いい加減しつこいフォールアウト4の思い出 ~キャラ付けとロールプレイ~

 フォールアウトの話題ばかり続いてげんなりされるかも知れませんが、ネタが尽きるまでもう少しだと思われるので、ご了承下さい。

 

 フォールアウト4において、ある意味で賛否両論分かれる要素が、主人公の身の上がかなり詳細に決められている事です。

 と言うのも、これまでの過去シリーズや姉妹シリーズであるエルダースクロールシリーズは、本来、主人公の経歴や性格はプレイヤー自身が全て想像する“ロールプレイ”を前提とされていました。(※1)

 それがフォールアウト4では、

 

・主人公は夫婦のどちらかから選択。素性は退役軍人(夫)or弁護士(妻)で固定

・子供は1歳前後の男の子が一人。“ショーン”と言う名前まで決まっている

・戦前(オープニング)では高級住宅地に一軒家を持っており、お手伝いロボットを雇える程の富裕層だった

・用意された台詞をフルボイスで饒舌に喋る

 

 と、ほとんど固定キャラクターも同然です。

 依然としてテレビゲームのユーザーは若年層が多くを占めるであろうご時世、この子持ち設定は共感を得づらいのでは、と思います。

 私はたまたま、主人公と立場が近い時期にソフトと出会ったのでロールプレイの妨げにはなりませんでしたが、もっと早くに購入していた可能性もゼロではありません。

 ちなみに、かのドラクエ5も主人公の素性があらかじめ決まっている・物語の半ばで結婚して親になると言う点で、ある意味では似ているのですが。

 あれはむしろ、物語が幼年期からスタートしているので、当時のちびっこにも違和感なく受け入れられたのだろうと思います。また、大人になってから再プレイすると、色々と捉え方が変わって楽しいまであります。

 この事から、ロールプレイと言うのは必ずしも現実のプレイヤーと同じ立場である必要は無いが、少なくとも導入ではプレイヤーと同じ目線に立たせる必要はあるかと思います。

 未婚のプレイヤーからすると、ドラクエ5のように物語を進める過程で出会った相手と結婚し、我が子の誕生をリアルタイムで見る分には感情移入もしやすいのでしょうけど、フォールアウト4のように、既に完成された家庭をスタート時点からぽんと渡されると、入りにくそうだと感じました。

 事実、このシリーズは、ユーザーがゲームを改造するプログラム(Mod)を作成・配布する事が認められており「オープニングを飛ばす=主人公の経歴を無かった事にして開始するMod」が人気だそうです。

 余談ですが、先日、このゲームの二週目を始めました。

 前回はショーンに肩入れして地下研究機関インスティチュートルートでアメリカを統一しましたが、今回は自前の民兵組織ミニッツメンを率いてクリアする予定です。

 そうなると、最終的にはどうしてもショーンを殺す事になるのですが……ゲーム購入当初よりも現実の息子が育って自我がはっきりしていくにつれ、このショーンに対して「60歳にもなれば、いい加減一人前になって久しいだろうし、親が手心を加える事もないのでは?」と、考え方が変化した為です。

 

 ただ、前回の話題でオチに持ってきた、主人公の人造人間説を支持するとなると事情が変わってきます。

 つまり、先述の「一人息子を持つ退役軍人or弁護士」と言う記憶は造られたものであり、実際には物語開始時点に起動=生まれたと言う理屈です。

 これであれば、確かに独身のプレイヤーであっても、記憶は記憶でしかない、と割り切りやすくなります。

 また、軍属だった夫はともかく、妻の方はただの弁護士にしては最初から強すぎる事(ゲームバランスの事情もあるでしょうけど、生身の人間では太刀打ち出来ないとされる戦闘仕様の人造人間に勝った事など、実際にシナリオ面で戦闘力が評価される描写もあります)

 配偶者を殺されて日が浅く、さらわれた我が子を探している身で、居住地クラフトにうつつを抜かしたり、仲間と恋愛が出来るのが不謹慎であると言う不満もある程度は軽減されるかと思われます。

 また、せっかくポストアポカリプスヒャッハー世界で冒険をしているのに、戦前のエリート富裕層がコールドスリープから目覚めて即、野盗モヒカン化するのは、違和感を禁じえません。

 しかし、人造人間説であれば、植え付けられた記憶と生まれ持った性格は別ものとも考えられます。

 このメーカーによる人造人間説(とも取れる暗示)は発売後のダウンロードコンテンツで判明していたので、あるいは、発売当初の「主人公のキャラが固まりすぎててロールプレイがしにくい」と言う不満の声を拾った結果だったのかも知れません。

 実際、私の中での主人公は人造人間では無いのですが、先に述べた通りそれは現実での立場が近いからであり、もう少しソフトを買うのが早かったら、この人造人間説を取り入れて、戦前の記憶を否定したロールプレイを行っていたのかも知れません。

 

 こうした、テレビゲームのプレイヤーとロールプレイの関係と言うのも、一見して小説の創作論にはあまり関係なさそうな要素にも思えますが、作品の傾向次第では、主人公をあまり克明に描写しすぎない方が良い場合もあると考えます。

 描写とは、精密であればあるほど良いと思いがちではありますが、一方で想像の余地と反比例の関係にあります。

 私は、特に一人称視点だったり、追放ものなど読者に投影を期待するジャンルにおいては、容姿の描写を曖昧に留めておく事が多かったりします。

 逆に、大食いチャンピオンが主人公の話などは、そのコンセプトからして、共感・投影出来る人の方が少数派でしょう。

 この場合、私なら、食べる量相応の巨体なり、不相応なスリム体型だったりを詳細に描写します。

 描写をにしてもにしても、それぞれには必ず理由があるはずなのです。


(※1)

 姉妹シリーズのスカイリムでは、主人公は竜神の祝福を受けた存在であると言う設定こそあるものの、あくまでもドラゴンの力を取り込む特殊能力と、メインクエストの中心人物となり得る為のバックボーンでしかなく、それ以外の生まれ育ちは(エルフであろうとオークであろうと、はたまたリザードマンであろうと)プレイヤーの想像に委ねられています。

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