最終目標がショボい ~追放ものを自分で書き終えて~

 主人公の能力を見誤って一方的に排斥した小者。

 前提としてのこのレッテルが、結構足を引っ張ります。

 最終的な目標(敵)は強大である程、打ち倒した時のカタルシスが比例します。

 追放側と初期主人公に圧倒的な実力差をつけるにしても、幼い精神性の者が実戦で猛威を振るうと言う光景は、なかなかアンバランスです。

 そう言う意味では、借り物の力めいたスキルを手早く付加したくなるのも道理かも知れませんが。

 いずれも、それならそれで深い考察が要るでしょう。

 追放パーティ打倒が最終目標で無くとも良いのかも知れませんが、個人的には、別のラスボスが出てきたりしたら「何のための追放ものだったんだ」と思います。

 私が耳にした変わり種では、最終的に和解すると言うものもありました。

 取り敢えず、私の場合はどうしたかをまた連ねてみます。

 

●そもそも主人公が速攻で忘れ去る

 私は、物語において「主人公の株」も大事だと考えます。

 つまり「過去をウダウダ根に持って先に進もうとしない」陰険な人間は、好かれないと考えます。

 この時点で「リベンジを果たすカタルシス」を求める追放ものとは相性が悪いと思いますが……。

 とにかく今回の作品において、私は主人公に元パーティの事を早々に忘れさせました。

 無意識のうちに人間不信気味になり、それがうっかり行動に出てしまう、と言うのも序盤のうちに克服させました。

 また、新天地で新たな地盤を築く……つまり、躍進を描くにあたって、そうした陰湿な恨み言は邪魔ですらあると思います。

 

●主人公以外を弱いものイジメ

 そうは言っても、追放パーティが「作品そのものから」消えてしまっては、もはやジャンル自体が破綻します。

 主人公の視点と読者の視点は、やはり別物である事を意識しました。

 そんなわけで、追放側視点をちょくちょく入れて、格下の敵をいびったり他人に迷惑をかけ続ける光景を描写しました。

 そして、少しずつ主人公の居る場所へ近づいて行き、クライマックスに再会を予感させるようにしました。

 とにかく、読者のヘイトを維持する必要があります。


●作中で最も強い敵を、中盤に出した

 主人公の新天地の戦力をほぼ総動員した、最も大規模な戦いを中盤に起きました。

 ここは、敵も味方もやり過ぎなくらい、派手に書きました。

 後半からはジャンルと言うかコンセプトを切り替えるつもりで、人間ドラマの描写に比重を高めました。

 そしてやはり、「最後の敵は目の前のそれではなく、状況そのものや自分の内面にある」としました。

 最終決戦に至っては、もはや瞬殺レベルです。

 

●追放側が戦力として強大である必要はない

 戦闘描写のピークを中盤に置き、それよりもスケールダウンした(尚且つ、その時点の主人公には危険極まりない)敵をクッションにして、最終的に追放パーティと言う「弱っちい敵」に着地させました。

 しかし、追放側のヘイトを最高潮にするには、主人公に対して大きな被害を与えねばなりません。

 ここまでしても、強くなりすぎた主役側に損害を与えるのには頭を悩ませました。

「こんな今更な、弱い敵にどうやって主役を負けさせれば良いんだ……」

 とても珍しい事に悩んだと思います。

 

 さて、人が害を受けて一番頭に来るのは「器が小さかったり愚昧だったりする人間にそれをされる」事だと考えます。

 例えば、通り魔が「誰でも良かった」と供述するようなケースです。

 世界征服の戦争で殺されるのであれば、まだ、それよりはマシです。

「わざわざしなくていい、無意味の為に」自分の大切なものを害される。その不平等。

 また、弱い敵に対する、一種の嗜虐心も働くと思います。

 下等なオメガ個体ごときが、分を弁えろ、と言った所でしょうか。

 また、名探偵コナンの有名な話「ハンガーをぶつけられたのよ!」等も、動機のくだらなさから犯人の身勝手が強調されていると思います。(ハンガーに関しては、直接の動機ではなく言葉のあやな所もありますが)

 

 これらを踏まえて、敵の弱さを逆利用しました。

 下らない動機に対する甚大な被害・敵が“弱い”からこそ起きた悲劇。

 圧倒的な力で傷つけられる以外にも、憎しみを招く方法はあるものだと思いました。

 ただ、これはあくまで一例です。

 このやり方の劇薬たる所は「主人公が弱いものイジメ」に手を染め、場合によっては人殺しになる事ですから。

 

 

 追放ものもまた、難しい構造をしています。

 追放側も若者であれば幾らか成長するのでしょうけど、順当に考えると、躍進した主人公が圧倒してしまう。

 追放側をどう扱うか、はかなり慎重に行わなければいけませんでした。

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