武器は剣でなければいけないのか?

 歴史マニアであり剣術含む武道の有段者でもある友人曰く、一対一において、剣では薙刀の有段者には勝てないそうです。(段位が同じ場合)

 また、戦略的にも槍を主武装とし、脇差しをサブに持っておくのが理想的だとも言っておりました。

 しかし、人にもよるでしょうけど、やはり主人公の武器としては剣、と言うイメージが多数派では無いでしょうか。

 確かに兵装は、先人達の知恵によって生み出された最適解なのでしょう。

 だからと言って、その辺の兵Aとは違うスタイルで戦うから、ヒーローは映えるわけで。

 実戦の考証も大事ではありますが、その為に表現に制約がかかってもまた本末転倒。

 現実の条理など二の次に出来るファンタジー作品であれば、聖剣や魔剣が猛威を振るうのも絵になることでしょう。

 しかし、主役の武装としてポピュラーな剣だからこそ、ただ何となく無銘のものを使わせていては印象も薄くなるのでは無いでしょうか。

 あるいは、徹頭徹尾、剣だけを装備しなければならない理由もないのでは、と思います。

 

 市販の本で「おっ」と思ったのが、ハイファンタジー作品の「金の瞳と鉄の剣(著:虚淵玄氏)」において、主役の相棒が章ごとに違う武器を使っていた事でした。

 ある時は飾りにつけていた細身剣(レイピア)であったり、ある時は落ちていた連接棍(フレイル)だったり。

 単一の武装で戦う話と比べて、殺陣にもバリエーションが出てくる、良い表現だと思いました。

 それに影響されたわけでもないのですが、私の作品「覚醒す」においても、主人公の相方・天田がほぼ毎回違う武装で戦っています。

(覚醒すの場合、なるべく主要人物を少なく抑えたかった事情もあります)

 基本的にはそこらで拾った鈍器かゴルフクラブだったりするのですが、敵からちゃっかり奪った武器を使ったり、グアム旅行の射撃場にあった銃器を手当たり次第ぶっぱなしたり。

 そうして最終決戦ではじめて剣を持ち出したシーンは、自画自賛ながら感慨がありました。(個人的にこれを“はがねのつるぎ現象”と呼んでいます。まともな剣を手に入れたら一人前)

 そして戦闘スタイルが武器に依存している彼ですが、素手での必殺技も作る事で、武器を失った場合にも対策を打っています。

 ただし、複数の武器を使い分けると言うことは、ある武器の専門家に“深さ”では敵わない事も意味するでしょう。

 あれこれ使える人と、剣のみを極めた人が剣で打ち合えば、後者が有利になりましょう。(キャリアや才能が同レベル帯同士なら、ですが)

 まあ「覚醒す」の場合は敵味方共にインフレ魔力で戦うので、体系立った武術の心得があまり意味をなさないので、天田のような素人でも強さを発揮出来ているのですが……。

 必殺技で、ある程度挙動を自分にプログラムしておけますし。

 恐らくHUNTER×HUNTERのカイトの能力も、武器がランダムになるという制約(日頃の修練が厳しくなり、実戦でも不安定)と引き換えに、強さを得ているのでしょう。

 更に言えば、武術とは当たり前ですが、人体の制約や限界が前提として成り立っている事でしょう。つまり、魔法による自己強化が可能な世界においての武術は、また現実とは勝手が違ってくる筈なのです。

 もしかしたら、魔法のある世界では槍はイマイチで、それこそ刀剣だけが最適解かもしれない。槍の二刀流などと言う無茶が最強なのかもしれない。

 もっと言えば、彼我の腕力が強すぎる世界において、鎧兜は無意味かもしれない。

 覚醒すで、天田がミニガン(総重量100kg)を生身で振り回していたのも、魔法の自己強化があってこそ実現した事です。


 武器は、必ず剣でなければいけないのか?

 ちょっとした事に疑問を持つ癖をつけておくと、発想の助けになるかも知れません。

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