フォールアウト4の思い出 ~人造人間あれこれ~ その2
※今回もフォールアウト4の重大なネタバレにご注意下さい。
心の哲学において“哲学的ゾンビ”と言う言葉があります。
あくまでも仮定の域を出ない理論だとは思いますが「喜怒哀楽の感情はあるが、それを主観的に“実感的”する内面的な感情が無い状態」
と言う、何ともややこしい話です。
私はしばしば、創作の中で、この状態の人物を「感情はあるが、魂はない」と表しています。
また、サイコ系の人物を書く際、自分でも知らず知らずのうちに、哲学的ゾンビを意識して設定していたようです。
この哲学的ゾンビと言うのは、物質主義ーー人間の感情も全て脳反応と言う物理的な産物であるーーと言う説への反論を目的として提唱されたそうです。
私は基本的に、後者の物質主義に極めて近い考え方をしていると自認しています。
そして、自分はまさに哲学的ゾンビなのでは無いか? と思う事もあります。
以前、この創作論で政治の話題について考えた時、私は政治家が私腹を肥やす事自体には何も感じない事を述べました。
きちんと仕事さえこなして、私の生活に大きな直接的影響さえなければ、誰がズルをしていようが、何とも思いません。
むしろ、美味しい思いをしたいが為に政治家が頑張ってくれれば好都合でもあります。
先の安倍元首相の国葬について、知人の中にも「税金の無駄を許すな!」と声高に活動をしていた人が居ましたが、本当に他意無く、私にはその怒りが理解・体感が出来ません。
税金は割り勘の話でもないのは分かるのですが、たかが16億円ぽっちの費用で、我々一人にかかる負担とは?
少なくない数の弔問外交が行えた費用対効果としては?
それを全て把握して、自分の家計に損害を感じているから、そんなに我が身の事のように憤っているんだよね?
としか感じられませんでした。
誓って言いますが、これは私の感覚的な問題であって、政治や、その知人への言及ではありません。
知人がそう言う活動に参加するなら、それもそれで他人事であり“義憤”を覚える筋合いもありません。
一方で、ネットゲームにおいての金銭トラブルの際は徹底して戦った事もお話したと思います。
明らかに道理を欠いた、時には逆ギレによってこちらを丸め込もうとするのが見え透いた彼等の態度には大変憤りを覚えました。
その中には、別の仲間が不当に利用されているなど、私自身には直接関係の無い、別に放っておいてもよかった他人事も含まれます。
それは、私が哲学的ゾンビでは無い事の証拠なのか。いやいや、金銭的ダメージやコミュニティの崩壊を招くようなトラブルに対し、私の脳が損得を演算した結果“憤り”の感情を作動させたのか。
考え出すときりがありません。宇宙こわい。
人類は、基本的に立証不可能な事を処理するのが苦手なのだろうと思います。
しかし、ネットゲームでの金銭踏み倒しにせよ、世紀末での人造人間事件にせよ、人は答えが出ないままに結論を下さねばならない事も多くあります。
その価値判断の基準となるのは、大抵は自己保存……言い替えれば我が身の損得勘定でしょう。
問題の保留が金銭的ダメージであったり、人造人間の襲撃に繋がるのであれば、何が正しいのかを考える前に手を下す必要が出てくるのです。
だからこそ、人造人間が恐れられ、差別される理由は「わからない事による恐怖」にあるのでしょう。
しかもそれが、人間と区別がつかず、容易に社会へ紛れ込んでしまうからこそ。
私たちの脳反応と、物理現象的に全く同じメカニズムが実現したとするのなら。
何をもって、人間と人造人間が違うと証明できるのか。
フォールアウト4で、プレイヤーがこの疑心暗鬼を体験できる機会があります。
このゲームはクラフト要素として、居住地を作る事が出来ます。
瓦礫を片付け、建物を建て、ライフラインを整え、入植者を募る。
そして人が住める土地となった時、一つの可能性が付きまとう事となります。
そう、入植者が人造人間と入れ替わっている
可能性です。
しかも、その人造人間は、
実際、それが原因で人造人間の軍団に襲撃されるケースは少なくありません。
さて、襲撃によって死傷者を出すとなると、居住地の責任者として看過するわけにもいきません。
ここで主人公が取るべき行動としては、人造人間を見分けて先に始末してしまう事です。
前回もお話しした通り、判断材料はいくつかありますし“人造人間の部品”と言うアイテムをドロップするので、大義名分の物的証拠は必ず得られます。
ただ、人造人間の部品は、殺した後にしか手に入りません。
もし、殺した入植者がこれをドロップしなかった場合……冤罪だった事を意味します。
それ以上に恐ろしいのが、ゲーム側から明言されていないものの、人造人間の入植者の中には、本当に悪意なく(下手をすれば自分が人造人間であると知らないまま)暮らしているだけの者も居るのです。
つまり、人造人間である確証を完全に掴めたからと言って殺してしまった場合……と言う事にもなります。
それをよしとするにしても、無実の人造人間である可能性を意識しているか否かでは、全く意味が違って来ます。
前回、私が
彼は自分が人造人間だと知らないまま、軍の理念に忠実に、人造人間やミュータントを狩って来ました。
人々を人外から守ると言う、純粋な責任感のもとに。
主人公とある程度仲良くなった時点で、入隊する以前の貧しい幼少期と言う身の上話を打ち明けてくれます。
しかし、その記憶こそが、
しかし私(の主人公)が、戦前の感覚のまま世紀末化した世界に放り込まれ、ほうほうの体で逃げ込んだ警察署跡地でパワードスーツ装備の男に保護された時には、心底心強く感じました。
この事実に変わりはありません。
説得(※要・高い交渉スキル)の末、パラディン・ダンスの助命は受け入れられたものの、軍からは除隊。
私はそこに
そしてもう一つ、これはダウンロードコンテンツのエピソードであり、私は未プレイであり、又聞きのようになってしまうのですが……。
メーカーがSNSだったかで、フォールアウト4について意味深なコメント「最後の真実」が、このエピソードには込められていたそうです。
と言うのも、はっきりと明言はされず、その真実についてはプレイヤーが自由に想像できる余地を残している節があったからです。
さて、それが具体的に何であるかと言うと。
ある人造人間が、主人公の「最も古い記憶」を尋ねる機会があるそうです。
結果、核戦争が起きた日だと答えます。
……幼少期の記憶ではなく、です。
確かに、我々プレイヤーからすれば、主人公にまつわる記憶で一番古いのは、そこです。
故に、ぱっと見、違和感に気付きづらくなっているのが、メタ要素も味方につけた秀逸なトリックだと感じました。
とは言え、真実がどうであるかは、プレイヤーに委ねられてはいるのですが。
ただ、主人公が殺されたとして、そのドロップアイテムを主人公自身が確認する事は不可能でもあります。
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