ネットゲーム体験談 TPS(対人戦特化)のゲームにおける個人戦績と自軍貢献度とのギャップ(戦術? 戦略?)

 今回はTPS(※1)と言うジャンルの、ややアクション性の高い対戦ゲームについてです。

 シューティングと言っても剣や魔法で戦うハイファンタジーの世界観なのですが、あらかじめ用意された戦場(両軍50人ずつ収容可)で赤組・白組に別れて戦争を行います。

 ……これまた、ゲームのタイトルに見当をつけられそうですが、明言は避けさせて頂きます。ご了承を。

 

 さて、今回のゲームは、そもそも対人戦しか無いに等しいコンテンツです。

 つまり前回ご紹介したような、対人ガチ勢とそうで無い人との軋轢は生じようがありません。

 また、レベルや装備の格差はほとんど生じないように出来ています。

 レベルは意識して稼がずとも、誰でも自ずとカンストに達しますし、装備の性能にも差がありません。見た目だけで選んでほぼ問題ありません。

 差があるとすれば、職業クラスごとの防御力くらいですが、これは前衛後衛の役割分担を促す上で当たり前のゲームバランスでしょう。(※2)

 レアアイテムは、アバターの見た目を飾る以上の意味は無く、戦力的な価値に直結しません。

 故にゲーム内資産のやり取りで揉める事もまずありません。

 それどころか、自軍の後進を強化する為に、お金やアイテムを余分に持っている人が新人に積極的に配布する事も珍しくはありませんでした。

 あくまでも全ユーザーはイーブンの状態で、純粋なプレイ技術だけの勝負となります。

 

 前回までご紹介してきたRPGでは、良くも悪くも個人主義の世界でしたが、今回のTPSとはチーム単位で戦争の勝利を共有する、全体主義の世界になります。

 手際が悪ければ、RPGの時には一応憚られていたような罵声が飛ぶことも、ここでは珍しくありません。

 それでも、全員が納得の上で参加しているので、そこまで大きな問題にはなりません。

 

 しかし、だからと言ってトラブルの種が皆無だったかと言うと、残念ながらそうではありません。

 典型的なJRPG的ハイファンタジーの世界観もあり、前回まで紹介してきた個人主義のRPGから移住してきた層が多かったように見受けられます。

 しかし、かといってお金や経験値の頭打ちが早く、どれだけ時間をかけても、ユーザー間のキャラ性能は横並びにしかなり得ないルールです。

 そんな中で、他人との差が可視化され、承認欲求を満たす要素とは何か?

 敵の撃墜数や総ダメージ数と言った、毎戦表示される個人戦績です。

 こうしたJRPG的な舞台での華と言えば、やはり最前線での戦闘かと思われます。

 そんな中、活躍度を競う流れになるのは自然な事であり、実際に撃墜数の多い人は自軍に貢献していると言うのも間違いありません。

 

 ただ、例えばお互いにベストコンディションで戦い、死闘の末に倒したとしても撃墜数は1です。

 一方で、既に瀕死の敵にたまたま流れ矢で止めを刺したとしても、撃墜数は1、前者と等価の点数となります。

 これが、“活躍”と言う無形の事柄を数値化する限界とも言えますが、この事実によって何が起こるのか。

 お馴染みの“点取りゲーム”です。

 例えば、敵が複数人居たとします。

 勿論、瀕死の敵から仕留めて、数を減らすと言うのは定石ではあります。

 しかし、それはあらゆる状況における最適解ではなく、時には瀕死の敵を後回しに、元気な敵を削らなければならない場合もありましょう。

 それが、チーム全体を勝利に近付ける為の“戦略”と言うものです。

 しかし、個人戦績と言う“戦術”に拘泥している人は、それでも瀕死の敵を仕留める事を優先してしまいます。

 結果、他の敵を弱らせれば撤退を強いれた筈が、死に体の敵を優先したばかりに、自分が他の敵に包囲されてしまうような事態を招きます。

 つまり、戦術的な勝利と引き換えに、戦略的に負けてしまうわけです。

 敵将の首を討ち取ろうと功を焦り、深追いした結果、返り討ちに遭う……と言うのも歴史物や戦記ものの定番メニューではないでしょうか。

 また、撃墜数や与ダメージポイントの戦績欲しさに誰も補給役や破壊工作に参加しなければ、チームの機能そのものが成り立たず、たちまち負けてしまいます。

 ケースバイケースではありますが、大抵、負け戦になると個人戦績どころでは無くなってしまいます。

 

 また、自分の戦績さえ良ければ、と言う考えに取り憑かれると、自分の使う必殺技や魔法の性質を弁える事も忘れてしまいます。

 わかりやすいのが、魔法(技)に吹き飛ばしや押し出しノックバックなど、移動を強いる付帯効果があるケースです。

 これらは敵の陣形を乱したり、足留めをしたり、段差から落として分断したり、有用な効果を持っています。

 しかし。

 仮に、このような「吹き飛ばす技」のダメージ効率が非常に良いものだったとします。

 もしも味方が、もっと高威力だったり有効な付帯効果の大技をロックオンしていて、その敵を、このような技で吹き飛ばしたら、どうなるか? 助け出してしまう事になるのは、言うまでもありません。

 現実の戦闘や、他のRPGですら、こんな馬鹿げた事は起こり得ません。

 しかし、可視化された評価が与ダメージや撃墜数にのみ集約された世界においては、充分に起こり得る不条理なのです。

 

 はっきり言って、私はこのゲーム、非常に苦手でした。

 どれだけプレイしても戦績はいまいちでした。

 上位のプレイヤーが20,000点だとか30,000点を出している中で自分のそれが4,000点だったりすると、

 学生時代に作ったWebサイトのアクセス数が、何をしても伸びなかった時の、あの気持ちとダブって感じられたものです。

 

(※1)

 サード・パーソン・シューティングゲームの略。

 プレイヤーキャラの背中を追い掛けるような視点のアクションゲームです。

 これに対し、プレイヤーキャラの完全な一人称視点でプレイするのがFPS(ファースト・パーソン・シューティング)と言います。

 

(※2)

 ただし、育成と装備を揃える必要性が皆無と言うわけではありません。

 下位の装備に関しては、厳密には、最高性能にするのに強化を要します。(レアアイテムは大抵、強化が要りません)

 逆に言えば、カンスト(付近の)レベル・最強装備を揃える事で、はじめて一人前となり、最前線に出る事が(暗黙のうちですが)認められるとも言えます。

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