ビームあれこれ
今回は特に難しい題材なので、門外漢の素人目線である事をあらかじめ強調しておきます。
⚫ビームとレーザーの違い?
ビームとは“光線”全般を指す普通名詞であり、レーザーとは「ビームの一種である」そうです。
つまり、レーザーとは、ビームと言うカテゴリの中の一種に過ぎません。
また、加速粒子なども定義上は“ビーム”と言える一方、レーザーは光のみによるビームとなります。
目下、この世で最速のものは“光”とされていますが、粒子はそれよりも遅い事に注意が必要です。
私もよく、SFやファンタジー(の魔法)を書く際、戦う人物が光線銃や光魔法を攻撃手段に選んだ理由として弾速が光速である事を挙げていますが、これは厳密に言えばレーザーを選んだ、と言うべきなのかも知れません。
聖なる光魔法をレーザー呼ばわりと言うのも、いまいちピンときませんが。
⚫実際の工業用レーザーはどうか?
結果だけを言えば、厚さ25ミリ以上の鉄(鋼材)を、割合綺麗に両断できるようです。
ビームサーベルは既に実現していたんだ! と喜ぶにはまだ早いです。
まず、これまた私の知識不足ゆえの乱暴な簡略化になりますが、レーザービームの威力とは出力は勿論の事、綺麗な断面で切る為に周波数や焦点、レンズの状態と言った多くの要素に左右されます。
そして、発射口と切断対象との距離は数ミリしか開けられません。当然、遠ざかれば威力が減衰したり、適切な焦点から外れるからです。
何より、レーザーの威力は照射時間に比例すると言う事です。
現実の工業用レーザーで厚み25ミリの鋼材を10センチ切るとしても、分単位で時間がかかる事もあるそうです。
これではレーザーそのものが光速であっても武器としてまるで使い物になりません。
また、レーザーの温度とは「照射対象の融点とイコール」であるそうです。
つまりゲームで、度々レーザー武器に貫通力があったり防御力無視の効果があると言うのは、結構理にかなった描写なのです。
しかし、それ故にちょっとした表面の汚れなどで簡単に減衰してしまう事も意味します。
全く対象にダメージがないわけではないのですが、切断面がドロドロに溶け、切断面が抉れたように汚くなったり、貫通し切らず繋がったままになってしまうそうです。
破壊として見るとダメージが全く無いわけではありませんが、現実の工業用レーザーは何も敵を破壊する為にあるわけではなく、何らかの製品を作っているので、これでは困る事でしょう。
逆に、創作物において壁やシャッターの切り口がドロドロに溶けて赤熱しているような描写もしばしば見られますが、これは割合リアルに基づいた描写だと言えるのかも知れません。
レーザー加工とはこれだけデリケートなものなので、当然、材質が変わると両断・貫通するのに必要な設定もがらりと変わります。
同じ金属は金属でも、鉄とステンレスでは、ともすれば設備から変えねばならないようです。
また、その鉄にした所で、例え厚みが同じであっても純度が違えばやっぱり仕上がりに違いが出てしまいます。
例えばロボットもので、どんな材質・構造の敵機体と対峙するかわからないにも関わらず、一挺のレーザー銃やビームサーベルで撃墜出来ていると言う事は、我々が思っているより遥かに莫大な出力が伴っていると言う事なのでしょう。
ここまで書いて思いましたが、よくあるビーム兵器と実弾兵器の比較として、実弾であればこうした複合的な構造の対象にも安定したダメージを与えられるメリットがあるのかも知れません。
もっとも、先にも述べましたように、光“のみ”を発射するビームはレーザーだけの話なので、それ以外の粒子を伴うビームなどはこの限りでは無いとは思いますが。
余談ですが、現実の工業技術と照らし合わせてみると、現実のそれは物を作る為にある事と、物語のレーザー兵器は破壊の為にある事とのギャップが存在するとわかります。
私も、架空兵器や魔法の設定を現実の工業から拝借する事があるのですが、この微妙な差異には注意が必要だと思いました。
例えば先に述べた切断面が燃えてドロドロに溶ける現象。
殺傷力としてみればこれでも良いのでしょうけど、レーザー加工で何かしらの物を作ろうとしていた時では、工作物が売り物にならなくなってしまうのです。
⚫電力問題
さて、現行の工業用レーザーでさえ、対象が単一の材質であっても斬り損なう事がある……しかし、その無理を押し通して、敵機体が綺麗にすっぱり両断されたり、ガンダムがトントン拍子でザクを撃ち抜くような描写を実現するには何が必要なのか。
と言うと、その超出力の源である、桁違いの電力です。
具体的なメカニズムについては専門外なので、申し訳ありませんが各自で調べて頂ければと思いますが。
レーザー切断には、莫大な電力が使われると言います。
最近何かと話題にするフォールアウトでも、レーザー武器の弾薬には“フュージョン・セル”や“フュージョン・コア”と言うものを消費します。
これらは要するに、核融合電池や個人携行用の核融合炉です。
また、高校生の時分に巨大ロボを自作するゲーム、アーマードコアをプレイしていて、レーザーやビームなどのエナジー武器は無限に撃てるものと思い込んで使ってみたら、普通に弾数有限でがっかり……と言う経験がありました。
しかし、光線はあくまでも物品ではないと言うだけであって、全くの無から捻出できるものではないと思えば、当然の事です。
もしもレーザーを弾数無限で撃ちたいと言うのであれば、機体や装備に何らかの永久機関を備えねばなりません。
しかも、敵の巨大ロボを破壊する程のレーザーを実現する電力とは別に自分の機体も動かす為の電力も別途、確保が要ります。
結局の所、現実的にエネルギー兵器が実弾兵器に成り代わらない理由は、この高すぎるコストにあるとされています。
いかに光速とは言っても、そもそも人間には音速にすら対応できない事を考えると、戦いの用途としてもアドバンテージにはなりません。
ファンタジーの魔法であれば、この辺の事情は違うと思います。
魔力に対する費用対効果のバランスが取れているなら、光魔法は実用可能でしょうし、音速の世界に対応できる超人や怪物なども存在するのであれば、光速の利点は大きいかと思います。
この創作論でも何度かご紹介してきましたが、私の書く“魔法”の設定は、作品の世界観次第でのマイナーチェンジはあれど、原理は概ね決まっています。
大きくはしょって言えば、思考したものが(その思考の強さに応じた規模で)現実に実体化する、と言うシンプルなものなので、電力などのリソースは一切無く充分な威力のレーザーを生み出せるor核融合炉に相当する電力を無から生み出せる、と言う理屈になります。
ただし、これをやると、それこそビーム兵器の実現に核融合炉レベルの電力が必要である前例が出来てしまい、その魔法と張り合えるような他の魔法同じだけインフレを余儀なくされるリスクもあります。
流石に、そこまで深読みされる読者がどれだけ居るかはわかりませんが。
あまり理屈っぽく原理を細かくするほど、突っ込みを食らうリスクは高くなるとは思います。
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