クトゥルフTRPGの魔術

 割りと有名な話かと思われますが、クトゥルフTRPGで用いられる魔術は、使用すると術者の正気度が減少します。

 クトゥルフTRPGというもののおさらいになりますが、このゲームの世界観では、プレイヤーはあくまでも普通の人間に過ぎません。

 魔術と言う超常的な力を実感してしまえば、世界の真理を何も知らなかった頃のように平穏な精神ではいられなくなる、と言う事なのでしょう。

 そして、ゲーム的に、この正気度がゼロになると狂死したり廃人となって事実上のキャラロストとなります。(卓のレギュレーション次第で、正気度ゼロのキャラクターがNPC化したりして活動し続けるケースも、あるにはあるそうですが)

 なお、魔術の種類にもよりますが、大体は1d6(6面ダイスを一回振って出た、1~6のランダムの値)

 が相場であるようです。

 参考までに、TRPG(と、その設定を参考にした私のラヴクラフトリゾート)において、キャラクターが軽症の一時的狂気に陥る正気度ダメージは5です。

 これは、一度のダイスロールで受けたダメージを意味するので、6面ダイス一回につき1/3の確率で発狂の可能性があると言う事です。

 ただ、5以上のダメージを受けた上で「世界の真理を察してしまうかどうか」の閃き判定アイディアロールがあり、これに被害は正気度の減少のみに留まり、発狂は免れます。

 しかし、アイディアロールの成功(つまり発狂確率)はキャラクターのINT(知性)×5パーセントと言う、かなりの高確率になります。

 通常、人間のINTは20が限度ですが、例えばINT15の人が発狂する確率は75パーセントにもなります。

 僅かに3増えてINT18ともなれば、たったの5ダメージで、発狂確率90パーセントのダイスロールに追い込まれてしまいます。

 とにもかくにも、魔術の使用はそのキャラクターの寿命を縮めると言う事です。

 ちなみにTRPGでは、事例ごとに減少する正気度の相場が定められています。

 1d6(六面ダイス)一回分の精神的ショックと言うと、


・友人の非業の死を目撃

・グールを目撃

・他人や動物が焼死するのを目撃

・他人が列車などに轢かれる様を目撃

・人肉を知らずに食べてしまった事に気づく

・目を覚ましたら棺に閉じ込められていた(!?)

 

 この辺りが挙げられるようです。

 魔術とは、使用の度にこれと同等の精神ダメージを強いられる……と考えるといかに過酷な行為かが分かります。

 

 正気度の枯渇がゲームオーバーを意味するクトゥルフTRPGにおいて、“魔法”とは、ファンタジーやJRPGのようにバンバン撃てるものではありません。

 実際、今回書いたラヴクラフトリゾートでは、主人公一派は湯水のごとく魔術を乱発しておりましたが、そのリスクや代償の重さが、書いていてよく実感出来ました。

 しかも、人間と言う魔術一回で簡単に壊れてしまう脆弱な生き物が、まともに神話生物と渡り合うには魔術の力を借りざるを得ないのもまた事実です。

(TRPGの場合は、戦闘そのものを招かない立ち回りも大事である事・ラヴクラフトリゾートでは死んでも即時やり直しが効くと言う背景もありますが)

 目先の大怪獣から逃れる為に、発狂すると分かっていても実行せざるを得ない、と言うジレンマは特別意識せずとも表現する事となりました。

 

 今回の私のラヴクラフトリゾートも、作者がサイコロを振ったり、そもそも未来のVRゲームであったりと、色々と特殊な前提にあるので一概には言えませんが、

 おいそれと撃てない、魔法の“重み”を感じながら書くのには、このクトゥルフTRPG式魔術は、なかなかに良い題材だったと思います。

 私の場合、その前作にあたる若シニのように、ノーコストで魔法がバンバン撃てるような話の方を、どちらかと言えば好む性質なので。

 

 また、ここからは余談ですが、ラヴクラフトリゾートに登場する魔術は、基本的にクトゥルフの呼び声にあるものをベースに、いじっています。

(アフーム=ザー・フェイクなどは、完全に創作ですが)

 一応“クトゥルフ神話”はともかく、クトゥルフの呼び声には著作権がある筈なので、念のため。

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