群像劇の視点あれこれ覚え書き

 ある人物Aが重大な決断をする時。

 敢えて他の仲間Bの視点を採用して、本人が何を思ってその決断をしたかを「伏せておく」と言う表現が出来ました。

 また、人物Aの内心を知るよしもないBの視点なので、自然、描写もスリムなもので落ち着きました。

 やはり、これを素直にAの視点や三人称視点でやってしまうと、葛藤だの決意に至るまでの理屈だの、どうしてもあれこれ詰め込みたくなるものです。

 

 また、その応用でも無いのですが、同じパーティの仲間同士が一対一で決闘する場面で、立会人の視点で戦闘を書きました。

 また、その人物はパーティの仲間では無く、別パーティに所属する(決闘の当事者二人ともそれほど近しくない)完全な第三者を選びました。

 決闘の当事者がどちらも仲間である以上、同じパーティ内の誰かに語らせると、どうしても攻防の実況に私情が入ってしまうと思ったので。

 また、先程の人物Aの決断も同様、一歩引いた位置からの視点でこそ、戦う当人達の心情が何となく感じられる事もあると考えます。

 ……と言いつつ、この立会人は決闘の途中から一方に肩入れするような心情に変化していってるのですが「他人事なりの感情移入」の範疇におさめたつもりではいます。

 この匙加減はかなりデリケートに感じられ、読む人によっては失敗と映るかも知れません。

 

 これに限らず、主人公の直接の仲間ではない(お互いのパーティ内の内情を知らない)人物を語り部の一人にしておくと何かと作品にメリハリが出せます。

 ラヴクラフトリゾートにおいても、主人公側で重苦しい話が続いたな、と感じたタイミングで、割合コミカルな雰囲気から始まる別パーティの視点にシフトさせましたが、この狙いは概ね成功したのではないかと思います。

 その昔、似たような感覚を、ファイナルファンタジー8でも感じた事があります。

 この作品は、基本的に内向的で気難しい性格の主人公(スコール)を操作し、物語の展開もハードだったり重苦しい場面が多いものでした。

(他の仲間達のデザインはいずれもポップで、明るさが皆無でも無いのですが)

 それが突然、自由奔放で三枚目(正確には2.5枚目?)キャラのもう一人の主役(ラグナ)の視点に切り替わり、気の知れた戦友達とコントのような軽口を叩き合いながら戦場を駆け抜ける。

 戦闘BGMも重厚だった曲調から軽快な曲調のものに変わり、別物語と言って良い程に空気感が一新されるのは、プレイを先へ進めさせる、大きな牽引力になっていたと思います。

 

 また、仲間やチームメイトを満遍なく活躍させられない・目立つ人物とパンチの弱い人物の偏りが出てしまう事にお悩みの時にも、群像劇を書いてみるのは一つかも知れません。

 視点の主に据えると言うことは、否が応でもその人物の性格や真意を深く掘り下げる事になる筈だからです。

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