生産者の顔が見える武器づくりを
ここ最近、ブラッドボーンのプレイ日記みたいな話が続いて恐縮なのですが。
このゲーム、武器や防具などの解説文がとても凝っているのですが、特に「その武器がどういう経緯で作られたのか」に言及されている事が多いのが面白いな、と思いました。
この世界では、獣人狩り的なものや邪法の血族的なものをめぐって様々な勢力が存在し、それぞれ“工房”と言う武器の製造元を擁しています。
例えば、直剣の鞘が岩になっていて、納刀するとハンマーに早変わりする大鎚や、車輪で叩き潰す武器(車輪刑をイメージ?)など、示威的・威嚇的なデザインのものは、主に教会で作られています。
また、“火薬庫”と称される工房では、銃に変形する槍や、爆発する金槌、一撃必殺の杭を射出する剣のようなもの(?)、メイスに電動丸ノコをドッキングした殺人ピザカッターなど、実用性よりもギミックを拘った作品ばかり作られていたようです。
ほか、同じ勢力下の工房内でも、度々異端とされる職人が現れていたようで「ある魔獣の放電能力を武器で再現出来ないか」と言う事に執着するあまり、巨大テスラコイルのような鈍器を開発してしまい、作中の誰からも理解されなかったと言う不遇な武器もあります。
特に“火薬庫”の人物が遺した「つまらぬものは、それだけで良い武器たり得ない」と言う言葉は、もはや手段(凝ったギミック)が目的になってしまっていて、良い感じにマッドだと思いました。
結局の所、どの武器の作者も例外なく狂っているわけですが、その狂い様さえも一人一人個性があって感心させられます。
また、ブラッドボーンと同じフロムソフトウェア製のゲーム“アーマード・コア”(巨大メカのパーツを組み合わせて自機を自在に作れるゲーム)においても、色んな企業が武器やパーツを売り出しており、対ビームのボディパーツに定評のある企業だとか、実弾兵器に定評のある企業だとかの個性が出ていました。
私自身も現代ファンタジーを書く際に、剣や槍の製造メーカーだったり型番を設定していました。
例えば、ハイドランジア社と言うメーカーの製造した西洋剣ならば“ハイドランジアLS90”と言った風に。
型番のLSとは“ロングソード”を、90と言う数字は刃渡りの長さを表しています。
実際の銃器や工業機械もそうなのですが、この手の型番には、口径や出力と言ったスペックを表したものが多いです。
また“ドンナーP95”と言うのは、ドンナー社製で作られた95ポンドのハンマーと言う意味なのですが、この会社は、大金槌や戦斧、大メイスのような大型打撃武器を専門に手掛けていると言う特色を持たせました。(ドンナーとは、サンダー=雷のドイツ語読みでもあります)
さて。
そもそも、どうしてそんな事をしようと思ったかと言うと、剣と魔法の文明が現代にまで及んだ(=剣が鎧に勝ったまま時代が進んだ)場合、剣の開発や製造も現代に見合った効率化と普及が行われるだろうと考えたからです。
ゲームでよく見聞きする“ロングソード”や“バスタードソード”とは単一の品を指すものではなくなり、同じバスタードソードでも製造元や現場の需要によって、マイナーチェンジ・性能の多様化が行われるのでは無いかと思います。
また、現実における某47的な立ち位置の曲剣だとかも存在します。(※アイドルグループではありません)
有り体にのべると色々波風が立ちそうですが、まあ安価で優れた汎用性とメンテナンス製によって、資金の苦しい組織でも安心して使えるのが売りです。
とにかく、武器の身元をはっきりさせておく事は、製造者のキャラ付け・使用者のキャラ付け・組織や世界情勢を表す記号として、大変便利だと思うのです。
また、そんな中で“死神の大鎌のようなもの”だったり“災厄と叡智の体現”と言う主観丸出しの中2ネームを登場させたりもしています。
剣が型番によって管理されたシステマチックな世界にあって、これら曖昧な中2武器がぽんと出てくると、逆に色々と想像を掻き立てるのではないかな? と言う狙いです。
“災厄と叡智の体現”もまた、誰かが作って名付けたものの筈です。他の剣が型番によって管理された世界において、誰が、何のためにこのようなオーダーメイド品を? どうしてそれが主役の手に渡ったのか?
とにかく、武具に限らないのですが、物品には大抵“設計思想”と言うある種の信仰じみたものが宿っています。時には、無形のサービスや医療行為にも。
“強大な武器”を書きたい場合、目の前の威力を濃く描写するのも良いですが、作った人や経緯などのバックボーンからアプローチしてみても、味わいが出せるのでは無いでしょうか。
ダンジョンの宝箱を開けて、
「あっ、これは魔剣レーヴァティンだ! ラッキー!」
とか、
「よっしゃ! ゴールドアーマー(甲冑一式)だ!」
とか言って主役陣を強化するのも良いですが、それは誰が作って誰が持ち出して、どういう経緯の末に、その宝箱に入れたのでしょうか?
品物ひとつとっても、膨大なドラマの末に今があるものです。
ブラッドボーンの巨大テスラコイルなんかも、無造作に地べたに置かれていました。
けれど、入手した時の粗雑さを打ち消すほどの強烈な背景があるから、逆に「なんでそんな雑にすてられてるの?」と空想が捗るものです。
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