主人公最強

 私事ですが、ここ数日トイストーリーの全シリーズ一気観をしております。あとは、最新の4を残すのみとなりましたが。

 これまで、トイストーリーについては齧る程度にしか知らなかったのですが、

(別項「入り込みたくなる世界その2」であんな事を言っておいて)

 主人公のウッディが思いのほか狭量で、意外でした。ディズニーランドやキャラクターグッズでしか知らないと、何となく「完全無欠のヒーロー」を想像してしまいますが。

 持ち主の子(アンディ)の一番のお気に入りは自分だ、と自負するも、新しいおもちゃ(バズ)が来ると最初から敵愾心剥き出し。少しでもバズが優遇されると僻み根性丸出しです。

 けれどこのウッディ、そのバズが本当に危険な時、自分の身も顧みずに躊躇なく助けに入っています。殊更、自分が助けてやっているというオーラもありません。当たり前だからそうする、と言うさり気無さです。

 この美点は、3において敵対したおもちゃに対してですらも変わりません。自分や仲間を、あわや廃棄処分しかけた相手にも関わらずです。

 製作者が意図したのかはわかりませんが、前述の「狭量な、弱い部分」があってこそ「それにも関わらず正義を貫く」ウッディの強さを自らひき立たせたのでは無いかと思っています。

 誰かとの比較では無く、自分の弱さあってこその土壇場の強さ。

 

 ここまでの話は精神面でのものでしたが、続いては戦いにおける戦力について。

 私はどちらかと言えば「主人公一強」には否定的なスタンスです。

 古くはドラゴンボールの悟空や、北斗のケンシロウなど。

 特に前者は、仲間達では歯が立たない→悟空登場、なんやかんやあって勝利

 と言う流れが多く、幼少期からモヤモヤしたものを覚えていました。(それでも純粋に楽しんで観ていましたけど)

 クリリンの防御力無視の気円斬とか、使い方次第で面白そうなのになーとか。実際、戦闘力が乖離し過ぎているとその防御力無視の攻撃がかすりもしない、という絶対的な断絶はどうなんだろう、とか。

 反面、だからこそ強敵が現れた時の絶望感は毎回説得力もあったのですが。

 テレビゲームのRPGに当て嵌めると、この辺りはまだフェアに出来ているでしょう。

 いかに勇者がオールマイティに強い(僧侶も使えないベホマズン、魔法使いのどの魔法よりも強いギガデイン、戦士をも超えた肉弾戦と固有装備)

 とは言え、勇者一人でのラスボス討伐はやり込みプレイでもない限りは困難でしょう。

 私もまた「覚醒す」と言う主人公最強の物語を書きました。

 けれど、魔力は何者も寄せ付けない強さであるにも関わらず現代日本人(それもオドオドした気弱な男)に過ぎない精神性であるがゆえに、いつも生存はギリギリ。

 と言うのは、これまで何度か挙げて来たとおりです。

 ゆえに、彼には色んな意味で仲間が必要でした。

 作中において殊更説明はしなかったのですが、あの話において魔法・異能は、本人が好きなように創造出来るものです。

 私の魔法論における、人間の思考は質量にとらわれぬ半無限大と言う思想からです。

 もっと分かり易く言えば「チートでスキルポイント・ステータスポイントが99999999あるからご自由に。けれど敵もインフレしているからよく考えてね」でも可でしょうか。大概語弊もありますが。

 その性格上、近接戦闘を出来る気がしなかった神尾(主人公)は自ずと魔法使いメイジに偏った能力を作り、FPSとか大好きだった天田は、武器を変え品を変え、ひたすら戦士の技を極めていきました。

 中盤以降、魔法戦にこなれて来た神尾は弱点を埋めるべく、自身の近接戦闘をフォローする術も編み出しはしますが……やはり、天田と言う前衛あっての最強・神尾ではありました。

 恐らく神尾と天田が一対一で殺し合ったなら、神尾が圧勝する事でしょう。

 何なら最後の戦いにしても、実は神尾一人でも勝利可能でした。

 けれどそれは、彼が感情の無い殺人マシーンになり切れたらと言う土台無理な前提の話。もっと嫌らしい事を言えば「強さとドヤ顔ばかりの無個性な主人公」で無ければ不可能な所業なのです。

 天田が現れて以降の戦いは彼無しでは切り抜けられなかったのです。

 

 まとまりが無くなってきましたが、常々思うのは、

「仲間は何のために居るのか?」

 先に挙げたドラゴンボールとて、決して悟空のワンマンプレイとも言い切れません。毎回生存がギリギリと言うは悟空もそうです。

 けれどまあ、もう少し悟空では出来ない事があっても良いのでは無いかと。

 ケンシロウは、まだまだレイやトキに任せても良かったのでは無いか、とも思います。

 

 主人公には、他にはない突出した存在感が不可欠。

 けれど主人公のワンマンでは自己満足に終わりかねない。

 毎度、なかなか難しい課題です。

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