(ハーレム・逆ハーレム)君たち皆を平等に扱うなんて無理だ

※今回の話には、私の作品“死に乙女ゲーム”(序章部分)及び、ファイナルファンタジー7(1997年発売のほう)の内容に触れる記述がございます。

 ご注意ください。

 

 

 

 これまで、何度か手を出そうとして断念して来た(逆)ハーレムでしたが、

 今回、乙女ゲームと言うモチーフから否が応にも書く必要が出てきました。

 結論から言えば、やはり、主人公一人に対して複数の異性と言う構図を小説でやるのはかなり厳しいと言う事でした。

 この辺りは以前もどこかで考察しましたが、分岐ややり直しのきく“ゲーム”と言う媒体だから出来る手法なのだと思います。

 さもなくば、これもいつぞや取り上げた“ポリアモリー(多対多の恋愛)”を、真剣に考証・考察して書くか、です。


 ……そう言ってしまうと話が終わってしまうので、今回、私なりに感じた事を。

 今回、逆ハーレム(?)にエントリーされたのは計6人。

 主人公が当初目当てにしていた暗黒騎士、

 クールな天才暗黒司祭、

 ラテン系イケメンの巨人族、

 戦闘力最強の美少年、

 主人公をサポートする専属の執事(ダークソウルで言う所の火防女ひもりめ)、

 闇の勢力の総大将にして不死者の王。

 この中で、見せ場を作りやすかったのは、

 騎士、執事、不死王でした。

 騎士については、主人公が(ゲームの恋愛対象として)攻略を狙っていた所から話が始まる、メインヒーローです。

 執事は、某“宿命fate”のビジュアルノベルに出てくる某神父ではありませんが「一目見て黒幕だとバレバレな奴」と言うコンセプトで作ったので、終始、意識せざるを得ない存在でした。

 不死者の王は、その肩書きの通り、闇の勢力側の動向を握っており、物語のプロット的にも作中世界的にも、自ずと比重が大きくなる人物でした。

 一方で活躍させづらかったのが、

 司祭、巨人、美少年(最強の)でした。

 どちらかと言えば、外見上のインパクトは後者三人の方が強いはずです。

 クール天才司祭(温和、かつ、コミュ力に難あり)と、イケメン巨人に、お姫様のような男の娘(一人だけレベルが一桁違う戦闘力)ですから。

 むしろ、執事はともかくとして、騎士と不死王はデザイン的には無難で、裏を返せば「面白味に欠けやすい」はずのキャラクター性です。

 この事から「人物が空気にならない為に大切なのは、個性よりも、役割や立ち位置にあるのでは」と感じました。

 騎士も不死王も、特に後半から(物理的に)主人公の近くに居て、それぞれにお互いを変える・お互いが変わる重要な役割を担っています。

 一方で司祭、巨人、美少年は本拠地から前線に出ずっぱりの状況が多く、彼ら単体としてのエピソードは積み重ねられたものの「主人公との」それは、騎士と不死王に比べて大きく見劣りしている感があります。

 特に美少年に至っては最も扱いに難儀しました。

 執筆のスピードが最も落ちたのも、彼が活躍する二ヶ所でした。

 前述の不利さに加え、彼には、生まれつき喋れないと言う制約までありました。

 台詞を一切使えず、行動や身振りだけで全てを描写せねばなりませんでした。

 後半、活躍の比重が騎士や不死王に傾く中、ほか三人が彼女に与えた影響については、より意識して描こうとはしました。

 これも明確に描写すれば良かったのかも知れませんが、主人公が心を開き、異世界に順応出来たきっかけは、巨人のお陰でした。

 それが、クライマックスの彼女の行動、戦いへの覚悟における支柱になっています。

 それでさえも、作中の露出の少なさから、存在感が失速してしまいました。

 あるいは、巨人からもらったそれらが、主人公の血肉として一体化しすぎたのかも? とも。

 ハーレムや逆ハーレムと言うのは「誰の為の(あるいは誰が中心の)物語なのか」と言う事なのかも知れません。

 

 

 しかしながら。

 直接現れず(主人公と絡まず)して存在感を維持し続ける方法はあると思います。

 ひとつは、前述の執事のパターン。

 黒幕であることを隠しもしないと言う、作中オンリーワンの立ち位置……裏を返せば「他の攻略対象から大きく逸脱した」ポジションに居ます。

 もう一つ。

 これはこれで語弊がありますが、途中で死ぬと言うパターンです。

 一応、リメイクしか触った事のない世代が主流になりつつあるのかな? と思うので、ファイナルファンタジー7における、あの超有名なネタバレをここまで伏せて来ましたが。

 

 

 本編では中盤ほどで命を落とすヒロインの一人・エアリス。

 その存在感は、良くも悪くも“不変”のものとなり、実際、プレイヤーが操作できなくなって久しい本編後半、および、後続の派生作品でも最も大局的な影響と印象を残した人物だと思います。

 不変とは、それ以上進まなくなるのと引き換えに、遺されたものをしっかり描写すれば「忘れ去られる事も無くなる」事ではないでしょうか。

 ただ、執事のようなパターンにせよエアリスのようなパターンにせよ、そのポジションに収まれる人数は一人ずつが限度かとは思います。

 当然、そう何人も似たようなのが居たら、一人一人がボヤけます。

 また、執事のパターンはやり方次第で解り合えるにしても、エアリスのパターンでは“(逆)ハーレムの構成員”と言う主人公(それを投影する読者)の欲望から脱線してしまう事も意味します。

 

 やはり、小説と言う、基本的に分岐のない一方通行の媒体では、完全なポリアモリーでも描かない限り、ハーレム全体を満遍なく活躍させるのは難しいと感じました。

 少なくとも、各々の人物像を単体としていくら強化しても、空気キャラの居ないハーレム・逆ハーレムと言うのは叶わないようです。

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