マドカ



緑の肌にツヤツヤと輝く鱗。

前足は黒く鋭い爪が生え、背中には翼。

尾は緑と肌色が混ざり先端に黒い毛がある。



精悍な顔つきとも言えるし、悲しげな表情ともとれる。

角は二対、ここも黒。

瞳の色はターコイズブルー。

牙は合計すると、

39、40、、

45本を視認した。



しかしながら、、、



ファンタジー小説だけの話と思っていたが実物をこうも目の当たりにすると

世の中は認知していないことがあるだけで、何でもあるんじゃないかと思えてきた。



今目の前に居るのは



ドラゴンだ。




、、、、、、、、、、、



登山家である私は

有名な山は片っ端から制覇した。



見知らぬ花、風景、何よりも登頂した時の達成感が素晴らしい。



そこに山があるから



という名言は登山家なら誰でもわかる。



この快感は何にも変えられない。



そして50歳を目前にした時、

私は一大決心をした。



決して入ってはいけない未開の地への登頂を決めたのだ。



下手すれば命の保証もない上にバレると国の問題にまでなる。



しかしそれをも凌駕する私の好奇心は止められない。



小さい子供だってそうだろう?

してはいけないと言われればしたくなるのだ。



そうして私はY国のD島へ密航し、

山を登る。



おおお!!!

なかなか素晴らしい!!!



誰も踏みしめたことのない土、歩きづらくて最高だ。



ふむ、この花は見たことがない。

カメラに納めよう!



そうして私は上へ上へと登る。



草をかき分け、前に前に、慎重に慎重に、、、、



ズルッ!!!!!



!?!?!?!?!?



そのまま坂を転げ落ちた、、、



草のせいで足元が見えていなかった。。

初心者のようなミスだ、、



骨は?大丈夫。

ケガは?擦過傷があるぐらい。

荷物は無事だな。



よし、ひとまず方位磁石を確認して、

再度登頂部の方向へ、、

登頂部の???

方向???




え???

は??????



、、、、、、、、、、、、



目の前にドラゴンが居る。



襲われるかと思い、死を覚悟したが、



どうやら伝奇で語られるドラゴンの性質ではないようだ。



こちらを一瞥した後、興味が無さそうに羽根を広げ休息を取っている。



身の丈、45Mはあるだろうか?



立ち去ろうとはしているがこんな機会だ。

せめて写真を撮りたい。



カメラを構える。

すると。




ゴロロロアアアアア!!!!!!!



と咆哮が聞こえ、耳が壊れるほどの音量で威嚇してきた。

まずい!!!!



しかし、、

その咆哮の後すぐに身体を休めているようだ。



ドラゴンとはこんなに元気が無いものなのか。




再度私の方をドラゴンが見る。



「人間よ。」



口元は動いて、、いない!

脳に語りかけられているようだ。

す、素晴らしい!!



「はい!!!」



「俺も何十年ぶりかに貴様らを見た。 ここに人間は来てはダメなはずだが? 俺に食われにでも来たのか?」




「滅相もない、むしろその、あの、ドラゴンが居ると思わず、、」




「ドラゴン??? あぁ、、貴様らが付けた我が種族の名か。 そもそもはそこから違うのだがな。 まぁいい、早く帰れ。 俺は今からこの身をこの山の動物に食べさせる。 寿命なのだ。」




「えっ、、、」




「我が種族はそうして生きてきた。 死が近づき、己の死期を悟ると他の種族に身も骨も死後食べさせる。 そうして我々は種としての誇りを保ってきた。。。 貴様を食べる力も今はない。 研究とやらが好きなのだろう、貴様らは?

それは我が種族の誇りが許さぬ。」




「早く」



「この場から消え失せろ。 そして二度とここには来るな。 」



「尾の一振りで貴様なぞいつでも殺せるぞ。」




「しかし、、全ての動物と我が種族は会話出来るが、、、最も愚かで醜い生き物である貴様らとまた話さねばならぬとは俺もツイてない。」



「貴様らは種の頂点に立ったつもりなのだろう? 我々からすると最下層だ。 力は無く、自給自足も単体では出来ず、オマケに自然まで破壊する」



「輪廻転生、意味がわかるか? 全種族の動物が最もなりたくない生き物がわかるか? それが貴様ら人間だ。」



「醜く、愚かで、悩み苦しみ、他に惑わされ、弱く、何も自然に貢献しない。」



「俺の転生先が貴様ら人間でないことを祈るばかりだ。」



「語りすぎたな。。 だが覚えておけ、貴様らには計り知れぬ世の理があることを。 決して踏み入れてはならぬ世界があることを。 我が能力で貴様を今より転移する。」




グラグラと頭が揺れ、気絶した。



反論したいことは多くあった。

しかし脳に語りかけられたことにより

一方的に聞くしかなかった。



ここは、、、

日本の我が家だ。。



荷物、、、!!!!



カメラが無い!!!



おそらくドラゴンに盗られたのだろう。



私はその後、言いつけを守らず世間に公表した!

ドラゴンを見たと!!!!



しかし世間の反応は冷ややかだった。

Y国のD島という単語を使えないからだ。

国際逮捕に繋がる。




50歳の妄言としか聞き入れられなかった。。

証拠もない。。。



仕方ない、しかし未知なる種に会えて

私は幸運だった。

他の何よりも素晴らしい体験だ。




自宅のマンション、寝室に入り

次はどこを登山しようかと考えベッドに入る。




もう一度Y国に行ってみるか、、、

瞼を閉じ、計画を張り巡らせる。

しかし今日は風が強い日だな、、



バサッバサッバサッ、、、



台風でもあるまいに。

まぁ、このマンションは防災対策に優れたマンションだからいいだろう。




、、、、、、、、、、



その日以降その男を見るものは誰も居なかった。

マンションの寝室が吹き飛び、

男の命の安否すらわからなかった。



異質なのは




マンションの壁に何か爪状に少し削られているような痕跡があるのだ。



しかしながら

階数は15F。



住人は昨日風が強かったと言っている。



原因は不明。



新聞の片隅にその男の捜索記事が載ったのみであった。

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マドカ @madoka_vo

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