ロボットものにおける、エネルギー兵器と実弾兵器の比較

 今回の話は、別項、

「ビームあれこれ」

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16817330650772735444

 と併せて読んでいただければ、と思います。

 なお、タイトルに“エネルギー兵器”としましたように、粒子ビーム、レーザー、プラズマ、その他の何れかによって細かい事情が変わってきますが、ここではあまりそれらの差異は考えない方向で行きますのでご了承下さい。


●弾の消費

 実弾兵器に関しては言わずもがな、とは思われますが、エネルギー兵器の場合「ビームあれこれ」でも述べました通り、発電が必要であり、決して弾数が無制限のものではありません。

 ちなみにガンダムが装備するビームライフルの出力は1.9だそうです。

 本体の1380と単位が微妙に違うのは何なのか、と思わされますが、要はガンダム本体はメガワット換算で1.38メガワット……つまり本体の活動を維持するよりもビームライフル一発撃つ方がエネルギー消費が高くつく事を意味します。

 その為、ガンダムのビームライフルはあらかじめエネルギーを充填したパックを使用する……となると、弾丸を消費しているのと変わりありません。

 一方でアーマード・コアでのエネルギー武器は、本体のジェネレータから出力を得ている為、撃てば機体の動力そのものも消費され、枯渇すると、エネルギーが再チャージされるまで飛行やダッシュ等が出来なくなって、途端に機動力を失います。

 それでいて、結局のところ弾数制限もあります。

 撃ち尽くせば、エネルギーが機体にどれだけ残っていようと弾切れとなってしまいます。

 考えられる要因としては、機体のジェネレータとエネルギーパックの“両方から”エネルギーを充填してようやく発射が実現するハイブリッド型なのかも知れません。

 あるいは、エネルギー兵器の場合は放熱の為に、一度の作戦で撃てる回数に限度があるか。

 

 ただ、いずれにせよ、エネルギー兵器の消費量が本体のジェネレータを上回るからと言って、必ずしも外付けのエネルギー源が必要かは疑問です。

 例えば機体を動かす以上の余剰エネルギーを武器に回して少しずつチャージする……と言う事も出来る筈です。

 勿論、このやり方では発射までに時間がかかり、まず連射は利かないとは思いますが、必殺技っぽいと思えばこれはこれでかっこよさはあるかも知れません?

 事実、ガンダムシリーズではジェネレータ直結型のエネルギー兵器もあるそうで、リソース管理の難しさから熟達を要求されるともありました。

 

 私自身は新世紀エヴァンゲリオンを中途半端にしか視聴した事が無いのですが、この作品に登場するポジトロンスナイパーライフルなんかは、凄まじい設定でした。

 何と、実在するとすれば日本全国で消費される電力に等しいエネルギーが必要らしく、一発撃つ為に全国のあらゆる電子機器の稼働を犠牲にする羽目になるとか。

 つまり、医療現場などの人命に関わるエネルギーさえも回さねばならない……と考えると、敵の強大さと兵器のスケール、それの発射を強行した組織の実行力がまざまざと感じられます。


●威力の減衰

 エネルギー兵器の場合、ちょっとした環境の差異で減衰すると考えると、実弾兵器の方がロングレンジにおける信頼性が高いのではと思わされますが。

 実弾兵器は実弾兵器で、飛翔体のサイズに比例して空気抵抗が加わるので、やはり減衰は免れませんし、軌道が逸れやすいかと思われます。

 あるいは、減衰する前提で考えれば、エネルギー兵器の場合は「威力と距離のトレードオフ」と割り切りやすいのかもしれません。

 空気抵抗が(あまり)無い分、当たって致命傷にさえなれば、減衰もなにもありません。

 

 ただ、ある種の「風に流されない」と言う性質は「曲射が出来ない」事も意味します。

 通常、真っ直ぐにしか飛ばせないエネルギー兵器は、特に遮蔽物に弱いかと思われます。

 ガンダムシリーズのリフレクタービットやファンネル、ほかロボットものでのビット(本体から独立してビームを撃つ子機)などは、波状攻撃のみならず、敵の頭上や背後を(宇宙なら足下も)奇襲するという、エネルギー兵器を立体的に運用する一つの解なのかなと思います。

 

 しかしながら、防御側の立場に立つと、対策しやすいのはエネルギー兵器の方でしょうか。

 ただでさえ、微かな場の環境にすら影響されるデリケートなものであるので、自機の素材や塗装、何らかの粒子の散布など、問答無用で突っ込んでくるロケット弾よりは防ぎやすいのではないかと。


●格闘武器

 もう一つ気になるのが、これもロボットものによくある近接戦闘についてです。

 例えばわかりやすく“剣”。

 手元の資料によりますと、ガンダムのビームサーベルの出力は0.5メガワット=500キロワット。

 数字だけを見ると、ビームライフルよりは現実的に見えますが……一瞬で撃つライフルに対して、サーベルの場合は剣の形状を維持する為に断続的に照射し続ける必要があります。

 前回も述べましたが、ガンダム本体の1380キロワットと言うのが“何の”出力なのかは、正直不明瞭です。

 しかし、いずれにせよ本体の動力に対して、剣一本の為の消費と思うと結構な割合です。

 ビームサーベルの利点として、普段は刀身を消しておけると言うのがありますが、これは取り回しと言うよりは無駄な消費を控える意味合いが強いのかも知れません。

 うろ覚えですが、機動戦士ガンダムの劇中でも、ビームサーベルはいちいち頻繁に出し入れされていたような……気が、しま、す。うろ覚えですが。

 また、機動戦士ガンダムガンダムではビームサーベルによる鍔迫り合いが可能な点についてもちゃんと設定があって、刀身を形成する為のエネルギーフィールド同士がぶつかり合うと斥力が発生して、擬似的に弾き合う事が出来るとか。

 確かにスカッとすり抜けてしまうよりは、シチュエーション的に見栄えしそうですが、実体のある剣との差別化として「インパクト時の抵抗がない」のは面白い特性だと思うので、個人的にはよくこちらを採用します。

 鍔迫り合いは、確かに接近戦の華でもありますが。

 

 一方、エネルギー兵器の法外な消費量を思えば、ちょっと鉄柱を振り回す程度の力で済む実体剣は、エコなのかも知れません。

 しかしやはり、ビームサーベルに対して金属の近接武器と言うのは、よくも悪くも打撃に衝撃が伴います。

 我々の世界の現実的な範疇で言えば、重機と重機が衝突するようなものに思えます。


 まして、人間の手を模した繊細な造りのマニピュレーターをグーにしてぶん殴るなどは、最後の手段に取っておきたいものです。

 

●まとめ

 射程距離、弾速、コストなど、実弾とエネルギー弾でもう少しはっきりと得手不得手が出るかと思いましたが、環境や見方によって、それぞれがどっこいだと言う印象に落ち着きました。

 あるいは、両方をバランスよく備えて補い合う装備構成が一番良いのかな? とも思いました。

 エネルギー兵器の放熱中に実弾兵器に切り替えたり、大型実弾兵器を撃ち尽くしてから、軽量なエネルギー兵器で着実に止めを刺したり。

 万が一、モビルスーツやACを設計する機会が巡ってきた時のために覚えておきたいポイントです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る