自爆あれこれ

 また唐突な話題になりますが、自らの命と引き換えに攻撃する、物理的な意味での自爆の話です。

 

 自爆に必須なのは、やはり(不謹慎な表現にはなりますが)“必然性”と“費用対効果”でしょうか。

 まず、最低限、有効打が自爆しか残されていない状況だと納得して貰わねばなりません。

 フィクションでの自爆と言えば、ドラクエシリーズの“メガンテ”が有名ですが。

 私はこの呪文、全くと言って良い程使った事がありません。

 私が未プレイの2では、ラスボスを除くどんな敵でも問答無用で全滅したらしいので、それくらいの効果が約束されていれば、あるいは使う事もあったのかも知れませんが。

 少なくとも私がプレイを始めた3の時点で、雑魚モンスター相手にも失敗する可能性があり、属性相性次第で無効化すらされる有り様でした。

 しかも、よりにもよって、メガンテの使い手は僧侶ヒーラーだったり賢者だったりします。

 効果が安定しない(費用対効果が悪すぎる)上に、他にもやる事が山ほどある人材ばかりが使い手である(必然性が低い)と言う事です。

 対する“メガザル”(命と引き換えに、仲間全員を蘇生・全快させる呪文)は、シリーズによってはよく使いました。

 特に5や6では、控えメンバーも含めて最大8人で戦う関係上、最後に生き残った者の土壇場でのメガザルは起死回生の一手となります。

 これは、費用対効果が、術者の死ときっちり釣り合っている事と、生き残りが一人の時点で他の行動を取ればそのまま全滅しかねない=他に打つ手が無い必然性がしっかり存在するからでしょう。

 また、ペルソナシリーズにおいても“リカームドラ”と言う、自分の死と引き換えに仲間全員を全快させる(ナンバリングによっては蘇生効果がない)と言う魔法がありますが、普通に術者も死なずに済む全体回復魔法が別に存在するので、やはり使う必然性がありませんでした。

 あまつさえ初代のペルソナは、どの魔法を使っても消費コストが一律同じなので、もはや、リカームドラが何で存在しているのか理解に苦しむレベルでした。

 また、話はドラクエに戻りますが。

 以前、5の縛りプレイ動画を見ていた時に、復活の杖(蘇生魔法が無制限に使える杖)を入手して以降、仲間の爆弾岩にメガンテをさせては生き返らせて、ダンジョンの道中を切り抜けていました。

 これもまた、

・縛りプレイによる殲滅力不足でメガンテの効果が相対的に高い、他に勝つ手段が乏しい

・復活の杖によって、爆弾岩を何度でも生き返らせられるようになったので、実質的にゼロコストである

 と言う、費用対効果と必然性が成立していたからこそなのでしょう。

 

 現実の自爆などは、しばしば非戦闘員や市民に扮した下手人が行う事で、疑心暗鬼や精神的疲弊を誘う効果もあると言います。

 また、そうした者は武器も乏しく、充分な威力を伴って確実に当てる数少ない手段ともなるでしょう。

 

 さて、ここでようやく小説の話になるのですが。

 敵が使うにしても味方が使うにしても、非常に扱いづらいものです。

 前回挙げた、主人公以外の第三勢力相手でなければ脅威の伝えづらい敵幹部のようなもので、本当に主人公や仲間を簡単に殺されてしまうと困る事になります。

 かといって人一人の命を費やした自爆の結果、そこそこのダメージで済んでしまうのも安っぽくなります。(どちらかと言えば、有名作でもこのパターンが多い気はしますが)

 そうまでして倒せなかった、絶望的な格差を意図的に表現しているのであれば、それも一つだとは思いますが。

 やはり、一般的な“自爆”のイメージからは少し遠ざかってしまうものの、メガザルタイプの、相手を直接は殺傷しないものが納得されやすいのかも知れません。

 自己犠牲によって回復、もしくは強化された敵を再度、結果的に下す分には「自己犠牲が無駄になった」感も薄まるとは思います。

 回復or強化後をどう戦うか、その成否は、メガザル的な魔法自体とワンクッション挟まっているからかも知れません。

 

 また、かなり前にご紹介したセラフィックブルーと言うゲームにおいて“ファイナルアタック”と言う概念がありました。似たようなシステムは、他の市販のゲームでも多々あるかとは思いますが、

「HPがゼロになった時=つまり死に際に放たれるアビリティ」と言うもので、これもある意味では自爆と言っても良いのかも知れません。

 中には「こちらの通常攻撃以外のコマンド全てを封じる」などの、かなり厳しいファイナルアタックもありました。

 また、状態異常魔法を乱発する鬱陶しい敵を始末したら、次のターンにこちらが全滅する内容のファイナルアタックを放ってくるものも。

 

 やはり、自爆や自己犠牲を無理無く自然に書くには、“必然性”と“費用対効果”が鍵となるのかも知れません。

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