無欲は正義? 補足・本心を偽るべからず
そんなわけで、前回の予告どおり、ネットゲームにおいて、経験値や物欲のスタンスを誤魔化した場合、何が起こるのか、実体験を交えて考えてみます。
結論を言えば、前回の冒頭で既に出ています。
どちらが善いかと言うよりは、結婚と同じようにマッチ・ミスマッチの問題になります。
例えば、恋愛の前後で相手に良い顔をして、交際や結婚後にメッキが剥がれる……というのは当たり前にある事ですが、この齟齬が大きすぎるとお互い不幸に……最悪の場合、関係の破綻に繋がります。
つまり、小説の評価に対するスタンス(ゲームでの欲望)を偽った場合、自らミスマッチな人間関係を呼び寄せているようなものです。
これは利用された方のみならず、他人をあてにしていた方にとっても為にならない事です。
ここ数回の「無欲は正義?」シリーズ(?)の最初に、私は共産主義まがいのコミュニティを抜けたあと、欲の比率が近い仲間に恵まれて穏やかにゲーム内余生を過ごした……と話しましたが。
実の所、そこでのリーダーを除いてと言う事を話していませんでした。(※1)
実際に何があったのかと言うと。
そこのコミュニティは当初、私のスタンスとマッチしていました。
しかしある時期から、リーダーが対人戦(プレイヤー同士の戦争)重視のスタンスに舵を切りはじめました。
さて、ネットゲームにおいて対プレイヤー戦というものは、モンスターと言う対CPU戦よりもさらに、勝敗の責任が重くなる性質にあります。
性質としては、以前喩えに出した草野球やフットサルのアマチュアチームに近いかも知れません。
趣味は趣味でも、勝ち負けに対しては仕事同然の責任が要求される。
加入当初、私がストレス無く馴染めたと言う事は、そのコミュニティにおける、上昇志向:エンジョイ志向の比率は私のそれと近かった……つまり、ややエンジョイ寄りだった筈なのです。
勿論、その場所を構成する一人一人の比率も似たり寄ったりだったのでしょう。
さて。
そこへ来ての、対人戦への路線変更。
コミュニティの破綻理由としてはよくあるものです。
この時点で、リーダーとしては「エンジョイ勢である仲間達にガチ勢になる事を強要せねばならない」無理・矛盾を背負う事になります。
そして大抵の場合において、この無理はメンバーの方に転嫁されるものです。
そればかりが原因ではありませんが、このリーダーは「支え合い」だとかフワッとしたものを提唱しながら、対人戦への適合を強いて、挙げ句、脱退者が出れば「メンバーとは流動的なもの。やむを得ない」とまで言い放つ始末でした。
当時から私は、このリーダーに、脱退者に対するフォローやリカバリーか、でなければスタンスを明確にして欲しい事は訴えていました。
しかし、極めつけにこのリーダーは、対人戦ではかなり重宝されるスキルが欲しいと言い出しました。
それが個人がレベルアップする事によって修得できるスキルであれば、今までどおり、普通に個々のレベル上げついでにモンスター戦をこなせば良かったのですが、このスキルは組織単位での修得……つまり、メンバーが本来得る筈だった経験値を献上しなければ手に入らないものでした。(※2)
個人の稼ぎと、会社全体の売上との桁が違うようなもので、要求される経験値は莫大なものになります。
当然、ガチ勢になるのかどうかの方向性を曖昧にしたままこんな事を強行すれば、更に脱退者が出るのは火を見るより明らかです。
私個人としても、そこに居続けるべきかどうかの判断を下す時期に達していました。
さて、そこで私は、敢えてスキル修得に積極的に協力しました。
それも、メンバーの中で最も数字を出す事を目指しました。
その為には、魔法触媒(当然、1個あたりがそれなりの値段)を大量に消費する事になります。
通常、こうした場合、消費した魔法触媒や矢と言った“弾丸”の経費はきちんと支払われるのがセオリーです。(※絶対的なルールでも無かった事を念頭に入れておいて下さい)
報酬は求めていません。
経費が当たり前に支払われる事を、私は求めました。
……およそ想像はついた事でしょう。
経費の支払いは見事に踏み倒されました。
当然です。スキル修得に関する予算を組んでいる気配も無かったし、私は正直、経費は踏み倒される前提として行動していました。
また「わかった、払おう」と言う一言が聞けた時点でそれを辞退するつもりでもありました。
リーダーを試したわけでもありませんが、自分が最も結果を出す事により、問題提起の為の発言権を得ようとしたのです。
しかし、ここから先は泥沼を極めました。
私としては、引き下がる事が出来ません。
それは意地だとかで引き下がりたくないのではなく、引き下がる事が不可能であると言う状況でした。
これを容認する事は、私や仲間が今後も搾取される事を容認する事でもあります。
私がこのリーダーだとするなら、取るべき行動は二択になると思います。
素直に支払うか、私を追放するか、です。
後者は一見して酷薄な対応に思えますが、反対者を排除する事による求心力の低下と言う代償はきちんと支払う事になります。
エンジョイ勢を偽る必要もなくなれば、リーダーも離反者達も、お互いに気持ち良く再スタートを切れた筈です。
一方、素直に支払う事も難しくは無かった筈です。
安くない額だったとは言え、所詮は魔法触媒と言う市販の消えものですし、商売下手な私程度が捻出出来るレベルの金額でした。
方々で繰り返し言ってきましたが、このリーダーのような人は長期スパンでの損得勘定が出来ません。
例えば、散々お世話になった相手が、その場の有力者にいじめられていた場合、平気で掌を返して、掛けなくて良い追撃を掛ける人が居ます。
これは「有力者との一体感を感じたい」と言う目先の小さな欲望しか見えず「お世話になった相手が二度と助けてくれないかも知れない」事を認識できない特質から来ています。
いかに少額でも惜しかったのか、はたまた、支払った事実を作りたくない意地だったのか。
リーダーの本心はついぞわかりませんでしたが、いずれにせよ、誰にとっても最悪の選択をしてしまった事に変わりありません。
最後まで「支え合える場所にしたいんだ!」と言う主張を曲げる事は無く、一部の取り巻きが「仲間って、お金とかじゃないよ!」とまぜっかえす事で議論が余計に崩壊。
私からすれば、仲間だからこそお金の事にはしっかりしないといけないと思うのですが、こうなった状況下では、もはや何を言っても“音声”あるいは“文字列”としてしか認識されません。
結局、私を含めて離反が加速、せっかく修得したスキルはほとんど陽の目を見る事もなく終わりました。
一件目のコミュニティが共産主義化したのは、そこのリーダーの我欲による悪質なコントロールのせいでもありました。
思えば、先に述べた“観光”にかこつけたレベリングで私がヒーラーの仕事を放棄した真意はちゃんと伝わっていたのかも知れません。
しかし、他ならぬ彼らの作った風潮によって、私に対して「手を抜いている」と指摘出来なかったのかも知れません。
私の回復魔法を計算に入れたパーティで何も言わずに役割を放棄した事は、理由はどうあれ謀殺と同じでしょう。
そう考えると二件目のリーダーはまだ、必死だっただけなのかも知れませんが、ご覧の通り、この二者は悪意があるか無いかの違いだけであって、もたらしている結果は同類です。
作品を読んでくださった方には良くわかると思うのですが、マジクックにおける追放リーダーの人物造形については、この二人の言動の影響がかなり強く反映されています。
昨今の追放ものを見ていて「実際の追放リーダーって、こんな証拠の残るやり方はしないだろう」と言う疑問から端を発した作品でもあります。
恐らく、かつてTwitterで私が不快に感じたケースもこれに通じるものがあります。
エンジョイ勢の仮面をつけて、PV・評価のために他人を利用する。それぞれの利益を総取りしようという魂胆が隠れていない姿が不快だったのでしょう。
(私は他人事には、とても執着が薄いのですが、自分の作品がその為のダシに使われては流石にこの限りではありません)
人は本懐の目的の為に動かねばならない以上、その本懐を隠そうとしてもまず無理が出るものです。
(※1)
私が敢えて事実を伏せる理由はいつも似たようなものなのですが、文量がかさむ&その時点での本題から著しく横道に逸れるので後回しにした、と言った所です。
(※2)
ここまで言うと、そろそろプレイしていたゲームのタイトルに気付く方も居られるかも知れません。
強いて隠す理由もないのですが、はっきり明言もしたくないので、コメント等でのゲームタイトルの開示を求められてもお答えしかねますので、悪しからず。
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