MP(マジックポイント)
私は基本的に、小説でステータスを数値化する必要性を感じていません。
ただし、一つだけ例外に思うのがMP(マジックポイント)……魔法の使用回数・リソースとしての魔力です。
名作として知られる作品でも、しばしば“魔力切れ”のタイミングがご都合主義に思えてしまうケースがあります。
あと一歩、魔力が足りずにピンチ! もしくは勝利!
こうしたいかにもドラマチックな展開も、魔力の残量が体感的にわからないために共感しにくいのです。
スタミナならまだ実在する要素なので何となく体感的な想像はつきますが、魔力の多い少ないは現実に体感しようもありません。
これまで何度か絶賛してきたウィザードリィ小説「風よ。龍に届いているか」を読んでいても同様でした。
この作品に関しては、例えば「この魔法は一日に3回使える」と言う事は明言されています。
しかし正直な所“他人のMP自己申告”を一々覚えていられない、と言うのが本音でした。
ダンジョン攻略開始からMP切れまでの期間も長いですし「あれ? この魔法、まだ使えるんだ」と言う作者との感覚のズレが引っ掛かったりしました。
恐らく執筆中の作者はメモ帳でも傍らに置いているか、推敲の時にカウントしているのでしょうけど、読者はそうもいきません。
そんなわけで、魔力のリソース管理を描写すると言う明確な目的があれば、MPに関してだけはステータス表記の使いではあると思います。
測定方法が凝った設定だったり、魔法石や薬液や弾丸の個数などの目に見えた物品を用いるなど、わかりやすくする努力は必要だとも思いますが。
それと、魔力が厳格に数字で管理されている場合、やりくりの描写も面白く書けそうです。
近頃、サガフロンティアのリマスター版をプレイしているのですが、ボス戦などで技ポイントが尽きかけた時に、妥協して使った下級・中級の技が意外と良い仕事をしてくれて軽く感動した事が度々ありました。
これを巧く再現できれば、かなりヒリヒリした駆け引きとドラマ性が生み出せるのでは、と思いました。
もっとも私の作品における魔法は基本的に消費リソースが存在しないので、この気付きが活用出来る日が来るのかは疑問ですが。
更に話は脱線しますが、近年のゲームでは技の消費リソースが無かったり、時間経過で回復する方式も増えてきたように思えます。
これによってボス戦までポイントを温存する必要が無くなり、雑魚戦で不本意に手を抜く必要が無くなるので、結構好きなパターンです。
例えばまたサガかよ、と言われそうですが、サガ・スカーレットグレイスでは、技を使うためのポイントが仲間全員で共有されており、戦闘の毎ターン決まった数値が与えられます。
これによって誰か一人が大技を使うと、他の仲間が使えるポイントが少なくなります。
一人が“神速三段突き”だの“乱れ雪月花”だのと言ういかにも仰々しい大技を放ってる側で、他の人はただのパンチやスライディングのような小技しか使えなくなります。
(五人パーティで与えられた技ポイントが10だった場合、一人が7消費すると他の四人は3ポイントでやりくりする事に)
この為、長期的には失うものを気にしなくてよくてストレスフリーですが、1ターン単位では熟慮する楽しみも両立されています。
そして、うまく条件を揃えると技の消費が軽減され、日頃課されている制約から解放され、皆で大技をぶっぱなすと言う爽快感も味わえます。
また、少し前にテイルズオブベルセリアもプレイしたのですが、このゲームには「名前の無い通常攻撃」と言うものがなく、それぞれに特性の違う必殺技を組み合わせて戦います。
これも技を出す為のリソースは時間経過で回復するので、ひとつのダンジョンやひとつのエピソードの攻略と言う長期スパンで見れば「技を使い放題」ではありますが、瞬間的なリソース枯渇には気を配らないといけない戦略性はきっちり求められます。
そんなわけで「MP消費」の形ひとつ取っても、世の中ではこうして新しいものが考察されています。
プレイヤーがMPをケチらず快適に遊べて、なおかつ要所では緊張感も味わえるように、と言う工夫からでしょう。
これまでの“MP制”は本当に理にかなっているのか?
小説と言う分野でも、既成概念を少しずつマイナーチェンジしてみるだけでも気付きはあるのではないでしょうか。
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