五行思想に学ぶ、ゲーム的属性

 先日完結したVRMMOのお話において、スキル自作システムと言うものを登場させました。

 その名の通り、魔法や技、状態異常耐性などのパッシブスキルをプレイヤーが自分で作ると言う、私のような中二病好きには垂涎もののシステムです。

 これには、考えたスキルをゲーム内で実現する為のスクリプト(機械言語)を各々で書く必要があります。

 今回、ゲーム的な属性論に思う所もあったので、このスクリプト言語に五行思想の概念を盛り込んでみた次第です。

 

 五行思想とは、ご存知、木・火・土・金・水の五要素で世界が成り立っていると言う、古代中国から伝わるものです。(※1)

 地水火風の四元素と双璧をなす、ファンタジー的なフレーバーでもあるでしょう。

 半ば作品で書いた事の繰り言になりますが、例えばここで言う“火行”とは、燃焼だけの事ではありません。

 精神的な気質をもあらわしており、情熱的・右脳的な知性と言う意味も持ちます。

 私の作品ではそこから更に、書く側として都合が良ーー幅広い描写の為に、熱=殺菌=浄化=状態異常回復魔法と言うような応用例も出しました。

 また、ゲームの物理演算システムに対して、熱力学の要素にも影響し、冷気属性の魔法を作るのにも、火行の記述が必要であるとしています。(正確には、一つのスクリプトには必ずしも単一の属性に限らないので、吹雪を作りたいのであれば、火行も水行も書く必要がある筈です)

 また、近況ノートでも明言しましたが、今回の作品はエタった過去作のリファインも兼ねており、そこでは地属性、つまり土行のスクリプトを書くのにユニークスキルを必要とする=特別な資質の(サーバー側から承認された)者にしか使えない、と言う一捻りを加えています。

 テレビゲーム的に考えると、たかが地属性が無くなっただけ。石弾や地面操作の魔法が使えない程度だろう、と軽く見られがちですが……。

 この五行思想スクリプトの場合、土行属性には「固定・流れに対する抵抗」や「他の成長を促す」と言う観念にも関わってきます。

 もちろん「他の成長を促す」と言うのは、この場合、単純に人を強化する補助バフ魔法のみに限りません。

 同一スクリプト内の他記述、例えば火行による燃焼の記述に対して「発した火が“成長”するように徐々に燃え広がる」ような選択肢にも関わる事でしょう。

 今回の作品では、原則として土行と他の四行との併用が出来ない(土行の資質と、他四行との資質が排他的な関係)なので、こうした組み合わせが出来ないのです。

 

 高校生の時分、サガフロンティア2をプレイしていた時に、“召雷”と言う術を覚えるのに“木”の要素を必要とした事に首を傾げた事がありますが。

(最初、木を生やして落雷を誘導するのかと思いました)

 これには“稲妻”のモチーフが五行思想における木行にある為と思われます。

 その後発売された、同シリーズのサガ・スカーレットグレイスにおいても同様、召雷は“木”の術とされていました。

 サガフロ2の方はどうかわかりませんが、(※2)

 スカーレットグレイスは明らかに五行思想をモチーフとした世界観であるので、これに沿った属性の振り分けだと見て良いでしょう。


 今回、スキル自作システムを描写するにあたり、このような観念的な意味での五行属性を取り入れたのは結果的に良かったと思っています。

 勿論、お好みで四元素の方を採用しても良いと思います。

 元々は「火は燃焼のみ、と言う即物的な表現で良いのか?」と言う自問に対する一つの解ではありましたが「スキルを作っている」感も出せたかな? と。

 反省点としては、例によって本一冊分にこだわって色々展開が駆け足だった事もあり、やはり「石弾を飛ばす」と言うような直接的な表現が多くなってしまったことでしょうか。

 低コスト技の汎用性として考えると、それくらい単純なスクリプトの方が無難と言えば無難でもあるのですが。

 凝りすぎて持ち技全てのコストが★9になってしまうのも困りものですし、(※1ターンに貰えるのはパーティ全体で★10です)

 実際にそれをやらかした人物もしっかり登場させて、個性付けにもなったと思います。


 

(※1)

 小ネタの更に小ネタですが、作品中で五行を並べて呼ぶ時、最初は「木火土金水」と書きましたが、二回目以降は「火水木金土」としています。

 現代日本人としては、その方が馴染み深い並びかと思ったので。

(※2)

 火・水・木・石・獣・音。

 そして金、と言うか“鉄”は術を阻害する絶縁体のような扱いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る