本気を出す
……と言うのも現実の話では無く「登場人物が本気を出すシーン」の話です。
戦いにしろ競技にしろ、ピンチになると爆発的な力が引き出されて逆転勝利をおさめる……と言うのは創作において数多繰り広げられてきたシーンです。
これは、腕力的な力比べのみならず、推理や駆け引きのような頭脳戦にも言えます。
しかし、現実にそのような逆転劇が滅多に起こり得ない事は周知の事実かと思います。
創作の中だから夢があっても良い……とは言え、夢は夢でも、限りなく「起こり得る」と感じさせるリアリティもなるべく両立したいもので、現実のそれを考えておいて損はありません。
まず、現実に「土壇場の本気」が有効ではない原因から考えてみます。
第一に「最初からやれるものならやっている」と言う理由が考えられます。
視覚的にわかりやすいところで言えば、超破壊力の必殺技など。
順当に考えれば、当てにくい・隙が大きい・魔力などのリソースを大きく消費する・身体への負担が大きい・出来るだけ人目に触れさせたくない・目標以外への被害を懸念して……などのデメリットから乱発の利かない制約があるはずです。
逆説的に、創作において“本気の力”が無制約だと「最初からやれ」と突っ込まれる事になります。
有名どころでは、ウルトラマンのスペシウム光線などがよく言われる所でしょうか。(これについては、私が知らないだけで何らかの理由があるとは思われますが)
最近、ここで取り上げたモータルコンバットの究極神拳(フェイタリティ)なども、動画では「最初からやれ」とコメントされがちでしたが、大体の技は実用性よりもパフォーマンス色が強く、無駄な動きも多いため実戦には適さず、それこそKOされてグロッキー状態になった相手にしか通用しないのでしょう。
一方、基礎能力が強くなるような描写も考えさせられる所です。
スーパーサイヤ人的な目に見えたテコ入れのみならず「根性や信念や怒りで戦況をひっくり返した」と言うような、まさしく100パーセント精神論だけのパワーアップも同様。
通常、やれるものなら最初からやっている筈です。
私事ですが先月、連休前の繁忙期、かつ、人員不足と言う二重苦によって、普段の倍のタスクを自分で受け持つと言う暴挙に出た時期がありました。(※1)
当然、体力的に過酷である上、例えば一時間に「本来の二時間分」の仕事を詰め込む訳ですから、処理を間違えれば破綻して仕事全体が止まってしまいます。
そんな心身ともに“限界突破”の状態では、当然、一つ一つの仕事の精度もどうしても落ちます。
結果だけを見れば乗り切る事は出来ましたし、何より「自分の限界」を具体的に把握できたのは、かなり有意義だったかと思われます。
最悪、自分が倍背負えば乗り切れると言う、まさしく“後ろ楯”が自分の中に出来ると、平時の安定した状況の時に自信と分析力が身に付くものだと思いました。ブラックと紙一重の理屈なので大声では主張できませんが。
まあ、もう同じ事はしたくないのが本音です。
結局の所、能力や成果とは安定性も含めてのものであり、ここ一番、一発逆転の爆発力と言うのも地力が伴ってこそだと考えます。
“本気”と言うものは常に出しているものでなければいけませんし“本気を越えた本気”の行使はデメリットの方が大きすぎるか、あるいは絵に描いた餅でしかないか、です。
この辺はVRMMOシリーズの若手とシニア~の冒頭でもちらりと触れましたが、私の考えとしては「本気を出せば凄い人員」などは、一番手を抜いている(弱い)状態を基準として評価せざるを得ません。
また、この点はやはり、魔力やオーラなど、可視化された
(※1)
上司からはそこまでしなくても良いとも言われましたが、末端から見ると、ここでノルマを落とすと自分達の連休が減りかねないのは明らかだったので。
出来なかった仕事を休日出勤で補填、と言うメリハリの無い考えを浸透させたくないのと、本文でも書きましたように自分や部署の限界を一度経験しておく(させておく)意図もありました。
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