共感させない描写その2 真・女神転生3をプレイして
私事ですが、最近プレステ4でリマスター版の出た真・女神転生3をちまちまプレイしていました。
ようやくラストダンジョンと思われる所まで来た所です。
さて、今回も主観による邪推になりそうですが、このメガテン3も大概、登場人物達に共感出来ない……正確に言えば「誰にも共感出来ない主人公の気持ちに共感出来る」作りをしていると思いました。
この物語は、東京が滅亡し、古今東西の神々・悪魔の跋扈する終末世界となってしまう所から始まります。
ある種のポストアポカリプスとも言うべき世界であり、最初から人類に未来はない状態からのスタートです。
そんな中、生き残った僅か数名の人間の中から三者、自分の思想に基づいた次の世界を作り出そうとする者が現れます。
主人公(プレイヤー)は、それら対立する思想のどれに肩入れするかを選択しながら真実を求めていく……と言う筋書きなのですが、その3つの思想と言うのが以下の通り。
・個人個人の意思や感情を否定し、それぞれの領分からはみ出す事も一切許さないディストピア“シジマ(静寂)”
・完全なる実力主義で、弱者は冷遇どころか生存すら許されない“ヨスガ(縁)”
・個人主義の極みであり、互いの干渉を一切許さない自己完結の世界“ムスビ(結)”
はい。
見事なまでに、肩入れしたくない勢力しかありません。
元々このシリーズは、人や悪魔にそれぞれ秩序・中庸・混沌の思想があり、住み分けがされていました。
しかし3のそれよりは極端で無かったし、それぞれデメリットももう少しマイルドだった。
バランスを取るなら中庸と言う逃げ道もありました。
しかし今回のムスビに関しては、正直なところ、それでどうやって生きていけるのかが想像も付かず、他人には干渉するなと求めながら、(主人公を利用するなど)その行動自体が他人ありきな矛盾も感じます。
干渉されない世界のために“今”に干渉するのは、一方で仕方ない気もしますが。
とにかく、中庸思想ですら融通が効かない。
そして、東京が滅びて世界が閉じてしまった以上、現状維持も良い事ではない。
誰にも共感出来ない中、主人公は嫌でも自分の思想を決めねばなりません。後ろ向きな消去法によって。
ちなみに私は、誰にも肩入れしないままラストダンジョンに来ました。
恐らくこれが真の意味での中庸ルートだと思われますが、明るく生産的な未来が待っているようには、正直なところ思えません。
平和な現代でテレビゲームしてる私としてではなく、ちゃんと「私が人修羅の立場になったら」と言う想像をしながら道を選んできたとは思います。
70レベルの私であれば、ちょっとした魔王や邪神、各国主神さえも凌駕している悪魔なので、その点で言えばヨスガに付けば快適に暮らせるのか……いやいや、下剋上が怖い。一生心の休まらない、闘争の人生になってしまう。
とりあえず、ムスビは衣食住の問題とかクリアしているのだろうか? となれば一番マシか? ムスビとシジマは代表者のプレゼンが下手すぎて、具体的なビジョンがわからん。
などなど。
で、結局、各勢力の代表者に決断を迫られても拒否してしまい、宙ぶらりんのまま今に至る、と。
なんだか、嫌々就職活動をしていた新卒時代に通じるものがありました。
好きなものが沢山あって選び難い事もあれば、どれも嫌だから選び難いと言う事もある。
恐らく、今回の各思想が極端すぎるのは、こう言う悩みを持ってもらうための、意図的な描写なのでは、と思いました。
単に私が優柔不断だったり、深読みしすぎているだけで、皆どこかしら好きな勢力を見つけているのかも知れませんが。
しかし、もし私の邪推通りだとしたら、未来のない終末世界という舞台とは相性ばっちりな設定かと思います。進みたい選択肢がなく、しかし留まる事も叶わない。
また、悪魔達の生き生きとした様もあり、滅んだ世界なのにそこまで後ろ向きさを感じないのも、良く作用しているのではと思います。
正の感情によるものも“感動”なら、負の感情によるものもまた“感動”ですね。
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