フォールアウト4の思い出 ~人造人間あれこれ~ その1
※今回もフォールアウト4の重大ネタバレを含みます。ご注意下さい。
かの“アンドロイドは電脳羊の夢を見るか?”(もしくはブレードランナー)に代表されるように、完璧に近い人造人間が実現したとして、生身の人間との境界はどこにあるのか?
と言うテーマは、入れ替えネタと併せてお馴染みの問題でしょう。
ここ数回のフォールアウトのお話でも書きましたように、世紀末世界で三勢力が争っている理由の根本は「人造人間をどう捉えるべきか?」にあります。
初見プレイでの私は、息子を裏切れないと言う私情によって
この組織は、人造人間を製造した問題の発端です。
そして、その決断を下す前の私は、
これに関しても、理由を自問すれば簡単でした。
既に知り合った仲間にも人造人間が何人か居り、それでなくても生身の人間と変わり無く懸命に生きている人も居た事を直に見てきたからでした。
これは、まさしく息子を理由に組織を選んだ時と同様の“エゴ”です。
裏を返せば、知人でもない相手がどうなろうと他人事であり、ましてそれが自分を襲って来たのなら、躊躇無く反撃して殺害してきました。
しかしこの価値判断については、人間に対するそれと変わり無いとも言えます。
パーティの仲間と、そこらの
そして、野盗同士にも時には強い連帯感や仲間意識がある事は、ステルス状態で聞き耳を立てるなどで知る事も出来ます。
そう考えると、今となってはこの擁護団体のやっている事は、鯨を保護するお題目で過激な部類の反捕鯨団体と同じとも思えます。
あくまでも、ここで言及しているのは、過激な部類の組織のみですよ! 炎上はやめてさしあげて下さい。
作中、人造人間が驚異とされているのは、第一に「正体がわからない」と言う事です。
まして、オリジナルの人間に成り代わっている事件も相当数起きてしまっている以上、どの人造人間がそうなのか、どの人造人間が真面目に暮らしているだけなのか、と言う区別がつきません。
まず、これが生物学的に“ヒト”であったとしても、悪人の驚異は予測困難であり、警戒が必要である事には変わりません。(戸締まりをきちんとする等)
しかし、最低限度、ヒトと言う“何ものか”に定義できているのに対し、人造人間は、どこまで人間に近づいたとしても“物体”として扱わざるを得ません。
そして、核戦争で滅びた無政府状態の世界において、大半の人が考えるべきは明日の食い扶持であり、人造人間のアイデンティティなどに思索している余裕もなければ、そもそも情報を共有する余裕もありません。
ちなみに、フォールアウトにおける人造人間の区別は比較的はっきりしています。
野球をする時に皆一様に同じポジションを選びたがったり、何故か全人造人間が同じ銘柄のスナックケーキが大好物だったり。
また、毎日の生活習慣をつぶさに見ると、それこそ“機械的”なまでに規則正しく、家じゅうの瓶の蓋が常に全て閉まっている状態を徹底したりします。
これらは人造人間を見分ける方法とされていますが、一方で厄介なのはこれらのいずれもが普通の人間でも充分にあり得ると言う事です。
野球のポジションと好きなお菓子が人造人間のものと被ったからと言って、その人が人造人間だと断定出来るわけではないのは言うまでもありません。
また、他人から見れば些末な事に強いこだわりを持つ特質は、現実にも大いにあり得る事です。
これらの“事実”をもって人造人間容疑者を排除すると言うのは、もはやヒステリーとしか言えませんが、それは私が平和な文明社会の住人だからなのでしょう。
また、もっと直接的な証拠として“人造人間の部品”と言うアイテムを必ずドロップするのですが、もし決め付けて殺害した相手がこれを持っていなかったとしたら……。
また逆に、思わぬ人がこれを持っている事もあり全地域のNPCを疑いだすときりがない世界です。
悪魔の証明じみていますが、この世界では「誰も人造人間で無い確証がない」のです。
横道にそれますが、私がファンタジー作品を書く時、しばしば、どんな高度魔法文明であっても洗脳魔法が生まれる事は無いと主張しています。
何故なら、実際に使う・使わないに関係なくそれが“存在してしまった”時点で、誰も自らの自我を信じられなくなると言う、術者本人が全人類を巻き添えにした自滅行為に他ならないからです。
恐らく、それほど賢い文明社会であればこそ、理論が確立されても、そうそう実現はしないかと思われます。
一方で、もし実現されるとしたら、それこそ核兵器と同じくらい重く扱われ、何ならそれ自体が作品一本分のテーマになりかねないと思います。
また話はフォールアウトに戻り、この世界の設定で更に興味深いのが“Mr.ハンディ”と言う、戦前のメーカーが販売していた、お手伝いロボの存在です。
球体のボディがジェット噴射で浮遊している、ガンダムに出てくる“ボール”をイメージして貰えれば、近いかと思われます。
戦前の200年前、主人公の家にもこれが一台居り、執事として仕えていました。
核戦争後、廃墟となった自宅を守り続け、主人公がコールドスリープから目覚めて再会すると、感極まりながら喜んでくれます。
一方で、彼を仲間として連れている時に、罪の無い人を襲うなどをすると怒りをあらわとし、最悪の場合、
「貴方はコールドスリープから目覚めるべきではなかった。一日も早く死んでください」
と、かなり辛辣な言葉を叩きつけられた上、絶縁されてしまいます。
また、これの戦闘仕様であるMr.ガッツィーと言う機種に至っては、敵対した場合こちらを
「哀れなロクデナシをお国のために始末するのは最ぁぃっ高↑ですねぇ!」
「世の中の為に自害するつもりも無いようですから、手伝ってあげましょう!」
と、心底充実した様子です。
また、
これらは明らかに、AIが学習と成長を行っており、人造人間以上の自我を持っています。
また、メーカーが核戦争で滅びて久しく、経年劣化でバグを起こした個体が各地で人を襲うと言う、直接的、かつ、目に見えた実害も出ています。
しかしながら、彼らは人造人間のように排斥されず、それどころか市民権があり、人間社会に完全に溶け込んでいます。
何故、人造人間のように差別されないのか?
と言うと、言うまでもなく彼らは最初からロボットだとわかりきった存在だからです。
球体のボディが
この事から、人造人間が恐れられる理由はやはり、中途半端に存在を認知され、かつ、人間との区別がつかない事にあるとわかります。
先述した、人造人間の部品や野球のポジションなど、判断材料が用意されているのは物語と言う「最終的には人造人間とバレてもらわないと話が成立しない」と言う事情にもあります。
これが、本当に全く判別不可能な精度のテクノロジーであった場合、いよいよ「人造人間か否か」を疑う必然性すらも危うくなってきます。
私が基本的に、自分に好意的な人造人間には味方し、危害を加えてくるなら生身の人間でも反撃すると言う考え方なのも、もはや真剣に答えを求めても仕方の無いと言う諦念(を抱くてあろう事)から来ています。
また思いの外、長くなってしまったので、残りは次回に回します。
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