フォールアウト4の思い出 ~秀逸なルート分岐~ その2
※今回も前回同様、フォールアウト4における最重要のネタバレがあります。
閲覧の際はご注意下さい。
人造人間の扱いを巡って、絶対に相容れない三組織。
こうした物語において、最低限必要な要素ですが、どの組織も明確・ある種“正しい”理念のもとに動いています。
あくまでも「人類の平和」を第一とする
“人格”に貴賤はなく、人造人間のそれを尊重すべきだとするレールロード(以下、擁護団体)
そして、息子の統率するインスティチュート(以下、研究機関)もまた「地上を支配する事で、人類を再び高文明に返り咲かせる」と言う理念を持っています。
地上の人々を見下し、好き勝手に暗殺して人造人間にすげ替えると言う“いち活動”を取ると、決して称賛出来るものではありません。
しかし、それらの“過ち”と、人類再興の“正しさ”が根幹で絡み合ってしまっていると言うのは、他の組織にも言えることです。
「人間の平和の為に他の命を認めない」軍隊、
「人造人間を擁護するあまり、人間の平和を軽視する」擁護団体。
また、
それと、インスティチュートの地下居住区と、果たしてどちらが人類として正しい姿なのか。
息子を拐ったどころか、その息子が組織のトップに立っていた事で、研究機関に対する“私怨”はここで無慈悲にも取り上げられます。
ここに来て、主人公にとっての研究機関も他組織と同様、イーブンの存在になると言うプロットが、まず素晴らしいと感じます。
ここから先は、初見プレイの私がどう行動したのかを交えてご紹介していきます。
息子の真実が発覚した後は、どの勢力にどの程度肩入れするかは全くの自由です。
それは“クエスト”と言う形で受注でき、遂行していく事となります。
息子に顎で使われると言うのは、正直面白くない状況ですが……立ち返ってみれば、そもそも何処の組織も、極論、そんなものではあります。
息子とて、自分が一番偉いからと言って、身の振り方全てを決められるわけでもありません。
ただでさえ、縁故採用された主人公を疎む内部勢力も相当数あります。
肝心の任務の内容は、やはり、これまで暮らしてきた地上世界の倫理観からは180度異なるものばかりです。
基本的には人造人間を用いた地上の支配・暗躍と言うクエストばかりです。
オリジナルから人造人間へ摩り替える現場に、荷担するシーンもありました。
それと並行して、擁護団体や、稀に軍隊のクエストもこなしていきました(※1)
しかし、いつまでも風見鶏ではいられません。
それぞれの組織から、任務として「◯◯を壊滅させよ」と命じられるのは時間の問題だからです。
やはり、息子率いる研究機関の地上支配計画には、手放しで同意できるものではありません。
当初の私は、どこかで組織に見切りをつけ、擁護団体のレールロードに定着するつもりでいました。
息子、ひいては、研究機関と手を切る事はいつでも出来ます。
地下居住区で銃の一つでも発砲すれば、たちまち危険分子として追放される事が出来ます。
ともすれば、自分に対して無防備そのものな息子を、出し抜けに射殺する事すら出来ます。
簡単に、造作もなく。
それが出来ないのであれば、明確な機会まで用意されています。
ある施設に逃亡した人造人間の集団を巡って、三勢力が一ヶ所に終結して争う戦いとなります。
その人造人間達は自我を得て久しく、研究機関には絶対に帰りたくありません。
研究機関に連れ戻されれば、地上で生きてきた記憶を抹消され“再出荷”されるからです。
ここで主人公は、息子の為に彼らを無慈悲に連れ去るか、彼らを尊重して見逃すかの選択を迫られます。
見逃した場合、息子と一対一で話し合う事となります。
一応、釈明すればそれ以上咎められる事はありません。
しかし、自分の理念が組織のそれから乖離している事を告げた場合、主人公は地下居住区から追放され、研究機関と明確に敵対する立場となります。
一応、この流れが「息子と一番綺麗な形でお別れ出来る」とされています。
私は、結局最後まで、息子を裏切る事が出来ませんでした。
地上での尊い記憶を失いたくないと悲痛に叫ぶ人造人間を、転移装置で無慈悲に送還しました。
この創作論内で何度か言及してきた通り、私には現実に息子が居ます。理由は、それに尽きます。
コールドスリープの時差によって肉体的年齢が逆転して、他人行儀なコミュニケーションしか取れなかった関係にしろ。
今現在、現実の息子がしでかすイタズラや我が儘には手を焼かされてばかりですが、このフォールアウトの親子関係では、それすらさせてやれなかった果ての再会です。
ここで自分が息子に敵対すれば、双方にとって残るものが本当に何も無くなってしまう。
家族にしろ友人にしろ「過ちを正してやるべきだ」と言う論法は無責任そのもので、よほどそれに確信が無ければ言える事ではありません。
まして、息子の指揮下で発展してきたインスティチュートは、最大公約数的に言えば間違いですらなかった。
その後、やはり、擁護組織を殲滅する任務が下り、これを殲滅しました。
直接のパーティメンバーとして行動を共に出来る、ディーコンと言う男は、自作の居住地に住まわせていたので、別個で始末しました。
そして、軍隊との総力戦も制して、地上は息子の望んだ通りに平定されました。
しかし、その息子も、実は主人公と再会する以前から末期の癌に冒されて余命少ない状態でした。
注射一本で被爆が治癒する世界でも癌は治せないあたりに皮肉を感じますが、息子の死を看取る事となります。
そして息子は、親である主人公を自らの後継者に指名した上で、息を引き取りました。
勢力の戦いに決着がついた後も旅は自由に続けられますが、大局が変わる事はありません。
未消化のクエストをこなしたり、居住地をクラフトしたり、気ままに世紀末ライフを過ごすのみです。
元々、このフォールアウトや、前身である中世ファンタジーのエルダースクロール(当創作論では、5作目のスカイリムをよく引き合いに出す)シリーズでは、プレイヤーが主人公になりきる“ロールプレイ”が推奨されています。
私が仮に研究機関の最高責任者となった場合、恐らくは地上との融和路線を進めると思います。
必要であれば、反対する内部勢力を粛正する事も含めて。
実際、仲間の一人である新聞記者は、主人公の選択を一度はなじりつつも、記事には「指導者が変わった事で、これからの関係性の変化に期待」と書いているので、メーカー側としてもプレイヤーがそう考える事は織り込み済みなのだろうと思います。
余談ですが、この作品を独身時代にクリアした友人(現在は妻子あり)は、前作(フォールアウト3)での思い入れもあり、軍隊(BOS)のルートを選んだそうです。
先述しましたが、私自身、一歩違えば擁護団体(レールロード)のルートを選んで地下居住区を爆破していました。
感情移入が肝となるオープンワールドRPGとしても、あのタイミングでの「息子の正体」投入は、かなりの妙手だと思います。
(※1)
三大勢力の中、私が最初に内心で切ったのはBOS(軍隊)でした。
最序盤に主人公を手厚く保護してくれ、入隊の意志があれば親身な上官となってくれた“パラディン・ダンス”(最高責任者の腹心でもある男)が実は人造人間であったと発覚した時、軍の為に尽くした彼を見殺しにしなければならない組織の構造を、どうしても許せなかったからです。
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