意図しない“内輪ネタ”を書いてはいないか?
前回、何となく思い出して話題にしたインターミッションですが、もう一つ、このやり方が失敗したであろう要因に思い当たりました。
期せずして“内輪ネタ”になってしまっていた事です。
これは別に、
私の中学時代の同級生サトル君(仮名)が二年生の時に●●な事をやらかして、今思い出してもマジうける。
と言うような事を、何の脈絡もなく作中で書いたと言う意味ではありません。
作中、知り合って間もない女子同士で愛称をつけあって距離が縮まった、だとか、ある人物がとても料理上手で作戦会議で凝りに凝ったフルコースを振る舞った、だとか、基本的にポンコツだけどやる時はそつなくやる部下との漫才じみたやりとり、だとか。
これらは一見して、読者にそれぞれの人物をより深く理解して貰おうと書いたものですが(事実、当時の私はこれで人物が掘り下げられると思い込んでいましたが)
実は、作中の人物同士で盛り上がっているだけで、読者は置いてけぼりを食うパターンでもあると思います。
その境界線は非常に難しいかと思われますが、
読者の熱量<作中人物の熱量
になるほど、この内輪ネタ化のリスクが高いのでは無いかと思います。
もし好きな方がこれを読んでおられたら先にお詫び申し上げますが、
私自身、例えば「芸能人同士でお祭り騒ぎをしている」タイプのバラエティ番組がやや苦手です。
しかし、以前、別項でも触れましたが、笑点の大喜利はそれこそ「ほとんど代わり映えしない内輪ネタ」ばかりだと思うのに、ちゃんと楽しめています。
別項の繰り返しになりますが、それは恐らく大喜利と言うものは「視聴者を巻き込んだ、日本全体規模の内輪ネタだから」だと考えます。
つまり、受け手が笑いの内側に居るからこそ、同じようなネタでも毎度笑えてしまう。
内輪ネタが面白いのは、受け手に“定番の面白さ”として定着しているから。
そして、定番の面白さは、当たり前ですが“未知の面白さ”を経て定着するものです。
需要と言う面では、この二者は別々なのですが、定番化するまでの起点に目を向ければ、そこで交わるのでは、とも。
私が「芸能人のお祭り騒ぎ」を苦手とするのも、元々、そこまでタレント自体の“人間性”にあまり興味が無いからでしょう。
正直、近年の芸能人の名前には人一倍無知です。90歳近い祖母よりも遥かに疎いです。
これも線引きが難しいのですが、人間性(キャラクター)の面でよく知らないタレントや芸人でも「やっている事そのものが面白い」番組は好きです。
よく知らないお笑い芸人が、しれっと一流シェフ並の料理を作っているのとか。出来上がった料理があまりに見事だからこそ、その人となりを知らなくても印象に残るのでしょう。
そこから「この芸人は料理以外ではどういう人なのだろう?」と言う興味に派生するのだと思います。
と、言うことは、先に私自身の作品における「人物間の内輪ネタ」はむしろ肯定すべきのようにも思いたくなる所ですが……、
その人物をよく知らない&エピソードの必然性が弱い
と言う「条件を両方満たしてしまった」時に、内輪ネタ的つまらなさが発生するのかも知れません。
私の当該過去作における「意外と料理達者な人物」のそれは、その人の掘り下げも不充分なら、料理達者と言うエピソードにも必然性がない。物語の本題は、剣と魔法を交えた死闘とドラマにあるのですから。
シンプルな話、受け手を巻き込み切れていない内輪ネタは、ただ疎外感を与えるだけでマイナスにしかなりません。
先に例文として挙げた「サトル君が中二の時に~」と言うのを唐突に持ち込まれても、違う学校・学年で育った皆さんからしたら「は?」としか言いようがない。
未知の面白さの段階で躓いている以上、それが定番化する波には絶対に乗れません。
例えば、主役の身近に“大食いの後輩”と言う人物が居たとします。
登場の初っ端から、
カツ丼二杯に塩・味噌・醤油のラーメン各種、しかも別途テイクアウトしたダブルバーガーを、こいつは何の躊躇いもなく食い始めた。
「ガツガツガツ! 旨いっす!」
「お前、良く食うよなぁ……」
俺はあきれた。
とされても「ふーん、この後輩はよく食べるんだね。それで?」
としかならないのですが、例えばこの後輩がクールで几帳面で何事もそつなくこなし、主役に対しても手厳しい所はあるが、何だかんだ仲は悪くない。
と言う事を、山あり谷あり描写し、二人の関係性が十全に伝わった後、初めて一緒に外食したと言う状況だったら。
その山あり谷ありのドラマと、後輩のキャラ付け次第では大いに可能性のある大食い場面では無いでしょうか。
「後輩君、今まで二枚目キャラだったのに意外と意地汚い!」
と。
こうした、蚊帳の外の内輪ネタ化も、結構意図せずやってしまいがちでは無いでしょうか。
こうした人物間の掛け合い、それ自体はほぼ確実に必要となり、その普遍的な要素の中に隠れている罠でもあるからです。
と、言うことは、人物の掘り下げが乏しい(これから描写しはじめると言う段階の)物語序盤に踏みやすい罠でもあると思います。
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