“定番”の面白さ?
前回、ナーロッパについて考察した流れで、芋づる式に気になり出したので、そもそも“なろう系”というものについても調べてみました。
いやしかし、自分が作品を公表している場がどういう性質を持つかも興味を持たないままやっていた私も、大概と言えば大概です。
“なろう系”と言う言葉もWikipediaに載る時代なんだなぁ……と言うか、Wikipedia全体で見ても稀に見る密度の記事でした。
即席で勉強するにも大変わかりやすく、為になりました。
さて、さる偉い人が「なろう系の盛り上がりには、大喜利に通じるものがある」と指摘されたそうで、その喩えが私的にはかなり腑に落ちました。
前回、私がなろう系に対して引き合いに出したRPGツクール(のデフォルト素材であれこれやってた流行)も、恐らく大喜利に近いものがあると思います。
まず世界観や素材の認識を共通化する事によって、皆が“シナリオ”だけに集中出来る。
まさしくテンプレートの利点でしょう。
Wikipediaで言及されていた比喩を拝借しますが、“お上”や“岡っ引き”が何であるかを受け手があらかじめ知っている土壌を先に作ったから、時代劇は観られているのでは無いか、と。
つまり前回、私が「ナーロッパ的世界観で一段上のものを見せるには」と考察した事は「VIPRPGツクろうぜ。アレックスwwwブライアンww」とわかっていて盛り上がっている所に「セラフィックブルー並の作品を目指すには」と言っていたようなもので、お門違いだったわけです。
(喩えが分かりにくかったら申し訳ありません)
しかしやはり、私が読んだなろう系でも、アイディア自体はよく、人物もよく練られ、それこそ大喜利ごっこではなくガチで話を作っていたと思われる作品もありました。
つまり、なろう系である必要性が感じられなかった。
惰性でやってしまったのか、材料の選定を間違えたか、はたまた私には及びもつかない狙いがあるのか。
この辺りは作者のみが知る所なのでしょうけれど、世界観をゼロから作る腕が無いわけでも無いだろうに、と思うと惜しいところです。
大喜利的なろう系を否定はしませんが、何度も言うように「これが大喜利的なろうである」と自覚せずに乗ってしまう事はよろしくないかと思います。
さて、話をぶったぎるようですが、笑点の大喜利が面白いのは何故でしょう?
あれにした所で、定番ネタばかりで何十年とやって来ています。
小遊三さんは胡散臭いスケベ親父キャラで、円楽さんは腹黒時々嫌味なインテリ(+歌丸さんいじり)キャラ、木久扇さんは天然系のおじいちゃんキャラ、等々。
はっきり言って、使っているネタ自体もあまり代わり映えしていない筈で、見ている方もわかっているのに、それでも笑ってしまう。
結局の所「どこまで周知に力を入れたか」という事でしょう。
正直なところ、共通認識とされるネタを知らないと置いてけぼりを食うのは、なろう系もVIPRPGも水戸黄門も大喜利も同じでしょう。
皆がネタを熟知している、と言う点で大喜利は最たるものでしょう。言い換えれば大喜利の定番的面白さとは「日本全体規模の内輪ネタ」とも言えるのかも知れません。
面白さにも種類があり、“未知の面白さ”と“予測される前提の面白さ”があります。
テンプレと言えば聞こえは悪いが、安定して笑える定番ネタと言うのもまた、大事なものです。
ナーロッパを分解すると、当たり前ですが“剣と魔法のファンタジー”と言うセンセーショナルな成分が見出だせる。剣と魔法は、大昔からある“定番アイテム”なのは殊更言うまでもないでしょう。
大喜利は、お客さんに向けて色んな目に見えない努力をしている筈です。
かの東日本大震災の直後、円楽さんは当時の歌丸さんいじりネタでも「老衰“死”」のようなネタは封印していた節がありました(ハゲネタやじじいネタは容赦なく通常運行でしたが)
ポンコツおじいちゃんと言うキャラを不動のものとした木久扇さんが稀に鋭い解答を見せるからこそ、他の人にはない一層の迫力があります(俗に言う「回路が繋がった状態」)
最近の円楽さんは、歌丸さん亡きあと「嫌味なインテリキャラ」の強化へと方向転換しているのではと思います。
身内の死者いじりが例外的に許される分野とは言え、リアルタイムで歌丸さんを知らない人も出てくる今後、親離れでも無いですが、方針転換は必要な事でしょう。
定番にもマイナーチェンジは必要で、どこを変えてよくて、どこを変えてはいけないか、常に考えている筈です。
前回取り上げたように、VIPRPGなどは基本的に「わかっている人だけがツクって」おり営利に繋がらない為もあり「咄家同士が楽しければ良い」フィールドが成立していました。
一方で、なろう系に自覚的な人ばかりとは限らないネット小説ではどうなのでしょう? と思います。
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