テンプレもの考察 楽に書こう

 創作論の更新が滞りがちになっている事からも分かるように、現在連載中の追放ものが結構軌道に乗っています。

 ストックは3話程度なので、それほど余裕もありませんが。

 展開的にも登り坂に差し掛かって来たので、こちらの創作論が再び活発になってきたら、バテたと思って頂ければ。

 ただ、恐らく完結は出来るでしょう。

 

 勝手のわからないジャンルと定番と意外性のバランス取りの難しさで四苦八苦していましたが、これによって逆に「楽に書く」事の重要性を学んだ気がします。

 あちこちで散見される「手っ取り早くざまぁしたい」と言うのは、言い換えれば「楽に読みたい」と言う事ではないか。それは逆説的に「楽に書く」と言う事でもないのか。

 以前、自著の“めざめ”がエタった(最終的に打ち切りエンドにした)背景には、書きたいシーンに辿り着くまでの“過程”の部分で詰まった事が要因の一つでした。

 常に全力投球、が果たして読者の事を考えたスタンスなのか。

 特に、今回挑んでいるジャンルでは、それを自問自答させられています。

 

 前置きは長くなりましたが、何処で楽をしたのか? と言うのを、ざっと書き出してみます。


●世界観

 当該作品は、テンプレものによくある、ハイファンタジー(ナーロッパやテイルズオブ的なやつ)ではありません。

 主人公の自己紹介すら後回しに、一行目から自動車の音を入れてあります(駆動方式は魔法ですが)

 原型となった過去作もそうなのですが「有史以来、魔法が発見・発展して行った現代」となっています。

 イメージ的にはFF15に近いと思います(あちらは機械も共存していますが)

 討伐依頼の窓口がダイナー(アメリカによくあるプレハブ食堂)だったりするのはモロにそれですし。まあ、この程度でパクりでもなかろう、と都合よく解釈していますが。

 これには、私がハイファンタジーを書けない(未だ書きたいと思った事がない)事情もありますが、以外とテンプレものと親和性があるように思えます。

 ハイファンタジー世界より、現代の地球に世界観を寄せた上で魔法だのモンスターだのを肉付けした方が、同じ“描写放棄”でもかなり違うと思います。

 現実世界の事であれば、読者が各々に補完しやすいですし。

 ギルドと言うものがいやにシステマチックだったりするのも“擬似的な現代”ならすんなり納得出来ると思います。

 また、ジャガイモがあるのかないのか、だの、美男美女が排泄物を窓から投げ捨てるのかだのの“些事”で躓きたくないものです。

 

 また、文明やら社会のルールやら各団体の背景やら有名人の背景やら、主人公に二人いる弟の事やら……全て数行触れるだけに留めてあります。

 剣士になった弟とか、普通なら意味ありげですが、当該作品では本当にこれ以降一切言及されません。

 とにかく、ジャンルの構造上、くどくどとした設定を差し込む余地がほとんど無いのです。

 魔物討伐のルールだとか、各個体がABC評価されている事だとかも、どの程度の戦力なのかとか大事な事は漏らしていませんが、その他の説明はさらっと流してあります。

 ただ、短い文章による推論の材料は、あちこちに散りばめてあります。

 これは言わずもがな、以前考察した“フロム脳”から得たスタンスです。


●料理

 主人公の魔法起点と言う重要な要素ですが、ここもぶっちゃけ手抜き気味です。

 早めの段階で誤解は解いたつもりなのですが、当該作品は主人公のプロ級料理を見せつける意図はありません。

 主人公はあくまでも「普段家事やらない人よりはマシ」な程度しか料理が出来ません。

 当初、それを忘れていて料理のクオリティを突き詰めようと苦心してしまいましたが、当該作品で書きたいテーマはそこではありません。

 ハンバーガーを作ろうとしてバンズが手に入らず、トーストで妥協……と言うのも、先日、我が家で実際に起きた出来事をそのまま引っ張ってきています。

 恐らく、今後も実際に自分が食べたもののエピソードをそのまま引用していく事でしょう。

 また食べ物の描写も厄介なもので、究極、言語化しきるのも難しい。

 無難な書き方は「食材を並べて、あとは読者の感性に委ねる」しかないように思えます。

 

●戦闘

 これも恐らく「あれからも、こう言う戦いがあった」の数行で省略する事は多くなると思います。

 本当に大事な戦いは真剣に書きますが、とにかく主人公の体験した戦闘の大半を書いてはいられません。

 追放側の視点となるシーンも思った以上にかさばりそうなのも要因です。

 また、1話の文字数3000文字程度の制約もあるので、これまで書いてきた作品より短期決戦ばかりになる筈です。

(覚醒すでは、1話あたり5000文字超の戦闘シーン×3話とか平気でやっていました)

 

●追放側の没落

 これは楽をする、と言うより「少しでも早く重要な要素を持ってくる」為に過程を飛ばしたと言うのが正確です。

 ただ、この創作論で何度か考察したように、戦術と戦略は分けて考えるものです。

 パーティの戦術的な没落は、決して「憎きリーダーの死」ではありません。

 これ以上の責め苦を更に課すのか、それともリーダーはリーダーで起死回生の逆転劇があるのか。

 第6話の次に早速それがやってくる、とここでネタバレしても全く問題ない構成にはしてあります。

 

 

 何か、ほとんど手抜きばかりじゃないか! と叱られそうですが、自分では今までになくメリハリを利かせていると感じています。

 やり過ぎるとブツ切れな事になりそうなので注意は必要ですが……

 手抜き・楽に書く、と言うと聞こえが悪いですが「無駄なく書く」力は確実につくと思います、テンプレものへの挑戦は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る