フォールアウト4の思い出 ~レトロフューチャー~
フォールアウトとは、元々アメリカで開発されたオープンワールドRPGです。
核戦争によって崩壊した未来……北斗の拳やマッドマックスのような世界観を想像して貰えれば大体合ってます。
そんなポストアポカリプスの世界で、一応、拐われた我が子を探すと言うメインシナリオは用意されつつも、基本的には自由に生きる事となります。
救世主となるもよし、ヒューマンガス様のように野盗となるもよし。
およそ荒廃世界での自由には付き物の
世紀末の荒波に揉まれた結果、頭をモヒカン刈りにし、素肌に革サスペンダーを装置しただけの姿で我が子と再会する事も大いにあり得ます。
もう一つ、この作品の特色として“レトロフューチャー”という要素があります。
最新型のテレビが依然ブラウン管で妙なアンテナのようなものが伸びていたり、チューブのようなトンネルに乗り物が走っていたり、腕に大きなコンピュータを装着していたり、エネルギーのチャージ率を表示するものがニキシー管だったり……。
言い換えれば、鉄腕アトムのようなものとも。
繰り返しますが、そんなレトロフューチャーの世界が核戦争によって荒廃してしまった未来です。
そんな中でブラックジョーク的な表現も多く、車の動力は原子力エンジンに統一されており、フィールドに転がっている廃車を迂闊に攻撃しようものなら、平気で核爆発を引き起こします。
そもそも、そんな世界で自生する野菜も戦前の缶詰めも、ほぼ例外無く汚染されているので、日々の食事が被爆とトレードオフです。
当然、プレイヤーが放射能に曝されれば被爆し“RAD値”などと言うとんでもないステータスが蓄積していき、HPの最大値が蝕まれていってやがて死に至ります。
でも大丈夫。
この世界では、病院で注射を打ってもらえば被爆が綺麗さっぱり治癒するのです。
戦前から企業倫理も崩壊しており、ヌカ・コーラ社なる清涼飲料水の会社では、青く発光するコーラを製造販売していました。
…………光の正体は、コーラに混ぜ込まれた放射性同位体によるものです。
また、この製品が世にでるまでには多くの
何とも、50年代の未来像をネタにした上で、グラフィックやオープンワールド構築、そしてシナリオの仕事は本気で行われており、喜劇と悲劇のちょうど狭間を表現した怪作だと思います。
当然ですが、プロアマ問わず、いち個人の作家が未来のテクノロジーを正確に予言する事など不可能です。
作者にどれだけ知識があっても、それは現在の技術を前提として派生させるものとならざるを得ません。
現実のテクノロジーもまた、歴史を通して連続しているものではありますし。
故に、1950年代の時点では2100年代のディスプレイをブラウン管だと想像せざるを得なかったのでしょうし、各種のデータ表示がニキシー管や、黒背景に文字のみと言うDOSから進歩していないのです。
故にレトロフューチャーと言うジャンルが生まれたのだろうと思います。
フォールアウトは、正しくレトロフューチャーを緻密に描写した作品だと思います。
真っ青なジャンプスーツや、つぎはぎだらけのロボット、プラスチックおもちゃのようなビームガンなどを、超真面目に描写している。
あくまでも“未来”ではなく“古風な未来”を書いているのです。
では逆に「オリジナルの未来」を書いた事例はどうか。
個人的に、最近(?)印象深かった、レトロではない未来テクノロジーの描写では“虐殺器官(著:伊藤計劃)”の、オルタナと言う技術があります。
この技術は副現実とも表されており、平たく言うと、コンタクトレンズ状に点眼されたウェアラブル・コンピュータです。
これによって、端末の実体を伴わない情報処理が可能となり、広告やネットワークのやり取りが場所を取らずに可能となります。
作中では、暗殺部隊の隊員の視点で語られている事もあり、軍事利用されているのが、またらしいと思います。
これもまた、現在のテクノロジーからきちんと考察された、近い未来にあり得なくもない技術だと思っております。
個人的な影響としては、邪聖剣チェーンソーにおける、テンプレもの的ステータスウインドウの解釈や、自費出版し損ねたエタ作品含めたバトル作品での情報支援隊・バックアップオペレータの描写に生きています。
尤も、前者は途中からウインドウやスキルがあまり描写されなくなっていましたが……。
虐殺器官とフォールアウトでは、同じ未来SFのように思えてコンセプトが真逆のものです。
そして、扱っているジャンルに対して自覚的な事が重要である点が共通しています。
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