死亡フラグあれこれ(半分FF16のプレイ日記)

※今回もFF16の重大なネタバレがございます。ご注意下さい。

 

 またまたまたまたFF16の話題なのですが、召喚獣シヴァの力を継承し、その力を使えるようになった所まで進みました。

 さて、元々このシヴァのドミナントとしての能力は、前々回お話しした「幼馴染みヒロインあれこれ」

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16817330659772416841

 で取り上げたジルの……つまり、仲間(でありヒロインとも言える)のものでした。

 主人公クライヴがそれを取り込んだと言うことは、ジルの戦線離脱を意味します。

 近況ノートでも意味があるのだか無いのだかわからないボカしかたをしつつ懸念していたのは、この事でした。

 

 物語のみならず、ゲームシステム面で俯瞰しても、ジルには多くの死亡フラグが立っていたと思います。

 今回の16のみならず、召喚獣が重要な役割を果たすのは、シリーズ恒例の事でした。

 そしてシヴァと言う召喚獣もまた、シリーズ常連であり、必ずと言って良いほど何らかの形でプレイヤーの味方になりました。

 特にひとつ前作の15では物語の中枢に関わる重要な立ち位置ですらありました。

 つまり「プレイヤーが自分でシヴァを使えない事はシリーズのセオリーとして考えにくい」と言う暗黙の了解がありました。

(同じくシリーズ常連のイフリートが、15では味方に出来ないと言う前例があるにはありましたが)

 そしてクライヴは、他ドミナントから召喚獣の力を奪ったり受け継いだりする能力も持っている。

 恐らく、何らかの形でジルからクライヴへとシヴァが受け継がれる展開がプレイヤーに予想される事は、製作側も承知の上で、ともすれば狙ってすらいたのでは無いかと考えます。

 単独で戦場や、使いようによっては世界情勢を動かし得るドミナントが召喚獣をむざむざ手放すとすれば、理由は限られてきます。

 クライヴに奪われるか、死に際などで自主的に彼にそれを託すかのほぼどちらかでしょう。

 事実、そこに至るまでに四人のドミナントから召喚獣を受け継いで来ましたが、一人を除いては悉くが死亡しています。

 そして、そのうち一人は仲間であるシド(の持つ雷神ラムウ)であり、先述の通り、シドが致命傷を負った為にクライヴにラムウを託したパターンでした。

 

 更にシステム面から見てみると、このゲームでは基本的に、クライヴ以外でステータスや特技を参照できる仲間は愛犬(というか狼)のトルガルだけです。

 ジルやシドも、その他のドミナントではない仲間達も全員、プレイヤーが育成・操作する余地が全くない、同行NPC扱いです。

 RPGのメタ的な視点から言って、プレイヤーにとっての正規の仲間は、唯一トルガルだけだと言う事になります。

 そのトルガルも、プレイヤーは大雑把な指示しか出せない・HPの設定もないのでどれだけ殴られても死なない、と言う形式なので、一般的なパーティメンバーとは言い難い所があります。

 そう考えると、半ばステージクリア制のアクションゲームのような性格もあり、物語上仲間と行動を共にしつつも、終始クライヴの一人パーティと言えるのかも知れません。

 つまり、ゲームのデザインとして、トルガル以外の仲間は離脱を前提とした仕様である事が読み取れます。

 加わった仲間が必ず死ぬわけではありませんが、大抵は別行動の為に離脱したり、そもそも加入している時間自体が極端に短いスポット参戦だったりしました。

 そんな中で、最主要人物であろうシドとジルは参戦期間が相当の長期に渡りましたが、その両者とも最終的には永久離脱と言う結果となったのも既に述べました通りです。

 メーカーが意図したのかどうかは定かではありませんが、ゲームのデザインやシステムそのものが、仲間の戦線離脱フラグとなっていると考えます。

 

 物語的に見てみると、ドミナントが召喚獣の力を行使するには大きな代償が伴います。

 端的に言えば、大掛かりな魔法や召喚獣の顕現をやり過ぎると、身体が少しずつ石化していき、やがて死に至ると言うものです。

 クライヴと出会った時点で既に40代後半から50歳ほどだったシドは、魔法を使うごとに少なくない量の血を吐いており、明らかに先が長くない様子でしたし、ジルも壮年期で何度かシヴァに顕現した際にはシドと同じように吐血(喀血?)し、医師の所見としても「石化が進んでおり、これ以上無理をすれば危険だ」と言う状態にありました。

 こちらはまさしく、ポピュラーとも言える“死亡フラグ”に他ならない事でしょう。

 これが“物語”である以上「大事を取ってシヴァの力を使うのはやめとこう」と言う訳にはいきません。

 ジルに纏わるこの伏線には、何らかの形で決着が必要となります。

 そして、ジルには、シヴァの力を使わざるを得ない多くの窮地が降りかかります。

 素直に感情移入してプレイしている限り、プレイヤーとしては彼女がシヴァの力を解放する度、あるいは敵に捕まるなどの度に、嫌でもこの死亡フラグがちらつき、いつ彼女が死んでしまうのかと不安になるものです。

 そして、彼女の運命を創作する側としては、凡そ考えられる2パターン“死ぬ”or“死なない”のどちらに着地させるかを決めるのは非常に難しい所かと思います。

 死ねば同情を誘う陳腐な演出と受け取られるリスクがありますし、かといって死ななければご都合主義と受け取られる真逆のリスクがあり、ジレンマを伴います。

 実際、シドの死と言う前例があるので、ジルがどうなるかと言う着地点のハードルは更に上がっていた筈です。

 今回、無情でシビアなダークファンタジー色の強い作風とはなっていますが、流石に同じ事が続くとなると、相応以上の説得力が必要となります。

 同じ境遇のシドのみならず、敵からも味方からも悲惨な死を迎えた人物が多く出た後でもあったので。

 却って現実的に考えるとシドに続いてジルも同じ末路を迎えても何ら不自然では無いのですが、物語として考えるとそれが不自然になってしまうものです。

 

 さて、長々と述べましたが、結果的にジル自身が死ぬ事はありませんでした。(私が進めた時点では、ですが、ここを覆す無粋は恐らく無いだろうと見ています)

 クライヴが、ジルからシヴァの力を奪ったのです。

 奪ったと言っても、最終的には同意したていではありましたが。

 そしてクライヴのこの行為は、私がずっと「やって欲しい」と思っていた事でもありました。

 実際、クライヴがそれに踏み切った瞬間、思わず「それで良い」と頷いてしまったくらいです。

 それまでの展開が陰惨な出来事続きだった事もありますが、やはり人間、物語として追っている人物に対して本能的に助かって欲しい、平和な所に落ち着いて欲しいと思うものだと思わされました。

 ゲームシステム的にも、召喚獣シヴァがプレイアブルとなる流れとしては自然なものです。

 

 さて。

 これでジルが石化を進行させてまで無理をする事はありませんし、したくても出来なくなりました。

 シヴァに依らない剣術の技量まで失われる事はありませんが、もはやクライヴと同格のステージで戦力になる事は無くなった事も意味します。

 そして。

 シヴァを継承した出来事の後、クライヴの弟・ジョシュアが、兄に問います。

「シヴァの力を取り込んだの?」

 と、何処か冷たい口調で。

 クライヴも弟の心情を何となく察してか「彼女も納得した上だ」と弁明がましく答えますが。

 ジョシュアは一転して激昂し、クライヴを殴り飛ばします。

 そして、ジルはいつも最後にはクライヴの味方だから泣く泣く同意した。だから自分が代わりに怒っているのだ、と言い放ちます。


 ジルとクライヴ、立場をひっくり返して考えてみましょう。

 もしも、我々プレイヤーが追っているのがクライヴではなくジルの視点だったとしたら。

 クライヴではなく彼女が主人公で、操作キャラクターだったとしたら。

 クライヴもクライヴで、勝ち目のない戦いをしている中、自分のドミナントとしての力を剥奪されたとすると。

 今後彼女は、生還の望みが決して高くない彼の帰りを拠点、あるいは戦線の後ろから待たねばならない事を意味します。

 実際、以前にジルが拠点で休養せざるを得なかった時、待っている間、気が気ではなかったと言っていました。

 自分の寿命を削ってでも、同じ場所で戦えた方が精神的には幾らも救われる事でしょう。

 そうでなければ、とっくに力を捨てている筈です。

 近況ノートでも軽く言いましたが、私はクライヴのプレイヤーとしてこのシーンに安堵した一方、ジルがされたような事はごめん被りたいとも考えます。

 自分がやるのは良いが、相手にされたくはない。

 例え相手の身を案じてとは言え、これは紛れもないエゴと言えるでしょう。

 そしてクライヴを殴った後、ジョシュアが改めて「本当に理念の為だけの行動だったのだな」と問い、クライヴも(僅かに後ろめたさを滲ませているようにも思える、声優さんとグラフィックの絶妙な演技で)「……そうだ」と肯定し、

「それならいい……」

 と、こちらも何となくわだかまりを残したように答えた事で、ジョシュアによってプレイヤー視点のエゴを暴かれたような心境になりました。

 私の邪推の可能性も大いにありますが、これがジルの死亡フラグを折った製作者の、最終的な答えだったのでは無いかと思います。

 

 チェーホフの銃と言う言葉もありますが、フラグと言うのもまた、“折る”事も含めて必ず何らかの形で回収せねばならないものです。

 こと死亡フラグというのは、回収にそれだけ大きな変動や転機を伴い、時に作品の評価そのものを左右しかねない重みがあります。

 更に言えば、これらフラグと言うものは、受け手が物語を物語として俯瞰している前提で成り立っている筈です。

 そして今回、私が長々と連ねた邪推が正しければ、フラグと言うものを有効に用いた好例かな、と勝手に思っている次第です。

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