想定外の恐怖

 ※今回の話には、ブラッドボーンの一部ネタバレがあります。ご注意下さい。

 

 住民が獣人化する病の蔓延する街。

 主人公は獣狩りとして、ほとんど孤立無援の戦いに身を投じるのですが、協力者が皆無と言うわけではありません。

 その内の一人に、無事な住民の避難を手伝ってくれる女医が居ます。

 しかし、彼女の診療所に誘導した人の姿を一切確認する事が出来ません。(もうひとつの避難先では、助けた住民がちゃんと姿を見せてくれます)

 嫌な予感しかしませんが、案の定、この女医は避難民を人体実験にかけて、自我の無い怪物に改造してしまっていたのです。

 

 当然、この真実が露呈した場合、プレイヤーは診療所の奥に踏み込んでこの狂った女医と対決する事も出来ます。

「全てを見なかった事にして引き返せば、私も全てを忘れてあげるわ。これまで通りの協力者に戻りましょう?

 もし引き返す気がないのなら……うふふ(以下略)」

 と、何処からか猫なで声が聴こえてきます。

 その奥にもうひとつ部屋があり、恐らく問題の女医はそこに居るのだろうと推測できます。

 そして、警告を無視して踏み込めば、戦いになるだろう事も明白です。

 さて、ここで私が考えた事。

 

「これまで遭遇してきたボスキャラ同様、この女医も強大なクリーチャーと化して襲ってくるのだろう。

 また何回か殺されながらパターンを覚えるかな。

 恐らく、そこの部屋に入った瞬間、奴がおぞましい怪物へと変身するイベントデモが始まりーー」

 そこへ、物陰から飛び出して来る白づくめの女。

 リアルに、

「うわァ!?」

 と言う悲鳴を上げました。隣の部屋で寝ていた息子が起きなくて何よりです。

 取り敢えず、仕込み刀(蛇腹剣に可変)と大型拳銃と言う非常に文明的な武装をしているのは視認。

 あらかじめ想像していた、ずんぐりとした巨大クリーチャーとは似ても似つかぬキレッキレな挙動。

「なーんにも怖くないのよぉ、いい子だから大人しくなさい、さあ死ね! 大人しくしろ、するんだ!(CV:能登麻美子)」

 完全に、巨大クリーチャーだとか冒涜的な神話生物を想定していた私の頭はパニックに。

(殺される、殺される、殺される、殺される)

 さっきまで、何度か死んで攻略法を覚えようとか考えていた冷静さは何処へやら。

 リアル半狂乱に陥りつつも「こいつには殺られたくない!」の一心で回復を挟みつつ、最後はハンマーで脳天を叩き潰して撃退。

 翌日、ブラッドボーン経験者の友人にそれを報告したら「よくアレを初見で倒せたな」と言われました。

 ゲームの範疇を超えて必死だったんです。ええ。

 

 このゲーム、基本的にリアル志向で、濃い顔の人物ばかりが出てきます。

 そんな中、この女医は美人な顔立ちに造形されています。

 普通に考えて、武装した美女よりも、体長5メートルの獣人だったり頭が触手まみれの化け物の方が遥かに恐ろしい筈です。

 そう言うのが襲ってくるだろう、と言うのは完全に私の勝手な思い込みだったわけですが、

 やはり人が最も恐れるのは「想定外の脅威」だと言う事なのでしょう。

 頭が「対巨大クリーチャーモード」だった所へ、真逆の俊敏な殺人鬼が襲ってきて、思考がまともに切り替えられなかったのも焦りの原因でした。

 また、モンスターパニックに対して身構えていた所へサイコサスペンスに襲われた、とも言いますか。

 

 何か、人を怖がらせる手法の一つを学んだ気がします。

 啓蒙+1

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