主人公に安易なノーベル賞を取らせない
今回の話はテレビゲームのテイルズオブベルセリアの内容に触れます。ご注意下さい。
と警告を乗せて早々に言及しますが、同作品は、主人公の弟が12歳まで生きられない難病を患っており、それが本編の悲劇の遠因でもあるのですが、
同じ病気にかかった少年を、アイテム集めて治療するサブイベントがあるのです。
同作品については、システムも物語も概ね満足でしたが、この一点についてだけは受け入れられませんでした。
弟は何のために苦しみ、悩んで来たのか。
アイテムを集めてどうにかなる病気なら、弟も助かったのでは無いか。そもそも、誰かが既に治療法を確立しているのでは無いか。
そう思わずにはいられませんでした。
この手の展開に関して、私は「主人公が安易にノーベル賞を取る」と個人的に呼んでいます。
作中で起こった問題に対応した結果、前人未到の成果を挙げてしまう展開は結構見受けられるように思えます。
実際のノーベル賞を授賞した方々とて、専門性のある組織の後ろ楯がなければその行動に出られなかった筈です。
先日執筆した追放ものにおいて、私は要所要所で「前例が無いわけではない」と言う一文を強調しています。
主人公が専門性のある問題に直面する度、世の中で既に判明している事柄を組み合わせて解決を目指しています。
例えば主人公が、仲間の生まれついての病気を治そうと行動する場面があるのですが……解決の糸口が掴めて速攻、実際の処置はお医者さんに丸投げしています。
これは主人公が救ったと言えるのか? と言う意見もありそうですが、仲間を救う事が目的なのであって主人公が恩を売るのが目的ではないと考えます。
その為に、主人公は手段を選びませんでした。
結果、自分が掴んだ情報を、自分よりもその分野が“出来る”人間に渡して、最も効率よく解決に導いたのです。
ただ、本編の根幹に関わる重大な問題を解決する為ならば、この限りでは無いと思います。
実際に同作においては、主役が最後の最後に「世に出れば大騒ぎになる」成果を出しています。
ノーベル賞を取る、と言うのも、物語にするに足る一つのドラマでもあるのです。
また、大国の軍属と言う立場もあって、主人公は数々の成果を出せました。
大きな事をするには、組織や国家と言う大きな流れに乗らなければ不可能と考えます。
今回の話題とは真逆な事を言うようですが、
例えば、命懸けの戦闘を数多く経た人間が、建設現場だとか食堂の厨房で役立たずになる……と言う事もそうそう無い筈です。
実際に従軍していた人、全てが厨房に適応出来るとは限りませんが、仮に仕事がそれしか無くなった場合は必死で覚えようとする筈です。
秒刻みで判断を求められるのは、厨房も戦場も同じ。
異業種とは言え、一度身体に染み付いた経験と言うのは、ちゃんと役に立つものです。
だから私は、この点も今回の追放もので否定しました。
指導の厳しい女の子にビシバシやられて、半ばそれを喜びながら、悪戦苦闘する。
そんな人間が、それまでドラゴンやら何やらに立ち向かう仕事をしていたなんて、不自然です。
あるいは、指導の厳しい女の子が一生懸命やっている仕事を相当に舐めているか、です。
だから同作においての主人公は、1日叩かれまくってそれを吸収し、2日目に細かい覚え漏らしや齟齬を片っ端から潰し、3日目には完全に「その職場用」に心身を作り替えました。
当然、こんな超人的な事が出来るのも、直前まで魔物戦と言う「そうでもしないと生き残れなかった」業界に身を置いていた為です。
一人の人間に出来る事と言うのは限界があります。
まして、世界の何かを変えてしまうと言うのは、尚更。
それをしてしまう主人公、と言うのも勿論否定しません。
ただ、最低限度の整合性は大事でしょう。
この辺の事は、無意識のうちにやってしまいがちでもあります。
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