。

「最初に出会ったのは剛だった。とても無邪気で誰にでも子供っぽく関わってくるから最初この世界に来たばかりの俺にとってはうっそうしかった。でもそんな剛と一緒にいたから奈美と出会う事が出来たんだ。奈美はとても暗くて静かだった。でもそんな奈美を俺は好きになった。今まで女を好きになれなかった俺が初めて好きになった女だった。最初は奈美とうまく打ち解けられなかったがでも剛のおかけで奈美とも仲良くなれた」

「そうか。俺の世界にいた奈美とは随分違うな」

「でもその後は大変だった。美羽と初めて出会った時から明るい女だった。でも問題点があった8人の中では唯一問題点がなかったのが美羽だった。彼女の明るさが俺たちの心を支えてくれて俺たちがずっと仲良くやってこれたのは、美羽のおかけだった」

「美羽らしいな」

「その後、入学旅行で千と出会ったが最初は良い友達としか付き合わないという主義だったんだ。だから正直、1年の入学旅行は、非常に重かった。でも剛と美羽の言葉で千は目を覚ましてそして俺たちの仲間になったんだ。その後、修と出会った。あいつが1番問題だった。人は見下すし、敵は作るし一番打ち解けるのに苦労した。でも今、俺たちが美術部に所属しているのは、修が入った事と奈美の提案があっての事だ」

「そうか、あいつら最初はそんな奴だったのか」

「その後、月美と出会った。奈美と同じように暗かったけど月美の場合、男がとても嫌いだった。でも剛の行動であいつも仲間になった。今思うと一番成長したのは月美だと思う。

そして次に仲間になったのが鎧だ。あいつは自分を強く見せるために奈美を手に入れようとした。でも千の行動であいつも変わり、俺たちの仲間になった。だが仲間になってからはそれまでの事が嘘のように面白キャラになってしまったけど」

「あいつ最初そんな感じだったのか」

「そうだ。ある意味一番変わった奴だよ、そして俺たち8人のグループが完成した。そこにやってきたのが大我だ」

「なるほどな」

「蓮、お前は良い仲間を持ったもんだ」

「お前にだっているだろ」

そこに亜美がやってきた。

「2人とも何してんの?」亜美が聞く。

「ちょっと話をしていたんだ」蓮が言う。

「大我今度一緒にデートでもしない」亜美は大我を誘う。

「そうだな」

「後、5月に新しい植物園が建設されるんだけど良かったらそこでデートしない」

亜美の誘いに大我は考えさせてと言った。

「分かったわ」亜美は去っていった。

しかし大我は悲しかった。5月にはもう自分は別世界に帰るためこの世界にはいない。

大我は近いうちに亜美に自分がパラレルトラベラーである事を話さなければならなかった。大我は切なさを感じた。

夕方、蓮が屋上にいるとそこに奈美がやってきた。

「明日卒業式だね」奈美は悲しそうに言う。

「そうだな…」

2人はあまり会話が弾まなかった。

その時、奈美は蓮を抱きしめる。

奈美は蓮の胸に顔を当てて泣き出した。

「もう2度と会えなくなるなんて」奈美はとても辛かった。

「奈美…例え俺がこの世界にいなくなっても心は奈美と繋がっているし奈美だけじゃない、剛や千、美羽に修、月美や鎧、大我とも繋がっている」蓮も悲しかった。

その頃、大我も亜美にその事を話した。

「別世界から…」亜美は表情を変えなかった

「ごめん、今まで黙っていて」大我は謝罪する。

「いいよ、私はもう1人じゃないしむしろあなたがこの世界に来たのは私を変えるためだと考えれば…」亜美は強がる。

大我は亜美を抱きしめる。

「ありがとう、亜美」

亜美は涙を堪えていた。

大我は亜美にキスをした。

亜美は思わず泣いてしまった。



卒業式当日、体育館にはたくさんの卒業生が集まっていた。

蓮は切なく感じた。

そして卒業式が始まった。

周りの生徒の中には泣いているものもちらほらいた。

来賓者が話をしている中、蓮の頭の中では高校の思い出が蘇っていた。

最初は高校に入る事を嫌がっていたがしかしここで8人と出会いそして一緒に過ごしていき時に傷つき時に泣いたこともあった。

しかしここで得たものは蓮にとって普通では体験する事が出来なかったことばかりだった。蓮にとってかけがえのないものばかりだった。

卒業式が終わり蓮達は外で集まっていた。

7人は蓮と大我がいなくなる事に対して寂しく思っていた。

しかし蓮は驚くことを言った。

「元の世界には帰らない」

「え?」

昨日、蓮は天使と交渉していた。

その結果、天使は本人が良ければいいと考え帰還しないことを承諾した。

しかしそれと引き換えに元いた世界で決まっていた出世の話はなくなってしまう。

さらに元の世界ではいずれ蓮は行方不明という扱いになってしまいやがては死亡者として戸籍上から消えてしまう。蓮にとってそれは罪のように感じた。何故なら多くの人を裏切り心配をかける事になるのだから。そして何よりこの世界に残るという事はその分大事なものを失う事になる。蓮にとってはせっかく就職出来た素晴らしい会社、スピート出世や尊敬などもなくなってしまう。しかしそれでも蓮はこの世界からいなくなるのだけは嫌だった。だからこの世界に残る事に決めた。それにこの世界で頑張れば形は違うかもしれないがまだ失ったものを取り戻せるかもしれない。という事で蓮はこの世界に残る事に決めた。

7人は喜ぶ。特に奈美は喜んでいた。

蓮は思った。

8人は出会ったばかりの頃とはすっかり変わったという事を。

「大我は」剛が聞く。

「俺は選択された世界から来た蓮と違って完全な別世界から来た者だからその場合は強制的に元の世界に戻らなければいけない」

その時、大我の体が薄くなっていた。

「俺たちは大我の事を忘れない。ありがちな言葉だけど」

蓮の言葉に大我は喜んだ。

千も大我に言った。

「もし今度会った時は一緒に冒険しよう」

「おぅ」

そして大我は最後に言った。

「蓮、みんな、奈美は任せた」

そして大我は光の粒子になって消えた。

もう会う事が出来ない友との別れだった。

でも蓮たちは寂しくなかった。

目には見えなくても心で繋がっている、そこには見えない絆があった。



卒業式から1週間後、夜の海神公園に蓮と奈美はいた。

「大我、最後に笑顔でよかった」

「俺はこの世界に来る前、友達とか彼女とかに何の意味があるのか分からなかった。でも今は友情などの良さに気付けて良かったと思う」蓮はそう返した。

蓮は振り返った。

剛、奈美、千、美羽、修、月美、鎧、大我

蓮にとってもし元の世界に戻ることが出来たとしてもし持ち込むことができたら彼らを連れていきたいと思うほど彼らの事を大事に思っていた。

「8人は俺の鍵のかかっていた部屋の扉を開けてくれて光を灯してくれたヒーローだ」

「まだ会えるかな」

「会えるさ、いつか」

「帰ろうか」

奈美が帰ろうとした時、蓮は奈美を抱きしめる。

「蓮…」

奈美はつぶやくが落ち着き静かに奈美も蓮の背中に手を回す。

そして蓮は奈美にキスをした。

そして顔を離す。

「帰ろっか」

「うん」

二人は手を繋いで歩いて帰っていった。

トゥルーエンディング、それは蓮がいた世界は真実でこの世界は偽物だったがしかし蓮がこの世界で生きることを決めたことで真実だった世界が偽物になり、偽物だった世界が真実になった。

    

                   完

    




トゥルーエンディングスピンオフシリーズ


泉蓮以外のメインキャラ8人のそれぞれの物語を描いたスピンオフ作品である

本編では語られなかった過去や本編の裏で起きた出来事などが描かれている



         トゥルーエンディングスピンオフ 始まり編


あらすじ

純崎剛を主人公とした作品。優ヶ丘高校に入学したばかりの剛はそこで奈美と蓮と出会い、そして絆を深めていく物語である。


桜の舞う季節、剛は優ヶ丘高校の玄関前にいた。

今日は入学式だった。

剛は、高校生活を楽しみにしていた。

どんな仲間が出来るが、どんな体験が待っているか剛は期待していた。

そして体育館に入ると多くの生徒がいた。

みんな緊張していた。

剛が椅子に座ると式が始まった。

来賓者が話している中、剛は眠くなってしまう。

そして寝てしまった。

起きると式は終わっていた。

「終わったか~」剛が帰ろうとした時、ある少女を目撃する。

それは海野奈美だった。

彼女は美貌の持ち主だったが暗かった。

剛は、話かけろうとしたがやめておくことにした。

家に帰ると机に中学の卒業アルバムが置いてあった。

剛はそのアルバムを見る。

剛は寂しかった。

何故なら3年間一緒に暮らしていた仲間と別れたからだった。

そしてまだ別れて1ヶ月経っていなかったため剛はまた寂しさが残っていた。

翌日、剛は昼休み屋上で休んでいた。

剛は友達を作ろうと考えているとそこに1人の青年を見つけた。

それは泉蓮だった。

剛は何か運命を感じた。

それはまるで後の自分の友達になるんじゃないかというものだった。

蓮はこの世界に来た事を不満に思っていた。

剛は興味を持ち話しかけた。

蓮は剛の質問に答えるが鬱陶しく感じ歩き出した。

剛も歩きながら話しかける。

そして蓮が教室に入ろうとした時、そこで奈美を目撃する。

剛は奈美が気になっていたため蓮に話してみる。

「あの子可愛いよね」

蓮も表情を変えた。

そして蓮は奈美の横を通ると同時に奈美が筆記用具を落とした。

しかし蓮は女性が苦手だったため拾ってあげずに背中を向けて無視してしまった。

「何やってんだろ」剛はすぐに奈美の側に行き筆記用具を拾ってあげる。

「ありがとう」奈美は表情が暗かった。

「いいんだよ。俺は純崎剛だ。よろしくな」剛は笑顔で言うが奈美は心を閉ざしていた。

剛は蓮の方を見て言った。

「あいつは女性が苦手なだけで悪い奴ではないと思うんだ。だから憎まないでやってくれ」

それを聞いた奈美は蓮が自分と似たものがあると感じた。

夕方、剛は両親と食事をしていた。

「どうだ剛、高校は?」父親が聞く。

「また2日目だよ。感想が出てこない」

「そうか」父親は笑った。

「剛、ちゃんと友達つくるのよ」母親が言う。

「母さん、剛は大丈夫だよ。自分から関わるタイプだし」父親が突っ込む。

剛は2人は悲しませる事はないと思った。

翌日、剛が廊下を歩いていると奈美が廊下にいた。

奈美は悲しそうだった。

「どうした?」剛は笑顔で話しかける。

「何でもない」奈美は去ろうとするが剛は止める。

奈美は下を向いていた。

「何でそこまで私に関わるの? つまらない人間なのに」奈美は上目遣いで怒った。

剛は表情を変えるが態度は変えなかった。

「確かに君は暗いし悲しそうだ。でもだから君を助けたい」剛の言葉に奈美は興味を持つ。

「俺の兄貴と約束したんだ。困っている人がいれば助けてあげられるような人間になれと。だからだ」

奈美は戸惑う。

「君は本当は孤独なんでしょ?」

「……私、中学生の時、同級生の女の子たちから嫉妬で冷たくされて不登校になったの」

「そうか。でも君にはまだ未来がある。これから友達をつくれば悲しみが消えるんじゃないのか」剛は言う。

奈美は考える。

「そういえばさっき拾ったんだがこのイルカのキーホルダー誰のか知らない?」剛が聞く。

「それ私の」

「そうか、はい」剛は、渡す。

「ありがとう」

「君、いるか好きなの?」

「うん」

「そうか。俺も海の生き物好きだよ。特に亀が一番好きだ」

「何で亀が好きなの?」

「なんかいいじゃん」剛は、笑顔で答える。

「大事なのは、恐れない心、向かっていく勇気だよ」剛は奈美の肩に手をのせ笑顔で励ます。

翌日、剛が校庭に行くと奈美が座っていた。

「どうしたの」

「何でもない。ただ座ってただけ」

「そうか。そういえば今度、友人と水族館に行く約束をしているんだけどよかったら一緒に行かない?」

「私は、いいや」奈美はまだ剛に心を開けていなかった。

奈美はその場を去った。

奈美が曲がると偶然蓮とぶつかってしまう。

「ごめん」奈美はすぐ去っていった。

蓮はますます奈美が気になった。

そして今抱いている感情が何なのか分からないでいた。

放課後、奈美は外で立っていた。

「何してるの?」剛が話しかけた。

「特に何もしてないよ」奈美は上目遣いだった。

「じゃ一緒に帰ろう」

「…いいよ」

剛の誘いに奈美が返事すると周りの男たちは妬みや嫉妬の表情をする。

そこに蓮がやってきた。

蓮は驚いた。

もう奈美と深く関わっていると。

そして蓮は剛と奈美の所に行く。

「剛!」

「蓮、どうしたんだそんな顔して」剛は少し驚いていた

「お前、何で…下校と一緒に逃げるんだ」

本当は、お前何で勝手に帰ろうとしているんだ、と言いたかった。

しかし緊張していたため言い間違えた。

そして2人がやり取りをしていると奈美が笑った。

2人が仲良しで何か面白かったようだ。

剛は初めて奈美が笑顔を見せた事に嬉しく感じた。

蓮は勇気を出して話しかけた。

「そういえば同じクラスだよね?」

「うん」

お互い緊張していた。

剛は2人が成長しているように感じた

「それじゃ3人で帰ろうぜ」

「そうだな」蓮もそう返す。

そして3人は一緒に帰っていく。

帰っていると剛は蓮を水族館に誘う。

「俺は、興味ないな」

しかし奈美が言った。

「やっぱり行っても良い?」

「勿論だ」剛は、喜ぶ。

「なら俺も行こうかな」蓮も考えを変えた。

「分かった。仲間に伝えておく」

そして3人は行くことになった。

前日の夜、奈美が準備をしていると母親がやって来た。

「奈美、男の子と遊ぶようだけど大丈夫?」母親は心配だった。

「大丈夫よ」奈美は言った。

しかし少し不安だった。

一方、剛も準備していた。

剛は楽しみだった。

そして当日、蓮が集合場所に行くとそこに奈美が待っていた。

「剛は?」

「また来ていないよ」

「そうか」

蓮は奈美と2人きりで気まずかった。

そこに剛がやって来た。

「すまない。友人が今日行けなくなったらしい」剛が言う。

だがとりあえず3人は電車に乗って目的地に向かう。

そして目的地に着いた。

「じゃあ早速入ろうか」3人は入っていく。

中に進むと幻想的な光景が広がっていた。

「綺麗だね」剛は喜んだ。

「そうだね」奈美も目を輝かせていた。

蓮は初めて水族館に行ったため感動を覚えた。

「そういえば何か目標とかあるの?」剛が蓮と奈美に聞く。

「私の目標は友達を作る事だよ」

「俺と同じだな、蓮は?」

「俺は今まで知らなかった高校生活とはどんなものなのかを知る事だ」

蓮の返答に奈美は混乱する。

「そうか。良い高校生活、遅れると良いな」剛は笑顔で言った。

「ちょっとトイレに行ってくる」蓮がその場を離れた。

「奈美、お腹すいたか?」

「私は大丈夫だけど」

「そうか。まぁこうやって歩きながら話すのもいいじゃないか」剛は奈美に言う。

「そうだね」奈美は笑顔になった。

剛は気付いた。

奈美の笑顔が増えたと。

そこに蓮が帰って来た。

そして歩いているとお土産屋を見つけた。

3人はそこに入って商品を見ていく。

奈美は亀のぬいぐるみを見つける。

「私、これ買う」

奈美が言いレジで精算をする。

「亀好きなのか?」剛は呟いた。

「何の事だ?」

「いや、何でもない」

そして奈美が戻ってくる。

「これ持ってやるよ」蓮は言った。

「いや、平気よ」奈美は言うが蓮が言うためお言葉に甘えて蓮に渡した。

そして3人が橋を渡りながら魚たちを見ているその時、奈美は足を滑らせて川に落ちてしまう。

「奈美!」蓮が思わず叫ぶ。

しかし川は浅かったため奈美は無事だった。

奈美はずぶ濡れだった。

「どうする?」蓮が聞くと剛は来ていた上着を奈美に渡す。

「いいの?」奈美が聞く。

「勿論だ。それに女の子が困っているのに見捨てる事なんて出来ないし」

「ありがとう」奈美は笑顔で言った。

蓮は何が嫌な気分になった。

それは奈美と剛が結ばれるんじゃないかという不安があったからだった。

「柵低いだろ。あれじゃ落ちるだろう」蓮は何故が変な事を言った。

奈美を励まそうとしたが逆に変な言葉になった。

しかし奈美は笑顔になった。

蓮は嬉しく感じた。

帰り道、奈美は剛に聞いた。

「何でそこまで私の事を思ってくれるの? 別に好きでもないのに」

「好きだよ」

蓮は一瞬凍り付く。

「奈美は仲間だからな。だから困っているなら助けてあげたいと思うんだ」

奈美は笑顔になる。

蓮は安心する。

そして剛は蓮、奈美と別れる。

そして蓮は奈美と一緒に帰る。

「寒くないか?」

「大丈夫よ」

2人が歩いている後ろには氷崎大我がいた。

「奈美……何であいつと」大我は怒りに震えた。

しかし大我は過去を乗り越えるため我慢する事にした。

翌日、剛が遅刻して登校すると同級生たちが剛の元に集める。

「剛、聞いたよ。奈美と一緒に水族館に行ったんだろ。俺たちも一緒に連れて行ってくれ」同級生たちは頼む。

「奈美と関わりたいなら勇気を出せ。勇気があれば願いは叶うかもしれない」剛は笑顔で去っていった。

蓮と奈美は校庭にいた。

「昨日は楽しかったね」

「そうだな」

「今度はもっと友達を増やしていきたいね」

奈美は笑顔だった。


         トゥルーエンディングスピンオフ 夢編


あらすじ

霧島修を主人公にした作品。恋と挫折を学んだ修の物語である。


修は屋上で休んでいた。

その心にはある思いがあった。

最初はサッカーのみで仲間を持つつもりはなかったがしかしサッカーが出来なくなり代わりに蓮と剛、奈美、千、美羽と友達になったため修にとっては想定外の事となった。

そしてなにより美羽に一目惚れして気になっている自分がいた。

そして美羽に助けられてから余計美羽の事が気になっていた。

放課後、修が玄関に行くと奈美が蓮達を待っていた。

「奈美、美羽は学校に来ているか?」

「もう帰ったよ。今日は急ぎの用があるって」

「そうか……」修は寂しく感じた。

「……美羽は彼氏いるのか?」

「いないよ」

奈美の言葉に修は安心する。

「修、大丈夫?」奈美は修がサッカーが出来なくなった事を心配していた。

「大丈夫だ。それに引きずっていても仕方ない」

修の手にはボールのキーホルダーが握りしめられていた。

奈美が帰った後、修は帰ろうとした。

そこに神楽正明がやって来た。

「お前、美羽と付き合っているのか?」

正明の言葉に修が慌てる。

「そんなわけないだろ…」

「本当か?」

「……お前、美羽の事が好きなのか?」修が聞いた。

「俺は美羽の事が好きだ」正明はあっさり答えた。

「……俺は美羽の事が本当に好きなのか分からない。小学1年の時以来、サッカーばかりで恋をしていないからな」修も答えた。

「そうか……それなら1つ賭けをやろうぜ」

正明の言葉に修は興味を持つ。

「野球だ。負けた方が美羽から引き下がるという事で」

「そういえばお前、野球をやっていたな。将来を期待されていたけど怪我でやめたようだな」

「そうだ。それで出来なくなったと分かると今まで俺の事を慕っていた球団が次々と離れていった。悲しいものだよ」

修は正明が自分と似ていると感じた。

「……良いぞ」修は認めた。

しかし修は野球経験が0だった。

正明は驚いた。

「勝てば良いだけだよ」修は前向きだった。

翌日、修は屋上にいた。

修はある昔の事を思い出す。

そして悲しくなった。

「何しているの?」そこに美羽がやって来た。

修は戸惑う。

「別に……」

「でも良かった。修がみんなと仲良くしていて」美羽は修の事を心配していた。

「………美羽」

「何?」

「………俺はサッカーが出来なくなってもう高校生活に何も希望を抱けなくなっていた。でも……今の高校生活も悪くない。今までサッカーをした分、ゆっくり休むとするか」

修の言葉に美羽は笑顔になった。

そして修はボールのキーホルダーを取り出す。

「それって」

「俺のファンの子がプレゼントしてくれたものだ」

修は空を見る。

「でも俺は信じている。いつかまだサッカーが出来るようになると」

「何でそう思うの?」美羽が聞いた。

「勝つと信じないと負けてしまう、俺はそう思っている。信じる事は大事な事だ。だから俺はここまで登りつめたんだ」

修の言葉に美羽は笑顔になる。

2人の会話を正明が陰から見ていた。

そして嫉妬する。

その後も修は野球の練習をせずずっと絵を書いているだけだった。

正明は本当に美羽の事が好きなのか疑問を抱く。

その後も修は美術室で絵を書いていく。

「お前やる気あるのか?」正明が入ってきて怒った。

「お前にとって有利な種目で勝負してやるんだ。文句言うな」

正明は不信感を抱いた。

日曜日、修と正明はグランドにいた。

内容はキャッチボールだった。

先に10回取れなかった方が負けというルールだった。

正明は本気で挑むが修はなぜがやる気がなかった。

そのため早いうちに何回もボールを掴めず落としてしまう。

正明は違和感を感じるがそのまま続行する。

そして修は9回落としてしまう。

そして正明が投げた最後の1発も修は掴めず落としてしまう。

この勝負は正明の勝ちだった。

「俺の勝ちだな」正明は嬉しそうだった。

修は黙ってボールを拾う。

「お前は嬉しいのか?」

正明は思わず修の顔を見る。

そして気付いた。

「……こんな未経験相手に勝っても嬉しくないな。」

「気付いてくれると信じていたぜ。だから敢えて俺は敢えて不利だと突っ込まなかった」修は言った。

「お互い、将来を期待されていたにも関わらず夢を失ったもの同士だから分かると思ったぜ」

「修、美羽を譲るよ」

「いや、そのまま俺と戦えば良いじゃないか」

「自分には厳しくいかないと」

修は空を見る。

「……でももしまだサッカーが出来るようになったらまたいつかサッカーをしたい」

修はボールのキーホルダーをポケットから出す。

「それは」

「サッカーが好きな女の子がいたんだが彼女は重い病気で外で遊べないでいた。テレビで見るしかサッカーを楽しめなかった。そんな彼女は俺の大ファンでいつも俺の出る試合を見に来てくれた。そして俺がいつかプロになる事を応援してくれた」

正明は真剣に聞く。

「だから俺は辛い事があっても頑張ってこれた。でも彼女は病気で亡くなった……それを知った時は悲しかった。そしてより一層サッカーを頑張らないとと思った。プロになるために」

「……彼女は今でもお前のファンだよ。サッカーとか関係ない。彼女にとってお前は憧れの選手である事には変わりないだ」正明は言った。

それを聞いた修は笑顔になった。

「お互い信じようぜ。まだいつか出来るようになると」

翌日、修はまだ屋上にいた。

手には女の子からもらった手紙があった。

久しぶりに読んでみる。

『夢が叶うように応援しています。サッカーじゃなくても霧島選手の夢が叶ってくれたら嬉しいです』

修はこの手紙が大事だった。

「ラブレター貰ったの?」

そこに美羽がやって来た。

「ファンからの手紙だ」

そして修は思った。

今の自分の夢、それは蓮や剛、奈美、千、美羽そしてこれから出会う仲間達と楽しい高校生活を送る事だった。




        トゥルーエンディングスピンオフ誓い編


あらすじ

雪中月美を主人公とした作品。迫害に苦しむ皆を救うために月美が奮闘していく話である。


1年の10月、月美はある夢を見る。

それは1人の少女が周りからいじめられ泣いている姿だった。

月美は助けたいと思ったが体は動かなかった。

そして目を覚ます。

そして悲しい気持ちになった。

昼休み、月美は暗かった。

「どうした? 元気ないようだが」千が話しかけた。

「別に」月美は機嫌が悪かった。

「まぁ元気だせ。何かあったら美羽とかいるし」千は去っていった。

放課後、月美が帰っていると突然月美の前から何がか飛び出した。

それは佐々川皆だった。

「とっととこの団地から去れ」人々は皆にゴミなどを投げつける。

皆は無表情だった。

しかしその表情から悲しさが伝わって来た。

月美は助けようと思ったが怖くて何もできなかった。

そして人々は部屋に戻っていった。

そこに奈美と美羽がやって来た。

2人は皆を見つけてすぐに2人の側にいく。

「大丈夫?」美羽は皆のゴミを取ってあげる。

月美も近づく。

そして気付いた。

彼女はかつていじめにあっていた同級生だと。

そして夢の中に出てきた少女であると分かった。

正夢だった。

皆は泣いていた。

「何があったの?」奈美が聞くと月美は皆にハンカチを渡した。

「……ありがとう」

皆は月美からハンカチを受け取るが皆は月美が同級生である事に気付いていなかった。

「あなたまだ迫害されていたんだね」

それを聞いた奈美と美羽は月美を見る。

皆は去ろうとしたが美羽が止めた。

「何があったの?」

「言っても無駄だから」皆は悲しそうだった。

「でも何か言ったら変わるかもしれないよ。諦めていたら何も変わらない」

奈美の言葉を聞いた月美は自分と重ねる。

「もしよかったらここに電話して」

美羽は電話番号が書いてある紙を渡す。

皆は迷いながらも一応受け取る。

「同情しなくて良い。私を思ってくれている人がいるんだから」皆は去っていった。

月美はその言葉に疑問に思った。

月美は奈美と美羽一緒と一緒に帰っている途中、美羽が月美に聞いた。

「さっきの女性と知り合いのようだけど」

「……あの人は私の中学生の同級生だけど彼女の父親は殺人犯で多くの人を殺害したの。彼女はその殺人犯の娘というレッテルを貼られてしまってそしてあちこちで嫌がらせや差別など迫害を受けていたの。でも私は彼女を助けてあげる事が出来なかった」月美は悲しかった。

奈美と美羽は言葉をかけられなかった。

夜、皆が公園に入ると渡啓太が待っていた。

「皆、金は持ってきたか?」啓太が笑顔で聞く。

「駄目だった」

「そうか。まぁ頑張ってくれただけ嬉しいよ」啓太は笑顔で皆の頭を撫でる。

翌日、月美と奈美、美羽が海神公園に行くと皆がベンチに座っていた。

皆は迷いながらも月美たちに電話して呼んだ。

「言い忘れたけど久しぶりだね、皆」月美が声をかけた。

「久しぶり、月美」皆は覚えていた。

しかし2人には壁があった。

そこに啓太がやって来た。

「皆、どうだ? 金の方は?」啓太が笑顔で聞く。

「ない…」

「そうか。できれば早いうちに渡して欲しいな」啓太は優しく話す。

「あなた、何なの?」美羽が啓太に聞く。

「皆のお友達ですか、俺は彼女の恋人だよ」啓太は笑顔で言う。

その時、皆の表情が一瞬曇った。

月美はそれに気付いた。

そこで千と修が月美たちを目撃する。

「あいつは…」千は警戒する。

そして千は月美たちの側に行く。

「啓太、お前何をしている?」千が聞く。

啓太は振り返る。

「久しぶりだな、千」

「お前、次は何をしようとしている」

「俺は何にもしていないしむしろ迫害を受けている彼女を救ってやっているんだよ」

その会話を月美たちは聞いて啓太に不信感を抱く。

「千、俺を悪い奴だと思うな。俺は良い奴なんだから」

啓太は笑顔で去っていった。

千は何が不吉な予感を感じた。

「千、さっきの話どういう事?」月美が聞く。

千は重い表情で話し始めた。

「あの男は人の弱みに付け込み犯罪を犯す極悪人だ。あいつによって犯罪を犯してしまった人間もいるという話だ。あいつは悪魔なんだ」

その話を聞いて月美たちは衝撃を受ける。

聞こえない修はただ遠くから見ていた。

「もしかしてあなたは彼のために何が犯罪を」奈美が聞く。

それは皆と啓太の会話の中にお金が出てきて不審に思ったため。

皆は立ち上がり奈美たちに背を向ける。

「啓太は迫害を受けている私に手を差し伸べてくれた。私にとっては大切な存在なの。たとえお金を渡してと言われても」

月美は皆の側に寄る。

「彼が本当にあなたを好きなのか私には分からない。でもあなたは本当にそれでいいの?」月美は聞く。

皆は顔をそむける。

「君も何か言われているんじゃないか」

千の言葉に皆は何も言わなかった。

皆が去ろうとした。

「私はあなたが周りからいじめられていたのに助けてあげられなかった。今でもそれを後悔している私もその人たちと同じ悪だと思う。だからあなたを助けたい。それがたとえ迷惑でも」

皆は去っていった。

月美は悲しくなった。

「何でこんな事に…」月美はショックだった。

「彼女ならきっと大丈夫だ。単純だがそう信じるのが大事だ」

千は月美を慰める。

夜、月美は部屋で考えていた。

――一どうすれば良いの。

月美は答えが出せなかった。

その頃、皆は町中の住人から暴行を受けていた。

棒で叩かれたり蹴られたりしていた。

「この泥棒猫め」住人達が暴行をしているとそこに心配だった奈美と美羽がやって来た。

2人は皆に気付き止めようとした時、皆は包丁を取り出した。

さすがの住人たちも後ずさりして恐れて逃げていった。

皆は辛かった。

そして静かにその場を離れた。

2人も敢えて声をかけなかった。

その時、美羽は遠くにいる啓太を目撃した。

啓太は笑顔だった。

美羽は不信感を感じた。

翌日、皆に呼ばれて月美がやって来た。

「どうしたの?」

「私、もう殺して良いよね」皆は包丁を持っていた。

月美は驚く。

「駄目だよ。あなたは確かに犯罪者の娘だけどでももしあなたが手を出してしまえばあなたは本当の犯罪者になってしまうよ」月美は必死に説得する。

「じゃあどうしたら良いの?」皆は泣いていた。

「変わる事を諦めたらそこで終わりだよ。明るい未来を夢見て進んでいけば光があるはず。綺麗事かもしれないけど私はそれが大事だと思っている」

皆は月美の顔を見る。

「私だって変われたんだ。あなただって変われるはず」それは月美も形は違うとはいえ、前に進めないでいた自分と似ていると思ったからこそ言えた事だった。

そこに啓太がやって来た。

月美は警戒し皆を後ろに隠す。

「皆、そろそろお金を渡してくれ」啓太が近づく。

月美は怖がった。

そこに蓮たちがやって来た。

「……啓太、私、あなたと別れる。あなたはわたしじゃなくてお金だけが好きなんでしょ」

皆が勇気を出して言った。

月美は嬉しく思った。

啓太は怒りが湧く。

「わざわざ犯罪者の娘で迫害を受けているお前を助けてやったくせに俺を簡単に捨てるとはな」啓太は豹変した。

「あなたはただ私を利用してお金を手に入れたかっただけじゃないの」皆の言葉に啓太は笑い出す「ふさげるな」啓太は月美のところに歩いて近付く。

蓮たちも危ないと感じる中、千が飛び出した。

千はすぐに走り月美の前に立つ。

啓太が走り出し殴ろうとした時、そこに1人の男が啓太に飛び蹴りをしてきた。

啓太は腕を蹴られた。

その男は黒い服を着ていて顔も黒いマスクで覆っていた。

男は奈美の方を見る。

啓太は勝てないと考えて去っていった。

「大丈夫か?」千が月美に聞く。

「大丈夫よ。ありがとう」月美は笑顔になった。

蓮たちも側にいく。

「大丈夫よ」月美は安心した表情だった。

「月美、強かったよ」奈美は月美を褒める。

月美の姿を見た皆は思った。

自分は犯罪者の娘というレッテルがあるから幸せになる事を諦めていた。しかしかつて自分を助けてくれなかった月美が自分を助けてくれた姿を見て自分も変われると思えるようになった。

蓮と剛、修、鎧はこの出来事を知らなかったため困惑する。

黒い男が去ろうとした。

「待って」奈美が呼び止める。

男は振り返るがそのまま去っていった。

しばらく歩いていると天使が現れた。

「素顔で出ていけば良いのに」

「顔を出すと恋しくなる」大我はマスクを取った。

「奈美を求めてこの世界に来たがでもやっぱり迷いがあるようだ」

1ヶ月後、月美が公園に行くと皆は笑顔で猫と戯れていた。

その姿は輝いていた。

月美は嬉しくなった。

そこに千が来た。

「彼女、元気だな」

「うん」

まだまだ壁はあるが皆なら乗り越えられると月美は思った。

月美と千が公園から出ると奈美と美羽がいた。

「守る事が出来て良かったね」奈美と美羽は笑顔になった。

「うん」

月美から後悔というものが消えた出来事となった。




カラフルスピンオフ 愛編


あらすじ

川上美羽を主人公とした作品。美羽と修が恋に関係した試練を乗り越えていく話である。


美羽は屋上にいた。

そこに修がやってきた。

「どうした」修が聞くと美羽は「別に、ただいつもここにいるからいるだけ」と言った。

「付き合って3ヵ月だったな」

「そうだね」美羽はそう返すが今、不安に思っていることがある。

あれから朝美ともほどんと関わらなくなっていた。

美羽は悲しく思っていた。

翌日、美羽が学校に登校するとそこに思わぬものを見てしまう。

それは蓮と美羽

の熱愛記事だった。

「なにこれ」美羽は驚く

「美羽、これホント?」「あんなロマンチックな事あったのに」同級生は美羽に言った。

「違う」美羽は否定する。

昼休み、美羽はなぜそんな記事を書いたかを聞くと相手は答えた。

「だって書いてほしいと言ったじゃないですか」

「え?」

「大我が美羽がこれを記事にしてほしいと言ったから記事にした」

やっぱり大我だった。

蓮は呆れた。

なぜここまでするのかと。

大我の所に行きその件について聞く。

「美羽、お前が言ってほしいと言ったから手伝ってあげたんだ」大我は本心でもないように言った。

「何が目的なんだ?」

「前も言った通りだ。蓮、お前にこれ以上人を傷つけさせたくないもんでな」そう言って大我は立ち去った。

「待って!」

奈美は声をかけようとしたが蓮は止めた。

「もうこれ以上話しても分かり合えない」

放課後、美羽のところに月美がやってきた。

「一つ思ったんだけどあの記事ほんとに大我なのかな?」意外な発言に美羽は戸惑う。

その頃、美術室では修が探し物をしていた

「なんてない、俺の絵」修が絵を探しているとそこに鎧が来た。

「どうした?」

「絵がないんだけど」

「絵がないってあれコンテストに出す絵じゃん」鎧は驚く。

「毎日、書いたのに何でないんだよ」それは修がコンテストに向けて毎日、合間の時間に書いてきた絵だった。

「仕方ない、みんな呼ぶか」鎧はそう言い電話して蓮たちを呼んだ。

そしてみんなで掃除をかねて探す。

しかし見つからない。

「持って帰ったんじゃないか」千が言う。

「俺が持って帰るとは思えない」修は疑問だった。

月美は嫌な予感がした。

そしてそれは的中する。

翌日、屋上で美羽は朝美に呼ばれた。

「どうしたの?」

美羽が聞くと朝美は手に修の失くした絵を持っていた。

「それは修の」

すると朝美はライターを取り出した。

「やめて」美羽が止める。

「じゃあ修と別れて。さもないとこの絵は、燃やすよ。もちろん脅されたとは言わずに」朝美は力が抜けたように言う。

美羽はどうしたらいいか分からなくなる。

教室に戻るとやはり冷たい目線があった。

美羽はその場に入れなくなってしまう。

そして校庭に行く。

そこに大我がいた。

「あなたのせいでこんな事になったのよ。どうしてくれるのよ?」美羽は泣きながら怒る。大我は黙っていた。

美羽はその場から離れた。

修も同じだった。

周りから同情や悪口などに巻き込まれていた。

「修、元気だせ。そのうちまた良い彼女出来るさ」

友人が笑顔で言うと修はその友人の胸倉を掴む。

「俺は美羽が浮気していないと信じている」

「でも何でそう言える?」

「俺はただ信じたいだけだから」

修はその場を去った。

放課後、美術室に入るとそこには修がいた。

修が適当に絵を書いているとそこに美羽がやってきた。

「美羽、大丈夫か」修は聞いた。

「…大丈夫」

修は美羽を抱きしめる。

美羽は戸惑う。

「今は苦しいかもしれないがでもそれを乗り越えないといけない。お前が苦しいなら俺が支えていく」

修の言葉を聞いた美羽は泣き出してしまう。

夕方2人は一緒に玄関まで行く。

やはり2人でいると周りも変な目で見る。

「気にするな」

そして2人は海神公園の中に入る。

「今回のコンテストは諦める」

「そう…」美羽は悲しそうだった。

翌日、美羽は朝美に絵を返すよう頼む。

「じゃ修と別れる?」

「……分かった。別れる」

美羽は気付いた。

自分のせいで修が傷ついているしこれ以上傷つけたくないと。

美羽は辛かった。

夕方、美羽が屋上にいるとそこに修がやってきた。

「どうした」

「……別れてほしい」

「突然どうした?」修は驚く。

「もう好きじゃなくなった」美羽は答える。

「……そうか。分かった」修は返答し帰っていく。

修がいなくなった後、美羽は泣き出してしまう。

――これでいいん

美羽は無理にそう思う事にした。

翌日、美羽が屋上に行くとそこに6人がいた。

しかし修はいなかった。

「珍しいな。修がいないなんて」鎧は呑気だった。

美羽は何も言えなかった。

「どうしたの? 美羽」奈美が心配する。

「別に何でもないよ」

その後、美羽が廊下に行くとそこに朝美がいた

「修と別れた。だから絵を返して」

「私が修と付き合えるまで渡さないよ」

「話が違うじゃん」

「もし今、絵を渡すと約束破られるかもしれないから」

「私たち友達だったじゃん」美羽は悲しそうだった。


「前はね。でも今は違う」朝美はその場を去る。

美羽が廊下を歩いているとそこで修とすれ違う。

お互い、気まずそうだった。

美羽は黙って行ってしまう。

昼休み、美羽が屋上に行くと蓮、奈美、千、月美がいた。

「美羽、やっぱり元気ないけど」奈美は心配だった。

「何でもない」美羽は無理して言うが顔は悲しそうだった。

「もしかして修と喧嘩した?」月美が聞くと美羽は黙ってその場から出ていってしまう。美羽は校庭の花壇で花を見ていた。

そこに奈美と千が来た。

「美羽、やっぱりなんかあったでしょう?」

「何でもないよ」

「そのように見えないが」千は言った。

「美羽、お前の明るさがあったから俺たちも明るくいられた。美羽は俺を退学問題から守ってくれたじゃないか。だから俺は美羽を助けたい」千は美羽の目を見て言った。

「私も同じだよ。美羽には笑っててほしい。悲しんでいる美羽は好きじゃないし」

千と奈美の言葉を聞いた美羽は感動する。

その頃、修が美術室に入るとそこに他の部員がいた。

「そういえば修、あの絵どうするんだ? せっかく書いたのに」

「何のことだ」

「朝美が持って行ったじゃん」

「朝美が」修は朝美が犯人だと確信する。

そして修は気付いた。

放課後、美羽は保健室で眠っていた。

保健室には誰もいなかった。

そして起きて出ていこうとした時、そこに修が入ってきた。

「美羽」修は戸惑う。美羽も気まずそうだった。

「なぁ美羽。なんて俺をふったんだ?」美羽は答えなかった。

「どんな回答でも俺は、受け入れるから」美羽は修をベットに連れて行って座って経緯を説明した。

修も理解した。

「そんなことがあったのか」

「私のせいで修が傷つくのが嫌だったの。だから…」

「前にも言っただろ。俺は美羽の事を守ると。そんなに俺が信用できないか?」

美羽は気付いた。

自分のやっていたことが逆に修を傷つけたことを。

「俺は美羽の事が好きだし、俺のそばにいてほしい」修は美羽を抱きしめ、ベットに倒す。そして修は美羽にキスをする。

修は美羽の手を握りしめる。

翌日、朝美は屋上で待っていた。

そこに偶然何も知らない美羽と修以外の蓮たち6人がやってきた。

「朝美」

「何よあんたたち」朝美の態度は怖かった。

「随分、酷いいたずらするんだな」

上を見ると大我が屋上のタンク部分に座っていた。

そして降りてきた。

「いつまでこんなくだらないことしているんだ」

「何が言いたいの?」

「例え美羽が修と別れてもお前の所には来ないと思うぜ」大我の言葉に朝美は怒りを覚える。

そこに修と美羽がやってきた。

「聞いたぞ、朝美。お前が絵を持っているんだな」

「修と別れたのは嘘だったんだ」朝美がさらに怒り出した。

「修の絵を燃やす」

「美羽が教えてくれた。お前が隠し持っていたことを。そしてこれを使って美羽を脅して俺と美羽の中を引き裂こうとしたことを」

朝美は戸惑う。

「なくなっていなかったのか」蓮がつい反応してしまう。

剛や奈美たちは驚く。

すると朝美は自暴自棄を起こし、ライターをつける。

「やめろ」剛は叫ぶか朝美は無視する。

「おい」千が近づこうとした時、「動いたら燃やす」と朝美は叫ぶ。

「燃やしたって何も手に入らないよ。むしろ失うだけだよ」月美は説得するが「暗い性格のあなたには分からないのよ」朝美は言う。

「あなたはまだ生きているじゃん。まだ新しい恋も出来るよ」美羽の言葉も彼女に届かなかった。

「じゃあ修、私と付き合ってよ」朝美は叫ぶ。

「……それは出来ない。俺は美羽の事が好きだし、別れる事なんで出来ない。それに自分の事を好きでもない人に好きだと言わせてお前はうれしいのか? 俺は嫌だ。俺は本当に好きな人にしか好きと言いたくない」修の言葉に朝美は正気が抜けた。

その時、大我が近づいてきた。

「来ないで。ほんとに燃やすよ」

「大我、動かないで」

奈美は慌てて説得するが大我は無視して大我は絵を掴んで後ろに投げる。

それを鎧がキャッチする。

そして大我は朝美にビンタする。

「ふさげるな。人の努力を無駄にする奴は俺は許さない。世の中良い事ばかりじゃない。願って努力しても実らない願いもある。だがそこで努力をする事をやめたら幸せなんかこない」

それを聞いた朝美は自分の行いに気付き反省する。

「………ごめんなさい」朝美は生気が抜けたようだった。

「……美羽……私は負けた。だからもう諦めるわ」

「朝美なら良い男と付き合えるよ」

「……ありがとう…美羽」

そして事件は解決した。

夕方

「しかし今回は大変だったな」修が言う。

「でも良かった」美羽は安心する。

2人が一緒に帰ると修は美羽を抱きしめる、美羽は戸惑うがもう慣れていた。

そして美羽も修を抱きしめる。

寒い夜だったが美羽は暖かった。

その頃、大我は考えていた。

あの蓮と美羽の記事のネタを提供したのは大我ではなかった。

大我は朝美のしわざだと気付きながらも彼女をかばったのだ。

それは朝美の恋心が分かっていたからせめて修に嫌われないようにするための配慮だった。

「しかし修も成長したようだな」大我はそう感じた。

そこに天使がやってきた。

「かっこよかったですよ。でも私の出番はありませんでしたけど」

あの時、万が一、朝美が燃やしても天使の力で燃えないようにしてもらうと大我は考えていた。

美羽は幸せに感じていた。

修が自分を守ってくれて 。




           カラフルスピンオフ 世界編


あらすじ

海野奈美を主人公とした作品。蓮への片想いに悩む奈美が別世界の自分を通して愛について学んでいく。


奈美は屋上で空を見ていた。

奈美は元気がなかった。

蓮の事が好きだと気付いて自分はどうしたら良いか分からないでいた。

ふと振り返るとそこに光が現れた。

そこからもう1人の奈美が現れた。

「あなたは…」奈美が驚く。

「あなたね、別世界の私って」もう1人の奈美は笑顔だった。

「いや~会えて嬉しいよ、よろしくね」

奈美は戸惑う。

そこに天使がやって来た。

「天使さん、これは?」

「奈美に話があります。彼は別世界に住むもう1人のあなたです。ただし彼の名前は多佳翼であなたと顔が同じだけで名前などは違います」

奈美は納得した。

「あなたに1つ頼みたい事があります。2日だけ世界を交換してみませんか?」天使は提案する。

奈美は考える。

「私は数日前に彼女に助けられた事がありました。私は彼に願いを1つ叶えると言いそして彼は別世界に行ってみたいと頼まれました。私は思いました。奈美と似ているならあなたも特別にと思って」

奈美はさらに考える。

「お願いだよ。君の評判を下げる事はしないから。ちゃんと天使さんが見てくれるから」翼は笑顔で奈美を揺さぶる。

奈美は自分に揺さぶられているようで気味が悪かった。

「……分かった。でも変な事しないでよ」

「分かってるって。ありがとう」翼は笑顔だった。

そして2人は服を交換しそして奈美は別世界に行く。

奈美が目を覚ますとそこは優ヶ丘高校の屋上だった。

奈美は校庭に行ってみるがあまり変わっていないようだった。

「翼!」振り返るとそこに蓮が来た。

「どうしたの?」

「ちょっと来て」蓮は奈美の腕を掴みある教室の前に連れて行く。

「開けてみて」蓮に言われてドアを上げると「誕生日おめでとう」と友人たちが祝福する。

奈美は戸惑う。

「どうした? 今日はお前の誕生日だぞ」友人が言うと奈美は気付いた。

――今日は彼女の誕生日か。

「ありがとう」奈美はとりあえず言う。

「何か今日のお前暗いな。いつもなら明るいのに」蓮が笑顔で指摘した。

奈美はものすごい違和感を感じた。

「翼プレゼントだ」友人が奈美にプレゼントを渡す。

「…ありがとう」

「開けてみて」

奈美が箱を開けると爬虫類関係の本がたくさん入っていた。

奈美は思わず固まってしまった。

奈美は爬虫類が苦手だった。

友人たちも冷めてしまった。

奈美が校庭に戻ると花壇を見つけた。

奈美は花を見つめる。

奈美はこの世界に来た事を後悔した。

「翼、もっと喜んであげなくちゃ」蓮がやってきて指摘する。

「私は爬虫類が苦手だから…」

「何言っているんだ。奈美、家に爬虫類飼っているぐらい好きじゃん」

奈美は戦慄した。

本だけでも嫌なのにさらに家に爬虫類がいると考えるととてつもない恐怖だった。

「でも翼いつも陽気じゃん。なのに何で今日はこんなに暗いの?」

奈美は思った。それがいつもの自分なのに。

そこに1人の青年がやって来た。

それは伯田十紀だった。

「十紀…」

「奈美、俺のところに戻って来い。もう一度やり直そう」

「お断りだ。お前は奈美と付き合ってくせに浮気したじゃん」

「確かに浮気はした。でもそれで気付いた。お前がどんなにかけがえない存在が分かった。だから俺ともう一度やり直してくれ」

十紀は説得するが奈美は話についてこれなかった。

「奈美、俺は諦めないからな」

十紀は去っていった

その頃、奈美になっている翼は優ヶ丘の屋上に行く。

すると蓮たちがいた。

そこに蓮を見つけた。

「蓮、ここにいたんだ」翼は無邪気に話かけた。

「奈美?」蓮は怖くなる。

「しかしまさか蓮と会うなんて」翼は喜ぶ。

「お前、どうしたんだ?」

「変だ、絶対変だ」蓮と剛は思わず言った。

8人は怖くなった。

「そんな事どうでもいいじゃん。それより今日ボーリング行かない?」翼は美羽の肩に触る。

「……良いけど」剛は言った。

奈美はその場を去っていった。

「あいつどうしたんだ?」修が混乱する。

「まぁ良いんじゃないか。奈美、無邪気になって」鎧は笑顔で言う。

「いや、凄い怖いんだけど」月美は震えていた。

翼は校庭に行き、周りを見渡す。

「この世界も私の世界と大して変わらないようだね」翼は実感した。

そこに蓮が来た。

その頃、奈美と蓮はベンチで休んでいた。

「しかしあいつ嫌な奴だよな。浮気したくせにまだ奈美とよりを戻したいというなんて」蓮は怒っていた。

奈美は別世界の蓮と分かっているのに緊張していた。

「でも俺は何があっても奈美の味方だ。俺は奈美が好きだからな」蓮の言葉に奈美は一瞬頭が真っ白になった。それは別世界とはいえ好きな人に好きと言われたからであった。

奈美は嬉しく感じた。

「勘違いするなよ、俺は友達として好きなだけだからな」蓮は笑顔で言った。

奈美は十紀が気になった。

その頃、十紀が屋上にいるとそこに奈美がやって来た。

「奈美、もしかして」

「違うよ。だた何で浮気したか気になって」

「それなら前に言ったじゃん」

十紀は翼が奈美だと気付いていない。

「確かに浮気は駄目だけどでも悪い事をしても行いを正せば許してもらえる時が来るかもしれない」奈美の言葉に十紀は意外そうな表情を浮かべた。

「何でそんな事を…」

「私も付き合っていた人がいたけど浮気された。本当は憎んでいるのになぜがそんな事が言えた」奈美は自分で驚いていた。

夜、奈美が家に帰るとそこは自分の住んでいた家と同じだった。

奈美が中に入り部屋に入ると蛇やカエルなどがいた。

奈美は思い出した。そして固まった。

翌日、奈美が校庭に行くと蓮と十紀が言い争いをしていた。

奈美は仲裁に入る。

「なぜ俺が翼と寄りを戻しちゃいけないんだ」

「お前は浮気したじゃないか」

「確かに俺は浮気をした。でも今はそれに反省し必死に翼に謝っているじゃないか」

奈美はその様子を見ていた。

そして気付いた。

十紀は怒ってその場を離れた。

蓮は怒っていた。

「蓮、もしかして翼の事、好きなの?」

蓮は驚く。

「今のナルシストみたいな発言は何?」

奈美は自分が翼である事を忘れていた。

蓮は明らかに緊張していた。

「翼、俺は翼の事が好きだった。だからあいつには渡したくない。翼がまだ傷付いて泣く姿を見たくない」

蓮の言葉に奈美は反応に困った。

しかし何故が嬉しく感じた。

その頃、翼は校庭のベンチに座っていた。

そこに剛がやって来た。

「奈美、明るすぎるな」

「私はいつだって明るいじゃん」

剛は怖かった。

「でも良かった。奈美が浮気から立ち直っていて」

剛の言葉に翼は思わず振り向く。

「変わったな。入学式当初は高校生活に期待していないと言っていたが今では楽しくやっていて嬉しい限りだ」

翼は動揺する。

「そうなんだ。凄いね。ちゃんと希望を抱いて前に進んで。私なんてもう恋愛は出来ないと諦めているのに。本当に奈美は凄いね」

「……そうだな…」事情を知らない剛は奈美が自分を褒めているように感じた。

そして翼が屋上にいると天使が奈美を連れて帰って来た。

「ありがとね、奈美」

「私も良い経験が出来て嬉しいよ」

「またね」

こうして翼は元の世界に帰っていった。

翼が目覚めるとそこに蓮と十紀がいた。

「良かった。翼、無事そうで」十紀は安心した。

翼は嫌な気持ちだった。

「翼、俺は悪い事をした。だからそれを償うために俺は頑張る。何を頑張ったら良いか分からないけどでもそれでも俺は頑張る」

十紀の言葉を聞いて翼は何が許してあげたいという感情が生まれた。

蓮も十紀を姿を見て何が感情が変わろうとしていた。

その頃、奈美が校庭に行くと蓮と剛がやって来た。

「奈美、忘れ物だ」蓮はカエルの入った籠を渡す。

奈美は驚いて逃げていく。

「何だよ。さっきまであんなに触っていたくせに」蓮は言う。

「まぁいつもの奈美に戻ったからいいんじゃないか」剛は安心した。




トゥルーエンディングスピンオフ過去編


あらすじ

氷崎大我を主人公とした作品。劇中で少し語られた大我の過去の詳細が明らかになる


登場人物


氷崎大我

今作の主人公。元々は優しくて努力家だった好青年だったがある出来事をきっかけに「カラフル」 でのように人が変わってしまう


海野奈美

今作のヒロイン。大我の世界の住人であり主人公の奈美とは違い、明るくて笑顔な少女である。


城垣菅太

別世界の大我の仲間。明るくて親しみやすい性格である。


空町高斗 泉蓮

別世界の大我の仲間。大我と共にタク部で活動する。


谷月千

この世界では奈美の幼馴染である青年。彼の行動が大我に影響を与えた。




別世界から帰還して1年、大我は普通の生活を送っていた。

大我が帰還後、周り人は、別世界に行っていたため行方不明となっていた大我が見つかった事に大喜びだった。

周りは奈美が亡くなった事にやけになって疾走したと思っていた。

そして周りは大我に今までどこに行っていたか聞くが大我は答えなかった。

何故なら別世界に行っていたと言っても誰も信じると思わないためだった。

大我はその後高校認定試験を受けて合格しそして遅れてだが晴れて大学生となった。

ある日大我は海神公園にやって来た。

蓮たちといた場所ではないが大我はこの公園が好きだった。

そして大我は2年前の事を思い出した。

大我にとっての7年前、入学式を終え家に帰ろうとした時そこに椅子に座っている海

野奈美を見つけた。

大我に衝撃が走った。

あまりに美しくそして魅力的だった奈美はまるで荒地に咲く美しい花だった。

大我は一瞬にして一目惚れした。

大我は今まで人を好きになった事はあったがここまで好きになった事はなかった。

そして奈美に話しかける。

「あのう…花キレイですね」それは後ろに見えた花を見てたまたま出てきた言葉だった。「そうですね」奈美は笑顔で返す。

それを見た大我は知っている限りの花の話をする。

奈美は嬉しそうに聞く。

そしてその日は帰った。

数日後、大我が校庭を歩いていると花壇の所に奈美がいた。

大我はすぐに話しかけた。

「やっぱ

りここの花きれいだね」

「そうだね。きれいだね」

奈美が笑顔で答えると大我は嬉しく感じた。

「そういえば部活動って入る?」大我が聞く。

「入る予定はないよ」奈美は答えた。

「そうなんだ」

そして大我は奈美と話すために図書館で花の本を読んで勉強する。

「よぉ大我。花の本読んでいるのか?」そう聞くのは城垣管太だった。

管太は入学式で仲良くなった相手であり大我にとっては高校生活で最初に出来た友達だった。

「もしかして奈美ちゃんのためか」

「何言ってんだよ」大我は焦る。

「まぁ好きな人がいるのは良いじゃん。応援しているよ」

そう言って管太は去っていった。

管太は見た目は普通だがいいやつである。

大我は奈美と毎日話していくうちに花以外の話もするようになった。

そんなある日、大我と奈美が話しているとそこにボールが飛んできた。

2人は驚く。

「ごめん。大丈夫」そこに泉蓮がやってきた。

「ここの花壇、俺も好きなんだよな」そう言って蓮は立ち去っていった。

放課後、大我はバスケット部に体験入部に行くとそこに空町高斗と蓮がいた。

「君、昼間の」蓮は言う。

「君たち付き合っているの?」蓮が聞く。

「いや、ただの友達…」大我は思った。

――奈美は自分の事どう思っているのかな。もしかして友達と思われていない。

大我が黙っている。

「まぁいいや。よろしくね」蓮は笑顔で言った。

2人は少し仲が縮まった。

そして校庭に行くと先輩3人はサボっていた。

「あのう部活は?」

「別にいいんだよ。やんなくて」

大我は疑った。

やんなくてもいい部活があるという事に。

そして監督もやる気がなかった。

「最悪だな、あの部活、お前らどうする?」高斗は聞く。

「違う部活入ろうかな」蓮は答えた。

しかし大我は言った。

「なら俺が立て直す」

2人は驚くがどうせすぐに諦めると思った。

翌日から大我は図書館に行き花の本に加えバスケットの本を探して毎日勉強した。

それを菅太も見守っていた。

そんなある日、大我が勉強しているとそこに管太がやってきた。

「勉強が、感心だね」そういうとそこに奈美がやってきた。

大我はドキッとした。

「偉くないか? 毎日勉強して」管太は言う。

「うん偉いと思うし立派だと思う」と奈美は褒めた。

大我はうれしかった。

好きな人に褒められて。

そして大我は調べた情報を元にやってみることにした。

大我のやっていることはバスケットっぽいようで微妙なものだった。

先輩3人は遠くから大我を見ていた。

「あいつ何してんだ?」3人は馬鹿にしていた。

翌日、大我はまた練習していた。

それを遠くから高斗と蓮が見ていた。

「あいつ何やってんだが」2人はそう思った。

しかし大我は毎日練習をした。

ある日の昼休み、大我が花壇のところに行くと奈美が本を読んでいた。

「大我」奈美が気付いた。

「何読んでいるんだ?」

「これよ」

大我が見るとそれは虹色の表紙の本だった。

「どんな話なんだ?」

「1人の青年がもしもの世界に行ってそこで色々な出会いをするという話よ」

大我はその本に興味を持った。

「大我、毎日頑張っているね」奈美は笑顔で褒める。

大我は嬉しかった。

ある日、大我が練習をしているとそこに管太がやってきた。

菅太は意外な事を言った。

「一緒に練習しようぜ」

大我は驚く。

さらに奈美がやってきた。

「先輩に頼んだらマネージャーにさせてくれる事になったの」

大我は嬉しかった。奈美がマネージャーをやることに。

そして大我と管太は2人で始める。

そして毎日、練習をする。

菅太は途中で挫けそうになったか大我はそのたびに励ました。

奈美は毎日道具を片付けて大我たちを支えた。

そんなある日、2人が練習をしているとそこに高斗と蓮がやってきた。

「俺たちも練習に入れてくれないか?」

最初馬鹿にしていた2人だったが大我の練習を見て行くうちに影響を受けたようだ。

さらに先輩3人も来た。

「俺たちにも教えてくれないか?」それは大我に教えてほしいという頼みだった。

「みんなで練習をしましょう」大我は笑顔になった。

「いいですよ。みんなでやろう」大我は嬉しく感じた。

奈美も笑顔で喜ぶ。

その日から7人で練習をする。

それは7人で調べた情報で手さぐりにやってみた。

そして大我の知識もあり7人は日に日に上達していく。

ある日の夜、練習を終えて大我が帰ろうとすると道具を片付けている奈美を見つけた。

大我は一緒に片づける。

「ありがとう」奈美は喜ぶ。

その時、大我は勇気を出して告白した。

「奈美、俺は奈美の事が好きだ。もし全国大会の切符を手に入れたら俺と付き合ってくれないか」大我は答えに緊張していた。

「なら今日から付き合おう」

奈美の予想外の答えに大我は混乱した。

しかし落ち着きを取り戻したらとても喜んだ。

「俺も手伝うよ」そこに管太が来た。

「空気考えろよ」大我はそう言いながらも笑顔だった。

「え?」菅太は戸惑う。

数日後、監督から東京予選の話を聞き出てみないかと話す。

「でも早すぎると思いますよ」高斗は否定的だった。

先輩3人と菅太、蓮も同じだった。

「やってみようぜ」大我は3人を説得する。

「でも思いだけでは出来ないだろう」

「思いだけでは出来ない。でも強い思いと努力する心があれば俺たちでも勝てる。だから信じよう」

大我の説得に高斗は考える。

「俺は大我に乗る」菅田は言った。

それは大我を信用しての事だった。

「なら俺もやる」蓮も賛成した。

「……分かった。やろう」高斗もやり事に決めた。

そして大我たちは東京予選に向けて毎日頑張って練習をする。

大我たちは不安だったがそれでも勝てると信じて練習を続けた。

そして東京予選当日、大我たちは集まっていた。

「みんな頑張って」奈美が応援する。

「絶対に勝って見せる」大我は言った。

そして本番、大我のチームは他のチームを次々に破っていく。

管太達は驚く。

短期間の練習なのにここまで強くなったことを。

そして大我のチームは全国大会の切符を手に入れた。

大我たちは喜ぶ。

そして夜、大我は奈美と帰りながら楽しく話をする。

大我はいままでの練習の話をする。

奈美も笑顔で聞いていた。

すると突然、奈美が倒れてしまう。

大我は慌てて救急車を呼ぶ。

そして両親は医師から奈美が癌である事を知る。

それを大我は両親から聞かされ体勢を崩すほどショックを受けてしまう。

そこに谷月千がやってきた。

やはり慌てていた。

「奈美は大丈夫ですか? 生きているんですか?」千は父親の肩を揺らしながら聞く。

大我は落ち着かせる。

屋上で2人は話す。

「奈美の幼馴染だったのか」

「君の事は聞いているよ、優しくて努力家ってことを」

「お互い辛いけど頑張ろう」

大我は千を励ます。

そして大我は病室に戻ると奈美は起きていた。

病気の事は聞いていてショックを受けていたがその表情を隠すようだった。

「奈美、今度、全国大会に行って奈美に良いところを見せる」

「応援しているよ」奈美は笑顔で答える。

夜帰っているとそこには怒鳴りながら男が出てくる。

「荒れているな」と感じるかその男は後に自分が別世界で利用する月美の兄だった。

その時、監督から電話が掛かってきた。出ると監督は慌てながら衝撃的な事を話す。

それは同じバスケット部の蓮が未成年者飲酒や未成年者喫煙、さらには迷惑行為をツイッターに挙げたりするなどをしたという内容だった。

翌日、大我が行くとそこには知らない人たちがたくさん来ていた。

恐らくマスコミだ。

そしてテレビでもその事がニュースで取り上げられた。

数日後、大我と管太たちは監督に呼ばれた。

「全国大会の事だが話し合いの結果、学校側は今回の不祥事を重く見てタグ部の全国大会取り消しが決定した。そして蓮は退学処分となった」それを聞いた大我はショックを受ける。

そして高斗はロックを殴りながら悲しむ。

「あいつぶっ殺す」高斗は怒りに駆られた。

大我たちは何も言えなかった。

そして放課後、大我と千は病院の屋上にいた。

「そうかそんなことが」大我の話を聞いて千は重い表情になった。

「どうしたらいいんだ」

千は答えられなかった。

大我と千は病室に行き全国大会の件を奈美に話す。

「大我は頑張ったよ。私はそれだけで嬉しい」

「でも来年は絶対全国大会行くから」

大我と奈美は笑顔になる。

そのやりとりを千は静かに見ていた。

その後も大我は来年の全国大会に向けて毎日練習をする。

そして最初はやる気を失くしていた高斗たちも練習を再開した。

まだ大我に影響されての事だった。

大我は練習と同時に毎日、奈美の見舞いに行っていた。

千も同じだった。

そんなある日、大我が病室に行くと千は来ていなかった。

大我は奈美に言う

「奈美、俺まだ高校3年生でこんなこと言うのも変かもしれないがでも言いたい。奈美、いつか俺が良い会社に入るかプロのバスケット選手になったら俺と結婚を前提に付き合ってくれないか」

「お願いします」奈美は笑顔だった。

大我は嬉しかった。

そして大我は更に頑張って練習する。

そしてくじけそうな時も「奈美は絶対帰ってくる、それまで頑張ろう」と管太と高斗は大我を励ましながら練習する。

そして最初は元気そうだった奈美も日に日に口数が減りやがて何も話さなくなりほどんと動かなくなった。

そんなある日、大我が練習しているその頃、千は奈美の病室にいた。

もう奈美に呼びかけても何も反応しなかった。

その時、奈美が危篤状態になる。

千はすぐざま医師を呼び看護師は両親を呼ぶ。

しかし千は慌てていたあまり大我に連絡を忘れていた。

大我は校庭で真面目に練習していると電話が掛かってきてすぐに病室に行く。

ドアをあげるとそこには悲しむ両親、休む医師、そして同じ音がずっと鳴りながら動

かない奈美がいた。

――奈美が死んだ…

大我はとてつもないショックを受ける。

そして千を見ると大我は千に襲い掛かる。

「何て連絡しなかった。お前のせいで最後、立ち会うことが出来なかったじゃないか」大我は泣き出す。

1ヶ月後、大我は毎日、花壇に行く。

でも奈美はいなかった。

大我は思い出していた。

初めて出会ったこと、花の話をしたこと、

タグ部でのこと、大我は泣き出してしまう。

そして放課後、バスケット部の休憩室に行く。

その時、ベンチに座る奈美を見つけた。

「奈美!」

それは幻だった。

そこに管太と高斗がやってきた。

「どうした大我?」大我は思い出した。

これも全て蓮と千のせいという事を。

蓮のせいで夢は叶わなかったし千のせいで最後会うことが出来なかった。

「大丈夫か大我?」高斗は心配する。

「全てあいつらのせいだ。あいつらは俺がぶっ潰す」

「落ち着け」管太は慌てる。

「友情なんて邪魔なだけだ!」大我は怒鳴る。

そこには別人の大我がいた。

「こんなところにいても悲劇しか思い出せない。友情なんて二度とごめんだ」

大我は怒鳴りながら出ていった。

菅太と高斗は悲しかった。

そしてやるせない気分だった。

外に出るとそこに突然、悪魔が現れた。

「お前を特別に奈美の生きている世界に連れて行ってやるよ」

それを聞いた大我はいきなり現れたこともあってその話を信じる。

「そうか……悪魔!俺を奈美のいた世界に連れて行け」

そう怒鳴りながら言うと悪魔は手から光を放つ。

大我はそれを振り返った。

そして反省した。

別世界の人間なのに蓮を気付けたり千を挑発したりなど大我にとっては嫌な記憶だった。

過去を乗り越えたとはいえ大我にとっては何回思い出しても悲しい気持ちになる出来事だった。

だが今の大我は変わっていた。

もう過去に対する未練はなく未来へ向かっていたからだ。



         トゥルーエンディングスピンオフ最終編


卒業式から1年後、千は大学に通っていた。

千はある女性に想いを寄せていた。

ある日、千は片想いしている女性に告白するがフラれてしまった。

千は悲しくなった。

そして千が食堂で落ち込んでいると「どうした千」とそこに卓也がやって来た。

「別に」

「もしかしてフラれたか?」

千は心を傷めた。

「まぁ落ち込むな。そのうち良い事がある」卓也は去っていった。

夕方、千が落ち込みながら喫茶店でコーヒーを飲みながら勉強をしているとそこに1人の女性が来店してきた。

それは月美だった。

「月美?」

「千?」

2人は驚く。

「久しぶりだな。月美」千は喜ぶ。

そして月美は千と同じ席に着く。

「今、何しているんだ」千が聞く。

「私は大学で医療関係をやっているよ、千は?」

「俺は大学で勉強している。でも何になりたいか決まっていない」

2人はそんな会話をする。

千は思った。

月美は暗いままだが魅力的になっていてさらに月美はとても美人になっていた。

それは前から知っていたが今、改めて気付かされた。

「千、元気そうでよかった」月美は笑顔だった。

「みんなは何している?」千は緊張しながら聞く。

「みんな大学に行っているよ。蓮は浪人だけど」

「そうだったな」千は月美の目を見れないでいた。

そして月美は店から出ると「月美!」と千は呼ぶ。

「何?」月美は振り返る。

「…また会ってくれないか?」

月美は戸惑う。

「いいよ」月美は返事した。

そして帰っていった。

翌日、千は元気だった。

「千、もうフラれた事から立ち直ったのか?」卓也が聞く。

「あぁそうだ」

「早いな」卓也は驚いた。

夕方、千が喫茶店に入るとそこに月美がいた。

「千」月美が気付いた。

「また会ったな」千は嬉しく感じた。

月美は勉強をしていた。

「そういえば医療の道に進むと言ってたな」

「そうだけどでも向いているか分からないけど」

「自分は向いていると思わないと。月美ならきっと大丈夫だ」千は励ます。

「ありがとう」月美は笑顔になった。

その後も千と月美は良く会うようになりそしてお互い好意を抱くようになった。

そしてある日、千と月美が店から出ると雪が降っていた。

「俺、電車なんだよな。ここからなら大学近いし誰かに泊めてもらうか」

「……私の家に泊めても良いよ」月美は言った。

千はドキッとした。

千は断ろうとしたが他の人が泊めてくれるとは限らないため千は泊めてもらう事にした。

そして2人は歩いていく。

着いた家は一軒家だった。

「家族は旅行でいないの」月美は言った。

千は緊張していた。

何故なら女の家に泊まるのは初めてだったため。

家に上がり千は座る。

そして勉強を始める。

月美は本を読み始めた。

しかし千は月美が気になって勉強に集中できなかった。

ふと棚を見ると蓮たち9人で撮った写真が飾ってあった。

今の千にとって月美は友達以上の存在だった。

その時、卓也から電話が掛かって来た。

「もしもし」

「千? この後、飲みに行かない」

「今日、雪の予報だし降られたら困るから」千は電話をきった。

しばらくすると月美はお風呂から上がった。

夜中、月美は千の布団の準備をしていた。

千はずっと緊張しっぱなしだった。

千にある感情が生まれた。

――月美に触りたい。

千は我慢するが出来なかった。

千は月美に抱きつく。

「千、待って」月美は抵抗するが千は抱きしめて離さない。

「月美、俺は月美の事を好きになってしまった」

それを聞いた月美は頭が真っ白になってしまう。

すると月美は大人しくなり千の背中に手を置く。

千は月美の唇にキスをする。

月美は戸惑う。

さらに千は月美を倒しこみ抱きしめる。

2人はお互いを受け入れていた。

翌日、千は大学で休んでいた。

そこに卓也がやって来た。

「何でお前、昨日飲み会に来てくれなかったんだろ」

「俺は酒に興味ない」

「そっか。そういえば大が昨日変な事言っていたんだが」

「変な事?」千は興味を持つ。

「たぶん酔っていたと思うんだが月美という女をストーカーしているみたいな」

それを聞いた千は驚く。

「どういう事だ!」千は卓也の肩を掴んで聞く。

「落ち着け。たぶん嘘だけどそんな事言ってた。でもあいつがそんな事するわけないし第一俺の友達なんだから」

千はすぐに廊下に飛び出て月美に電話をかける。

「もしもし」

「月美か?」

「そうだけどどうしたの?」

「今日、一緒にに勉強しないか?」千は月美を家に帰らせないように足止めをしようとした。

「良いよ」月美は笑顔で答えた。

そして電話をきった。

夜、月美が公園で待っていると千がやって来た。

「月美」

「千」

「月美、ストーカーされているのか?」

月美は言葉を詰まらせた。

「何で言ってくれなかった。何で」千は月美の肩を掴む。

「千に心配かけたくなかった」月美は下を向く。

「俺は月美の事が好きだ。それなのに」

「私も千の事が好き。だから千に迷惑をかけたくなかった」

千は月美を抱きしめる。

「俺たちはそうやって助け合って来たじゃないか。今思うと何であんなに試練が多かったのか分からない。でも俺は月美の事が好きだし守りたい」千は耳元で言う。

その時、月美の思い出す。

高校生活の事を。

「月美、お前は男嫌いだった。でも今はかなり成長した。だからこうやって俺を受け入れてくれているじゃないか」

月美は感情が高ぶり涙を流す。

翌日、千は卓也を月美の家に連れてきた。

「はじめまして」卓也は月美の美貌に緊張していた。

「でも本当に大がストーカーをしているなんて」卓也はショックだった。

千は何も言えなかった。

すると卓也は月美の部屋を探し始めた。

「何やってんだ?」千が聞く。

「盗聴器があるかもしれないだろ。それにもしかしたらどこかに住処があるかもしれない」卓也は探す。

千と月美も部屋を探し回る。

卓也がベットを探すと目覚まし時計のネジが緩んでいる事に気付いた。

そして目覚まし時計を分解すると盗撮カメラがあった。

「あったぞ」卓也は声を上げた。

千と月美は側に行く。

「これが…」千は言葉が止まった。

「ここは危ないかもしれない。引っ越した方が良いと思う」卓也は提案する。

「でもお金の方が」

「ならしばらく俺の家に来い」千が言う。

「でも…」

「月美、昨日も言ったはずだ。俺は月美を守ると」

「…うん。ありがとう」

そして千は卓也を下まで送る。

「卓也、ありがとな」

「いや、もとはといえば俺の友達がやった事だ。すまなかったな」卓也は謝る。

「じゃあな」卓也は帰っていった。

翌日

千と月美は引越しの準備をしていた。

千は何となく月美の物を見ていくとそこには自分が月美にあけたぬいぐるみがあった。

――このぬいぐるみ大切にしてくれたんだ。ただUFOキャッチャーで取っただけの物なのに。

千は嬉しかった。

さらに見ていくと剛が月美にくれたペンもあった。

月美は人からもらったものを大切にする人だった。

千は嬉しくなった。

そしてあまりに嬉しくてストーカーの事を忘れていた。

そして2人がマンションに出ていこうとした時、そこに大型の車に安がやって来た。

月美は驚く。

安は千の先輩でこの世界に帰ってきた。

「千、その荷物を持っていけばいいんだろ?」

「そうだ。よろしく」千は答えた。

2人のやり取りを見て月美は良かったと思った。

そして荷物を入れ2人も車に乗って千の家に向かう。

そして千の家に着き3人は荷物を家に運ぶ。

そして数時間後、運び終えた。

「ありがとう」

「いいんだよ。まだ何かあったら言ってくれ」安は帰っていった。

月美は千の部屋を眺めていた。

その部屋は自分の部屋より広かった。

「まさか千と一緒に住む事になると思わなかったな」月美が言う。

「俺も同じだ。もし7人が俺たちの事を知ったらどう思うんだろうか」

「喜んでくれると思うよ」月美は笑顔だった。そして振り返る。

蓮 剛 奈美 美羽 修 鎧 大我

「またみんなと会えるかな」

「会えるさ。俺たちには見えない絆があるんだから」

2人は笑顔になった。

そして夜、千は疲れて寝ていた。

月美は寝ている千にキスをした。

千は起きなかった。

「ありがとう千」



エピローグ

卒業後、9人はそれぞれの道を歩んでいた。

剛は病院でバイトをしながら大学に通う。

月美はカウンセラーになるための勉強をしている。

美羽は卒業後も修と交際しながら小説を書いている。

奈美は卒業後も蓮と交際を続けながら大学に通っている。

鎧は音楽の世界で活動をする。

修は美術部に所属した事をきっかけにイラスト―レーターを目指す。

大我は別世界に帰還後、大学に進学しそこでその世界の亜美と出会い交際を始める。

千は月美と同棲しながら大学に通う。

蓮は浪人後、大学に進学し以前働いていたジェネラルコーポレーションに就職するため勉強をする。

悲しみや痛みもあったが彼らにとって高校生活はかけがえのないものになった。


                完


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トゥルーエンディング 崎本奏 @hureimuaisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る