幼馴染みヒロインあれこれ(半分FF16序盤のプレイ日記)

※今回のお話にはファイナルファンタジー16のネタバレがございます。ご注意下さい。

 

 と言うわけで、誕生日に期せずして買って貰ったFF16を絶賛プレイ中でありますが。

 予備知識ゼロの状態から始めたのでびっくりしましたが、今回は対象年齢が17歳以上……つまり、これまでのFFと違って容赦なく血が飛び散ったりします。

 シリーズ通してのマスコットキャラクターであるチョコボも例外なくスプラッタの犠牲となり、血を流してバタバタ死んでいきます。

 FF7リメイクでは刀が胴体を貫通しても一滴の血も描写されず、原作で惨劇によって廊下が血塗れになっていたシーンは、謎生物の粘液に差し替えられていたのですが。

 今作、そうした流血描写の自主規制緩和に伴って、戦いの描写のみならず、社会情勢や主人公らの辿る人生もかなりハードで悲惨な展開の連続する、ダークファンタジーになっております。

 

 冒頭、15歳の少年クライヴは王族の嫡男であり、戦いと隣り合わせとは言え、家族(弟・父)や幼馴染みの女の子ジルと幸福な日々を過ごしていました。

 弟ジョシュアは召喚獣フェニックスを自分の身に顕現出来る“ドミナント”と言う能力者であり、次期王位継承者。

 クライヴは、自分はドミナントにこそなれなかったものの、弟のナイトとして彼を護ると言う希望のもとに鍛練を積んでいました。

 しかし、王妃=クライヴの母親が敵性国に内通し、ジョシュアが儀式を行う所へ攻め込まれた事でその日常が破壊されます。

 あまつさえ、何処からともなく現れた炎の召喚獣イフリートが、弟の化身であるフェニックスを殺してしまいます。

 その後、捕らえられたクライヴは弟の仇であるイフリートへの復讐を誓いつつ、故郷を侵略した国の奴隷兵士に身をやつす事となります。

 その13年後、氷の召喚獣を使役すると言う女性のドミナントの暗殺を命じられたクライヴは、果たしてターゲットと交戦。

 そのドミナントが、13年前に生き別れた幼馴染みのジルである事に、倒してしまってから気付きます。

 彼女に気付いたクライヴは、ジルを連れて部隊を脱走。

 一命は取り留めたものの、搬送された病院で意識不明の状態が長らく続きます。

 

 脱走の折に知り合ったレジスタンス勢力にジルの身柄を託したクライヴは、本格的に仇敵のイフリートとそのドミナントを追います。

 しかし、戦いの最中にイフリートに顕現。

 クライヴ自身こそが召喚獣イフリートのドミナントであり、つまり弟の仇はそれに化身して暴走した自分自身であった事が判明してしまいます。

 生きる意義を完全に見失い、仲間に自分を殺せと懇願する所まで追い込まれたクライヴでしたが、ここでジルの意識が戻ります。

 冒頭の交戦を除けば、13年ぶり、ようやくまともな形での再会が叶うと共に、クライヴは彼女にイフリートの真実を打ち明けます。

 ジルもまた、故郷陥落の際に別な敵性国の捕虜となり、直後にドミナントとして覚醒したばかりに13年に渡って戦争の兵器として扱われていた事がわかります。

 イフリートの暴走によって人生を狂わされたのは彼女も同じですが、クライヴが「そもそもイフリートとは何なのか」と言う真実を知るまでは生き続ける決意をするきっかけとなり、真相が何であれ二人で共に受け止める事をも誓ってくれます。

 

 近況ノートでも軽く触れましたが、ジルの意識が戻ったタイミングが絶妙でした。

 欠片の慈悲もないダークファンタジー世界であり、今ほどお伝えしたメインの粗筋以外にも悲惨でハードな出来事が続き、ある意味で唯一の生きる支えだと思われた仇の真実すら“それ”だったと言うどん底の状態での再会には、プレイヤーとしても非常な安堵を覚えたものです。

 敢えて悪し様に言えば、弱っている所に手を差し伸べられた状況とも言えるわけです。

 

 巷では何かと不遇だと言われている(らしい)幼馴染みヒロインですが、その強みは「平和な時期を共有した唯一の存在」となった時に発揮されるのではと思いました。

 逆説的に、物語の本筋以前の「幼馴染みの立場でしか蓄積出来ない積み重ねが可能」とも言えるのではないでしょうか。

 世界や主人公が不幸・不運で無ければ成立しないという、限られた前提条件ではありますが。

 今回のFFのように、主人公に残されたものが少なければ少ない程に、相対的に彼女(or彼)の存在が大きくなる筈です。

 余談ですが、このジルの場合、故郷陥落の時に彼女自身も天涯孤独になり、しかもその直接の原因がクライヴ自身であった事が、逆に彼を支えようとする動機として説得力があったように思えました。

 ジルにとってもまた、幸福だった時代のえにしがクライヴしか残されていなかったと言う事です。

 こう言う関係性は、書き方を間違えると意図しない共依存になったり、ベタベタした雰囲気が状況とのミスマッチを起こしてしまいそうですが、その辺の“付かず離れず”のバランスもしっかり取れているイメージです。(目下、中盤あたりまで進めた限りでは)


 引き合いにする作品がだいぶ飛びますが、ドラクエ5でビアンカと再会した時にもこれと同じ安堵を感じた事を今も覚えています。

 ドラクエの場合、FFのクライヴよりは本人の状況が好転していた時期ではありましたが、父を殺され10年間奴隷にされ、故郷の村も焼き討ちにされたドラクエ5主人公にとってのビアンカもまた「平和な少年時代を共有した唯一の存在」である事に違いは無いでしょう。

 嫁論争におけるフローラ原理主義者の友人が言うには「ビアンカは子供の頃に一度お化け退治を共にしただけであり、幼馴染みと言うのは10年の苦楽を共にしたヘンリーの事だ」との事ですが、

 ヘンリーはあくまでもどん底に落とされてからの友人であり、ビアンカとは比較する土俵が違う訳です。

 また、作中主人公の10年と、それを俯瞰するプレイヤーの作中10年とでは、体感的な長さも違います。

 つまり、ドラクエ5の場合、テレビの前で見ているプレイヤーにとって「(追体験している作中)人生におけるビアンカの割合が大きい」と言うのもあります。

 後は身も蓋もありませんが、相手が異性である事が大きいかと思われます。

 そもそも「少年期の知己と再会した」と言う部分だけ厳密に抜き出せば、ドラクエ5の場合はキラーパンサー(仲間モンスター)ですし、FF16も愛犬(愛狼?)が最初です。

 ドラクエ5の場合、発売前から“結婚”を大々的にアピールしていたのも、再会した彼女を意識させる大きな要因だったのかも知れませんが。

 

 よく言われる「家族のようにお互いを知っている」と言う点だけで言えば、それこそ兄弟姉妹と言う本物の“家族”でも成立します。

 勿論、恋愛と言う要素が絡むとまるで違う筈ではありますが。

 FF16のジルにしても、クライヴの少年時代におけるフォーカスがそこではない(弟との関係性が最重要な)筈なので、その時点での彼女との関係はそこまで濃密に書かれている訳ではありません。

 私自身「何か仲の良い女の子も居たっけな」と言う程度の認識の上で、再会時にそれだけの感慨を覚えたのです。

 すなわち、当人ら一対一の人間関係だけではなく、彼ら彼女らにまつわる環境も作用しあって、初めて感じられる感慨だったのでしょう。

 幼馴染みヒロインがパッとしない場合、見直してみて良いポイントかも知れません。

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