町おこし
前回、私がプロを諦めるまでの過程を説明するに当たって、自費出版を試みた事に触れました。
この際に、出版を相談した社長とのやり取りでひとつ気になった事がありました。
「○○市(私と社長の地元)は登場するの?」
と訊かれた事です。
その方は、地元の活性化・町おこしに精力的に取り組んでもおられ、その為になる事柄を常に求めていたからです。
その時に持ち込んだ「願えば叶う ロール」は、文明レベルこそ現実に近いとは言え、架空の世界を舞台としたファンタジーです。
(例:乗用車等はあるが、動力が魔道具的なもの。通信手段はテレパシー)
日本を模した国も出るには出ますが、物語の流れ上、○○市である必要性はありません。
むしろその国での戦いは各界の要人が多く関わり、都心部でなければならない。なおのこと、○○市が入り込む余地などありません。
と言うことで質問に対しては当然ノーと返答。
それは微妙な空気になりました。
現在、行政に対して何の責任もない私が言うのもどうかとは思いますが、
町おこしの為に良作が現れるのではなく、良作が現れた結果、町おこしになるのだと思います。
この社長に対して、初見で私の作品のポリシーを理解しろ、と言うのは流石に理不尽ですが、ほぼほぼハイファンタジーである当該作品では町おこしに協力出来ないのは明らかでしょう。
これもまた、以前話した「二次創作でフェニックス出しましょうよ!(※その元作品にフェニックスは出てきません)」のエピソードに通じる所があります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16816452218465982819
匿名とは言え他人の黒歴史を毎度引き合いに出して申し訳ありませんが……。
最近でこそ鳴りを潜めた感がありますが、町おこしアニメやご当地ゆるキャラの粗製乱造が一時期横行していたのは、まさしく「何を書きたいか」が定まらないままに“手段”に過ぎないアニメやゆるキャラに飛び付いた結果でしょう。
作り手すら何をしたいのか定まっていないものに、理はありません。
逆に、私が町おこしを狙って、依頼主である自治体から無数のダメ出しを喰らった例もあります。
地元で催された、とあるサブカル系イベントの様子を紹介した動画の製作をボランティアで請け負った事があります。
内容の裁量については全面的に委ねられていたので、私はこのイベントと動画配信を起爆剤に町おこしになれば、と言うスタンスで製作に取り掛かりました。
ケーブルテレビのローカル番組で流れているような、ホームビデオに説明文を添えただけのような内容では、このチャンスがふいになる。
この動画用に考えたマスコット(それこそゆるキャラ)が進行し、それなりにイベント内容に則した演出効果も入れていきました。
結果、
「キャラクターの言葉を全て丁寧な敬語にしてください」
「サブカルと言う言葉を消して下さい」
「このシーンの、擬音の演出を全部消して下さい」
「地方とは言え、自治体の名前のもとで配信する動画です。相応の格調が必要な事を念頭に入れて、考え直してください」
etcetc
なお、付け足すなら、先方は私が名付けたこのゆるキャラの名前を素で間違えています。内容をしっかり吟味していたなら、あり得ない間違いです。
結局、指摘は全て消化して提出。意趣返しでも無いのですが、キャラクターの口調は気持ちが悪いほど(それ自体がキャラクター性となるレベルに戯画的なほど)に丁寧なものにしました。
制約があろうと、理念まで捨てたくなかったので。
これに関しては、全裁量を任されていたとは言え相手の真意を推し量らなかった私にも非があります。
しかし、少なくともここまで作らせたのであれば私の意図に耳を傾け、内容を考察し、比較した上で是非を決めても遅くはなかったのでは、とも思います。
さもなくば、映像に文字とフリー素材音楽をつけるだけの単純作業です、として依頼をすべきだったのでは。
ふなっしーなどは、今でこそ広く認知され、文字通り市民権を得ています。市に与えた恩恵も莫大なのでは無いでしょうか。
けれど、あれは非公式から始まったからこそ、日の目を見たのだな、とつくづく思います。
利益は大事だが、それありきでは生きたものは作れないと再認識しました。
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