クトゥルフのマイナー神話生物二種をご紹介
両方とも、私が先日執筆したラヴクラフトリゾートに登場します。
まず一柱(?)目は、H・Pラヴクラフトの(正確にはゴーストライターの仕事での)短編“博物館の恐怖”より、“ラーン=テゴス”です。
外見は丸い体に多数の魚眼、無数の触腕が生えており、前肢二本はカニさんのようなハサミが付いている……と言う、クトゥルフ神話的には無難な姿をしています。
物語は、蝋人形博物館に展示されたそれが本物で、ラーン=テゴスの崇拝者である館長が秘密裏に人間や犬を食わせていた……と言う、これまた良くある話ではあります。
さて、依頼主の寄越してきたプロットがあまりにも酷い出来であり、ラヴクラフト氏も嫌々書いたとも言われているこの作品。
単体の短編としても、それに沿って無難な内容なのですが、氏が込めたメタ的な皮肉が随所に感じられます。
ロジャーズと言う名の館長が「ラーン=テゴスは、アザトースやヨグ=ソトースをも凌ぐ神格なのだ!」とぶち上げるのですが、引き合いに出された名前が大きすぎて、この時点で胡散臭い……と思われた方は正解です。(※1)
まず、ラーン=テゴスの崇拝者はロジャーズたった一人。
先程も述べましたが、犬を細々と食べて生きているような存在です。
いかに人間と比べて強大な怪物であろうと、宇宙規模の神格とは比べるべくもありません。
あまつさえ、ロジャーズに捧げられた生け贄(作中の主人公)を捕まえ損ねた挙げ句、腹いせと言わんばかりにロジャーズを殺し、ロジャーズの助手“オラボーナ”に銃殺されると言う末路を辿ります。
そして、それまで単なる助手だと思われていたオラボーナが突然不敵な態度に豹変し、ロジャーズとラーン=テゴスの死体を博物館に展示する、と言うオチになります。
物語として俯瞰しても、メインキャストでありながら、その存在感すらもオラボーナにかっさらわれると言うあんまりな扱いでした。
なお、このオラボーナは浅黒い肌のアラブ系と言う事なのですが……ラストの不自然に不敵な態度と言い「その正体は“あの人(?)”なのでは無いのか」と言う説もあるそうです。
それが正しいとしたら、なおの事、ロジャーズの道化扱いが感じられます。
次にご紹介するのは“ラニクア=ルアフアン”と言う神話生物です。
神格と言うよりは、一介の“
具体的にはイルカと深きものの混血……とされますが、それ以上の詳細はほとんど不明です。
と言うのも、このラニクア=ルアフアン、Googleで検索しても何と5件しかヒットしませんでした。
私が近況ノートで言及した事で、めでたく6件目になる事が出来ましたが。
とは言え、そのうちの一件はpixiv大辞典と言う大手のサイトの記述だったので、私も偶然出会う事が出来ました。
検索結果の中には、恐らくラニクア=ルアフアンを創作した方のページもあり、TRPGで個人的に設定したオリジナル神話生物がpixiv大辞典に拾われて表に出たのかな? と推測します。
イラストにした方も何人か居られ、人魚のようなものと、イルカをベースにモンスターにしたものと二種類ありました。
ラヴクラフトリゾートでは後者を採用。
能力的なものも資料が皆無だったので、超音波による音波砲と、テレパシーによって使役者の直感的な操作を受け付ける能力を勝手に設定させて頂きました。
誰の解釈も正解であるのもまた、クトゥルフものの美点かと思われます(都合の良い解釈)
先のラーン=テゴスも、TRPGではゲームマスターの采配次第では旧支配者らしい強大な存在として描写される事もあるそうです。
話しはラニクア=ルアフアンに戻して。
通常のイルカよりも一回り巨体である事から、水中戦であれば肉弾戦も強いのでは無いかと思われます。
ラヴクラフトリゾートでは母なるハイドラにも結構な損害を与えており、どうみても“旧支配者”であるラーン=テゴスよりも強大な存在になってしまいました。
世紀を超えてこう言う事が起こり得るのも、クトゥルフ神話ならではかと、感慨も受けました。
ちなみに余談ですが、ラヴクラフトリゾートでは普通に野生のラニクア=ルアフアンが東京湾を泳いでいる事を示唆する描写があるのですが、地球をリアルにコピーしたVR世界に神話生物が追加された生態系ってどうなってるのだろう? と、今、ふと思いました。
今回の作品の趣旨からは外れるのですが、VRやクトゥルフものを書くにあたって、これはこれで面白い題材になり得るのかも知れません。
マイナーな神話生物や神格に目を向けると、まだまだ知らないネタがあるものだと思いました。
創作の題材としてのクトゥルフ神話もまた、なかなかに膨大なネタに満ちているようです。
(※1)
両方とも、クトゥルフ神話の中でも宇宙規模のスケールを持つ最上級の存在とされる“外なる神”と呼ばれます。
分かりやすさ重視で噛み砕いた説明である事を先に断っておきますが、ヨグ=ソトースはあらゆる時空間に遍在するとも言われますし、アザトースに至っては、この世の根源とすら言われています。
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