マリオの1-1面を小説化してみよう
来月の子供へのクリスマスプレゼントにミニファミコンでも買ってあげようかと考えた時、ふと思い付いた話です。
スーパーマリオブラザーズの最初のステージを描写してみるのは結構面白く、為になりそうです。
例によって、頭の中に留めて出力していないのですが……。
●リアルに描写するのかゲーム画面を描写するのか
非常に身も蓋もないのですが、どのように描いても最適解は見つかりそうにありません。
と言うのも最初に立ち塞がるジレンマが、この、どう描写すべきか? と言うものです。
実写をイメージしてリアル志向にするか、あくまでも原作を尊重してゲーム画面を描写するのか、はたまた、アニメ絵的にしてしまうか。
とにかく、最初にこの方向性を決めるのは必須でしょう(と言うより、構想していれば自ずと決まるとは思いますが。あれこれ欲張らない限りは)
クリボーに当たると死ぬ。
クリボーを踏んで倒す。
[?]ブロックを叩けばアイテムが出てくる。
キノコを取ると身体が大きくなる。
フラワーを取るとファイヤーボールが投げられる。
スターを取ると無敵になり、敵を薙ぎ倒す事が出来る。
コインを取る。
土管の並ぶ光景はどんなものか。ブロックはやはり宙に浮いているのか。落し穴はどんな風か。
マリオのあのジャンプ力も表現するのか?
場合によってはスコアや制限時間なども話に盛り込む事になるでしょうか。近頃トレンドとなっている“ゲーム要素”を考える上でも、これらを何のために描写するかを考えてみるのはひとつかも知れません。
この点、基本的には「リアルに書けばよい」ドラクエ・ウィザードリィなどに関してはまだ話が簡単だと思います。事実、これらRPG作品は多くがノベライズされており、それぞれの作者の独自解釈も概ね好評に受け止められている印象があります。
しかし、こちらのマリオの場合は、シンプルな記号的世界として完成しきっており、話を膨らませるのが困難だとわかります。
また、作風も児童向けのコミカルな世界観であるから、リアルに描く場合は相応に強烈な動機・説得力が
要ります。
ノコノコに食いちぎられて流血沙汰、ファイアボールに撃たれてクリボーが炎上、水分を失った肉は徐々に萎んでいって、異臭を放った消し炭に……こんな事を書く必要性とは何かを考えねばなりません。
昔流行ったアンパンマンやドラえもんをいじくるようなのもそうですが、子供が知っているものを、ただ単にバイオレンスにして喜ぶだけでは一過性の笑いで終わります。
逆に、ドット絵のあの世界を忠実に描写したとしても、それが何になるか? やはり、相応に強烈な理由が必要となります。
文体も注意が要るでしょう。
続編や派生作品、攻略本など、公式で書かれた数少ないテキストを読んで自分の中に落とし込むのがベターなのでしょうか。
普段通り、自分の文体をそのまま出すと、やはりミスマッチになる危険が高いでしょう。(元々、児童向けの作品をメインに手掛けておられるのなら、ある程度マッチしそうですが)
操作の巧いスーパープレイをイメージするのか、それとも私のような、四苦八苦しながらどうにかこうにかクリアできる程度のプレイをイメージするのか。
つまりマリオが余裕勝ちしているのか、毎度死にそうな思いをしているのかも、はっきり定めておく必要があるでしょう。
●媒体の違いによる限界
テレッテッテテッテッ、テン♪から始まるあのお馴染みのBGMからして、文字媒体では描写不可能です。
あのBGMは、もはやマリオと言う作品の空気感を支える要素の一つでしょう。
実際に音を消してプレイすると、途端に雰囲気が寂しくなる筈です。
雲もまばらな青空の下、周囲に環境音を発する物も無い。敵の数もまばらで、クリボーもノコノコも淡々と歩いているだけで、そんなに怒号だとか咆哮を上げるタイプではない。
まともに描こうと思うと、意外と静かな状況になってしまう事がわかります。
●心理描写も困難
崖を飛び越えたり、敵を倒したり、ダメージを受けたり、敵の城に乗り込んだり。
時にはピーチ姫の身を案じたり。
そこにもまた、心理描写の必然性を与える難しさがあると気付くでしょう。
また、元々の作品がスピーディなものなので、思考を掘り下げ過ぎればますます原作の空気感が損なわれて行くでしょう。
かといって、無さすぎてもやはり、何のために小説化しているのかわからなくなります。
とにかく、繰り返しになりますが、シンプルな記号で構築された世界が、ほとんど変化の余地が無いほどに完成されています。
実際に文字に起こさずとも、ちょっと頭の中で想像してみるだけでも面白いものです。
文体や描写の方向性、媒体の違いによる限界、二次創作としてどう書くか、説明と描写の配分バランス……それらの難しさが良くわかります。
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