ナンパキャラ(軽く死語?)

 前回、人物の浮気について考えていたら連鎖的に思い付いたテーマです。

 ナンパとは不特定の異性を交遊、時には交際に誘う行為です。

 ここから転じて、異性に対して積極的なキャラクターの人物をナンパキャラと称します。

 当然、表面上の概要は同じなのに、これも好かれる人物・嫌われる人物に分かれるのでは無いでしょうか。

 これも「線引き」だとか「TPO」だとか「バックボーン」だとか散々語り尽くした感はありますが、

 

・シャレで済むか本当に不快になるかの線引きをちゃんと弁えているか

・自分本意になっていないか

・欲を言えば、そう言う性格になった背景がしっかりしているか

・同性から見ても好感が持てるか

 

●不快の線引き

 極めて常識の範囲内であるとは思うのですが、相手を裏切ったり損害を与えたりしていないかが一つの基準でしょうか。

 なるべく「気がある」段階で手を引き、交際にまでは発展させない方が無難です。

 結婚まで視野に入れさせた段階で「彼女の涙を振り切って颯爽と去る!」などしようものなら、それはもはや詐欺師と同じです。

 その人は金輪際、正義や秩序を口にする側には居られなくなるでしょう。

 ……とは言え、本当に巧みなタイプは、この線引きすら利用するのがうまいです。

 今の理屈を逆説的に言えば「明確に付き合っていなければアプローチするのは自由」ともなるからです。

 私も昔、友人Aが私に紹介する為に連れてきた女性を、友人B(彼女持ち)に猛アタックされて、事実上横からかっさらわれた事があります。結果的にはどちらとも交際に至りませんでしたが。

 今にして思えば、Bも女性不信になりかかっていた時期であり、当時の彼女にも捨てられないのか疑心暗鬼だったのでしょう。

 だから、好みにも合致したし保険としてキープしておきたかったのかな? と思います。

 しかしまあ、このケースも私と彼女が交際していたわけでないから競争は自由だしBに相手が居るからと言って「別に付き合ってくれだとか、好きだとか一言も言ってない」のがポイントです。

 ただただ「君、普通に可愛いし(笑)」とか言ってただけです。自分に彼女が居ることは一切明かさずに、ですが。

 またネットゲーム時代の追放リーダーを引き合いに出しますが、こちらも素晴らしい手腕でした。

 明らかにいつも一緒に行動している二人で、正式にパートナーとなるのもそう遠くないだろう、と誰もが思い「付き合っちゃいなよ!」と言う空気が完全に出来ている状況です。あまつさえ、祝福ムードを作っている第三者の中には普通にそのリーダーも居ました。

 しかし、その人が悩みを打ち明けたタイミングで急に二人の間に割り入り、相方の慰めだとかの言葉尻をとらえてディスり出し、自分が主導で慰めている風に上書き。

 それで手応えを感じたのか「デートに誘おうと思ったんだがどう?」などと気のあるような素振りを見せつつも、決して「好きだ」とは言わない。

 可哀想に、元々の相方は相談事があってもハブにされるようにまで追い込まれてしまいました。

 彼女の方ですか? 仲間内の口論で悪者側にされて自発的にコミュニティを去りました。

 まあ、Bと言い元リーダーと言い、ここまで凝っていると逆に「うっかりやってしまう」事はそうそう無いのかも知れないので、逆に立ち回りのうまいナンパキャラを作りたい時に能動的に使うと良いのかも知れません。

 ……とにかく、個人的に「空気を読め」と言う言葉は嫌いなのですが、常識で考えて嫌われはしないか一度考えるべきだと思います。

 身も蓋もないですが、正論は詐欺師に利用されがちなのも事実です。

 

●自分本意でないか

 これも不快の線引きに通じる所がありますが、ナンパの結果、相手を傷付けたり人に迷惑をかける事がないよう配慮した上で遊んでいるのかどうかと言うことです。

 また友人(さっきのA・Bとは別人)の話になりますが、彼は今の奥さんと結婚する前に別の人とも付き合っていたと言います。

 しかし、子供を授かった事を期に、もう一人の人とはきっちり別れ、それ以降も遊ぶことは一切止めました。

 それが当たり前と言えば当たり前だし、実害も出してはいるのですが、今では私よりよほど真面目に親をやっていると思います。

 

 逆に言えば、ナンパされる側の描写も大事です。

 ナンパする側を掘り下げたいばかりに、こちらの描写に気が回らないケースも多いと思われます。

 ナンパされた側も遊んでいるタイプだったり、一過性の関係に過ぎない事をちゃんと自覚していれば「シャレにならない被害者の居る不快感」もいくらかは回避出来るでしょう。

 

●ナンパキャラになった背景

 余命宣告を受けていて少ない余生を刹那的に楽しんでいるつもり……みたいな感じに“理由”があると納得されやすいでしょう。

 それでもやはり“悪事”を働く言い訳にしてはいけませんが。

 前回も述べましたように、不貞の言い訳と言うのはむしろ理由がもっともらしい程にいやらしく狡猾に見えるものです。

 

●同性から見ても好感が持てるか

 結構忘れられがちです。

 特に「ナンパな仲間」を書く分には客観視が容易いので、少なくとも自分が嫌味だと思わないよう気を付ければ何とかなりますが、主人公がナンパな場合。

 異性の仲間にベタベタしたかと思えば、同性の仲間には塩対応。

 同じ状況でも「本当に同性に興味がない」のと「本当は仲間意識がある」のとでは、天と地ほども差があります。

 何だかんだ「さっきの店員、すげー可愛くね?」とか「このバンド、誰が一番イケメンだと思う?」とか、同性間でも他愛のない話題をシェアしたがったり、大事な局面で鼓舞したり、相手の過ちに対して真心から怒ったり。

 男好き・女好きを描くからこそ、同性間の関わりも重要になって来るのだと思います。

 

 

 先述の、結婚に際して二股関係を清算した友人を見ていると、ナンパには「交際~付き合い始めまでの過程やコミュニケーションを楽しみたい」と言う動機が肝のかな? とも思いました。振られた方の女性については何も知らないし、友人を好意的に解釈し過ぎかも知れませんが。

 意外とナンパ男も即物的な動機ばかりでなく、そこを突き詰めれば、見栄や身体目当てのみっともない人物になってしまうのを防げるのかも知れません。 

 

 なお、今回は立場上、男性視点の話になっていますが、女性の場合もまた勝手が違ってきそうですね。

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