不老不死は悪い事か?

 現実では人類最大の夢ともされる不老不死ですが、物語においては何かと“邪法”などと扱われます。

 不死の存在は悪役や、よくてダークヒーローと言う、日陰者の役回りが多いのでは無いでしょうか。

 そこで語られる理由としては、以下が主流でしょうか。

 

・人が死ぬのは世界が本来あるべき姿であるから(=摂理に対する冒涜だ)

・人が死なないと、増えてばかりで人口が飽和する(不死が人類規模の場合)

・不幸せな人が、死んで救われる事がなくなる

・死なない奴は化け物だ(不死が個人単位の場合)

・一生は有限だからこそ美しい

 

 不死が実現しているのが個人に留まっているのか、人類全体に及んでいるのかによっても意見は変わりそうです。

 ここに宗教観が絡んでくると、なおのことシビアな目で見られそうです。

 人口問題については「新たな人が誕生しなくなる」代償があれば解決しますが、その世代以降は子供が生まれなくなる……忌避の理由が、新たな命の誕生が永遠に無くなる事にシフトするだけかと思われます。

 

 ともあれ、不老不死がいけないとされる理由とは、あくまでも「不老不死が夢物語にすぎない」我々現代人の目線で言われているものばかりな気がします。

 もし不老不死が実現したとして、その生が必ずしも醜いとは限りません。半無限の時を生きて辿り着く境地もあるでしょう。

 不老不死が一例でも実現したのなら、それがこの世界の摂理だったと言う見方も無いでしょうか。

 ゾンビや吸血鬼というものに付随されがちなのも、不老不死が恣意的に“外道”と決め付けられている要因に思えます。

 

 個人的には、不老不死は絶対悪でも無ければ生命の冒涜とも言いきれないと思います。

 誤解を恐れずに言えば、プラスチックゴミが不法投棄されて環境が損なわれる事さえも、地球の中で完結した営みに過ぎないと考えます。

 プラスチックもまた、元をただせば地球産の材料で作られたものですから、地球の中で物が循環した結果と言えなくもありません。

 あっ、だからと言って環境破壊が許されると言う意味ではないので、炎上はやめてさしあげて下さい。

 あくまでも地球さんや宇宙さんの目線で見た話です。

 不老不死以外にも、もしも我々にコウモリのような皮膜の翼が生えたり、目玉だらけの顔になったり、内臓剥き出しのような身体になったとして。

 これらが今の我々よりも機能的であるなら、それは進化と言えるでしょう。

 これらを気持ち悪いと思うのもまた、現実の我々の主観に過ぎないのです。


 実のところ、過去に公開しなかった作品の中で、不老不死世界のハイファンタジーを書いた事があります。

 勿論、病もなければ戦って死ぬ事も無いため、生死によるドラマは全くありません。

 人口が飽和しない為に「子供を生む」と言う概念が無くなったと言う設定を採用しているため、地上には常に同じ人間(成人)しか存在しません。

 どちらかと言えば、生に倦む事での人生の放棄や、それを左右する目先の人間関係が焦点になりやすかったと思います。

 自分に不利益な人間を、いかに追い詰め(もしくは陥れ)コミュニティから排除するか、と言うようなみみっちい争いが主になってしまいました。

 魔物とどれだけ激しい戦いを繰り広げても、失うものも無い代わりに、得るものも多くはありません。

 主人公や仲間達の力や資産がチマチマ増えていっただけです。

 当時の私が、いかに不老不死を安易に扱っていたかわかる事例でしょう。

 

 それが個人にしろ社会全体にしろ、ひとたび不老不死と言う実績・前例が出来たなら、社会は、最初のうたこそ排斥しようとするかもしれません。

 しかし、最後には認めざるを得なくなり、やがて不老不死を前提とした形に変容するのでは無いでしょうか。

 そして、現代を生きる私達には、その時に何が起こるかをシミュレートするのはとても難しい。

 それでも、思い込みを捨て考察すれば、あるいは前例の無い答えが見つかるやも知れません。

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