サブタイトル(エピソードタイトル)と言う名の描写

「第3話 黒幕はマイケルだった!」

「case06 ロサンゼルスに住まう天狗」

 と言った、話ごとの表題ですね。

 割と最近まで、このサブタイトルについてはそこまで重く考えていなかったのですが、家で言う所の「ドアのデザイン」くらい大事かも知れない、と今さら感じ始めた次第です。

 サブタイトルの役割とは、話の識別は勿論の事ですが、私の場合は大別して、

 

 ・内容を端的に説明する

 ・中身が気になるよう牽引する

 

 この二通りの用途に用いています。

 また、それらを逆手に取って、時にはミスリードに使う事もあるかも知れません。

(※飽くまでミスリードであり、“嘘”はまずいと思われます。ドアと室内のデザインに整合性がないと、次から信用されなくなります)

 

 私の場合、まず「誰がそのサブタイトルを書いた(言った)のか」と言う事をイメージします。

 神様なのか、主役などの作中人物なのか、公的な文書と言う体裁なのか。

 それによってまず「第○○話」と言う書式になるのか「case○○」と言う書式になるのかが何となく決まります。

 私見ですが、語り手の“人間味”がどの程度強いかによって、暖かみがある書式か無機質な書式かが決まると思います。

 例えば主人公の情感が豊かな邪聖剣チェーンソーでは、「第○○話」の形式を採用しています。

「第14話 殺せ、殺せ、コロッセォ」

「第19話 チェーンソーの騎兵だ! アッハァ!」

 など。

 一方、見た目の上では熱き正義のヒーローであるサイコブラック。しかし、その本質は悪を倒す為に手段に頓着しない、マシーンのような冷血漢です。

 それを表現するために、

「第004話 静かなる怪人」

「第006話 決戦! 三河」

 と言った形式を採用しました。

 これは一見して、特撮番組のそれを模倣したものであり、

 また、私が「人間味のある」とした第○○話と言う書式なのですが、ナンバリングのしかたが機械的です。

 コンピュータのシステムや文書の題名というのは、通常、最終的な桁数にあわせて頭に0を置きます。

 何故なら、そうしないとファイル名順にソートしたい時に、file1とfile10が混ざってしまうからです。

 file1

 file10

 file11

 file2

 file3

 ……となってしまうわけですね。

 頭の0とは、これを防ぐためにあります。

 file01

 file02

(省略)

 file08

 file09

 file10

 file11

 横道に逸れましたが。

 そんなわけで、サイコブラックの、熱きヒーローの仮面と機械的な冷淡さをサブタイトルに込めたのです。

 直近の作品、死に乙女ゲーでは、前半に「第○○話」形式を採用し、事態が一変する後半からは「記録○○」と言う形式に変化させています。

 これには、主人公の、状況への真剣味も表現しています。

 一見して人間臭い前半のタイトルは、

「第23話 死のプレゼントで死をプレゼント」

「第32話 お花畑でフランケンシュタイナー」

 などという、遊び半分の傾向にありますが、

 後半には、

「記録07 ソル・デとの質疑応答」

「記録13 初交戦の一部始終」

 と言った、事務的なものに変わっています。

 しかしむしろ、主人公に人間味があるのは、サブタイトルが無機質な、後半の方だったりします。

 これは、主人公の「状況に対する当事者意識の有無」をサブタイトルに表した結果でした。

 また、

「記録18 名称未設定」

 と言った、サブタイトルを未入力としたエピソードが何話かあります。

 これは、主人公に記録のファイル名を考える余裕や気力がない事を表しており、つまりそれだけ主人公にとって悲惨な事が起こるエピソードであることを匂わせています。

 今回は通算4回、この名称未設定のエピソードがありますが、サブタイトルと言う“扉”を見た時点で、部屋の中はどんな惨状なのか、何となく不安を煽れているのではないかなと思います。


 サブタイトルの牽引力が、PVに顕著に出たこともあります。

 マジクックでは、主人公視点は「第○○話」方式なのですが、彼を追放したパーティ“Don't mind”の視点では「Don't mind01」のような表記が急に差し挟まれます。

 それまで規則正しく「第○○話」と続いていたサブタイトルの並びに、突然これが割り込んでくる視覚的なインパクトはそれなりにあるのだと思います。

 また、主人公のキャラ的・文章的に無難で真面目な本編に対し、追放パーティのそれはある種の狂気が前面に押し出されているので、ある意味での“面白さ”は追放パーティ側のシーンの方が強力だったのかも知れません。

 邪聖剣チェーンソーは、全体的に主人公が常に狂気フルスロットルなので、裏を返せば起伏に乏しく、エピソード間のPVの勢い差が無かったように思われます。

 死に乙女ゲームに関しては、若干の揺らぎがありました。

 と言うのも、この作品はフロム・ソフトウェア社の“ソウルシリーズ”を元ネタとしており、随所にそのリスペクトが散りばめられてあります。

 中でも「蒼き月光の剣」と言うエピソードが、やや人気の傾向にあるようです。

 これは、ソウルシリーズやアーマード・コアシリーズ……フロム・ソフトウェア社のゲームでは毎回と言って良いほど登場する「月光の名を冠した剣」が元ネタになっています。

 恐らくは、月光の剣が、この作品ではどう言った扱いなのか、本編はともかく月光剣だけ気になるファンの方の目に留まったのかな? と推測しています。

 その他、後半の記録33(重大なネタバレになるのでタイトル名は伏せますが、ある人物が極端な行動に出る事を思い切り示唆したものです)のPVがやや伸びているのは、そのエピソードで重大な位置にある人物を気に入って下さった方にリピートしていただけたのかな? と邪推しています。

 と言うのも、邪聖剣チェーンソーでも「ブレイブ・ジャスティスの記録○○」と言うパターンがあるのですが、こちらはさほど、他の話と差が無かったのです。

 

 内容をある程度推測して貰いつつ、同時に「一体どういう意味なんだ!?」と気になって貰えるサブタイトルがコンスタントに付けられたら理想的だなと感じる今日この頃です。

 サブタイトルもまた、描写の一つであります。

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