パルクール

 パルクールとは、走る・跳ぶ・登ると言う動作によって街中を縦横無尽に移動する競技です。

 ビルの壁をよじ登ったり、屋根から屋根を宙返りしながら跳び移ったり、細い鉄骨の上を駆け抜けたり。

 パルクールやフリーランニングで検索すると動画がたくさんあるので、おすすめです。

 フィクションの忍者みたいな事を、スポーツとしてやっている人達が居るんだと、参考になります。

 

 一時期、このパルクールを小説の殺陣に応用出来ないか試した事があります。

 まず、当たり前ですが古今東西、現実でそんな戦い方をしているケースは(公式には)無い筈です。

 ただでさえ登る動作は隙だらけになり、足場が不安定な場所では攻撃の選択肢も限られ、落下のリスクまで負う。

 当然ですが、集団でこれを行うとなると足並みも揃わない。

 最低限、武器を抜き身で持った状態でも平地と同じ水準で動けないと実用に堪えない。

 シチュエーションはかなり限定されるでしょう。 

 具体的には、“超人”が描きやすく、剣などによる近接戦闘が主流となるファンタジーになるでしょうか。

 銃撃戦で立体的に動き回るメリットは無いように思われますが……これも改造人間等の超人なら事情が変わるのでしょうか。

 予想されたメリットとしては、縦方向の動線が増えることによって剣戟にメリハリが出て、連戦や長期戦になってもマンネリしにくいのでは? と言った所でした。

 

 しかし、実際にやってみると思いの外扱いにくい。

 平地で戦いが終始する場合、基本的には最初に情景描写を済ませておき(都度、必要な描写があれば行いつつ)当事者達だけを描写するなどで事足りますが、

 パルクール要素を入れた場合、足場となる建物や車など描写対象が激増するので、逆にスピード感と戦術の両立が難しくなります。

 また、パルクール殺陣と最も親和性の高いであろうファンタジーには、魔法と言う個人携行可能な戦略兵器があります。

(当然、作品ごとの魔法と言うものの立ち位置にもよる事は言うまでも無く、その辺は割愛しますが)

 これに関しては詠唱の完遂を賭けた場所取りの駆け引き等は描けそうなので善し悪しなのでしょうけど……それにした所で描写の煩雑化は避けがたいと思います。 

 あとは、敵が巨大モンスターや怪獣などの場合、頭部付近を狙うにあたってはどうしてもパルクール的な立ち回りにならざるを得ないとは思いますが、これはまあ結果論でしょう。

 

 とにかく描写が増える。テンポが悪くなりやすい。そんな印象でした。

 パルクールが爽快なのは、やはり映像だったり絵だったりするからなのでしょう。

 文字媒体で用いるには、相当の難物だとわかりました。

 巧く書ける人も居る・書き得る可能性は勿論否定出来ない事も付け足しておきますが。

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