うおおおーっ!

 その昔、文章作法をちゃんと勉強し始めた頃。

 参考にしたそのサイトでは、叫びや笑い声などを書くのは禁じ手だとしていました。

「うおおおおーっ!」

 だとか、

「イーッヒッヒッヒッ!」

 だとかですね。

 擬音もそうなのですが、文の格調を著しく落とすから、と言うのが理由とされていました。

 文の格調、と言うものについては他でも何度か書いてきました。

 書こうとしている作品次第であって、叫びや擬音を書いて良い作品もあれば、書かない方が良い作品もある事でしょう。

 ただ、個人的には、初心者の頃から「叫びや擬音は禁止」と言う縛りを負って結果的に良かったとは思います。

 これも当創作論のはじめの方で触れましたが、型を崩して良いかどうかの判断力は、一度ガチガチに型にはまってみて身に付く事もあるからです。

 

 こうした表現の利点は、一目で勢いや緩急を伝達出来る事でしょう。

 文字と言うのは言語でもあり、やはり“絵”や“画像”でもあると考えます。

 例えば誰かが叫ぶシーンがあったとして、“格調”を保って書くとしたら、

 

 ああ、と彼は絶叫した。

 

 となるでしょうか。

 スピーディな場面では、やはり迫力に不安があります。

 そもそも「格調の高い作品」に、スピーディな場面がそうそう出てくるのかは、さしあたってわかりませんが。

 そんなわけで、強弱様々な叫びを書き並べてみましょう。

 基本的に、下に行くほど勢いがあると思います。

 

「ああ」

「ああ!」

「ああっ!」

「ああーっ!」

「ああぁーッ!」

「アアアアァァァッ!」

「ああアアァあアァあぁァアッ!」

「あァあアァぁあァ嗚呼ぁああ嗚呼アッ!?」

 

 特に、下2つには何かとお世話になっています。

 小さい文字や、ひらがな・カタカナ・挙げ句の果てには漢字をも無秩序に並べて“絵”としての視覚情報をガタガタなものにしています。

 テンションが高くなるほど「正しい日本語」から解離しているのがわかりますね。

 やはり、秩序立った表現と狂乱の表現は相反するのでしょうか。

 語尾に小さい“っ”や“ッ”などを付けるのも、結構使いどころを考える必要がありますねっ……! ざわざわ ざわざわ

 個人的な感覚ですが、ひらがなよりはカタカナの方が強く感じます。これも、画像としてみると鋭利なイメージがあるからでしょうか。

 

 余談ですが、もう一例。

 またしてもブラッドボーンでの出来事なのですが、

 あるNPCが、宿敵の親玉を討ち取った直後の場面です。

 悲願を果たした事で、彼は渾身の勝鬨を上げるのですが、声優のあまりの熱演で凄まじい事になっています。

 その時の音声を文字にすると、こんな感じでしょうか。

「わぁたしはやったんだアァァァああアぁアぁあアァァァーッッ!」

 これでも伝えきれていないくらいの熱演でした。

 興味のある方は「アルフレート 私はやったんだ」などで動画を検索して頂ければ。日本語バージョンの方です。

 さて。

 この絶叫に対して、画面に表示されている字幕が、これです。

「私はやったんだあーっ!」

 完全に、音声に対して文字が釣り合っていません。

 こうして文字で並べてもそこまで違和感は無いのですが、実際に音声と字幕で聴くと、凄まじい温度差を感じます。

 これは声優が上手すぎた為に生じたイレギュラーな事故であり、字幕を書いた人に罪は無いのですが。

 

 また「あべしっ!」など、どうやっても地の文では表現できない奇声も存在するでしょう。

 

 文字は目でみる物でもある。

 これもまた、たまに振り返ってみたい事だと思います。

 

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